デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第44話:さあゲームを始めよう

「……ま、というわけで。五色島の上空の大穴は消え失せ、リバース・ドラゴンも活動を停止」

「あれしきで死ぬようなクリーチャーではないからな。だが、あれだけ痛い目に遭ったのだ、しばらくは大人しくしているだろう」

「結果的に全てまるっと解決したわけだねえ?」

 

 ──後日、理事長室にて。

 今回の事件の総括が行われていた。

 天津はと言えば病院に入院しており、そしてリバース・ドラゴンのカードも未だ健在。

 だが、あれから実体化する兆しは見せていないのだという。

 リバース・ドラゴンの死亡は天津の死も意味するため、現状では迂闊に手出しできないのだ。

 しかし、全てが終わってホクホク顔の理事長に反し──

 

「全ッッッ然、良くなイッ!!」

 

 ──澪音は猛獣のような顔で照陽に抱き着いていたのであった。

 

「ねえダーリン!! ワタシを差し置いて、ボルメテウスにチューだなんてどういう了見なのヨ!!」

「アレは仕方ないだろう!? 僕の意思でやったわけじゃないし……」

「……あれが人間同士で言う親愛を意味する行動であることは知っている。だが私達の関係ならば何も問題は無いように見えるが?」

 

 尚、対抗するようにしてボルメテウスも少女の姿で照陽の右腕に抱き着いている。

 

「問題しかないわヨ!! ちょっとココロ!! アナタからも一言、このハレンチドラゴンに言ってやってヨ!!」

 

 涙目でこころに訴える澪音。

 しかし、こころも不服と言わんばかりに口を尖らせる。

 

「……わ、私……照陽さんと同じベッドでお泊りしましたっ!!」

「ココローッッッ!?」

 

 完全に脳を破壊された澪音は部屋の隅で蹲ってしまうのだった。

 それに対し、呆れたように理事長は一言。

 

「君達……避妊はちゃんとしたまえよ」

「何か勘違いしてるかもしれませんが、本当に一緒に寝ただけですからね!?」

「お、追い越される……ココロと、ボルメテウスに、追い越されル……」

「あと、うちの六禍仙がまた実家に戻りそうな勢いなんだが? 君、フォローはちゃんとしておきたまえよ」

「えーと……澪音。後で一緒に行きたいところがあるんだけど、二人で行こうよ」

「行ク!!」

 

 目を輝かせて飛びついてくる澪音。

 単純すぎて逆に心配になる照陽であった。

 そんな彼らを他所に理事長はこころに問うた。

 彼女の中のもう一つの懸念、それは──

 

「それと今回、COMPLEXが再び現れたようだねえ?」

「シエルが言ってました。やはり、本物のクリーチャーと言うのは……そう簡単に死なないものなのかもしれません」

 

 ──島に再び現れた脅威・COMPLEX。

 今回のデュエルでも完全に倒した、という手応えが無かった以上──また現れるかもしれない、とこころは危惧する。

 

「うん。引き続き警戒を続ける必要がありそうだ。リバース・ドラゴンにも、COMPLEXにも、ね」

「また復活されたら堪ったモンじゃないですからね……」

「その時は私が斃してやるさ。そうだろう? 照陽」

「……もう二度と、会うのは勘弁願いたいけどね」

 

 うんざりするように照陽は肩を竦めるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──その後。

 照陽が澪音を連れて訪れたのは島の中央に座すセントラル・タワー。

 呼び出しを受けた相手は──他でもない。

 

「……来たか」

 

 ずしり、とした重い声を前にして照陽は立ち止まった。

 隣に立つ澪音も思わず息を呑む。

 そこに立っていたのは──鬼塚牙十丸。

 精霊を喪った、六禍仙の闇、その人であった。

 自分を優に超える巨漢であるため、思わず腰が引けてしまう照陽。

 だが、鬼塚の方はと言えば組んだ腕を解き、腰に当て──照陽の前に立つ。その顔は心なしか穏やかだった。

 

