〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC   作:ジュミ・ベラウ

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 本当は前回あたりで時間すっ飛ばして襲撃終わらせようとか思ってたんですが、どうしても出したい奴がいたので頑張って流れを思い出しながら書いてます。
 次回とその次あたりで王国の章は終わらせて第二章「リンクの冒険」を始められたらなぁ、と。

 更新日の予定は未定です。



逢魔の影③

 

 気付けば、村中に蔓延していたリーデット達が動きを止めていた。

 

「終わった、のか?」

 

 シーカー忍びの1人がそう言ちるが、しかし残心を解くことはない。

 果たしてそれは正解だった。

 

 全てのリーデットが崩れて単なる泥と化し、中から赤黒の悪霊が抜けていく。

 邪達は一斉に飛び行き、村の上空十数mの地点へと集まって、そして消えて行く。

 

「なンだ、この気配……!」

 

 ここにいる戦士は皆精鋭。それゆえ悪霊達が消えたのではなく、見えなくなっただけであることは理解できている。

 問題は、デドハンドを見ることができた心眼を持つ者でさえ、その何かを見ることができなかったことだ。

 

 それは、ティリアでさえ例外ではない。

 

 気配はある。リーデットやデドハンドとは比較にならないほどに、濃密な‘闇’の気配が。

 

「ぐわーッ!!!」

 

 突如として、兵士の1人が吹き飛んだ。地面に強く打ち付けられ、呻き声をあげて意識を失う。かろうじて受け身は取ったようだが、骨が折れるような音がしていた。

 

 どこからか、一体何が。

 誰もそれを認識できなかった。

 

 その上、上空に滞留していた闇の気配が薄くなっていた。

 移動したというより、村全体に薄く引き延ばされたようだった。

 

(間違いなく……親玉だよネ? リーデット……デドハンド……まさか……?!)

 

 ティリアはポーチを弄り、1つのアイテムを取り出した。『まことのメガネ』、異国から持ち込まれた魔力を持つ紫水晶(アメジスト)をティリアがてずから削り、魔力を流し、完成させたモノクル。

 見えざる者を見通し、隠されたものを暴く、外付けの心眼。

 

 元々はコキリの白刃剣(ホワイトソード)を造る際、万が一鍛治師のダボラが見えない時のことを見据え、偶然手に入った紫水晶から生み出したものだ。現状量産はできない上、ティリアの身の回りは殆どが最低限コログや三龍といった精霊を見ることが可能な能力をもっているため、今の今までポーチの底に死蔵されていた。

 

 だが、ティリアでさえ自力では見通せない敵ならば、彼女自身がこれを装備することで、二重となった心眼で見通すことができるのではないかと考えた。

 一種の賭けだ。

 

 その賭けには勝った。ようやく、敵の姿が見えた。

 

 殆ど黒に近い灰色の皮膚に、暗い青紫の血管が浮かんだ巨大な左手。人間1人くらいであれば容易く握りつぶせそうな大きさで、もしこの手の持ち主が人間と同じような体型をしていたならば、身の丈は20mほどといったところだろう。

 だが、ここにいるのは手首から先だけだ。このいった類の怪物にありがちな手のひらの目玉もない。爪は鋭い鉤爪どころか生えてすらいない。

 それがかえって不気味だった。

 

「全員退避!! 敵は不可視の巨大な手のひら! 左手ダ! 大きさは人間を叩き潰せるくらイ!!」

 

 まだ厄災復活まで時間がある。こんなつまらないことで死者を出すつもりは、ティリアに毛頭無かった。

 

 *

 Side ティリア

 

 シーカー忍びさん達精鋭には後ろまで下がってもらい、ボクは1人で左手と戦う。

 

 分かったのは、コッチの攻撃は全て通っているコト。動きはボクでも十分対処可能なコト。それだけなら倒せルと思えるかもだケド、問題は敵の傷がすぐに塞がるコト。

 

 斬りつければ青い血液が飛び散り、流れ出る。デモ、失血で動きが鈍る気配もなければ、衰弱して事切れる気配もなイ。

 

 ダメージがない? ワケじゃなさそウだけど、違和感はあル。

 

 何よりも……嫌な既視感。いや、知ってるモノより遥かに動きはいいンだヨ。それそのものの動きしかしてなイなら、今頃真っ二つにするなり、『とどめ』で地面に縫い止めるなりできてた。

 

 素直に言うケド……メンド臭いッ!!!

