立派なショウグンギザミ目指します!   作:ルミナリー

56 / 56
火山はよいとこ一度はおいで

赤が、流れている。

 

 岩の隙間なんて生易しいものじゃない。地面そのものが裂け、その奥をどろりとした光がゆっくりと這っている。熱気が立ち上り、空気が揺らぐ。視界の端が歪んで見える。

 

「……ちけぇな」

 

 思わず足を止める。

 距離を測る。踏み外せば終わりだと、本能がはっきり告げてくる。

 

 しばらく、じっと見つめる。

 揺れる赤。弾ける泡。生き物みたいにうねる熱。

 

「ゲームでも思ったけどさ……」

 

 ぽつりと呟く。

 

「吹っ飛ばされてこれにドボンとか、どうなるんだよ……」

 

 一瞬、想像する。

 落ちる。

 焼ける。

 そのまま沈んでいく。

 

「……I’ll be back」

 

 

「いや戻ってこれねぇって!!」

 

 ぞわり、と背の内側が粟立つ。

 

「ヒェ……考えたくもねぇ……」

 

 軽く首を振って、意識を切り替える。

 ここはそういう場所だ。見えてる危険は避けられるが、ミスればそれで終わり。森みたいにごまかしは効かない。

 

「ちゃんと見て、ちゃんと動く……」

 

 自分に言い聞かせるように呟く。

 

「やりたくねぇけど、戦うことも考えとかねぇとな……」

 

 逃げるだけじゃ詰む。それはもう分かっている。

 

「さて……」

 

 少しだけ気を抜いて、視線を上げる。

 

「マグマ以外は、どんなもんかな」

 

 周囲を見渡す。

 岩、ひび割れ、焼けた地面。歪む空気の中、横に滑る影がいくつか見えた。

 

「……お、いるじゃん」

 

 ガミザミが数匹。岩陰を縫うように動き、無駄がない。

 

「普通に生活してんなぁ……」

 

 ぽつりと漏れる。

 こいつらにとっては、ここが日常か。

 

「……ってことは」

 

 少し視線を奥へ向ける。

 

「こんだけいるなら、いるよな……」

 

 思い浮かぶのは、成体の姿。

 

「ショウグン様、か」

 

「まぁ、ある意味同族……なのか?」

 

 自分で言って、少し引っかかる。

 

「いや、親近感ってなんだよ……」

 

 苦笑が漏れた。

 

 カチン、ともう一度鳴らす。

 その音を合図にするみたいに、意識が“この場所の本当の危険”へと向く。

 

 

 

 ――火山のモンスターといえば。

 

 まず浮かぶのは、やっぱりあいつだ。主任……いや、ウラガンキン。誰に言ってるんだ俺は、と内心で軽くツッコみながら、その姿を思い出す。

 

 転がる巨体。進路上のものを全部まとめて潰す、あの理不尽な質量。顎のストンプも同じだ。叩きつけられた時点で、形なんて残らない。

 

「いや、あんなもんに轢かれたら交通事故どころじゃねぇって……!」

 

 思わず声が漏れる。

 

「バラバラのぺちゃんこだよ……!」

 

 想像した瞬間、背の内側がぞわりと冷えた。

 

 

 

 で、ブラキディオス。

 あれは別格だ。粘菌に触れる時点でアウト、その上で殴られて爆破なんて食らったら――考えるまでもない。

 

「いや無理無理無理! 一発KOだろあんなん!」

 

 反射的に言葉が飛び出る。

 

「爆散だぞ爆散! 笑えねぇって……!」

 

 脚の先までじわりと強張る。

 

 

 

 さらに厄介なのが、バサルモスとグラビモス。

 あの岩みたいな身体、どうやって相手にしろっていうんだ。ハサミが通る未来がまるで見えない。突進も同じだ。あんな塊が突っ込んできたら、それこそウラガンキンと同じ末路になる。

 

「いや刺さるわけねぇだろ、あんな岩に……!」

 

