これはIS原作から多くの時間が経った後のお話……タイトルで大体お察し下さい……

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セシリアのメシがまずい

ここは一般的な居酒屋。飲み会が終わり、二次会の会場となったこの店であなたは同僚達と一緒に残りのメンバーと一緒にちびちびと酒を飲みながら他の同僚の合流を待っていた。

 

「いらっしゃいませー!」

 

 店員の元気な声が聞こえたので、出入口の方を見ると残りの同僚がいた。あなたは手を上げて、彼らを呼ぶ。同僚達はすぐにあなたを見つけ、こちらにやってきた。

 

「悪い。ちょっと遅れた」

 

 申し訳無さそうに苦笑いを浮かべる男の名前は織斑一夏。あなたとは付き合いの古い人です。

 あなたはそんな彼の様子を見て『ああ、いつものか』と思う。

 

「また嫁さんに電話か?」

 

 同僚の一人がそう言って彼を茶化す。彼は『ハハハ……そんなもんさ』と笑いながら答える。

 あなたは訳を知っているので、茶化した同僚に対して二次会を始めるように促す。

 

「ああ、そうだな。今夜はどんどん飲もうや!」

 

 そう言って、どんどん酒とつまみを注文する同僚達。

 

「気を使ってくれてありがとな」

 

 一夏は彼の隣に座って、小さな声であなたにお礼を言う。あなたはそう大したことじゃないと言って、水割り焼酎をちびちびと飲む。

 一夏もそんなあなたを見てか、日本酒を頼み、飲み始めるのであった……

 

 一人、また一人と同僚達は肝臓の限界に達し、自宅へと撤退していく。

 

「俺ももう帰るわ、二日酔いになりませんよーに……っと。お前等も酒豪なのは分かるが程々にな」

 

 そう言って、同僚が支払いを済ませて店から出た時にはあなたと織斑一夏しかいなくなってしまっていた。

 

「さてと……久方振りの晩御飯といきますか……」

 

 一夏のその一言で、あなたと一夏はちびちびと飲んでいた酒とつまみの注文から、ごくごく一般的な料理を頼み始める。

 通常ならば、この店では受付ないのだが、店員はにっこりと、しかし同情の意味も含めて注文を聞きいて受け付ける。

 

「さ、注文は済んだ。いつもの合言葉を言うか……」

 

 一夏の言葉にあなたは頷く。

 

「俺達メシマズ嫁を持つ男の会!」

 

「合言葉斉唱!」

 

『授かるのは!』 『メシマズ嫁!』

 

『外食が!』 『生命線!』

 

『愛故の!』 『嫁の暴走!』

 

『嫁が好きだから!』『言えない自分!』

 

『天使の微笑み!』 『悪魔の味覚!』

 

『俺らの願いは!』 『メシウマ嫁のみ!』

 

『それでも俺達!』 『嫁大好き!』

 

『メシマズ憎んで!』 『嫁憎まず!』

 

「以上、終了!」

 

 異様とも言える――最早一種の狂気を纏いながら、あなたと一夏は乾いた笑いをしつつも、やがて笑顔のままため息をつく。

 

「なあ……」

 

 一夏は彼に語りかけるように話をはじめる。

 

「なあ……

 なんでセシリアのメシはまずいんだろうな……」

 

 始まった。この飲み会後の食事――命を繋ぐ貴重な栄養における大懺悔会が……今日は彼がトップバッターのようだ。

 おもむろに、IS・白式で投影ディスプレイを表示させそこに画像を映す。そこには、料理が映っていた。それは『見た目』は普通のハンバーグだったり、肉じゃがなどの料理が映っている。

 

「なあ、みてみろよ。綺麗な料理だろ……食えないんだぜこれ」

 

そう言って一夏はあなたに語りはじめた……

 

   ■   ■   ■

 

 『一週間前』

 

 ここは閑静な高級住宅街。織斑一夏はIS学園での業務を終え、セシリアの待つ自宅へと帰っていた。

 セシリアと結婚式を挙げてから早数ヶ月。彼女とはお互いに仕事で一緒になれる時間は少ないものの、織斑一夏は十分に満たされた時間を過ごしていた。

 

 あの光景は忘れられないであろう。教会での挙式終了後、チャペルから出た一夏とセシリアが見たものは……

 

 IS学園関係者や元クラスメイト、各先輩方やシュバルツ・ハーゼの面々、幼馴染の姉や各国のIS操縦者達が思わずドン引きしてしまうほどに号泣しまくるいつものメンバーの姿だった。

 

