記憶を失った杉下右京はポケモン世界で目を覚ます。

サスペンス要素として殺人描写があります。苦手な方はご注意ください。

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第1話

ある男性が目を覚ます。

周りを見回すと、どこかの施設の病室のようだ。

 

ガラル地方のジェントルマンの雰囲気を出す男性は眠る前の記憶を思い出そうとするが、何も思い出せない。

 

ミモザ「目が覚めましたか?」

右京「ここは一体・・・?」

クラベル「ここはオレンジアカデミーの保健室です。私はアカデミーの校長のクラベルと申します。彼女は保健医のミモザさんです。あなたはアカデミーの敷地内で倒れていたんですよ。」

右京「オレンジアカデミー・・・? 聞き覚えがありませんねぇ…。」

ミモザ「ご自分の名前は分かりますか?」

右京「僕の名前ですか? 僕は・・・、はて・・・、記憶がはっきりしませんねぇ…。」

ミモザ「何も思い出せないのですか?」

右京「ええ・・・。」

 

記憶の中で誰かが呼びかける声がする。

 

ウキョウ「ウキョウさん・・・。誰かにそう呼ばれていた気がします。」

 

クラベル「ミモザさん、彼は…。」

ミモザ「記憶喪失・・・でしょうね。名前すらも曖昧な様子だと、彼がどこから来たのか分からないかもしれませんね。」

ウキョウ「記憶喪失、ですか…。先ほどアカデミーの敷地内で倒れていたと仰いましたが・・・?」

クラベル「ああ、そうでした。その時のことを説明した方がよさそうですね。その時は・・・。」

???「おや、目が覚めたようですね。」

 

その時、保健室に男性が入ってくる。

 

クラベル「ああ、ヨネマさん。それが彼は・・・。」

 

クラベルは男性にこれまでのことを説明する。

 

ヨネマ「なるほど、記憶喪失ですか…。私はヨネマという者です。ポケモン博士をしていて、パルデア地方のポケモンの研究をするために遠い地方からやって来たんです。このオレンジアカデミーに宿泊させてもらいながら日夜フィールドワークをしていて、夜中に帰ってきたら倒れているあなたを発見したんです。」

ウキョウ「そうでしたか…。ところで、ポケモンというのは?」

ヨネマ「ああ、記憶喪失ならポケモンのことも忘れているんですね。ポケモンというのは、例えばこんな子とかがいます。」

 

そう言うと、ヨネマはボールを取り出して開ける。

ボールの中から何かが出てくる。

 

ロトム「ロトロト。」

ウキョウ「おや、これは!?」

ヨネマ「この世界にはポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれる生き物が数多く生息しています。私の研究目標はポケモンの力をあらゆる謎の解明に応用できないか模索することです。」

 

そう言うとヨネマはスマホを取り出す。

 

ヨネマ「例えばこのロトムの場合、高解像度カメラを搭載したスマートフォンの中に入ることで写真や動画から被写体の特徴を高速で分析することができます。」

 

ロトムがスマホの中に入ると、近くの花瓶に生けてある花を撮影し、画像編集アプリを起動して花弁や葉の特徴点をマークする。

 

ウキョウ「ほお! これは凄いですね! もしよろしければ、もっと詳しくお話しを聞かせてほしいのですが。」

ヨネマ「ええ、何時間でもお話ししますよ。」

クラベル「しかし、ウキョウさんはまだ目が覚めたばかりです。体の方は大丈夫ですか?」

ウキョウ「痛む場所はありません。それに、ロトムというポケモンの能力を見たらポケモンについての興味が沸いてきました。とてもじっとはしていられません。」

ミモザ「目立った傷もありませんし、本人が何も問題ないと言うのなら動いても大丈夫でしょう。」

クラベル「分かりました。では、ヨネマさん、ウキョウさんのことをよろしくお願いしますよ。」

ヨネマ「任せてください。」

 

 

 

 

 

その後、ウキョウはヨネマが研究室として使っている部屋に移動した。

 

ウキョウ「ほお、パルデア地方と呼ばれている地域だけでも百種類を軽く超えるほどのポケモンが生息しているのですか!」

ヨネマ「現在進行形で生息が確認されている種類でそれだけいます。イッシュ地方ではたった2年で生態系が大きく変わった例もありますし、過去や未来で確認される数も含めればさらに多くの種類がパルデアにいることになるでしょう。」

ウキョウ「しかもそれぞれが多種多様な能力を持っているんですね。タイプだけでも18種類も分類されるのですか! この世界ではポケモン同士を闘わせるポケモンバトルがメジャーな競技になっているようですが、自分や相手のポケモンの適性を見極めたり戦術に応じて技を覚えさせたりするのを考えるのは非常に大変でしょうねぇ。」

ヨネマ「ええ、私も研究員という職業柄、ポケモンはたくさん持っていますが育成や練習の手間を抜きに考えてもバトルの自信はありません。どのポケモンにどんな役割が適しているかを考えるだけでも時間がいくらあっても足りません。」

