お兄さんをお助けするぞ!
そんな言葉が頭に響く
目の前の少年は堂々と自分にそういったのだ
史上最悪のヴィランである自分に向けて
頭も身体もふわふわとした感覚で自我も薄い状態、それが今の志村転弧の状態だった。だが『ある瞬間』自我が揺さぶられる何かが起こった。
本人は知る由もないが緑谷が爆豪に自分を譲渡した時である
そしてその揺さぶられて覚醒した意識で志村転弧は見ていた。爆豪の感覚を通じて決戦が始まっていることを、それが最後の局面に到達していることも、自分を狂わせた『オール・フォー・ワンの心臓』に自分自身が譲渡されたことも
譲渡が完了された瞬間、志村転弧は全てを壊そうとしたが、そもそもが精神体、しかも今は自分でも詳しいことはわからない状態であるため、どう動けばいいのかわからなかった。
このまま何もできないままなのか?
いいやそんな事は許さない
なによりも俺自身が許さない
何故なら俺は史上最悪のヴィラン
あいつらのリーダー
あいつらのヒーロー
「死柄木弔だ!!」
精一杯の咆哮を精神世界で叫んだ死柄木弔は
その瞬間、目の前が真っ白になった
「ごめんね極道くん!私たち!誰かの下に付くために集まってるんじゃないの!」
「は?」
彼の耳に聞こえたのは見覚えのある声、かつて行動を共にして大きな事を成し遂げた仲間の一人の声、だがありえないのだ、何故なら彼は死んだのだから
ヴィラン連合・マグネ
そう、志村転弧の耳に聞こえたのは彼の声、そして目の前に広がるのはあまりにも既視感のあふれる光景
そこは古びた倉庫だった。ホコリが舞い不衛生でただ一時的に選んだ場所でありながら、自分だけでなく仲間たちにとって歯を食いしばることになった場所
マグネが殺された場所
自分の周りにはかつての仲間たちがいる、死んだはずのトガヒミコもそこにいる
理由がわからなかった
『マグネ』『記憶』『治崎』『個性』『失敗』『計画』ありとあらゆる単語が志村転弧の中でごちゃ混ぜになり身体が硬直する。
だが
「なににも縛られずに生きたくてここにいる!」
「っ!」
マグネの声を聞いた瞬間、志村転弧の脳裏に浮かぶのは『その後の光景』個性を使って現在進行で治崎を引き寄せている。そして治崎の『オーバーホール』が発動される
マグネは死ぬ 上半身を吹き飛ばされて
それを認識した瞬間、志村転弧は飛び出した
今の現状を後回しにして
ただ目の前の彼を死なせないために
ただ仲間を救うために
「私たちの居場所は私たちが決めるわ!!」
「クソがっ!!!!!」
「え!!?」
志村転弧はマグネに体当たりをかましてその大柄な身体を押し倒した。マグネに触れようとしたオーバーホールの指が空を切る
他の仲間達も目を見開いてその光景を見ていた
「死柄木?」
「!」
マグネは何故いきなり?という顔をしており何が起こったのか分かっていない
しかし志村転弧に取って重要なのはそこではない
「生きてる、、、あ!」
志村転弧は思い出したように地面に五指を当てて個性を出して治崎に牽制しようとした。
だが
「発動しない!!?」
志村転弧の『崩壊』は発動しなかった
そしてその瞬間、現在の状況にフリーズしたものたちよりも早く動き出す彼の姿があった
「ハイカンチョー」ザクッ!!!
