転界録:リムル・テンペスト オラリオ編   作:るにゃは

14 / 14
第十二話「揺らぐ記憶」

オラリオの朝は早い。まだ陽が昇りきらないうちから、冒険者たちは武具を整え、迷宮都市の中央にそびえるダンジョンへと向かっていく。

リムルとベルも、例外ではなかった。

 

「ふわぁ……眠いです……」

 

ベルが目をこすりながらリムルの後ろをついていく。ファミリアに正式加入し、数日が経った。リムルの導きによって順調に経験を積み、少しずつ自信を取り戻しつつある。

それでも、朝はまだ苦手なようだった。

 

「ダンジョンは朝が一番空いてるからな。敵の数も控えめだし、慣れるにはちょうどいいんだ」

 

「そ、そうなんですけど……もう少し寝ても……」

 

「ほら、文句言ってるとまたバグベア出るぞ?」

 

「で、出ないでくださいぃぃぃ!!」

 

二人のやり取りは、どこか兄弟のようでもあり、リムルにとってもベルにとっても、心安らぐ時間だった。

 

 

 

 

 

 

第一層に降り立ち、モンスターを探して通路を進んでいたその時だった。

 

──ズンッ。

 

突如、頭の奥に響くような鈍い感覚がリムルを襲う。

 

(……なんだ? 今のは……)

 

《知覚異常の兆候を検出。原因不明。念のため魔素の循環を安定化しますか?》

 

(ああ、頼む……)

 

ふと、足が止まっていたことに気づく。前を歩いていたベルが、不安そうに振り返った。

 

「リムルさん……?」

 

「いや、なんでもない。ちょっと、懐かしい匂いがした気がしただけさ」

 

(……でもこれは……記憶? いや、違う。記憶の“断片”か……?)

 

頭の奥に、誰かの笑い声が響く。暖かな光に包まれた日々。強く、優しく、時に愚かで──それでも、心を通わせた仲間たちの影。

 

(……俺は、何を……)

 

気づけば、胸の奥が苦しくなっていた。理由もなく、涙がこぼれそうになる。

 

《……記憶封印領域に、微細な揺らぎを確認。接触原因不明。封印は維持中ですが、影響は徐々に表面に現れる可能性があります》

 

(……これが、“忘れている何か”か)

 

 

 

 

 

 

その日の帰り道、ベルはリムルの様子を何度も気にしていた。

 

「……あの、リムルさん」

 

「ん?」

 

「今日、やっぱり変でしたよね? なんだか、すごく寂しそうな顔してました」

 

リムルは少し黙ってから、歩みを止めた。

 

「……もし、すごく大事なことを忘れてるとしたら──ベル、お前ならどうする?」

 

「……僕なら……思い出すまで、諦めません。たとえ思い出すのが辛くても、大事なことなら、ちゃんと向き合わないといけないから……」

 

真っ直ぐな言葉だった。

 

リムルは思う。この少年は、迷いながらも自分の心に正直であろうとする。その姿は、かつて自分が守ろうとした誰かに、どこか似ている気がした。

 

「……そうか。ありがとう、ベル」

 

「えっ?」

 

「やっぱり、俺も──思い出さなきゃいけないみたいだ」

 

 

 

 

 

 

夜。静かな宿の一室。

 

ベッドに座ったリムルは、目を閉じて呼びかけた。

 

(シエル……俺は、何を封印された?)

 

《──主様、現段階では開示できません。ですが、近く……いずれすべてを思い出す時が来るでしょう》

 

(その時、俺は……)

 

《選択を迫られるでしょう。かつての世界に戻るか、それとも──》

 

(……今は、まだ選べないな)

 

《了解。ですが……主様。貴方の本質は、決して失われません》

 

その言葉が、どこか嬉しかった。

 

見えない霧の奥に、確かにある何か。いつかそれを掴むために──リムルは、前を向くと決めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版(作者:にゃすぱ@梨)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

天魔大戦が集結しやっと、平和が訪れたと思った矢先リムルが異世界転移してしまった。▼転移した先はなんとダンまちの世界だった!!▼転スラやダンまち最後まで読んでない方はネタバレすると思うのでそれが嫌な場合は読まない方がいいかと思います。▼⚠作者の都合上設定改変など色々起きますが、完全なif作品として楽しんでいただければと思います。そもそもクロスオーバーしてますし…


総合評価:811/評価:7.29/連載:20話/更新日時:2025年12月17日(水) 12:00 小説情報

ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか(作者:ラブコメは正義マン)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

聖杯戦争終結から一年。衛宮士郎は遠坂凛の下で、魔術の修行をしていた。▼だが、ある実験の最中に意識を失い――目を覚ますと、そこは神々と冒険者が集う迷宮都市オラリオだった。▼ダンまちとfateのクロスオーバー小説です▼Fateメンバーは基本的に士郎しか出てきません▼ダンまちの最新刊までのネタバレを含む可能性が有ります▼UBW後の士郎を想定▼描写されていない間では…


総合評価:3987/評価:8.54/連載:32話/更新日時:2026年06月13日(土) 20:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>