「大体の用事は見当がつきますが……身体の方は」

「俺の方は問題ない。今回の件でお前に礼を言いたかった──天戸照陽。ありがとう、天津を止めてくれて」

「当然のことをしたまでです。だって──デュエマで世界を滅ぼそうだなんて……そんなの許せるわけないじゃないですか」

「……さて。六禍仙とは元より、精霊使いが精霊に対抗するため組織した自治組織だった」

 

 鬼塚は──窓の向こうから五色島を見下ろす。

 

「それがいつしか、五色島での最強の称号になっていった……だがもう、六禍仙は居ない。居るのは、ボルメテウスの持ち主たる天津、そしてオマエの二人だけ」

「……ソ、ソッカ。天津は私達に勝って……六禍仙の頂点に立っタ」

「そして天津に勝ったことで──オマエは実質的に五色島の頂点に立ったことになる」

 

 鬼塚は再び視線を照陽に向けた。

 そして面白そうに肩へ手を置いた。

 

「……どうだ? 頂点から見下ろす景色は? オマエが──今、この島で一番強いデュエリストだ」

「……僕は、そう思いません」

 

 そして、それを──照陽は拒絶する。

 

「まだこの島で戦っていないデュエリストは沢山居ます。それに、精霊に選ばれていないからって弱いプレイヤーだとは限らないでしょう?」

「ならば、オマエはどうしたい?」

「もう一回、決め直せばいいんです。誰が一番強いデュエリストなのか──この島で!」

 

 照陽は高らかに笑い、指を天井に突き上げた。

 ぱぁっ、と澪音も笑みを浮かべた。

 

「そう! それ良い考えだワ、ダーリン!」

「精霊使いとか学年とか学校とか、そんなの関係無い。皆で競い合って、皆で頂点を目指す。勝って楽しい、負けて悔しい、それが──デュエマの本来あるべき姿だから」

「……そう言ってくれると思っていた。やはりオマエは──俺の思った通りの男だったようだ」

 

 何処か懐かしむように鬼塚は言った。

 

「だが──島の脅威が消えたわけではない。その為にお前に現状、全てを背負わせてしまうことになるのを辛く思う」

「ッ……ダーリン」

「大丈夫です。僕──ひとりじゃないですから」

 

 そう言って照陽は握ったカードに目配せした。

 その中に居るボルメテウスが「任せておけ」と言わんばかりにウインクする。

 

「──さて。問題はその脅威の一つだ。天津は死んだわけでもないし、ましてやボルメテウス・リバース・ドラゴンも消えたわけじゃない」

「……どっちかを殺してしまうと両方共死んでしまいますからね」

「天津はアメリカで不幸な事故に遭ったらしい。その際に──リバース・ドラゴンに出会い、命を助けられた。奴は一心同体だ」

「存じています」

「……ねえ、先パイ。そんなの今更蒸し返してどうするのヨ?」

「……一心同体ということは、リバース・ドラゴンの性質をモロにヤツは受けるということ。まあ、その何だ……何も聞かずについてきてほしいんだが……」

 

 照陽と澪音は嫌な予感を激しく感じながら顔を見合わせた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「熱血でネッケツゥゥゥゥゥゥ~~~~~~ッッッ!!」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 ──某時刻、五色島内某病院にて。

 全身大打撲で入院したはずの天津サクガミの病室に恐る恐る入った3人は恐怖することになる。

 個室の中にブチ込まれた天津の様子は──何とも語りがたい事になっていた。

 照陽は踵を返して出て行こうとしたが、鬼塚に肩を掴まれてしまうのだった。

 