「あがぁ!!?!!?」
「「「「「「!?」」」」」」
殺し合いの空気なんて微塵も感じさせないあまりにもコメディチックなアクションと悲鳴が目の前で繰り広げられた
誰かが一瞬で治崎に近づきカンチョーをぶち込んだのだ
その誰かとは
「この人あの変な世界にいたからヴィランだよね?」
「なんでお前が!!?」
野原しんのすけだった
志村転弧がそれを認識した瞬間
「「!?」」
肉体が引っ張られるような感覚が全身に広がり目の前が真っ白になった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うおおおおお!!?」
現在、志村転弧は謎の空間に引っ張られるようなそれでいて下に落ちているような妙な感覚に襲われて身動きが出来ないでいた。
「いや〜〜〜〜ん☆」
そして目の前には自分と同じように落ちているのか引っ張られているのかよくわからない現象に巻き込まれていた野原しんのすけがいた
2人を客観的に見れば
【宇宙空間的な謎の空間に同じ方向に落下している状態】
「何だこりゃ!!?」
志村転弧がわけの分からなすぎる状況に声を出してしまう。さっきの光景は間違いなく【マグネが殺された場所と時刻だった】そして自分はいつの間にかそこにいた。周りにはあの時と同じ仲間たちがいた。しかし今回マグネは死ななかった。志村転弧の体当たりが彼を救ったからだ。
「っ!おいお前!説明しろ!」
落下しながら志村転弧はしんのすけに掴みかかる。しんのすけならこの理由のわからない状況の説明が出来るのでは?と思ったからだ。
「今のは何だ!?そもそもここは何だ!?夢なのか!?」
「、、、、、、、」
「おい答えろ!」
「お兄さん髪がブワってなってホウキみたいになってる」
「死ね!」
志村転弧がしんのすけをぶん殴ろうとしたその瞬間
「「!?」」
再び目の前が真っ白になった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「くっ!」
「ホホイ!」
2人はいつの間にか出現した地面に着地した。志村転弧はすぐに状況を把握しようと周りをキョロキョロと見渡す。そしてそこは森のなかだということが分かった。
目立つのは目の前にある『一軒家』
「これは」
「何か中で音がするけど、喧嘩?」
しんのすけが一軒家に近づく、志村転弧は考えなしの行動にムカつきを覚えながらも咄嗟にその後を追ってしまった。
そして一軒家に近づき窓からその中を覗き込む
2人が目にしたのは
【同じ顔の男たちが言い合いをしている現場だった】
同じ顔に同じ体格同じ声、まるで誰かが分身でもしているかのような光景、しんのすけが『分身の術!?』と興奮するなか志村転弧は目を見開いた
あまりにも知った顔だったからだ
ただ自分の記憶と違う点があるとすれば
『顔』に傷がないこと
「あ!危ない!」
「な!!?」
すると一人の男がナイフを取り出した
しんのすけは咄嗟に窓を破って一軒家の中に侵入
そして
「ハイカンチョー!」
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!?」
ナイフを持った男にカンチョーをしてそのナイフをはたき落とした
すると今度は他の者たちが突然現れたしんのすけに驚いたあと、『誰だお前は!?』という顔をして一斉に襲いかかった
一対多数であったが肉弾戦でしんのすけを倒すのははちゃめちゃに難しい
「クソ!何がどうなってんだよ!!?」
志村転弧は理由が分からないまま彼も一軒家に侵入、そして男たちと殴り合いを始めた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ!はぁ!はぁ!」
「カンチョーすれば楽なのに?」
「できるかあんなガキのやること!!」
しんのすけと志村転弧は男たちを全員ノックダウンさせた
そして2人はとある方向に首を向ける
そこには【椅子に縛られた男】がいた
「、、、、、、」
「お兄さん?」
志村転弧はその椅子に縛られた男に向かって歩き始めた。縛られた男は怯えた顔をしており突然現れた謎の男たちに恐怖していた
志村転弧が彼の前に立った
そして
「お前は必要な存在だ」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
それは彼にとって
孤独な彼にとって
不幸な彼にとって
話し相手がいなかった彼にとって
自分を増やすしかなかった彼にとって
心の底から欲しい言葉だった
「だから、自分を卑下するなトゥワイス」
「うぅ!!」
志村転弧が椅子の拘束を解きトゥワイスは涙を流した
その瞬間
「「!」」
再び目の前が真っ白になった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(また謎空間に来た!なんなんだよこれは!!?)
2度目の謎の空間に2度目の落下、しかし志村転弧なんとなく法則性を掴みかけていた。
かつての仲間たちの重要な局面に自分が現れている
そして助けている
何故か野原しんのすけもそこにいる
(また俺は誰かのところに行くのか!?そんなことして何になるんだよ!!?)
