【リメイク版】ズッ友宣言してきた子の距離感がおかしい 作:猫好きの餅
なんか、私の作品のキャラが集まるスペシャルみたいになってしもうた。
「ち、千織、離れろって」
「……や」
えっと、もしかしてこの人…。
着替えて宿を出た千織さんに飛びつかれて慌ててる白髪の男性。この千織さんの反応的にも、多分さっき言ってた旦那さん、なのかな?
着替え終わったみんなが出てくる声を背中に受けながら、あたしは彼に尋ねた。
「えっと、……あなたは?」
「…ああ、俺はクレイっていいます。…この、千織の夫です」
「やっぱりっ!」
「クレイっ?あんたなんでここにいんのよ?」
ナヴィアさん達もクレイさんとは知り合いみたい。尋ねられたクレイさんは、今だ抱きついてる千織さんを優しく抱き返しながら答えた。
「さっき旅人が店に飛んできてさ。千織がクレイ欠乏症で倒れそうだから来てって」
「…クレイ、お店は?」
「ちゃんと閉めてきたよ。…元々明日は休みだし、俺も会いたかったし。来ちゃった」
「クレイ…」
わ、わぁ。千織さんがすごい嬉しそうな顔で微笑んでる。千織さん、こんな顔もできるんだぁ、……あたしも、こんな感じなのかな?
千織さんは、しばらくクレイさんに抱きついていたんだけど、さすがにそろそろ…。
「んんっ」
フリーナさんの咳払いに、千織さんが我に返った。みるみる顔が赤くなる。
「……」
「千織?」
あ、すすっとクレイさんから離れた。……口元を抑えて、ふかーく深呼吸。…んんっと咳払いをして。腕を組み。
「……そう。…それならいいけど。旅人には感謝しやくちゃね」
『いやいや遅い、遅いよ』
なに何事も無かったかのように続けてるの!?ナヴィアさん達は割と見慣れてるようで頬をかいたりそっぽ向いたりしてたけど、あたしにとってはすごいシーンだったよ!?
クレイさんがあたしにぺこりと頭を下げてる。えっとこういう時は…。
「ご、ごちそうさまでした?」
「っ、…ど、どういう意味よ」
「いやぁ、……大好きって言ってたもんね」
「ちょ、やめて…」
さっきのクールな千織さんはどこへやら。ほほをほんのり赤くしつつも、クレイさんから絶対に離れない。……逆に何したらここまで惚れるんだろ。
それから、クレイさんも交えて流泉の衆を歩き回ることに。彼もナタは初めてみたいで、フォンテーヌと違う景色に目を白黒させてた。そんな彼を見る千織さんの顔が……もう、見てるこっちが照れちゃうよ。
ここの海鮮中心の食事も気に入ってくれたみたい。今は食後に、ゆったりと流泉の衆の音楽を聴きながら話してるところ。
あたしは、そういえばと気になったことを尋ねた。
「みんなってさ、もしかして迅さんと知り合いだったりするの?」
あたしの問いに、全員頷く。わぉ、やっぱり。
「ムアラニも知ってるのかい?」
「うん。ちょっと前、ナタがアビスの大侵攻でピンチになった時に、駆けつけてくれたんだ」
「旅人が呼んだんだよな?」
あの時、突然だったし、炎神様も古名の継承者のあたし達も闘技場から動けなくて、本当にピンチだった。そこに、彼は現れたんだ。
パイモンの話だと、どうてん?ってところに行って、迅さんに助けを求めたんだって。彼は二つ返事で頷いて、ナタの戦場で戦ってくれた。
あたしはその活躍をこの目で見ることは出来なかったんだけど、アビスの魔物たちを青い雷でバッタバッタと薙ぎ払っててとっても凄かったんだって。実際、人的被害もかなり抑えられたんだ。
あたしがそう話すと、旅人がフリーナさんに視線を向ける。
「フリーナは迅の洞天に住んでるよ」
「え、そうなの?」
「そうさ。元々はフォンテーヌに住んでたんだけど、あそこなら安全だからって」
「その、踏み入ったこと聞いちゃうんだけど…フリーナさんって、もしかして偉い人?」
「今はそんな立場じゃないよ。……あー、元水神なんだ、僕」
「すいじん……水神…えぇえええ!?」
しーっだよ?とフリーナさんに人差し指を立てられて、あたしは口を手で覆う。そ、そんなにすごい人なのぉ!?
「え、ええと。口調とか改めた方がいいかな…」
「いいよいいよ。今は一般人なんだし。なんなら呼び捨てでも」
驚きを何とか飲み込んで、頷く。なんだか、みんなのあたしを見る目が暖かい気がするよ!?