 

ヨネマ「そういえば、ウキョウさんは倒れていた時にポケモンもボールも持っていませんでしたが、ポケモンを持っていた感覚はありますか?」

ウキョウ「いえ・・・、これだけたくさんのポケモンの画像を見せてもらっても記憶が戻りそうな感覚はありませんねぇ。記憶を失う前の僕はポケモンとあまり関わらない生活をしていたんでしょうか?」

ヨネマ「まあ、ポケモンを持たない人も一定数いますから、特に珍しいというわけではありませんよ。」

 

ウキョウが資料を読み込んでいると、一匹のポケモンがやって来る。

 

ゼニガメ「ゼニゼニ。」

ウキョウ「おや? 君は何というポケモンですか?」

ゼニガメ「ガメガガ。」

ヨネマ「ああ、その子はゼニガメというポケモンです。数ヶ月前に本来の生息域から遠く離れた地域で生息しているのを見つけたんです。トレーナーに捨てられたのか、それとも別の理由で野生化したのか、とにかく保護した方が良さそうだったので私が預かることにしたんです。」

ウキョウ「ほお…。」

 

ウキョウはゼニガメを興味深く観察する。

 

ヨネマ「そうだ。せっかくなのでそのゼニガメをしばらく連れてみるのはどうでしょうか? ゼニガメは新米トレーナーが最初にパートナーとするポケモンとして人気がありますし、困ったことがあればいつでも私に相談できますから。」

ウキョウ「おや、いいのですか? では、お言葉に甘えてしばらくお預かりします。ゼニガメ君、よろしくどうぞ。」

ゼニガメ「ゼニゼニ!」

 

 

 

 

 

それから数日。

ウキョウはオレンジアカデミーの一室を貸してもらえることとなり、ヨネマのフィールドワークに同行したり、記憶を失う前の手がかりを探してたりしていた。

 

数日経ったある日、ウキョウはヨネマと共にテーブルシティを散策していた。

その時、事件が起こる。

 

女性「キャアアア!!」

ヨネマ「今の悲鳴は!?」

ウキョウ「こっちです!」

 

ウキョウとヨネマが悲鳴が聞こえた方へ走る。

人気のない路地裏に数人の人たちと倒れた人がいる。

倒れた人の周りには赤い液体が広がっていた。

 

ウキョウはその光景を見ると、倒れている人に近づこうとする人とヨネマを制止し、一人で倒れている人に近づく。

慣れた手つきで倒れている人の首に触れて脈を取る。

 

ウキョウ「・・・残念ですが、亡くなっているようです。警察に通報してください。」

 

その後、警察が来て現場にいた人たちやウキョウとヨネマは事情聴取を受けることとなる。

 

イサビ「パルデア警察の刑事イサビです。あなた方が第一発見者ですね。いくつかお聞きしたいことがあります。」

ヨネマ「あの・・・。」

イサビ「どうかされました? ・・・そういえば、第一発見者は5人と聞いていたのに一人足りないですね?」

ヨネマ「もう一人はあちらに・・・。」

 

ウキョウ「ここ、指紋がついています。しっかり写真を撮ってください。」

警察官A「え? あ、はい。」

ウキョウ「この包丁が凶器でしょう。そしてこの焼け焦げたものは合羽ですね。返り血が衣服に着くのをこれで防いで燃やして処分したのでしょう。」

警察官B「そうなんですか?」

ウキョウ「君、遺体に慣れろとまでは言いませんがそんな状態ではまともな捜査はできませんよ!」

警察官C「そんなこと言われても、殺人事件は初めてなんですよ・・・。」

イサビ「ちょっと! あんた何してるの!」

 

イサビはウキョウを現場から追い出す。

 

ウキョウ「どうも頼りない人たちですねぇ。」

ヨネマ「そりゃあ、殺人事件なんて滅多に起きないですからねぇ。国際警察の専門チームぐらいしか慣れている人はいませんよ。」

イサビ「ああ、俺も長いことパルデアで刑事をやっているが殺人事件が起きたなんて臨場要請は初めて聞いた。それに対してあんたは慣れているようだな?」

ウキョウ「ええ、捜査の手法が頭に浮かんでくるんですよ。」

ヨネマ「記憶が戻ったんですか?」

ウキョウ「いえ、捜査のこと以外は思い出せないままです。」

イサビ「『記憶が戻った』?」

ヨネマ「ああ、ウキョウさんは記憶喪失なんですよ。」

 

ヨネマはイサビにウキョウのことを説明する。

 

イサビ「記憶喪失ねぇ…。俺としては、あんたが犯人だから遺体に慣れてる可能性の方があり得そうだが。」

ウキョウ「たしかに、捜査する側はその可能性もしっかり考慮するべきですねぇ。もっとも、僕とヨネマさんはずっと街を散策していたので防犯カメラを調べていただければアリバイは証明されるでしょう。」