志村転弧は自分のやっている事が意味のあることだとは思えなかった。マグネもトゥワイスも死んだのだ。蘇りならまだしも今回は『過去に自分が駆けつける』というあまりにも現実離れした現状、夢や走馬灯と思うのが普通だった。
(あのガキは俺にはやりたいことがあると言っていた)
それは架空の未来世界の最後にしんのすけと話したあの時、それはしんのすけがこの世界に来た意味にも直結する重要なものだったが、どうにも思い出せない
(これが俺のやりたいことだってのか?都合のいい展開で自己満足するだけの夢を見ることが俺のやりたいことだったのか?)
だとすればこんな事は心底くだらないと志村転弧は吐き捨てる。既に終わった現実などどうにもならない、夢でいくら善行を積もうとも、命を救おうとも、なんにもなりはしないのだから
だが
「だけど」
マグネの時も
「俺は」
トゥワイスの時も
「いつの間にか」
考えるより先に身体が動いちまった
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「ヴィランがこちらに来ます!」
「子供達を『雲』に!」
園の外に出ていた園児たちとその保育士に注意喚起を促し避難の手助けをしているのは『インターン生』の2人
凶暴なヴィランが市内に侵入したのだ
2人はヒーロー志望としての責務を胸に最善で最適な接し方で園児たちに不安を和らげ素早く避難させようとした
「天気が崩れてきた」
彼の名は相澤消太
「よーし!元気に避難だ!」
もう一人の名は白雲朧
「ヴィランがこんなに早く!」
「しかもこいつデカい!」
しかし大型のヴィランは想定よりはるかに速く
「ここは任せなさい!」
「社長!?」
インターン先のヒーローが立ち向かうが、想定以上の強さに苦戦を強いられる。社長と呼ばれたヒーローが壁に叩きつけられ迫撃を加えようにヴィランの砲撃が放たれ建物を破壊し人を圧死させるほどの瓦礫がばらまかれた
それが運命の時だった
「きゃーーーーー!!」
園児たちと保育士の悲鳴を聴き白雲朧が自らの個性『雲』で落下してくる瓦礫から園児たちと保育士を守る
故に自らの守りが疎かになった
大きな瓦礫が白雲朧の頭上に飛来する。当たれば確実な死、一人のヒーロー志望の命が消える、それが『本来の流れ』
だがそこに『駆けつける者たちがいた』
「アクションキッーーーーク!!」
「「!?」」
ガシャン!と大きな音が白雲の頭上で響いた。そして白雲に誰かがぶつかりその場に倒れてしまう
「白雲!?」
相澤が駆けつけてその目にしたのは突然現れた二人の男
「ホイっと!」
一人は地面に着地したと同時にその隣で瓦礫の落ちる音がなった。単純なドロップキックで瓦礫の移動をずらしたのだ、そしてもう一人の男は白雲を庇うような形で覆いかぶさっていた
「君!!?」
そして白雲は気づいた。恐らく自分を守ろうとしてくれたその男の背中にいくらかの瓦礫が当たっていることに
「大丈夫か!?」
白雲は自分を助けてくれた男の顔を見た
何故かその男の目は見開かれていた
(黒霧、、、、、だよな、、、)
志村転弧は黒霧についてある程度知っていた。彼が脳無であることも、自分のために作られたことも、だが前の彼のことはあまり知らなかった。
だが志村転弧は直感でわかってしまったのだ
目の前のこの男が
この男こそが
長い間、本当の意味で自分を守り、自分に尽くしてくれていた存在なのだと
「ヴィランが来るよ!相澤先生!」
「先生!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後、ヴィランは倒された
相澤、白雲、そしてしんのすけが連携して打ち倒したのだ
「ありがとう!誰だか知らないけど助かった!」
「誰だか知りませんがありがとうございます」
「いや〜それほどでも〜」
「、、、、、、、、、」
しんのすけは照れ笑いを浮かべて志村転弧は静かだった
「あ!君!」
「!」
そんな志村転弧に白雲朧が話しかけてきた
「俺を体張って庇ってくれたんだろ!すげぇなアンタ!」
「、、、、、、、、」
「だから今度は俺の番だな!」
「!」
「何かあったら呼んでくれ!今度は俺がアンタを守るよ!!」
「ーーーーっ!」
私は死柄木弔を守るもの
その瞬間、再び目の前が真っ白になった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
再び落下 そして思考する この現象の意味を
(夢じゃないのか?確かな実態があるように感じるのは俺がそう思いたいから?ただ俺がそう有ってほしいと思ってるだけなのか?本当にそうなのか?)