 

 リーデット、デドハンド……そしてコイツ!!!

 

 倒せないワケじゃない、押し留められないワケじゃなイ!!! 強さや技量だけなら白銀ライネル先生のが遥かに上だヨ。飛び道具がない時点から言ってもいいジャラ。

 

 敵の主目的はカカリコ村の制圧や殲滅じゃないのか、向こうさんがコッチの戦力想定が甘かったのか……。

 

 いや、甘い想定はダメだネ。それに今はコイツをどうにかするのが先決!!!

 

 何より、コイツが1体だけとは思えない……! 左手ならどっかに右手だっテいるハズだヨ。

 あるいは、胴体も……!

 

「だからとっととくたばっテ!!!」

 

 渾身の回転斬りを叩き込んデ、深い傷を負わせル。

 青い返り血が、ボクを濡らす。

 

 左手の魔物は、青い煙になって流れるように消えた。

 

 途端にボクは膝を付く。安堵なんかないヨ。

 体力の限界なンだ。子供を作れる体になったからって、肉体的な全盛期にはまだ至ってなイ。それに早寝早起きの習慣のおかげで、本来なら眠くっテ仕方がないのをドーピングで無理矢理起きてたンだ。

 

「ティリア様!」

 

 駆け寄って来てくれた忍びさんには悪いケド、まだ戦線を離れるワケにはいかないヨ。

 伏兵がいるかもしれなイ。

 

 何より、村を包んでるこの気配……まだ消えてなイ……!

 

 ボクはポーチから取り出した薬を飲もうとして、背後からの衝撃で吹っ飛ばされタ……?!

 

 *

 

 朦朧とする意識で、ティリアは確かに見た。背後の族長屋敷の屋根に火が登っているところを。屋敷の壁を突き破って右手が飛び出して来たのを。

 ティリアを突き飛ばしたその右手には、金髪の少女が握られていた。

 

「……離せッ!!!」

 

 一太刀浴びせようとして、踏み込みが一歩足りない。回復のための薬は殆どを溢していた。

 

 右手首は何処かへと消える。同時に、村中を覆っていた気配もまた消えた。残されたのは、一度だけ響いた鼓を打つような軽い音、その残響だけだった。

 

 ティリアは限界を迎え、意識を失った。

 

「屋敷の火消しを急げ! 被害状況を確認しろ!」

「ティリア様の治療を!」

「伏兵が潜んでいないか心眼を持つ者は警備に当たれ!」

 

 シーカーの精鋭達は即座にすべきことを分担して行動に当たった。

 

「「ティリア!」」

 

 屋敷の中から少年少女2人が飛び出して駆け寄って来た。

 

「リンク殿に……ゼルダ様?!」

「なぜゼルダ様がここに? いや、それより、先程攫われたのは金髪の……」

 

 シークの存在を知らないシーカー族がやや混乱しつつも、泣きながらティリアに駆け寄るゼルダを宥めようと前に出る。

 リンクはゼルダから目を離さないまま、いつでも抜剣できるようにして警戒していた。

 

 ○

 

 翌朝になるまで、襲撃が再開されることも、伏兵が見つかることも無かった。

 城からの援軍が来たのはティリアが倒れた直後。最速で駆けつけて来た彼らに文句を言う者は無かった。

 

 屋敷の火はせいぜい小火のようなもの。灯り用の油に引火したためであり、雨で湿気ていたのもあってすぐに鎮火された。

 

