鬼滅の刃・暁の剣士   作:八葉と黒神の剣聖

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沢山の贈り物

 とある晴れた日の朝、いつものように屋敷の前を掃除しながら夫を待っていると、宇髄君の奥さん達が訪ねて来た。

 雛鶴さん、まきをさん、須磨さんの三人は元くノ一で、宇髄君が15歳の時に奥さんとして娶ったらしい。

 時雨とも仲が良くて、その流れで私もよく一緒にお茶をしたりしている。

 

 

「おはようカエナさん。結婚おめでとう」

 

「おめでとうカナエ!」

 

「おめでとうございますカナエさん!」

 

「ありがとう皆さん」

 

 

 祝福の言葉を送って貰ったのでお礼を言うと、雛鶴さんが紙袋を渡してくる。

 中を見ると、私がしのぶに託した蝶の羽織の色違いの生地が入っていた。

 色は桃色と橙色で、私と時雨の髪飾りと同じ色だった。 

 

 

「よろしいのですか?」

 

「うん。これで素敵な羽織を作ってあげて」

 

「ありがとうございます」

 

 

 生地の大きさも彼の体格に合いそうだし、素敵な羽織が作れそう。

 どんな羽織にしようかしら。

 今からとても楽しみ。

 

 

「で?新婚生活はどう?」

 

「特に変わりませんよ。いつも通りです」

 

「時雨さんも同じこと言ってましたね。さっきお会いしたときに」

 

「あら。さっき会ったのですか?」

 

 

 須磨さんに聞いてみると、丁度任務から帰ってくる時雨とあったらしく、宇髄君が『派手に祝ってやるから飲みに行くぞ!』と、いつも飲みに行っているお店に連行したらしい。

 

 

「私は止めたけど天元様がね。最近は忙しくて飲みに行けてないからって強引に」

 

「私は構いませんよ。あの人もたまには羽目を外さないと」

 

「それに酔ってくれた方がカナエとしても嬉しいんじゃない?手を出してくれるかもしれないし」

 

「っ―――!」

 

 

 まきをさんの言葉に一瞬ビクッとしてしまう。

 多分時雨の性格を考えての発言だと思う。

 皆から見た時雨は奥手で中々手を出さない性格に見えるかもしれない。

 けど…あぁ見えて意外と積極的な人だなんて言えないし、その辺りの事は私だけの秘密にしておきたい。

 

 

「で?実際どうなのよ?カナエが主導権握ってるの?」

 

「どうなんですかカナエさん!?」

 

「え…えぇっと……」

 

 

 ぐいぐいと迫ってくるまきをさんと須磨さん。

 元くノ一だから知りたいのか、周りに結婚している知り合いがいないのか分からないけど、熱心に聞いてくる。 

 私は助けを求めようと雛鶴さんの方を見ると、彼女はいつの間にか帰って来ていた時雨と談笑中で、私と目が合うと直ぐに傍に来てくれた。

 

 

「まきを姐さんに須磨姐さん。俺の奥さんを虐めないでよ」

 

「虐めていませんよ時雨君」

 

「そうだよ。ちゃんと愛しているか聞いてるだけだって」

 

「あ、あのねぇ……」

 

 

 流石の時雨も困った顔をしていたので、雛鶴さんが助け舟を出してくれたので、まきをさん達は大人しくなった。

 その後に、貰った生地の事を話すと、時雨は三人にお礼を言ってから宇髄君が先に帰ったことを伝えると、雛鶴さんが『また遊びに来るわ』と言って帰って行った。

 

 

「全くあの人たちは…ただいまカナエ」

 

「お帰りなさい時雨。お勤めご苦労様です」

 

 

 彼の手を握ると、時雨は握られたまま引っ張って、私は彼の腕の中に納まってしまう。

 私はそのまま体を預けると、時雨が私の頬に手を触れて、唇を塞いで来た。

 

 