「……ええと、話を戻して…、フォンテーヌの人たちが迅さんを知ってるって、向こうでもなにか活躍してたのかな?」
「ああ、それは─────」
クレイさんが説明してくれる。へぇ〜…すごいことがあったんだね。フォンテーヌが水没したって噂は聞いたことあるけど、高い位置にある国が水没っていうのが信じられなくて、デマかなんかだと思ってた。
だいたい話がひと区切りしてきたところで、今度はあたしの話に。
クレイさんの隣に座る千織さんが、穏やかな顔で言う。
「そうだ、…クレイもムアラニの恋愛相談に乗ってあげてくれないかしら。男の意見も聞きたいでしょ?」
「ん?…ムアラニの恋バナ?」
ええっ!?ここでソコに戻るのっ?……他、確かに男性の意見も聞きたいけど…。
矛先があたしに向いた途端、みんながきゃいきゃい騒ぎ出した。
「そういえば、どこまで行ったか聞いてなかったよね」とナヴィアさん。
「僕たちのことをここまで聞いたんだから、話さない訳には行かないよねぇ」とフリーナ。
「……参考までに、聞かせてもらおう」と咳払いしながらも興味津々のクロリンデさん。
「本人に相談もされてるし、協力出来るかも」とエスコフィエさん。
みんなに見られて、あたしもなんかノリに乗ってきちゃった。うん、目の前でもっと恥ずかしいことしてる人いるし、あたしも話していいよね?
正面から飛んできた冷気の視線から目を逸らして、あたし話し出した。
「えっとね。……あたし、同じ部族に好きな男の子がいるんだけど──」
「……でねっ、あたしとウルがねっ……って、あれ?みんなどうしたの?」
まだ30分くらいしか話してないのに、なんかみんなぐったりしてる。
いつの間にか頼んだコーヒーを啜ってるみんなを不思議に思っていると、クレイさんがゆっくり手を挙げた。
「……えっと、確認だけどさ」
「ん、なに?」
「ムアラニと、ウル君は友達…なんだよな?」
「うんっ、大切な友達っ!」
「…そ、そうか」
クレイさんはこめかみに手を当てる。「俺達も人こと言えないけどさぁ…」と呟いてる。ところで千織さんはいつまでクレイさんの手を握ってるの?ここに座ってからポーカーフェイスでずーっと繋いだ手をにぎにぎしてるけど。
見ると、ナヴィアさんとフリーナは遠い目をしてて、クロリンデさんは「なるほど…」とか言って頷いてる。エスコフィさんに至っては頭を抱えて天を仰いでた。
エスコフィエさんが困惑気味に尋ねてくる。
「……えっと、一旦整理させて。…ムアラニとウルは友達」
「うんっ」
「で、前に一緒の宿で止まって同じベッドで寝て」
「そうだね、えへへ」
「…で、この前は修行中のウルを尋ねて、ハグして…2時間くらい?」
「うん、今でも感触を思い出せるなぁ…」
「で、そのまま一緒に寝たと。しかもちょっとキスもした?」
「う、うん、お互いそれには触れなかったけど、勢いで……15回くらい」
エスコフィエさんは頭をぐしゃぐしゃにかいた。
ぼさぼさの髪のまま、ほかのみんなの方を見る。
「……えっと、……私がおかしいのかしら?」
『いや、全く』
み、みんながそういう反応するのもわかるよ?…でも、なんか……ウルと抱き合ったり、一緒に寝たりする時に「友達だから」って口に出すと、ちょっと………興奮するんだよね。
「うん、わかってるよ?……友達はこんな事しないって」
「あ、ああ。よかった。そこはわかってるんだね」
「とーぜんでしょ?………でも、なんかね?…恋人と、今の関係の違いがわからなくなっちゃって」
「でしょうね」
みんなが仏頂面で見てくる。……そ、そんなにおかしいかなぁ?
ウルとどうなりたいと聞かれれば、もちろん彼女になりたい。付き合いたいって気持ちもあるけど、……あたし、やっぱり距離感がおかしかったよね。だって、ウルとこの間したことだって、どう考えても友達でやることじゃないもん。
あたしは参考にしたくてみんなに聞いて見ることにした。
「えっと、クレイさんはどうやって千織さんと恋人になれたの?…だいたいのことは聞いてるけど…」
「…まぁ、一言で言うと俺が攻め落とされたっていうか」
「……先に崩してきたのはクレイでしょ」
「先に俺に優しくしてくれたのは千織のほうだろ」
「「………」」
「……と、まぁ俺達は参考にならないかもな。……千織、ちょ、近いから。普段はみんなの前で甘えない癖にっ」
「……っ」
あ、恋路をバラされて恥ずかしくなった千織さんが、クレイさんの後ろに隠れた。あたしの話を聞いてたみんなもこんな感じだったのかなぁと、体が痒くなる。
そんな中、「それなら〜」と楽しそうにナヴィアさんが視線向けた。
「旅人とフリーナなら、いい話聞けるんじゃない?」
「え、あるの?」
「な、ナヴィアっ!」
「…うう、来ると思った…」
話を振られた2人は、ホロをほんのり染めてそっぽ向いたり苦笑したり。えっと、フリーナって迅さんの家に住んでるんだよね。……ってことは?