マグネやトゥワイスとは違う自分が経験していない過去の出来事。黒霧の事をある程度知ってはいたが、あそこまで具体的で明確な状況なんて志村転弧は聞いていない、死亡した詳しい現場など経験していない志村転弧が再現できるはずもない。ならばなぜあそこまで再現できたのか?
「夢じゃ、、、ないのか?、、、妄想でもないのか?」
そして志村転弧としんのすけはまた地面に降り立った
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ひ、、、み、、こ、、ちゃん!」
「ハァイ」
一人のヴィランの命が終わろうとしていた
己の個性を使った輸血
そのヴィランは今まで数多の血を奪ってきた。そんな彼女が最後の最後で人に血を分け与えるという選択をしたのは、彼女を救ったヒーローの存在があったからだろう
意識が遠のいていく、身体が冷たくなっていく、友達の身体が温かくなっていく
これでいい、悔いはない、
そう思っていた時だった
「トガ!?」
「え?」
「ヒミコちゃん!?」
二人だけだったその場に『イレギュラー』である二人が降り立ったのだ
転弧は目の前に広がる光景に息を飲んだ。あのトガが人を救おうとしているなど想像もできなかったからだ、だが今は衝撃にフリーズしている暇などないと志村転弧は頭をフル回転させた
そして転弧は転がっていたトガの装備を手に取り
ザクッ!
針を自分の腕に刺した
「俺の血を飲めトガ!お前の足りなくなった血は俺のをやる!俺のがなくなりかけたら次はコイツだ!」
「おら!!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お兄さん遅い!」
「俺は血を抜かれながら走ってんだぞゴラァ!それに肉体だけでヴィランと渡り合えるチートと並走なんてできるかぁ!!」
「いや〜それほどでも〜」
「死ね!」
現在どんな状態かというと
しんのすけがお茶子とトガを抱えて走っている
そしてトガは現在、転弧の血を飲んで志村転弧の姿になっている
自分を変身させて血を分け与えられるならその逆も出来るということ
お茶子への輸血を終えた後に志村転弧の姿になり本物の志村転弧と装置で繋がり血を分け与えられている
そして本物の志村転弧は装置で血を抜かれながらしんのすけの隣を走っていた
2人を一刻も早く医療関係者に届けるために
「弔くん、、、なんでここに?」
トガが朧気な意識で転弧に質問を投げかけるが、肝心の転弧自身も現状どうなっているか分からないため答えようがなかった。
「黙っとけトガ、とりあえず今は、、、、」
転弧の頭に浮かぶのはある『可能性』
しんのすけと会話した謎の空間、そこで見せられた『タイムスリップした物語』そして現在感じている夢とは思えない現実感のある仲間たち
確証などない
情報も少なすぎる
答えなんてわかるわけない
だけど、だけど、、だけど
もしここが夢ではなく『現実』だとしたら
「野原しんのすけは別の世界の人間、、つまり異世界は実在する、、、そして『タイムスリップ』も実在した」
ならば
今、この場所は この世界は
「本物の『別の世界線?』」
それはあまりにも都合が良く
あまりにも強引で
あまりにもめちゃくちゃな思いつき
けど
「例えここが俺の妄想でも、目の前の仲間を見殺しにするのは違うよな」
「お兄さん!白衣来た人がいた!お医者さんかも!お~い!」
そして走り続けた先に医療のマークが入った簡易テントが広げられているエリアに出た
これで処置が受けられる
2人は助かる
「「!」」
その瞬間、真っ白になった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「次で、、、終わりかもな」
「お?」
志村転弧は直感で感じとった。次で最後だと、そしてその目にはもう困惑や混乱などなかった
「次は俺一人で行く」
「お兄さん、、、」
転弧の言葉にしんのすけは心配を顕にする顔をした
「勘だが、そうしなきゃいけない気がするからな、お前とはお別れだ」
「大丈夫?」
「ここまで連れてきたことには感謝してやる、、、そうだな、、、、、野原しんのすけ」
「ホイ」
志村転弧は少し考えたあと、しんのすけに質問した。どうしても聞きたかったことがあるからだ
「お前はあいつらを、、、ヴィランをどう思った?」
「何かすっごく面白い人たちだった!」
「、、、、、そうか」
例え人とは違うとも、それを長所と受け取り、その善性を信じるしんのすけの目は眩しかった。ただの考え無しと言われればおしまいなのだろう。しかし、それは彼らにとって本当に必要なものだったのかもしれない
「じゃあな、イレギュラー、、、野原しんのすけ」
「んじゃ!そういうことでぇ〜」
「オール・フォー・ワン」
一人の女性が殺されようとしていた。自分の首をつかみ、今にも殺そうとしているのは最悪の巨悪
「お前はオールマイトに負ける、、、必ずね」
だが今にも殺されそうになっている女性は不敵な笑みを浮かべて、オール・フォー・ワンを煽るように言葉を綴った
「だって、お前より俊典の方がイカれてる」
瓦礫の山で女は、、、、
志村菜奈はそういった
オール・フォー・ワンが力を入れる
これで終わる
その時だった
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!
