微睡みの中、誰かに優しく頭を撫でられている事に気づいたレインは、静かに目蓋を押し上げた。
目に入ってきたのはいつも通りの部屋。ただ一つ違ったのは、銀髪の少女がレインに膝枕をしていた事だった。
「……おはよう、リリウム」
「おはようございます、レイン。身体は大丈夫ですか?何処か痛い所などはありませんか?」
そう心配そうに尋ねるリリウムに、レインはこくりと首を傾げ、不思議そうに問い返した。
「急にどうしたの?何とも無いよ?」
「……そうですか」
歯切れが悪いリリウムを疑問に思ったものの、レインはリリウムの膝から身体を起こすと、カーテンを開け、日の光を浴びながら身体を伸ばした。
「んっ……、今日は良い天気だねぇ、珍しいや」
「そうですね」
ふわりと欠伸をしながらドアを開けると、珍しくセレンが早起きをしていて、椅子に座ってモーニングコーヒーを啜っていた。
「セレンが早起き?珍しい、コーヒー僕とリリウムのもある?」
「有るが、インスタントが嫌なら自分で淹れろ」
「インスタントか……」
「文句が有るなら自分で淹れろと言ったが?」
「……はいはい、自分で淹れますよっと、リリウムどうしたの?」
「あ…いえ、何でもありません」
レインがダイニングの前で固まっていたリリウムに呼びかけると、ぎこちない動きでリリウムは椅子に腰掛けた。
「レイン、朝から早々に悪いが、GAから依頼が入ってるから確認しておけ、朝飯は適当に食うから心配するな」
「はいはーい」
セレンがコーヒーを淹れ終わったレイン声をかけると、レインはリリウムの前にコーヒーカップを置き、自分の物を持って仕事部屋に入って行った。
「「……」」
場の空気が沈黙に満ちる。
そのまま数秒経った後、リリウムはコーヒーを一口飲み込むと、沈黙を切り裂く様に切り出した。
「セレン様、昨夜のアレは「待て」……」
リリウムの言葉を遮ったセレンは、仕事部屋を見つめた。
「あいつに聞かれたく無い、ミッションが終わった後、あいつが帰って来るまで時間がある、その時に話してやる」
リリウムは一瞬不服そうな顔をしたものの、静かに頷くと、また一口、口から出かかった不満ごと、コーヒーを喉に流し込んだ。
※ ※ ※
『ミッション開始だ。敵AF部隊を全て排除する。』
ストレイドの通信から聞こえてくるセレンの声を聞き流しながら、レインは機体と身体をAMSシステムで繋いだ。
ピリッとした痛みが走った後、身体の感覚が急激に拡張するような錯覚に襲われる。
辺り一面は見渡す限りの砂漠があり、大きく舞い上がった砂埃で視界は悪く、正面にはGAから申し訳程度に派遣された防衛兵器が並べられていた。
『こちらGA輸送部隊。敵が接近している、リンクス、報酬分の仕事はして貰うぞ、一機もこっちに通すな』
護衛対象から通信が入った後、レーダーに線が表示され、セレンからも通信が入る。
『レーダーに想定防衛ラインを表示した。敵部隊がラインを越えたら、護衛対象がAFの射程内に入る。つまりミッション失敗だ。それもつまらんだろう、留意しておけよ』
「オッケー」
レインはレーダーをチラリと眺めて防衛ラインを確認し、オーバードブーストを使用して空に飛び出した。
「フェルミまで居るのか、めんどくさいな」
ランドクラブとノーマルの群れの上空に浮かぶ、重量ACの胴体だけを切り離した様な見た目の兵器を見たレインは顔を顰め、心底ウンザリした様な声を出した。
FF130-FERMI。インテリオルが誇る機動兵器であり、AFではないものの、ランドクラブよりかは遥かに危険度が高い兵器だ。
強力なレーザー砲に大量のミサイル弾幕、コストダウンの為かリンクス戦争時に取り付けられていたPAは無くなったものの、何処をどう改造すればこうなるのかと問いたくなるほどに堅牢な装甲、更には機動兵器を名乗るに相応しい機動力。
シミュレータでしか戦った事はないが、レインはその面倒臭さを身に染みて分かっていた。
ランドクラブのレーザー連装砲とフェルミのレーザー砲が雨の様に降り注ぐ中、ストレイドはそれを綺麗に交わしながら集団に突っ込んだ。
グレネードで流れ作業の様にノーマルを仕留め、砂を蹴って飛び上がると、レーザー砲を紙一重で交わし、左手の武装を抜き放つ。
「まずは一個!」
抜き放たれた
最後にダメ押しとばかりに右手の
そこまでされれば自慢の装甲も耐えきれず、フェルミは大きく爆発し、地表に落下していった。
「次!」
背面にくるりと一回転しながらレーザーを避けたストレイドは、機体の向きを下方向に固定すると、一瞬だけオーバードブーストを起動し、自由落下の速度を何倍にも増加させ、直下のランドクラブ目掛けて落ちて行く。
瞬きの間にランドクラブに迫ったストレイドは、落下の衝撃をPAで強引に緩和しながら、エネルギー砲台にブレードを突き入れた。
ストレイドはPAのお陰で、少ない衝撃がコックピットに響いただけで留まったが、PAが無いランドクラブは、ネクストの質量がマッハ並みの速度でぶつかってきた事による、膨大な運動エネルギーの暴威に晒された。
