一之瀬さんと一緒に無人島生活だ! 興奮してきたな!

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一之瀬さんのいるBクラスが最強に決まってるだろ!

 

 高度育成高等学校とかいうちょっぴり変わった名前の学校に入学してからだいたい四ヶ月。夏休みのこと。俺たち一年生は豪華客船に乗って無人島へとやってきていた。

 先生の話を信じるならば、これから一週間のバカンスが始まるらしい。今からとても楽しみだ。俺のテンションはそれはもう爆上がりである。

 

「ではこれより、本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

「……ほえ?」

 

 特別試験? 何それ? 

 ポカンと呆ける俺を置いて、学年主任である真嶋先生の説明は無情にも続いていく。

 周りを見渡せば、Bクラスのみんなはどこか納得したような表情で先生の話に耳を傾けていた。

 えっ、何その反応。もしかしてサプライズを受けてるのって俺だけだったりする?

 

「まさか本当に試験があるとはな」

「準備しておいてよかったね」

 

 何それ聞いてない。

 真嶋先生の説明が全部終わっても未だに状況が飲み込めていない俺の横で、Bクラスのリーダー的存在である神崎と一之瀬さんが神妙な顔で頷き合っていた。

 どうやらこのびっくり展開は二人にとっては予想通りのことだったらしい。

 いや、二人だけではない。Bクラスの生徒の中に慌てふためいている者は誰もいない。ただ一人──俺を除いて。

 

「福田のおかげだな」

「だねぇ」

 

 福田。それは俺の名前だった。

 つまりどういうことだってばよ。

 

「ちょっと待ってくれ……俺、なんかしたか?」

「あれ、覚えてないの?」

 

 一之瀬さんが不思議そうに首を傾げる。可愛い……けど今はそれどころじゃない。

 もしかして俺だけ記憶喪失だったりする? 

 

「無人島でサバイバルがあるかもしれないって、福田くんが教えてくれたんでしょ?」

 

 そんなこと言ったっけ? 言ったかな? 言ったかもしれない。

 でも、それはあれだ。『もしもバカンスが嘘で実はサバイバルとかだったらおもろくね?www』みたいなノリでの発言だった気がする。

 少なくとも意識して未来を言い当てたわけではない。俺自身はバカンスってことをこれっぽっちも疑っていなかったのだ。

 なのに一之瀬さんたちは俺の言葉を真に受けた。それで準備万端ってどんな奇跡だよ。こういうこともあるんだなぁ。

 

「とりあえず拠点を探しに移動しよっか!」

 

 担任の星之宮先生から追加の説明を受けた後、一之瀬さんを先頭にゾロゾロと移動を開始する。

 その道中、俺は神崎からこの特別試験の概要を教えてもらった。先生の授業だと全く理解できなかったのに、頭のいい同級生に解説してもらうとすんなり問題を解けることってあるよな。まさにそんな感じ。神崎はとても教え上手なのだ。

 試験の内容を要約すると、リーダーを決めてスポットを回ってポイントを稼ぎ、リーダーを言い当てて更にポイントをかさ増しする──って感じだ。

 ポイントを使って色んなものを購入できるらしいけど、そこは我がクラスの頭脳である神崎や一之瀬さんに任せておけばいいだろう。

 なら俺の役目は? 

 

「福田には探索と他クラスの偵察を任せたい」

 

 あいあいさー。

 ビシっと敬礼する俺の視界の端で、星之宮先生が項垂れているのが目に入った。

 

「情報漏洩なんてしてないのに、また疑われるんだろうなぁ……」

 

 夏の暑さにやられてしまったのかもしれない。

 美人教師を介抱するべく、俺は神崎との会話を切り上げて星之宮先生の元へと向かった。

 

 

 *

 

 

 ベースキャンプの設営やらリーダー決めやらは一之瀬さんたちに任せ、俺は早速探索へと躍り出た。

 しかし単独行動ではない。俺の隣には相棒がいた。

 一之瀬さんのことが大好きな小柄少女こと白波である。

 

「なあ、改めて考えるとやばくないか?」

「やばいね」

「一之瀬さんを含めたクラスの女子たちと、これから一週間一緒に寝泊まりするってことだろ?」

「興奮しちゃうよね」

 

 男と女の会話のはずなのに、その内容はまるで男と男の猥談そのもの。しかしこれには理由があった。うちのクラスの男子って、真面目なやつばっかでこういう話で盛り上がれる相手がほとんどいないんだよな。

 それこそ、一之瀬のことをエロい目で見ているクラスメイトは俺と白波しかいないんじゃないかって疑うレベル。

 だってあいつらプールの授業の時ですら平然と泳いでいたんだぜ? 男としてありえないだろ!