「イチカ! セシリア! 幸せにね!」 「セシリア! 嫁を泣かせたら承知しないからな!」 と、嗚咽(おえつ)しながら花びらを撒くシャルとラウラ。

「一夏先輩! セシリア先輩! お幸せに!」 「一夏もセシリアも……私達のこと忘れないでね?」 と泣きじゃくりながらペーパーシャワーを撒く蘭や簪もまだマシとしてだ……

 

 ――問題はこの三人だった。

 

「一夏のバカァアア!! 私を選ばなかった事を、後悔するくらいいい男捕まえてやるんだからぁああ!!」

 

「ううぅ……グスッ…………エグッ……いち……ううぅぅ、グスッ……」

 

「一夏ぁ……私の一夏が……グスッ、私の可愛い一夏がぁ……ううぅ……」

 

 上から順番に鈴、箒、そして姉の千冬の三人が咽び泣きながらライスシャワーで二人を祝っている。この三人が一番周りをドン引きさせていた……

 

 ――その後のセシリアがブーケトスが始めようとした時にはピタっと泣くのを止めて、全員目の色を変えて戦闘態勢に移行したのには流石に吹かざるを得なかったが。

 

 ちなみに男性版ブーケトスとしてガータートスもあったが、参加者のほとんどは女性であり、数少ない男性も既婚者がほとんどだったので、ガータートスの参加者は蘭の兄である弾一人であった……

 

 ……と織斑一夏は過去の事を思い出していた。何故、彼は今になってそんなことを考えていたのかと言うと……

 

 ――織斑一夏は現実逃避を行なっていた。

 

 何に対しての現実逃避なのかと言うと……

 

 ――彼の目の前にある物――ハンバーグとサラダ、ライス、マカロニ、みそ汁である。

 

 それらは全部……『セシリア』の料理だ。

 

 かたや、中堅とはいえイギリスの貴族――しかも今勢いに乗る貴族の当主と、世界中のIS持ちを教導しに飛び回るIS学園所属の教師。そう簡単にはマイホームに戻れず、しかも二人同時になんて事はスケジュールをある程度調整すれば出来るものの中々難しい。

 織斑一夏はともかく、セシリアが特にだ。

 なので、マイホームに二人が合流する時には大抵の場合、織斑一夏が先に到着して、後からセシリアが帰ってくるという構図である。

 よって大抵の夕食は先に帰ってきた一夏が用意するのだが……

 たまにセシリアが先に帰ってくる事もあるのだ。

 そして、そういう時は『セシリア』が夕食を作ってくれる。

 

 その行為自体は一夏自身、彼女の自分に対する愛情がひしひしと伝わって来て、大変嬉しく思うのだ。

 美人で、しっかり者で、気遣いが良く出来ていて、頑張り屋で、守ってあげたい。

 そんな完璧に愛おしい彼女だが……唯一つの欠点があった。それは……

 

 

 ――『彼女の作る飯がまずい』なのです……

 

 

 織斑一夏はハンバーグ定食(命名)から視線を上げる。

 テーブルの向かいには両肘をついて、顎を手に当てて一夏を見つめるセシリアがいた。

 その目は期待に満ちており、にっこりと一夏に微笑む。

 

 一夏は生唾をごくりと飲み込み、腹をくくる。そして箸を持って両手を合わせて、「頂きます」と一言。

 これが、織斑一夏の覚悟を決める『いつもの』儀式である。

 

 改めてハンバーグ定食に視線を戻す。見た感じは特に何の変哲も無い、ただのハンバーグ定食だ。

 しかし、織斑一夏は知っている。それは哀れな獲物を誘い出すためのトラップだ。匂いと見た目で誘い出し、口に入れたらズドン! そういう部類なのだ。

 さながら、奴は食虫植物で俺は哀れな昆虫だな……と織斑一夏の脳裏に浮かぶ。

 

 しかし、男には……やらねばならぬ時があるのだ。

 そんな彼の挑戦が今、幕を上げる。

 まずはサラダとマカロニを一口づつ……うん。普通。

 ここからが問題。ハンバーグは最後まで取っておきたいので次はご飯……は案の定芯が残っていた……がお粥よりかはマシになったので良しとする。

 次は味噌汁。具はちゃんとワカメと豆腐、油揚げが入っている。今までの学生時代を含めた特訓の成果が出ていて思わず一夏は目頭が熱くなっていくのを感じた。

 ……だが、ここで感動していては嫁――セシリアの為にはならない。織斑一夏は心を鬼にしてそれを理性で押さえつけ、味噌汁を一口……

 