「「!?」」
足元が『崩壊』していく
いや、正確には『崩壊』がオール・フォー・ワンに向かっている
何が起きているのか分からないオール・フォー・ワンはとりあえず志村菜奈を殺そうとするが
ドゴォ!
『崩壊』する地面に紛れて誰かが飛び出した
そして
「何か知らねぇが個性が使えるようになった以上!最大出力だ!!!」
手を地面に当てて全力でその場一体を『崩壊』させていく
オール・フォー・ワンは避けるために志村菜奈を手放した
放り出された志村菜奈を転弧が受け止めた
無事なのは『崩壊』を操れる転弧自身とその近くにいる志村菜奈のみ
「な、、、何が起こって」
「黙ってろ」
その瞬間、転弧は志村菜奈の顔をつかみ
一度『壊し』そして『治した』
個性伸ばしでの能力
志村菜奈は全身に負っていた大怪我が治っていることに信じられない様子だった
そして自分を治してくれた謎の男の顔を見る
目が合った瞬間
「お前は『家』に帰れ」
「ーーー!」
「そんで、、、、、しっかり『子供』を見張っとけ」
空中に避難していたオール・フォー・ワンがこちらに向かってくる
「あ」
「オラ行け」
そして志村菜奈を投げ捨てて逃げるように促した
転弧はオール・フォー・ワンに向かって両手を構える
「アンタがいれば、、、多少はまともに育つだろう」
転弧はオール・フォー・ワンに立ち向かう
例え現実だろうと夢だろうとどうでもいいのだ
ただ自らの自由な想いのために
「死ねよ先生」
そして恨みの籠もった目を向けて立ち向かう
ただしそれだけではない
負の感情だけしかなかったあの時とは違う
その目に宿るのは『想い』
執着とはまた違う決して揺るがすことのできない想い
「もう、その手を離すなよ、、、、おばあちゃん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「先生!どうしました!?」
「え?」
「なぜ涙を!?」
「え、、、、、いつの間に」
自分の目になぜ涙が溢れているのかわからなかった。今はヴィランとの最終決戦、泣いている暇などないと前を向くことこそが先決なのだが、何故かそれは止まらなかった
『オールマイト!聞こえるか!』
「塚内くん!?」
壊れかけのアーマードのインカムから旧友の声が響き耳を傾ける、そしてその声は志村菜奈のインカムにも響いている
『黒い巨人が!』
「「!」」
2人は20世紀タワーのほうを振り返った
そこで目にしたのは
黒い巨人が『崩壊』していく姿だった
まるで『彼』の個性が使われたかのように身体が崩れ去っていく
そしてそれと同時に
パァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
20世紀タワーの下から色とりどりの輝きが放たれたあと、出現したのは『巨大ロケット』
しんのすけがミラクルクレヨンで描き上げたロケットだった。その巨大ロケットは20世紀タワーに引っ付くように形を帯びていき、その噴射口から大きな音が鳴り響く、下にいた者たちが避難していくのを見ながら、インカムの塚内の声が響いた
『我々の勝ちだ!』
その声を聞きながら志村菜奈は崩れていく黒い巨人を見ながら呟くのだ。オールマイトが『終わったのか?』という顔をしながらその呟きを耳に入れていた
「、、、、、、、、、、転弧、ありがとう」
完結まであと2話