 

「福田くんは残念だね。私は帆波ちゃんと同じテントで寝ることになると思うけど」

「いいなぁ。俺もそっちのテントで寝たい」

「絶対無理でしょ」

「それはそう」

 

 テントをいくつ用意するのかは知らないけど、さすがに男女は分けられるだろう。一応学校行事だからな。同人誌みたいな展開は常識的に考えたらまず起こり得ない。

 

「どうせ隣を確保するんだろ?」

「もちろん」

「襲うなよ?」

「それは確約できないかな」

「しろよ」

 

 でもまあ、白波も可愛い女の子だからな。一之瀬さんとそういう行為に及ぶなら俺得ではある。

 誰か他の男に盗られるくらいなら、白波に一之瀬さんを堕としてもらいたいくらいだ。

 そしたら感想とか教えてほしい。妄想だけで十分使える。

 

「おっ、洞窟だ」

「ほんとだ」

「誰かいるな」

「Aクラスかな?」

 

 遠目だと誰だかわかりにくかったが、近づくにつれて顔が判明していく。

 それがよく見知った顔だとわかった瞬間、俺はその生徒に気さくに声をかけた。

 

「神室、よっす」

「げっ」

 

 げって言われた。凄く嫌そうな顔でげって言われた。

 泣きそう。

 

「坂柳ちゃんは不参加なんだっけか」

「あいつにこの試験はきついでしょ」

「確かに。クマとか出たら大変だもんな」

「クマは坂柳じゃなくても無理でしょ」

 

 そう言われるとそうだな。もし遭遇したら白波を囮にして逃げるか。

 

「そうだ、ほれ」

「何これ」

「さっきそこで見つけたキュウリ。あげるよ」

「どうも」

 

 できれば俺の手から食べさせてあげたいところだけど、神室が了承するわけがないので諦める。

 坂柳ちゃんならワンチャンあったんだけどな。

 

「じゃあ、俺はこれで」

「何しに来たの?」

「偵察」

「これが?」

「まあ、ほんとは神室に逢いに来たんだけどな」

「あっそ」

 

 相変わらず素っ気ない。でもそこが彼女の魅力の一つでもある。

 洞窟の中から知らない男子が出てきたので、変に絡まれる前に退散することにした。

 

「……福田くん」

「ん?」

「福田くんは、帆波ちゃん一筋じゃなかったの?」

「いや? 可愛い女の子はみんな好きだぞ?」

「サイッテー」

 

 いやいや、男なら普通だって。というかこの学校に可愛い女子が多すぎるのが悪い。実は芸能関係の学校なんじゃないかと今でも疑っているくらいだ。

 帰り道で先程収穫したキュウリの残りと、名前はわからないけどなんか食べられそうな木の実を回収し、俺と白波はそのままBクラスのベースキャンプへと戻った。

 

 

 *

 

 

「福田くん、おかえりなさい」

 

 Bクラスの拠点に着くと、予想外の人物に出迎えられた。

 椎名ひより。BクラスではなくCクラスの生徒だ。

 

「椎名? どうしてここに?」

「自分のクラスを追い出されちゃいました」

 

 椎名の悲しそうな顔を見た瞬間、俺の中に怒りの感情が湧き出した。

 Cクラスのリーダーは確か龍園とかいうやつだったか。

 おのれ龍園……無人島に女の子を一人ほっぽり出すなんて許せねえ……! 

 

「椎名さんは試験終了までうちで保護することになったんだけど、福田くんはどう思う?」

「もちろん賛成だ!」

 

 一之瀬さんの提案に俺は即答した。

 放っておけるわけがない。そもそも暴力万歳なCクラスと椎名は最初から合わなかったのだ。お前もBクラスにならないか? 

 

「十中八九スパイだろうが……」

「福田くんが許可したなら大丈夫かな?」

 

 こうして、初日にしてBクラスに新たな仲間が加わることになった。

 他のクラスならいざ知らず、Bクラスならば敵対関係の生徒であっても快適に過ごすことができるだろう。

 とはいえ椎名は一人で落ち着いて学校生活を送るタイプ。Bクラスに親しい間柄の生徒はいないらしい。

 一番交流があるのは俺っぽいので、俺が椎名係になった。

 マジで? いいんですか? よっしゃあ! 