「んんっ…もぅ。そういうのは帰ってから」

 

「……隙あらば襲ってくる人に言われたくないのですが」

 

「隙を見せる貴方が悪いかしら?」

 

 

 いたずらっ子の様な笑みを浮かべて抱きしめると、時雨の背後に箱を持った遥が居た事に気付き、直ぐに離れてその事を伝える。

 時雨は直ぐに遥の元に向かうと、何やら楽しそうに話し始める。

 確か遥は煉獄君と合同任務だったかしら。

 ならあの箱は彼から預かった物かもしれない。

 

 

「と言うわけなので、こちら煉獄君からです。本当なら直接持って来たかったようですが、おじ様が心配だと」

 

「だろうな。今度お礼言いに行くよ。折角だから母さん連れて」

 

「そ、それは控えた方が…いや、今のあの人の事を考えるとその方がいいのかな…」

 

「それに、杏ちゃんと鍛錬は為になることが多いからな。一度手合わせしたらいい」

 

「成る程…ではまたお会いしたときにでも」

 

 

 時雨と煉獄君は、子供の頃から一緒に鍛錬した仲らしい。

 桜さんと槇寿郎さんが同世代の柱ということもあって、今でもその関係が続いている。

 時々桜さんが煉獄家に行ったり、逆に煉獄君が弟君と遊びに来たりと本当に仲がいい。

 

 

「では兄さん。道場でお待ちしています」

 

「おぅ。昼前には向かう。また後でな」

 

 

 遥は一礼してから蝶屋敷の方に向かっていく。

 彼女も任務明けなのに、誰かさんに似てとても元気。

 元気は有り余ってるのはいい事だけど、ちょっと心配になってくる。

 

 

「さて…お風呂入って少し休んだら行くか」

 

「なら一緒に入りましょう」

 

「襲われるので却下。それに中々離してくれないじゃん」

 

「貴方こそ中々離してくれないかしら」

 

「……」

 

 

 時雨に言い返すと、彼は無言で異議ありと言いたそうな目をしてくる。

 残念だけどその異議は認められません。

 認めて欲しいのなら、もっと素直にならないと。

 

 

「指令が無かったら見回りして直ぐ帰ってくるから」

 

「うん。じゃあお風呂入って来て。私も準備して待ってるから」

 

「了解。待ってて」

 

 

 一緒に屋敷に入り、時雨がお風呂場に向かったのを確認してから、自室に戻って雛鶴さんから頂いた蝶の生地を広げる。

 しのぶに託した蝶の羽織の色違いで、とても丁寧に染色されていた。

 加えて生地もかなり丈夫な物で、簡単には切れたり燃えたりしないような生地。

 隊服に使われている物より丈夫そうだった。

 

 

「良い生地だな」

 

「あ…もう上がったの?」

 

「うん。やる事多いしね」

 

 

 お風呂から上がった時雨が、背中まで伸びた髪を拭きながら隣に座る。

 出会った頃は肩までしか伸びてなかった黒髪が、今では背中まで伸びていて、しかも女性顔負けの艶がある。 

 私に言われてからきちんと手入れしている証拠です。

 

 

「これで羽織を作ろうと思って」

 

「そっか。楽しみにしてる。それとカナエ、蝶屋敷に向かう前にやることある?」 

 

「やる事…そうね。特にないけど…そうだ。やって欲しい事はあるかしら」

 

 

 化粧箱を開けて、中から口紅と筆を取り出して時雨に渡すと、彼は受け取って手慣れた手つきで紅を筆に染み込ませて、そっと頬に手を触れて来る。

 

 

「いいか。絶対に動くなよ。動くと変な所に付くし、動こうとしても視えてるからな」

 

「動きません。動こうとしても抑えられるから」

 

 

 瞼を閉じて唇を差し出すと、時雨は優しく口紅を塗ってくれる。

 塗り終わると、軽く触れる様に口づけをしてから頬から手を離す。

 