 戦闘中、歩行型および飛行型のロイヤルガード個体が援軍に現れなかった理由も判明した。

 設置された砲台型共々、身体内部にまで泥が絡みつき、機能不全を引き起こしていたのだ。

 

「1万年前には居なかった新種の魔物か……対策されてないワケだ。」

 

 洗浄とメンテナンスに当たったシーカー技術者はそう言った。多少の泥はねや泥被りであれば大したことはないが、意思を持って侵入してくる泥であれば、ガーディアンを破壊できなくとも動きを止めることができると証明された。

 厄災本番までにその欠陥を把握できたのを良しとするべきかは別として。

 

 これがもしロイヤルガードではない個体であれば、悪霊に直接乗っ取られていた可能性もある。

 

 そうしてシーカーの人々が村の復旧に勤しんでいる間、ティリアは泥のように眠り続けていた。

 

「若さに任せて無理をし過ぎですな。このままでは発育に悪影響が出るでしょう……自分より年上の御仁にこの言葉を言うとは思いませんでしたな。」

 

 医師の話を聞いているゼルダを後ろに、柔らかな寝息を立てているティリアをリンクは見つめていた。

 ライネルのお面は魔物の血で青く染まり、まるで青髪のライネルのそれだ。どう言うわけか目の色まで緑から橙に変化している。どことなく宿した力も強くなっているように感じられた。

 

「?」

 

 彼女の眠る傍らに、納刀された白刃剣(ホワイトソード)もまたあった。

 リンクはその剣の柄に嵌め込まれた琥珀が輝いて見えた。何かを伝えようとしているかのように。

 

 なにか、引力にも似た何かに引っ張られるように、彼は剣の柄を握った。

 

 ──こっそり聞いた話だが……寝る子は育つらしい……。

 

 彼の頭の中にそんな声が響いた。中性的だが、どことなく男性のように聞こえる声だった。

 

(?)

 

 リンクは可愛らしく首を傾げる。この剣がティリアの魂を分けた特別なものであることは彼女に近しい人々にとって周知の事実だが、彼女の魂を分けているのであれば、むしろ彼女と同じ、可愛らしく響く少女とコログの合わさったような声が聞こえるはずではないのだろうか、と。

 

 ──リンク、どうか、ティリアをもう少しだけ眠らせておいて欲しい。

 

 また、声が響いた。今度は明確にリンクへと向けた声だった。彼は迷わず頷いた。自らの師が休まなさすぎるのは彼もまた思うところがある事実だった。

 今回のカカリコ村は、せっかくじっくりと休ませられると思っていたのにこんなことになってしまったのは痛恨の極みであると、カカリコ村の上層部は考えているほどだ。ゼルダなどはシーカー忍びに伝わる特性眠り粉の製法を学ぶべきかと本気で考えているし、リンクもまたティリアを絞め落として眠らせる術を身につけるべきだと考えている。

 少々物騒ではあるが、それもこれもティリアが彼らに愛されている証拠ではある。何が悪いかと言えば休まないティリアが悪いし、それも元を辿ればどれだけ備えても安心できないほど強大な厄災が悪い。

 

 ──ありがとうね、ティリアのことを想ってくれて。

 

 それきり声は聞こえなくなった。

 どうも、剣の意思はティリアに対して保護者のような立ち位置にあるようだとリンク少年は思った。剣の方が100歳以上年下であることを思い出すまで、数秒かからなかったが。

 





○コキリの白刃剣
 当然精霊が宿ってる聖剣。
 どことなく男性よりに聞こえるが基本はティリアと同じ声。
 ……ティリアの声のイメージはリメイク版のサリアの声とか合うんだろうか? 特に声優さんは想定してないです。

○ライネルのお面
 なぜか成長して青髪ライネルのお面になった。攻撃力増加量はそのまま、燃焼、凍結、痺れの耐性も少し上がる用になる。
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