 

「本が無いとやっぱり退屈か?」

 

 椎名の隣に腰掛けながら話し掛ける。

 

「そうですね。本当なら今すぐ船に戻りたいところですけど……福田くんがいるなら、無人島生活も悪くないです」

 

 えへへ、そう? 嬉しいこと言ってくれるじゃないか!

 

「よし! ならば俺が本を読む代わりに語り聞かせをしてやろう!」

「わっ、楽しみです!」

 

 椎名がニコニコと無邪気な笑みを向けてくる。

 ごめん。あんまり期待しないで。自分で言っといて何だけどクソみたいな話しかできないと思うから。

 

「昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがおりました」

「桃太郎ですか?」

「お爺さんは山にクライミングをしに、お婆さんは川にサーフィンをしに行きました」

「随分とアクティブな老夫婦ですね」

「お爺さんは手を滑らせて崖から落ちてしまいましたが、着地した場所に埋蔵金を発見しました」

「お爺さんは無事なのでしょうか?」

「ちゃんと受身を取ったから無傷だよ」

「ホッ、それなら良かったです」

「埋蔵金の中から元気な男の子が飛び出してきて、お爺さんはその男の子に金太郎という名前をつけました」

「まさかここで二つの物語が繋がるとは」

「それと時を同じくして、川でサーフィンをしていたお婆さんに危機が迫っていました──」

 

 そんな感じでアドリブ100%の読み聞かせをして、無人島生活一日目は終了した。

 ちなみにテントは一之瀬さんとも椎名とも別だった。悲しい。

 

 

 *

 

 

 無人島生活二日目。寝起きはかなり爽やかだった。

 無制限に貰えるビニール袋をテントの下に敷いたおかげだ。さすが一之瀬さん。やっぱり発想が天才的だぜ。

 さて、俺は今日も今日とて探索へと向かう。

 今日の相方も昨日と変わらず白波。椎名はインドア派なので置いてきた。一応捕虜的な扱いだしな。

 少し歩けば直ぐに周りから人の気配がなくなる。さあ、猥談の時間の始まりだ。

 

「なあ、体操服ってエロくね?」

「エロいね」

「特におっぱいがでっかい子がやばいよな。一之瀬さんとか」

「わかる。男子たちはよく襲わないでいられるよね。女の私ですらちょっと危ういのに」

 

 ほんとそれな。頑張って我慢している俺を褒めてほしいくらいだ。

 

「というかなんで一之瀬さんってあんな無防備っていうか無警戒なんだろうな。もしかして自分の魅力に気づいてないのか?」

「それはあるかも。私が告白するまで告白されたことないって言ってたし」

「は? マジで? ありえないだろ。一之瀬と同じ中学に通ってた男子はみんな不能だったのか?」

 

 天使や女神に対して邪な感情は向けられないとかそういうやつだろうか。

 確かにその気持ちはわかる。俺も一之瀬さんだけは『さん』付けで呼んでいるくらいだしな。

 でもそれとこれとは話が別だろう。エロいものはどうしたってエロい。

 

「でも、こうやって一緒に生活していると、ラッキースケベとか期待しちゃうよな」

「例えば?」

「えっ? そりゃあ……着替えとか覗いちゃったり、シャワー中の一之瀬さんが虫に驚いて飛び出してきたり、あとは……寝惚けて俺の布団に潜り込んできちゃったり?」

「さすがにないでしょ」

「まあ、他の男に見られるのは我慢ならないしな」

「そもそも私がそんなことさせないし」

「ガードが固いのはいいことのはずなんだけど、そのガードマンが一番の危険人物なんだよなぁ」

 

 一之瀬さんの好きなところを話し合いながら適当に歩いていると、川沿いに設立されたベースキャンプへとたどり着いた。

 生徒を見るにここはDクラスの拠点か。昨日と同じように知り合いに声を掛けにいく。

 

「櫛田ちゃん、おいっす」

「あれ、福田くん? おいっす〜」

 

 片手を上げながら挨拶をすると同じように返してくれる櫛田ちゃん。

 一之瀬さんに負けず劣らずのコミュ力お化け。少し会話をしただけで好きになってしまいそうな魅力を有している。

 

「なになに? 偵察に来たの?」

「そんなとこ。はいこれ。道中で採れた新鮮なミニトマト」

「わっ、すごい! でも貰っちゃっていいの?」

「もちろん。はい、あーん」

「あーん」

 

 ヘタを取って顔の近くに持っていけば、櫛田ちゃんはパクリとミニトマトを口に含んだ。

 俺の指先に櫛田ちゃんの唾液が付着する。お粗末さまです。

 

「えっ、なにこれ」

 