「迅さんが好きってこと?」
「…う、うぅ……うん」
フリーナは、顔を真っ赤にしながら頷いた。
「……きっかけはなに?
「……迅は、僕を助けてくれたんだ。……神座で泣いてた僕に、帰るぞって。それに、僕のことを本気で褒めてくれた。…神って、本気で認めてくれた人なんだ」
「……へぇ〜……確かに、それは惚れちゃうかも」
ウルで例えたら、………うん、だめ。あたし絶対一撃だ。むり、惚れる。
なんか、話してるフリーナの顔が…恋してるってより…「愛」って感じで。本当に好きなんだろうなって言うのが伝わってくる。今は、ナヴィアさんに突っつかれて真っ赤のほっぺをぺちぺちしてるけどね。
「…それで、旅人は?……えっと、旅人も迅さんのこと…」
「…まぁ、うん。……私は一緒に旅してたら、探してるお兄ちゃんに似てるなぁって。アイツ、人のことってなったら自分のこと投げ出すから……私達が見てないとって、心配もあるかな?」
「……なんか、照れるな」
「ん?」
みんなで旅人の話を聞いてたら、後ろから男の人の声が。全員で振り返ると、今の話題の人が立っていた。旅人とフリーナが立ち上がる。
「じ、迅っ?」
「な、なんでここにいるの?」
「謎煙の主の配達の帰り。……って、聞いてはいたけどすごいメンツだな」
藍色の髪に、空色の瞳。腰に差した刀が特徴的の、迅さんがみんなを見て目をぱちくりとしてる。
話を聞かれてたことに顔が真っ赤で爆発しそうな2人に苦笑してる迅くんに、クレイさんが立ち上がる。
「お疲れ、なんか迅君の関係者の集まりみたいになってるぞ」
「よ。……クレイがいるってことは、…蛍に飛ばされた?」
「ご名答。……びっくりしたけど来て正解だったよ」
クレイさんと迅さん、仲がいいみたい。話してるふたりの周りに、みんなも立ち上がって集まっていく。配達の帰りって言ってたけど、謎煙の主からだとこっちは遠回りじゃない?
あたしと同じ疑問を抱いたのか、エスコフィエさんが問いかける。
「迅、あなた配達の帰りにしては遠回りね。なにか用でもあったの?」
「ああ、みんなが集まってるから顔を出そうってのと……ムアラニに伝言を」
「え、あたし?」
誰から…って、謎煙の主に配達ってことは、もしかして…?
「う、ウルから?」
「そう。……今俺んとこの洞天で修行してるから、経過を伝えに来たんだ」
「え、迅さんのところで?」
「戦闘力を上げたいとかでな。今は疲れて眠ってるよ」
「そ、そうなんだ」
会いたいって思ったけど、眠ってるなら迷惑だよね。……それで、伝言ってなんだろ。
「伝言なんだけど、明後日には流泉の衆に戻るって。色々コツを掴めたらしいから」
へえ〜…確かに、迅さんに鍛えられてるなら色々強くなってるかな。……あたしの為……とかだったり?
あたしはそこまで考えたところで、ひとつ引っかかることが。
「ねぇ、迅さん」
「ん、なんだ?」
「迅さんが教えてるんだよね?」
「俺もだけど、主に……いや、なんでもない」
「ね、確か迅さんの洞天って、…色んな国の…女の人が集まるんだよね」
「いや、女性ばっかじゃないぞ?…ちゃん男性も何回か…」
「……フリーナ、どう?」
「…今日は全員女子ばっかだけど…」
「ふぅん……」
あたしの握ってたコップが、ミシッと音を立てる。
「やべ、余計なこと言った」みたいな顔してる迅さんに、あたしは精一杯の笑顔を返す。なんか、ナヴィアさんたちが怯えてるように見えるけど、気のせいだよね。あたし今すっごい笑顔だし?
ウルが、他の国の美人な女の人と修行…、…シトラリおばあ様は、幻目さんがいたし、気にならなかったけど…。
あたしはフリーナに「しーっ」ってしてる迅さんに向かって言った。
「……あたしからも伝言いい?」
「……あ、……おう」
横のクレイさんと千織さんの、「まぁ、怖いよな。……怒るとなぁ」「……実感のこもったコメントね」みたいなやり取りを聞きながら、あたしは伝言を伝えた。
あとの話になるが、夜の洞天からウルの悲鳴が上がったらしい。