急ぎで書いたのでワンチャン後で書き直すかも…今回はだいぶ短めです。
生暖かく焦げた匂いのする風がビルの隙間を吹き抜ける。
道路は割れ、建物は崩れた見るからに荒廃した街の中を一人の少女が歩いていた。
純白の衣を見に纏い、天使を思わせる清らかな装いはこの街ではあまりに美しく目立っていた。
法律はとっくの昔に機能を失い、治安が終わっているこの街で身なりの良い子供が一人、どうなるかは火を見るより明らかである。
実際彼女がここ数日間で襲われた回数は両手で数えきれない程でありあまりの多さにうんざりしていた。
そして、今日もまた一人身の程知らずのバカが下劣な笑みを浮かべ彼女に襲い掛かろうとしていた。
「へへ、自慢の顔を傷つけられなくなきゃ今すぐ金目の物を置いて行きな嬢ちゃん。」
そう言うと男はこちらに向かって近づいて来る。
それを見た彼女はまたかといった顔をした後、焦らず口を開いた。
「あいにくですが、今の私は何も持ち合わせていません。どうか他をあたってもらえます?」
それを聞いたチンピラが簡単に諦める筈もなく腕から棘を生やして見せつけるかのように彼女を威嚇する。
「状況が分かってないみたいだな、俺は異能持ちだ。抵抗しないのが身のためだぜ。」
「なるほど棘の異能ですか、しかし危ないですよ。しっかり見ないと自分を刺してしまいますから」
「ハッ何を訳のわからないことを、その余裕どこまで続くか見ものだな…覚悟しろよ。」
そう言うと男は腕の棘を彼女に向かって振り下ろす。次の瞬間、空中に鮮血が舞う。しかしその棘は一切の傷を付けることなくもう片方の男の腕を突き刺した。
「アガッ、いってぇぇぇ!…何がどうなってやがる、まさかお前も異能持ち!?」
「ええそうですよ、それよりも大丈夫ですか?早く止血した方が良いですよ?」
男は自分では勝てないことを悟り捨て台詞を吐きながら一目散に逃げ去った。
「クソッ!覚えてろー!」
男が完全に見えなくなった後、彼女は一人静かに呟く
「もう二度会うことはないでしょう。あなたは私に関する記憶を全て失うのですから。」
その声は誰にも聞かれることなく路地裏の奥に消えていった。
***
パンドラとして転生してはや一週間、襲って来るチンピラ共を返り討ちにしながらこの荒廃しまくったディストピア世界で何があったのかを聞き出すことができた。
まずこの世界に"異能"が現れ始めたのが今から20年ほど前。
中国で発光する赤子が生まれたことを起点に次々に世界中で超常の力を持つ子供が生まれた。
それと同時に異能保持者やその家族への差別や迫害が横行、勿論相手もただ黙っている訳もなく各地で争いが起こった。
ここまで来てやっと政府は重たい腰を上げたが時既に遅し、両者の溝はもはや修復不可能な所まで行っており、秩序が崩壊するのも時間の問題だったという訳だ。
そんな世界だからこそ治安の悪さは見ての通り、外を歩けば飢えた子供がゴミを漁り、死体を見かけることも多々ある。
普通の人間なら思わず嘔吐しそうな光景だが、今の俺は驚くほど何も感じない。
体に精神が引っ張られているのか、元々がクズだったのか… 俺からしたら前者であって欲しいもんだが考えるだけ無駄だ。
そしてこの世界にも魔王と呼ばれる存在がいるらしい。そいつの名はAFO、異能を与えたり奪ったりする異能というまさにラスボスが持つに相応しい力と言えるだろう。
今から10年前まではレジスタンスという反対勢力がいたらしいがAFOとの戦いに敗れ、AFOは今や裏社会の帝王として君臨しているらしい…はぁ、何負けてんだよ
万が一のためにチンピラ達から記憶消してて良かったーこんなところで身バレ防止に役に立つとは。
できれば会いたくないがエキドナが言っていたように俺の異能は生き残ることに特化したものだし最悪死ぬことはないだろう。
それに日本は広いんだ、そんな急に出会う訳もないしね(フラグ)
…なんて考えていると後ろから声をかけられた。
いや
まさかね…
「やあ、君が【虚飾の魔女】パンドラで合っているかい?」
「…ええそうですが、なぜ私の名前を知っているんですか?」
『いや、何でコイツ俺のこと知ってんだ!?確かに全員から記憶は消した筈…』
俺の心は荒れに荒れていたがパンドラの無表情フェイスがなんとかそれを抑え込む。
結果として同様を相手に悟られることなく乗り切ることができたが次に男から放たれた一言に彼女は更に驚愕することになる。
「君の戦いはこの目で見させてもらっていたよ、とても素晴らしいものだった。それより自己紹介がまだだったね、僕の名前はAFO今日は君をスカウトしにきたんだ。」
俺は内心、恐ろしく早いフラグ回収、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね…なんて考えながら目の前の男が明らかに自分の異能を狙っていることに気がついていた。
「なるほど、私の異能を奪いにきましたか…残念ですがお断りさせていただきます。」
俺が断った瞬間、先程まで浮かべていた笑みは消え去り、不気味なまでに感情のない顔を浮かべていた。
「なんだ気づいていたのか、まあ良いさどっちにしろ奪う予定だったし僕の物になるのを光栄に思うがいい。」
先程とはまた違い獲物を狙う捕食者のような獰猛な笑みを浮かべる彼はこの世界の全てが自分のものだと本気で信じている。人と呼ぶにはあまりに悍ましい存在である。
魔女としての本能か全身の至る所がこの男は危険だと告げている。それでも俺は恐怖するすることはなくむしろ興奮して薄っすらと口元が弧を描いていた。
なにせこの世界に来てから初めてまともに戦える存在に出会えたのだ。自分の知る
人間の原動力の中で好奇心に勝るものはない、もはや俺の中に逃げるという選択肢は存在しなかった。
「いいでしょう、争いは好みませんがやるからには全力で行かせてもらいます。どうか死なないでくださいね。」
「言うじゃないか、言い残す言葉はそれだけかい?」
【魔女】と【魔王】【最凶】対【最凶】の戦いが今、幕を開ける。