 俺たちのやり取りに呆然とした表情になる白波。

 

「ここじゃあ誰かに見つかるかもしれないし、もうちょっと奥の方に行こっか」

 

 櫛田ちゃんに手を引かれ、深い森の中へと移動する。

 四方八方から視線が通らない絶好の隠れ場所。櫛田ちゃんの動きが止まるなり、白波が困惑の表情のまま切り出す。

 

「えーと、その……二人は付き合ってるの?」

「あははっ、そんなわけないじゃん。白波さんったら面白い冗談言うね」

 

 泣いた。ちょっとくらいそういう対象として見てくれてもいいのに。

 どうやら櫛田ちゃんにとって俺は異性のカテゴリーに入っていないらしい。でも可愛いからギリ許す。

 

「無人島生活はどうだ? 疲れてないか?」

「んー、ちょっと疲れてるかも。肩揉んで」

「はいよ」

 

 もみもみと肩を丁寧に指圧していく。

 うーん、かなり凝ってるな。やっぱり胸が大きいのが原因なのだろうか。

 できれば直接揉みほぐしてあげたいところだ。一瞬だけなら手が滑ったとかで誤魔化せないだろうか。

 

「んっ……これがあと六日も続くんだよね……ふっ、私……んんっ、頑張れる、かな……?」

「ああ、櫛田ちゃんはいつも頑張ってるからな。偉い偉い」

「えへへっ」

 

 頭をなでなでしてあげると櫛田ちゃんは嬉しそうに表情を綻ばせた。クソ可愛い。

 タイミングを見計らって肩揉みを再開する。

 

「んっ、あっ、そこ……いいっ……!」

「なあ、櫛田ちゃん。なんか声がエロくない?」

「んふっ、き、気のせいじゃない……? あんっ♡」

 

 わざとだ! こいつ絶対わざとだ! 

 わざと俺の股間にダイレクトに効くような喘ぎ声を出していやがる! 

 

「ちょっと待て……これ、無人島生活の途中で性欲が限界に達したらどうすればいいんだ?」

「んっ、その辺でしちゃえばいいんじゃない……?」

「だ、ダメだよ福田くん! そんなことしたらポイント引かれちゃうかも!」

 

 うわっ、そういえばそうじゃん。環境破壊行為はペナルティあるんだっけ。今の今まで忘れてた。

 そんな理由でクラスポイントが減るとか不名誉もいいところだ。

 バレたら恥ずかしすぎて自主退学するレベル。

 何が何でも最終日まで我慢しなければ。

 

「そしたらDクラスにとってはプラスだね。んっ、くぅ、ああんっ♡」

「ちょ、わざとエッチな声を出すのやめて! 福田くんが我慢できなくなっちゃうから!」

 

 白波が櫛田を叱る。しかし櫛田が反省する意思を見せることはない。

 

「いいじゃん、出しちゃえば。こんな開放的な場所でしたらきっと気持ちいいよ?」

「ダメだよ!? 絶対に我慢してね!?」

「出ーせ♡ 出ーせ♡」

「出しちゃダメ! 出しちゃダメ!」

 

 なにこれ。もしかしてエッチなやつ? 

 なんかもうそういうプレイにしか思えなくなってきた。

 肩揉みというごく普通のマッサージをしていただけなのにどうしてこうなった。

 

「ふぅ、ありがとう福田くん。気持ちよかったよ。おかげでだいぶスッキリした」

「俺は全くスッキリしてないけどな。むしろ溜まりに溜まってる」

「あははっ、かわいそー」

 

 櫛田がグッと伸びをする。

 おっぱいぽよんぽよん。

 ダメだ、煩悩が頭から離れない。

 もうなんか白波のおっぱいですら魅力的に見えてきた。

 

「最後にもっかいなでなでして」

「あいよ」

「ついでにぎゅーっとして」

「ほらよ」

 

 ハグなんてした日にはもう終わりだ。

 俺は無心になって素数を数えた。

 おっぱいすごい。

 膝で股間ぐりぐりは犯罪。出たらどうする。

 

「私がずっと居ないことに気づかれたらまずいから、そろそろ戻るね。バイバーイ!」

 

 俺に特大のフラストレーションだけ残し、櫛田は自分のクラス拠点へと帰っていった。悪魔かよ。

 

「……福田くんって、もしかして女たらし?」

「失礼な」

 

 純愛だよ。

 

 人気のない森の中で間違って白波を襲わないように気をつけながら、俺たちもBクラスの拠点へと帰還した。

 

 

 

 *

 

 

 

 ムラムラ。ムラムラ。……ムラ? 