衝突した場所の砲台は完全に潰れ、露出したエネルギー炉も既に火を噴いており、ダメ押しとばかりに突き入れられたブレードの刺し傷が、ランドクラブが既に致命傷を負っている事を如実に示していた。
更に周りのエネルギー砲も、衝突の余波でひしゃげており、ひび割れた隙間からは、青白い炎が漏れ出していた。
その暴走したエネルギーは、今にも爆発せんと砲台内部で暴れ狂う。
レインはその光を視認すると、ストレイドを操り、ランドクラブの外壁を蹴ってその場から大きく離れた。
『随分と派手にやるじゃないか、良いぞ、そのまま続けろ』
炎が噴きあがり、大きく爆発するランドクラブを背にしたストレイドは、セレンの声に促される様に、二機目のフェルミと、狂った様にレーザー砲を乱射するランドクラブに襲い掛かった。
※ ※ ※
数分後、同じ様にランドクラブを地に伏せたレインは、GA部隊の感謝の言葉を受けながら、部隊と足並みを揃える様にゆっくりとストレイドを歩ませていた。
『ランク9、今回は助かった。最近上がやけにお前を推してくる事に、部隊員から疑いの声が上がっていたが、どうやら評判と腕前は相違無いらしいな』
『そんな事言って、隊長が一番心配してたじゃ無いですか!何が『年齢が若すぎる〜』ですか』
『あってめ、バラしやがったな!』
「あはは、そっちの部隊には愉快な人が多いんですね」
最初と違い、レインと輸送部隊の間では、和やかな雰囲気が流れていた。
しかし油断大敵とはよく言ったもので、周辺をレーダーで確認していたセレンから鋭い声で通信が入った。
『待て……不明ネクスト反応、急速接近!接敵まであと30秒だ!』
「っ!」
その通信が入り、弾ける様に顔を上げたレインは一瞬で意識を入れ替え、低い声で輸送部隊に告げた。
「今すぐ速度を上げて。なるべく離しますが、巻き込んでしまうかもしれない」
そう言い捨てると、反応がある方向に向かって、レインはストレイドにオーバードブーストを吹かせた。
砂漠の地平線に、砂塵に隠れながらも、強い光が段々と大きくなって来る。オーバードブーストだ。
『敵ネクスト、識別不明。接敵まで後…3.2.1、今!』
「接敵したらカメラ映像でどうにか解析して!」
レインはそう叫ぶと、オーバードブーストの光に突っ込んで行き、お互いに交差する瞬間にブレードを叩き込んだ。
PAを切り裂いた刃が、敵ネクストの装甲を掠め、黒く焼き焦がす。
同時にストレイドもショットガンを打ち込まれ、PA値がごっそりと削れる。
一瞬の交差だったが、機体カメラは敵機体の全貌を捉えていた様で、通信の向こうから、キーボードを叩く音が聞こえた。
レイン自身も目視で機体構成を確認する。
「イクバールの標準機……か?動きが速いな、僕と同じ、張り付き特化の機体構成。二段QBも使うなんて、一体誰が『待て、これは……バルバロイ!砂漠の狼、アマジーグだと!?奴は死んだはずだ!』……何だって?」
レインは聞こえてきた通信に思わず耳を疑った。
アマジーグとは、かつてのリンクス戦争時代に活躍した、反体制勢力の英雄、だった筈だ。
アナトリアの傭兵が奇襲しようとしたが、寸前に気づかれ、苦戦したほどの腕前だったとか。
途中から参戦したジョシュア・オブライエンと共闘してどうにか撃破したと記録にある。
「もう死んだ筈の人間が何故ここに!」
『いや、今はそんな事放っておけ!集中するんだ、相手がもしアマジーグだとするならば、下手をしたらお前が死ぬぞ!』
疑問は無限に湧き上がって来るが、そんな事に構っている場合では無い事は、レインにも重々承知だった。
記録の通りなら、目の前の相手はホワイトグリントと同等の実力を有している筈なのだ。
『ワるいがマダ死ねんのだ、お前ラノせいデナ』
コンピューターがバグを引き起こした時の様な歪んだ男の声が、通信に響き渡る。
レインの視線の先では、僅かにカクついた動きで、バルバロイがその身を起こし、ストレイドを見据えるカメラアイが、不気味に赤く輝いていた。
AC4本編との相違点
ハードと同じく、奇襲前にバルバロイが起動。
しかしハードだと敵になる筈のジョシュアが味方として援軍に来る。
ハードのゲームバランス調整的に仕方のない部分では有りますが、ハードそのままだとジョシュアと友情を育む時間が生まれず、セリフに違和感を覚えるので、ハードとノーマルを混ぜ混ぜしたものがAC4のストーリーだったのでは?と言う想像です。
これからの話にVD要素が少しだけ出てくる予定で話を考えていますが、あんまり混ぜ混ぜするのも良くないかと迷っています。そこでせっかくなので皆さんに決めて貰おうと思います。回答よろしくお願いします。
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VD要素があった方がいい
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VD要素はあってもいい
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VD要素は無い方がいい