 

「これで良し。じゃあ行こうか」

 

「うん。行きましょう」

 

 

 戸締りをしてから手を繋いで蝶屋敷に向かうと、時雨は直ぐに道場の方へと向かっていく。

 私は診察室の方に向かうと、中ではしのぶが桜さんに手首を診てもらっている所だった。

 

 

「どうしたのしのぶ?怪我でもした?」

 

「違うよ姉さん。昨日の時雨との稽古でさ、鬼に毒を打ち込む為の突き技を編み出そうと一緒に考えながら組手してたら、壁に思いっきり木刀刺してしまって。その時に軽く捻ったんだ」

 

 

 右手を挙げて見せてくるしのぶ。 

 手首が少しだけ赤く腫れていて、かなり痛そうに見える。

 ちょっと心配になってくるけど、しのぶの何かを掴んだ顔を見て、余計な心配だと感じた。

 それに、時雨がきちんと見てくれてるから、決して無茶はさせないだろうし。

 

 

「そうだ姉さん。こっちの屋敷の姉さん達の部屋に、お館様と悲鳴嶼さんからの祝いの品を置いてるから、後で見ておいて」

 

「分かったわ。それとしのぶ。毒を鬼に打ち込むって言ってたけど、どうやって?」

 

「その事なら、おじ様に相談してて。そろそろ来るはずだけど…聞いてますおば様?」

 

「今日来るって話よ。さっきあの人が飼ってる鷹が3羽飛んできてたから」

 

「ならもう来てるかもしれませんね。ちょっと見てきます」

 

 

 診察室を出ると、道場に向かったはずの時雨と鉢会う。

 お互い驚いてちょっと距離を取ってしまう。

 直ぐに謝ると、彼も『ちょっと不用意だったな。済まぬ』と謝ってくる。

 それと同時ぐらいに玄関が開いて、光鉄さんの声が聞こえて来たので直ぐに向かう。

 

 

「久しぶりだな倅。嬢ちゃんも」

 

「あぁ。元気そうだな父さん」

 

「遠い所からお疲れ様ですお義父さん」

 

「気にすんな二人共。それと…遅くなったが結婚おめでとう。祝いの品を持ってきたから、二人で飲みな」

 

 

 有名な銘柄の酒瓶を渡してくるお義父さん。

 祝いの品にお酒を選ぶなんて光鉄さんらしいと思ってしまう。

 

 

「ありがとう父さん。美味しく飲ませてもらう」

 

「せっかくだから今晩飲みましょう。二人でゆっくり」

 

「そうだな。指令が無ければだけど」

 

「こういう日に限って来るものね」

 

 

 けど、それだけ鬼の脅威があって、その数だけ時雨の力を必要としている証拠。 

 喜びたい反面、ちょっと頼り過ぎなんじゃないかと思ってしまう。

 柱の席が埋まっていたら、もう少しゆっくり出来て、二人だけの時間を多く作れるのに。

 でも……それは私の我が儘だから、胸の奥に閉まっておく。

 

 

「さて…しのぶに刀を渡してくるね。全く鉄珍の爺さんは……」

 

 

 ブツブツと小言を言いながら光鉄さんは屋敷に上がって奥に進んで行く。

 その様子を見ていた時雨は思い当たることがあるみたいで、『後で愚痴を聞くか…』と小さな声で行っていた。

 

 

「そうだ時雨。お館様と悲鳴嶼さんからお祝いの品が届いてるそうよ」

 

「っと…そういえば桔梗が言ってたな。確認に行こう」

 

 

 私達の部屋に移動すると、部屋の中には大きな箱が三つと小さな箱が二つ置かれていた。

 私は大きな箱を、時雨は小さな箱を確認することに。

 早速箱を開けると、悲鳴嶼さんの手紙と一緒に桜柄の着物が入っていた。

 

 