 思わずぼやく。

 そして何より――熱線。

 

「いやあれ絶対ヤバいやつだろ……!」

 

 ゲームでしか見たことないが、誰にだって分かる危険。

 

「焼きガニどころじゃねぇよ……炭だよ、炭……!」

 

 乾いた声が落ちた。

 

 

 

 最後に浮かぶのが、ヴォルガノス。

 溶岩の中を泳ぐ魚。理屈が分からない。だが問題はそこじゃない。

 

「いや、あいつ魚だよな……?」

 

 ぽつりと呟く。

 一瞬、思考が止まる。

 

「……魚ってカニ食うよな?」

 

 嫌な想像が、勝手に繋がる。

 

「……あ、俺ダメなやつじゃんこれ」

 

 ぞわり、と全身が冷えた。

 

「普通に捕食対象側じゃねぇか……怖っ……!」

 

 

 

 しばらく何も言えず、ただその場に立ち尽くす。

 火山。改めて考えると、沼地よりもよっぽど質が悪い。環境も、生きている連中も、全部が一段階上に狂っている。

 

「……はぁ」

 

「エグすぎだろ、ここ……」

 

 それでも――

 

 視線を前へ向ける。

 

「……でもまぁ」

 

 カチン、とハサミを鳴らす。

 

「進むしかねぇよな」

 

 赤黒い大地へ、ゆっくりと踏み出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:50文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生ラージャンぶらり旅(作者:黒木箱 末宝)(原作:モンスターハンター)

 子供の頃に読んだ漫画の影響でサバイバル技術に興味を惹かれて三十年の少し。キャンプ中の事故によりこの世を去った俺は、気がついたらラージャンに転生していた。▼ 未知の現象によって転生し、未知だが馴染みあるモンスターハンターの世界に転生した俺は、ラージャンに転生した幸福を噛み締めながら、今日も焚き火を眺めていた。▼ これはラージャンに転生した男が、チートも無しに…


総合評価:3007/評価:8.54/連載:13話/更新日時:2026年02月28日(土) 19:11 小説情報

もふもふ雷狼竜(作者:APHE)(原作:モンスターハンター)

雷狼竜に転生したニンゲンがフワッフワになる話。▼なお彼は虫嫌いである。


総合評価:333/評価:9/連載:6話/更新日時:2026年02月01日(日) 10:00 小説情報

マガメスになった元ヒトが怨嗟を慰める話(作者:バンバ)(原作:モンスターハンター)

 怨嗟を慰める。▼ 響めく悲嘆を慰める。▼ 白き虎は、悲嘆に狂う雄を、慰める。▼ 完結に伴い、匿名を解除しました。(童貞マガド)


総合評価:8957/評価:8.97/短編:8話/更新日時:2025年04月14日(月) 23:44 小説情報

個性:ブロリーmad(作者:伝説の超ブロリスト(自称))(原作:僕のヒーローアカデミア)

オリ主(転生者)が個性『ブロリーmad』でヴィランを岩盤したりデデーン☆したりする話。▼


総合評価:2042/評価:8.17/連載:14話/更新日時:2026年05月12日(火) 00:00 小説情報

L社の技術を持っただけの擬態型一般人Aがキヴォトスで生き残るためにできること。(作者:D-T45-45-1919JP)(原作:ブルーアーカイブ)

▼諸君、俺は死にたくない。▼ここが都市だったら大人しく早めに死んだほうが幸せだっただろうが、あいにくキヴォトス。美味しい食べ物も、感動できる景色も、隣人との心温まる交流も、全てが可能な世界だ。▼だったら生きるしかない! このL社の技術を使って!▼でもどうすればいいんだ!?▼変なアブノーマリティを抽出したら即座にキヴォトス滅亡、しかし普通に働いたら銃弾の流れ弾…


総合評価:4231/評価:8.56/連載:32話/更新日時:2026年04月28日(火) 20:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>