 性欲を持て余しながら無人島サバイバル生活を続けること七日目。ようやく長い戦いも終わりが見えてきた。

 

 あれから毎日櫛田のストレス解消に付き合わされたり、一之瀬さんや椎名の無自覚ドスケベに翻弄されたり、何を思ったのか白波に挑発されたりしながらも、何とか耐えに耐えてこの日を迎えることができた。

 

 残された俺の仕事はあと一つだけ。

 そう──リーダー当てだ。

 

「この用紙に各クラスのリーダーだと思う人物の名前を書いて提出してね。わからない場合は空欄でも構わないから」

 

 星之宮先生に渡されたのは敵リーダーの名前を書くための解答用紙。そして生徒の名前が記された各クラスの名簿。

 漢字がわからなかったり下の名前を知らなくて不正解になったらアホみたいだからな。それだとスーパー陰キャぼっちが最強になってしまう。

 同じクラスなのに名前を覚えられていないような影の薄い人物。漫画ならよくいるキャラ設定だ。

 

「ふぅ……」

 

 さて、そんなことはともかくとして──俺は名簿に意識を集中させた。

 リーダーを当てることができればクラスポイント+50。逆に外してしまうと-50。

 まさにハイリスクハイリターン。しかし外さなければリスクはリスク足り得ない。

 

「Aクラスは──『戸塚弥彦』かな」

 

 字を間違えないように丁寧に書く。

 次いでCクラスの名簿に目を通す。

 

「Cクラスは──『龍園翔』。うわっ、リタイアしたと思ってたけど残ってたのか。でもまあ俺のサイドエフェクトがそう言っているし、間違ってはないだろ。向こうが考えていた作戦については……後で神崎に教えてもらお」

 

 よしおっけー。

 次、最後にDクラス。

 

「Dクラスは──『綾小路清隆』。……誰?」

 

 いや、本当に誰だ? Dクラスの男子って平田くらいしか知らないんだよな。あと高円寺。

 基本的に女の子にしか興味ないのでね。

 でも、ここで名前が出てくるってことは、たぶん綾小路ってやつは要注意人物なのだろう。実は裏の支配者だったりして。今度顔でも見に行ってみるかな。

 

「あれ? そういえばDクラスも指名してよかったのか? 確か同盟とか結んでるんじゃなかったっけ?」

「それに関しては『リーダー当てはお互いにしていい』って事前に話し合ってるから大丈夫だよ。こうなることを見越してね」

 

 さすが一之瀬リーダー。見事な先読みだ。

 

「それじゃあ星之宮先生、これでお願いします」

「……はーい、受け取りましたー」

 

 何となく棒読みに聞こえたが気のせいだろうか。

 

 さて、俺が何をやったかというと、単純明快──ただ単に、リーダーだと思った人物を勘で選んだだけである。

 

 確率にして四十分の一。そう、()()()()()()()()()

 その程度ならば、俺が真剣に選べば外す可能性はまず皆無である。

 それが三連続であっても大した違いはない。

 

 どんな戦略も、どんな奇策も、適当にリーダー当てを行っただけのギャンブル野郎に全て崩壊させられてしまう──。

 これに関しては、俺がというより試験の内容が悪いよな。考えたのが教師か理事長かはわからないけど、運ゲーが好きな人が作ったのだろう。全く、趣味の悪いことだ。

 

「わー、ほんとに当たったねー」

「ズルしたみたいで罪悪感はあるが……勝ちは勝ちだ。今だけは素直に喜んでおこう」

 

 果たして、Bクラスはリーダー当てを全問正解し、無人島で行われた特別試験を圧倒的首位で終えたのだった。

 嫌な予感がしたからリーダーを直前で変更したけど、どうやら正解だったみたいだな。

 

 更に、クラスポイントを大量に手に入れたことによって、我々Bクラスは暫定だがAクラスへと昇格した。

 やったぜ。

 

 

 *

 

 

 ちなみに次の特別試験は船の上で行われる人狼ゲームだった。

 四十分の一を当てられたのだ。まさか()()()()()()を外すはずもない。

 結果、二回目の特別試験もBクラス改めAクラスは圧倒的一位を取ることに成功した。

 まさかの連続で運ゲー。俺が言うのも何だけど、試験を考えた人間はアホなのかもしれない。

 

 手に入れたポイントを捧げながら土下座すれば一之瀬さんとデートくらいはできるだろうか。

 そんな俺の邪な目論見はどういうわけか成功した。

 そしてデートには白波も着いてきた。なんでやねん。

 

 

 


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