「綺麗な着物…こっちは小さな蝶が沢山。この箱は…あら。ブーツ?」

 

 

 滅多に見かけない珍しい靴。

 これは時雨宛ての物ね、あの人は草履じゃなくてブーツを履いてるから。

 昔は草履だったらしいけど、入隊してから膝下までのブーツを履いているらしい。

 気になって一度聞いた事があって、その時に彼は、草履より動きやすくて色々と仕込めると言っていた。

 短い刃物とか、治療道具とか。

 出しているところは見たことないけど。

 

 

「こっちは…時計か。かなり精密に作られてるな…。しかも二つ。見てみなよカナエ」

 

 

 小さな箱に入っていたのは手の平ほどの大きさの時計で、とても精密に作られていた。

 その時計を見ていた時雨は、とても懐かしそうな顔を浮かべている。

 こういう顔をするときは、決まって子供のころの思い出をお乱している。

 

 

「仕返しされたか…。アイツがあまねさんと結婚した時に、同じように送ってな」

 

「そっくりそのままやり返されたのね。それだけ嬉しかったのよ」

 

「だな…。はい」

 

 

 時計を一つ渡してきたので、こちらもブーツを渡して他の贈り物を確認し合っていると、襖が開いて光鉄さんが入ってくる。

 無事に日輪刀をしのぶに渡せたみたいだけど、少し疲れた顔をしていた。

 確か、かなり特殊な日輪刀って聞いたから、説明が大変だったのかしら?」

 

 

「お疲れ父さん」

 

「この程度で疲れるかよ。顔に出てるかもしれないが…っと。そうだ倅。手記を置いてあった部屋の奥から、鍵のついた細長い箱が出てきてな。何か知らないか?」

 

「鍵…?何も知らないけど…それに細長い箱って?」

 

「あぁ。お前の日輪刀より少し長いな。七尺程か?」

 

「長いな…。俺の刀は五尺程だし。何が入っているんだろう?」

 

「うーん…意外と日輪刀とか?」

 

 

 冗談で言ってみると、時雨は腕を組んで真剣に考え始めると、光鉄さんはお面を外して煙管を懐から取り出す。

 そのまま火をつけようとしたところで時雨が無言で取り上げた。

 

 

「日輪刀の線はありえそうだな。鍵については調べておこう。それとカナエ。煙管を吸おうとしたことを母さんに伝えておいて」

 

「任せて頂戴時雨」

 

「……(俺の唯一の安息が……)」

 

 

 無言でお面を付ける光鉄さんだけど、とても悲しそうな顔をしていた。

 吸いたい気持ちは分かるけど、ここは隊士を治療する場だし、小さな子も居るので我慢してほしい。

 

 

「よし…そろそろ見回りに行かないと」

 

「もうそんな時間か?相変わらず真面目なことだ。ちょっとは休め。里にも顔を出さんといけないだろ」

 

「里には顔を出すけど休むのは難しい。じゃあ行ってきますカナエ」

 

「はい。行ってらっしゃい」

 

 

 彼の右頬にそっと口付けをすると、彼は優しく頭を撫でてから見回りに向かう。

 その様子を光鉄さんは見ていて、時雨の姿が見えなくなると、小さくため息を吐く。

 

 

「やれやれ…折角結婚したってのにな。母さんの時は柱が埋まってたから一月ほど休めてたのに」

 

「一応休みの話は来ているみたいですよ。保留にしているみたいですけど」

 

 

 お館様や柱のみんなにも『せっかくだから休め』と言われているみたいだけど、現状を考えて保留にしているみたい。

 柱の席が埋まっていたら素直に『休む』って言いそうだけど。

 

 

「ま、お前達がいいならかまわんが。さて…桜と飲みに行くかねぇ…」

 

「お気をつけてお義父様」

 

 

 光鉄さんを見送ってから贈り物を持って屋敷に帰り、時雨の新しい羽織の制作に取りかかった。

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