「……あの待って下さい鬼塚先輩、これは一体」

「リバース・ドラゴンに取り込まれた天津の性質は逆転したんだ。その結果が──」

「おお、おお!! そこに居るのは鬼塚に……そして天戸照陽、白銀澪音じゃないかネッケツ!!」

「ネッケツってなに? まさか語尾なのそれは!?」

「ねえ、鬼塚先パイ……これ、完全に頭をやられてなイ?」

「……冷笑の対義語は……熱血だ」

「どういうことなの!?」

 

 恐る恐る青い顔でベッドの傍に立つ照陽。

 だが、やたらとキラキラした目で天津は照陽に語り掛けてくる。

 

「いやぁ、わざわざ見舞いに来てくれたのかネッケツ!! 君とのデュエルの後──俺は生まれ変わったような気分になってネッケツ!!」

「生まれ変わったっつーかもう別人では……?」

「兄貴の事で世界をブッ壊そうとしていた自分の愚かしさ、そして真のデュエルで他の人を襲っていた自分の愚かしさ、何より世の中のもの全てを冷笑していた自分の愚かしさを痛感したんだネッケツ!!」

「これもう一周回って尊厳破壊も良い所デショ……」

「冷笑なんて時代遅れッ!! 時代は熱血なんでネッケツッ!! ネーケツケツケツケツケツ!!」

「ネーケツケツケツってなに? まさかそれ笑い声なんですか? 正気?」

「ねえ、鬼塚先パイ……これ、治るんデスか?」

「……分からない。だが、世の為人の為を想うと……このままで良いのかもしれない」

「俺は退院したら、自分の過ちを正すための贖罪をしようと思うッ!! これも天戸君、オマエのおかげだネッケツ!! ネーケツケツケツケツケツッ!!」

「……僕は具合が悪くなってきましたよ……あの先輩、本当にもう、リバースドラゴンで悪さしたりとか」

「何を言っているんだネッケツ!! クリーチャーの力を人に向けたり、それで世界をブッ壊したりだとか、そんなのは冷笑の極みでネッケツ!! 時代は熱血!! これからはボルメテウスの力を世の為人の為使うでネッケツ!!」

 

 死んだ顔で照陽は鬼塚の顔を見た。

 

「……演技でもこのような振る舞いを見せるようなヤツじゃない。恐らく以前までの天津は……君達の話を聞く限り、ボルメテウスに食われた時に死んだのだろう」

「なんかもう……馬鹿げてきたワ……溜飲が下がっちゃっタ……」

「先ずは白銀澪音ッ!! 君に熱血的謝罪をしなければならないネッケツ!! 不本意ながらこの俺が強すぎるがばっかりに、君の精霊を殺してしまった事を心から──」

 

 次の瞬間、天津の顔面にはパイプ椅子が丸々突き刺さっていた。

 

「やっぱり冷笑が熱血に反転したところで、根がド腐れ野郎なのは変わりないわネ!! そのまま追加で全治2週間、病院で大人しくしてもらおうかシラ!!」

「……そうだね」

「今の衝撃で性格が元に戻ったりしないかが心配だが……」

 

 元に戻りませんでした。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──こうして、慌ただしい一日は過ぎていく。

 照陽は疲れ切った顔でベッドに突っ伏した。

 結局、澪音の同棲計画も御破綻になり(彼女は虎視眈々と今でも同棲のチャンスを伺っているが)、また静かな日々が戻ろうとしていた。

 

「……全く、大変だったよ今回は」

「すまなかったな、照陽。迷惑をかけた」

「迷惑だなんて思ってないよ。ただ──僕は一人じゃ何にも出来ない事が分かったかな」

 

 傍で励ましてくれた澪音、色々取り計らってくれた理事長、カードを貸してくれたシエルにこころ。

 

(後、言いにくいけどお金を貸してくれた円架……たっぷり礼を言わなきゃだ)

 

「照陽」

 

 ボルメテウスが──いつの間にか少女の姿で照陽の隣に寝そべっていた。

 白いシャツの姿で、ルビーのような目で彼を見つめている。

 中身がクリーチャーであることなど分かっているが、それでも女の子がそばに居る事に照陽は胸の高鳴りを抑えられなかった。

 