 ――やはり予想通りであった。

 

 見た目、具のチョイス共に問題無さそうな味噌汁だが、味の方は問題があった。

 

 ――薄い。

 

 とにかく味が薄すぎたのだ。味噌が少なく、出汁が無いか薄すぎたか……

 だがしかし、これでも十分な進歩だった。少なくとも味噌を一袋丸々使ったり、ハーブを入れたり等の暴挙に出ることはなくなったのだから……

 何かが彼の中でこみ上げてくるが、押さえ込み最後にメインディッシュのハンバーグにとりかかる。

 デミグラスソースは先程、サラダとマカロニの時に確認はしていた。特に問題は無かった。

 

 固唾を飲んで、箸でハンバーグを割る。ハンバーグは肉汁を出しながら問題なくは割れ、断面もしっかりと焼けていた。

 その様子にホッとしたのか一夏はハンバーグを口の中に……

 

 ――それがいけなかった。

 

 ひとくちハンバーグを口に入れるとぶわぁーっと広がるのは強烈な生玉ねぎ臭が彼を襲う。

 この瞬間、彼は悟った。

 

 ――繋ぎの玉ねぎ炒めてねぇ!

 

 まだまだ先は遠そうだ……と彼は思いつつ。この後の反省会に備えて、色々と思考を巡らせながら、一夏は食事を続けて行くのであった……

 

   ■   ■   ■

 

 ……と、一夏の話はここで一旦終了した。

 あなたはメシマズ嫁のセシリアをよくそこまで成長させたと一夏を褒め称える。

 

「よせよ……照れるじゃないか……

 でもな、真に称えるのは俺なんかじゃなくてセシリアかもな……」

 

 そう言って、一夏は遠い目をする。

 

「だってさ。セシリアは立場上そういうのには縁が無いからメシマズになってもそれは仕方が無い事だと思うんだ。

 そりゃもう学生時代は凄かったよ……もしかしたら福音事件の時や亡国機業との最終決戦の時よりも命の危機だったかもしれない……」

 

 今頃になってアルコールが回って来たのか一夏は語り始める。

 

「それでもさ……惚れた男にウマい物を食べさせようと、あいつは学園中の料理が上手い奴に教えて貰おうと頼んでたんだぜ?

 しかも恋仇の鈴にまで……」

 

 アルコールのせいか頬をほんのり赤くする一夏。

 

「ホント……あいつは凄いよ……そして当時の俺には釣り合えない程のいい女だよ……

 あの時の俺はホントにヘタレでなぁ……殴り飛ばして説教でもしたくなる程だよ……」

 

 ハハハ、と笑う一夏。

 

「えっ、そんなのは知ってた? そりゃそうか」

 

 と、ここであなたは夕食の後のことが気になり、彼に尋ねる。

 

「え? あの時の後……そりゃあ反省会。色々と問題点とその時のセシリアの行動をブルーティアーズが撮ってたからその様子を見ながらの講義だったな」

 

 一夏はその時の様子を事細かに教えてくれたので、後学の為にもメモを取るあなた。

 

「んで、その後はセシリアと一緒に……な?」

 

 ――知ってるか? 反省会の後のセシリアはすっごい甘えたなんだぜ。 もうそれが子犬みたいな可愛さで凄くクるんだよ……

 

 気を良くしたのか、反省会から『夜の』生活まで暴露しまくる――所詮惚気話に入った一夏。完全に酒が回っている。

 

 あなたはそれに呆れつつ、心の中で『チ○コもげろ』と思いながら、引き取って貰うためにセシリアに連絡を入れるのであった……




とりあえず、わりと正統派(?)な二次創作を頑張って書いてみた。
まあ、ぶっちゃけありきたりなネタだがな……他にも肉じゃがネタでも入れようかと思ったが力尽きますた。

※『嫁のメシがまずい』スレからパロディとして一部ネタがあります。
色々とヤバかったら消すかもしれんね……('A`)

おまけ
【セシリアのメシがまずい】を他のキャラに当てはめるとこうなる?
ラウラ:【ラウラのメシがワイルド過ぎる】
シャル:【シャルのメシが怖い】
鈴  :【鈴のメシがウマすぎてヤバい】
箒  :【箒のメシを改善せよ!】
簪  :【簪の和食がウマい】

とりあえず、俺が執筆時間的に疲れてくたばるな('A`)
作者過労死させちゃらめェ

できたら感想とか一言評価とかくれたら物凄く嬉しいです。
連載中の『IS No matter what fate』もよろしくね。

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