イサビ「後で調べておこう。それじゃあ、そっちの人たちも一緒に遺体を発見した時の話を伺おうか。」

 

遺体を発見した時に現場にいた人たちから話を聞く。

 

ヨウ「私はヨウと申します。殺されたヒガーシャさんからお金を借りていて今日返す予定だったんですが約束の時間になってもヒガーシャさんが来なくてこの方々と一緒に探していたんです。」

ウキョウ「ミツハニーを連れているんですね。他にポケモンは持っていないのですか?」

ヨウ「ええ、ミツハニーだけです。」

 

ギム「俺はギムと言う。俺もヒガーシャから金を借りていた。こっちの人もそうらしいぞ。それで、この人がヒガーシャの居場所を見つけたと言ってついてきたら死体を見つけたんだ。」

ウキョウ「あなたはパチリスを連れているんですね。」

ギム「ああ、ずっと一緒に過ごしてきたんだ。」

 

シャー「シャーです。僕のドータクンはエスパータイプだからね。人を探すのは得意なんだ。まさか死んでいたとは驚いたよ。」

ウキョウ「エスパータイプのポケモンを連れているといろんなことができて便利でしょうねぇ。」

シャー「まあ、いろいろ助けてもらっているよ。」

 

イサビ「ふぅむ、最寄りの警察署に移動してさらに詳しく話を聞く必要があるな…。」

ウキョウ「いえ、それには及びません。犯人はもう分かっています。」

ヨネマ「え!? 犯人が分かったんですか?」

ウキョウ「ええ、犯人はギムさん、あなたです。」

ギム「な!? なんで俺なんだ!?」

イサビ「どういうことです? 分かるように説明してください。」

 

ウキョウは燃やされた合羽を指す。

 

ウキョウ「犯行に使った合羽を燃やして処分しています。おそらく、あなたが連れているパチリスが電気で燃やしたんでしょう。ミツハニーにこのような処理方法は不可能ですし、エスパータイプのドータクンならもっと良い処理方法ができるでしょう。」

ギム「俺のパチリスがやったという証拠はないだろう! 犯人はここにはいない人かもしれない。」

 

ウキョウは次に遺体を指す。

 

ウキョウ「遺体には血液指紋が付着していました。被害者の血でスタンプされた犯人の指紋です。ロトム!」

 

ウキョウが合図を出すと、スマホに入ったヨネマのロトムがウキョウのもとに来る。

 

ウキョウ「失礼ながら、皆さんの指を撮影させてもらいました。ロトム、どうですか?」

ロトム「指紋の特徴点をマークして犯人の指紋と比較したら、ギムの指紋と特徴点が一致したロト!」

 

スマホのスピーカーを使ってロトムが説明し、画面に血液指紋とギムの指紋が表示される。

 

ギム「そんな…、指の模様で犯人を特定するなんて聞いたことないぞ! もっと決定的な証拠はないのか!」

ウキョウ「では、これならどうでしょう。犯人は返り血を浴びないようにしっかりと合羽を着ていました。しかし、一つだけ見落としていた場所があります。こちらをご覧ください。」

 

ウキョウが指した場所には被害者の血が何かの模様を描くように地面に付着していた。

 

ウキョウ「犯人は被害者の血を踏んでいて、地面に靴裏の模様がはっきりと残っています。犯人の靴裏にはまだ被害者の血がこびり付いているでしょう。あなたが犯人でないなら、靴裏を見せてください。」

 

ウキョウはギムを見る。

ギムはこれ以上言い逃れできないと判断し、逃げ出す。

ウキョウはボールからゼニガメを出す。

 

ウキョウ「ゼニガメ君、高速スピンです!」

ゼニガメ「ゼニ!」

 

ゼニガメがギムの足に当たり、ギムは転倒する。

 

イサビ「ギム、殺人容疑で緊急逮捕する。」

 

 

 

 

 

その後。

 

ヨネマ「いやあ、すごい観察眼でしたなぁ。」

ウキョウ「もしかしたら、僕は警察官だったのかもしれませんね。」

ヨネマ「それなら同僚の方があなたを探しているはずですね。」

ウキョウ「ええ、すぐにここまで辿り着けるといいのですが…。ところで、一つだけ気になることがあります。」

ヨネマ「何でしょう?」

ウキョウ「この世界では殺人は滅多に起こらないんですよね?」

ヨネマ「はい、よほど大きな理由がない限りはまず起きません。」

ウキョウ「ギムさんの場合は大きな理由だったのでしょうか?」

ヨネマ「そう言われると、たしかに妙ですね。」

ウキョウ「何か、嫌な予感がします。」

 

この後、パルデアでは殺人事件が何件も起こる。

それらの事件の裏に潜むのは・・・。

そして、右京がパルデアに来た理由とは・・・。




一発ネタなので続きはありません。
有志の方が連載版を書いてくださるとありがたいです。

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