「私は……結局、オマエに助けられてばっかりだ」

「それは僕もだよ、ボルメテウス。僕が負けていなかったら……と思うと」

「もう良い。結局オマエは私を取り戻してくれた。それだけで十分だ」

「……でも、それじゃあ僕の気が収まらない。何でも一つ! 君のお願いを聞こう」

「良いのか? ……良いんだろうな。オマエは躊躇なく私に身体を捧げようとした。己の命の顧みなさに少々心配になるぞ」

「それはごめん……じゃあ、僕に出来る範囲だと助かるな」

「ならば一つ」

 

 照陽の腕を抱きしめると──彼女は言った。

 

「名前だ。照陽の決めた名前で呼んでほしい。ボルメテウスだと……天津のリバース・ドラゴンと被ってしまう」

「……名前? ……確かに。ボルメテウスがこの島には二体居るのか」

「ああ。それに、人間は親しい者を特別な名前で呼ぶという。私達の関係なら、問題ないと思うが?」

「……親しい、か」

 

 それもそうだ、と照陽は思い直す。

 一心同体。

 それ以前にずっと、物心ついた時から一緒に居たパートナーなのだから。

 少し考えた末に──照陽は呟いた。

 

「……武者……は《ヴァルキリアス》も武者だからな……やっぱり──これがしっくりくる」

「というと?」

「”ブイ”……ってどうかな」

 

 安直かもしれないけどね、と照陽は己の引き出しの無さを自嘲した。

 だが、これ以上にしっくりくる名前も思いつかなかったのだ。

 

「武者・ドラゴン「武偉」のブイで……ビクトリーのブイだ。僕の勝利は……君から始まる。君は──僕の勝利(ビクトリー)でブイだ」

「私は……照陽の勝利……か。ふふっ、そうか」

 

 機嫌良さそうに喉を鳴らしたボルメテウス改め──ブイは照陽の指に自らの指を絡める。

 

「……ならば、何度でも私が導こう。お前を──勝利に」

「うん。これから──よろしく頼むよ、ブイ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──それから、一周間後。

 

 

 

「──澪音。もう調子は戻ったのかい?」

「今更、貴方達に心配されるまでもないワ! 今日こそギッタギタにしてやるから、覚悟なさイ!!」

 

 

 

 観衆たちに見守られる中、デュエルテーブルで向かい合う照陽と澪音。

 ランクマッチへの参加権を賭け、二人は今日もデュエルに挑む。

 それを見守る観衆たちの中には、こころや円架の姿もあった。

 

「今日の白銀さん、すっごく仕上がってます……! シエルでも歯が立ちませんでした……!」

「おにーちゃーんっ!! がんばってーっ!!」

 

 声援を背に照陽はデッキを取り出す。

 その中には勿論、彼が最も信頼する相棒も入っている。

 

「ワタシはもう六禍仙じゃない。だけど──アナタのライバルである事には変わりないワ!! 勝負ヨ、ダーリン!!」

「ふふっ、やっぱり白銀さんはそう来なくっちゃ。ブイ──準備は良いよね?」

『ああ。今日もゼニス女の吠え面を拝むとしようか』

「ムキー!! あんたの正妻面も今日までなんだかラ!!」

 

 憤慨する澪音もデッキから5枚のシールドを並べた。

 今日もまた──無銘学園ではデュエリスト同士がしのぎを削り合う。

 

 

 

「──それじゃあゲームを始めよう──!!」

 

 

 

 ──第二弾:切札竜VS逆札竜(完)




此処までご愛読ありがとうございました!色々難産な今作でしたが、何とか此処まで書き切ることが出来ました。取り合えず、今作は此処で一区切りとさせていただきますが……デュエマでまた、何か書きたいとは思っています。ではまた会う日まで、さよなら、さよなら。
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