人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ユメ『セリカちゃん、大丈夫でしょうか…?』
アダム「少なくとも、人並みの感覚は今は取り戻している。しかしこれは対処療法に過ぎん」
(父やアロナに相談し、何か手を打たねばな…)
ユメ『はっ!?それなら早く、皆を助けに…!』
アダム「……いや、まだだ。下がれ、ユメ」
ユメ『!?』
アダム「皆の所に行く前に…やるべきことがあるようだ」
『えっ…ええっ…!?』
仮面ライダーの力を使い、悪夢から異なる世界のセリカを救い出したアダム、そしてユメ。
本来の目的はドギラゴンの救出、並びに皆への合流である。ここで足踏みはしていられない筈のアダム達の前に、更なる変異が起こる。
『あ、れは…』
「……」
悪夢の空より、浮かび上がる日蝕に似た太陽のような謎の存在。
『『『『『『『………………』』』』』』』
そしてその前にずらりと並ぶ、無機質かつ白一色に仮面をまとった男達。
皆が全て、同じ姿をした異質な存在達。
間違いなく、味方ではない。それは確か。
そしてそれらは…
『おお、おおお…!人の傲りよ、人の罪よ!原罪の化身たる愚か者よ!!』
怒りに震える言葉、呪詛をもって証明される。
『アダム・カドモン!藤丸龍華と共に、神に仇なす愚か者よ!!』
『貴様の傲り、亢ぶり!万死に値するほどに罪深い!』
『死だ!死をもって贖う他ないのだ、貴様は!』
口々と、アダムに向けて吐き散らされる呪詛。一瞬で黒く染まった周囲に、白の不気味な者たちがアダムをなじる。
『アダム先生!彼ら、私は知っています…!』
アダムとセリカを庇い立てするように。ユメが盾を持って立ち塞がる。
『あの人達、アビドスに嵐の神が来た時に…!セトの傍にいた人達です!』
「何…!?」
ユメは見ていた。セトの化身、荒ぶる嵐の神が現れしアビドス終末の日。
駆け出し、立ち塞がったその日に、嵐の神が荒れ狂う最中に彼等はいたのだと。
『オシリス…嵐の神を退けし何も知らぬ愚か者めが…』
忌々しげに、不気味な存在たちはユメと睨み合う。
『嵐の神、セト…それらは形持たず荒れ狂う正しき姿を持つ神!我等に福音を齎し、歪み果てた世界を一掃する筈であったのだ!』
『それをよもや、テクスチャに押し込められし不完全なオシリスが阻もうとは…!』
『理解できぬ、理解できぬ!そのような力はあり得ない、あり得ない筈だった…!!』
『ましてや!!死した筈の存在が蘇る、だなどと!生徒に堕した神の範疇を逸脱している!』
そして、傍らに立つアダムに白き者たちは叫ぶ。
『貴様だ!貴様こそが、正しき世界の在り方を歪めたのだ!』
『正しき世界、偽りの愚昧なる神がもたらした創造を!グノーシスの聖典が齎した筈の高次の存在、世界の在り方を!よりにもよって被造物の貴様が!!』
「グノーシス…貴様ら、偽神の勢力に連なるものか」
『驕るな───────!!!』
アダムの言葉に、その者達の怒りと剣幕は最高潮に達する。
『偽りだと!?偽りなのは貴様だ、アダム・カドモン!』
『間違いの世界、偽りの世界!それらを捨て、肉体を捨て、高次元…アイオーンへと至るはずだった我等!その世界!』
『それを導くはずだった神を殺した!貴様が!世界は、神は、人類はどれほどの停滞を齎した事か…!』
『『『我等は囚われている!!未だ低俗なる次元の肉体に!』』』
『進化せねばならんのだ…!この世界の全てを否定し、新たなる高次元へと!』
『それこそが真化!それこそが真理、宇宙の滅びを越え、我等の世界が至るべき姿!』
その言葉は支離滅裂なようでいて、アダムに一つの気付きを齎す。
「…偽りとはいえ神は神。忠実な司祭の一人や二人はいるということか」
グノーシスの言葉から、アダムは彼等の存在に当たりを付ける。
グノーシス主義。今作られている世界は愚かなる低俗な神が作り上げた不完全なものであり、肉体の軛から解き放たれ、高次の世界と真なる存在に導かれ至るべきという思想、経典。
要するに目の前の存在は、偽神の齎す世界こそを望んでいるということなのだろう。言動から察するに、凄まじいまでの憎悪を世界に懐いている事は察せられる。
だが、そんな事は…目の前の存在が望む世界の在り方など、彼にとってはどうでもよい事だった。
「貴様らに尋ねたいことは多々あるが、今はこれを尋ねねばなるまい」
そっとセリカを、ユメを庇い。アダムは白き司祭に問いかける。
「貴様らは生徒の…世界の敵か」
『『『『『『然り!然り!!』』』』』』
アダムへの返答は、肯定であった。
『我等は必ずや取り戻す!偽りと無為に満ちたこの世界を否定し、ありのままの全てがあった世界そのものを!』
『そして我等は、貴様の敵だ!アダム・カドモン!並びにテクスチャに根付いた人理を保障するカルデア、貴様の娘…!』
『汎人類史、並びにEDEN!貴様の娘たち、イヴと真なるリリンを否定する!!』
『これは宣戦布告だ!『鍵』と『王女』が、貴様を否定する日を心待ちにしているがいい!!』
それらをまくしたてる司祭達に、アダムも静かに拳を掲げる。
「貴様達の意見、宣戦布告は確かに受け取った」
そして、返礼として自らも力を示す。
「私は世界と、そこに生きる全てを愛している。それを脅かす全てが私の敵だ」
それはつまり、目の前の存在達もまた打ち果たすべき敵だということ。
故に。
「私は正しく、誠実に生きようとする全ての味方だ。誰にも、その人生を奪わせはしない」
敵であるならば。生徒を脅かすものであるのならば。
「覚悟しろ。一人の大人として、貴様らの理想は私が砕く」
暗雲立ち込める空を、アダムの決意が叩き割った。
『っ…!!いつまでも図に乗れると思うなよ、神殺し!!』
『忘れるな!いくら教鞭を振るい、教壇に立とうと!貴様は殺し奪う事で世を始めた殺戮者なのだと!!』
『驕り高ぶりし、神を殺した被造物めが…!!』
『貴様はその選択を、永劫後悔するだろう!!あの──』
最後に、司祭が口にした言葉。
『『偽りの先生』のように──────!!』
砕かれた天と共に、静かに消えていく不明なる司祭たち。
「………」
気にかける、気にかかる言葉は数多ある。
何故、あれほどまでに偽神に心酔するのか。
何故、あれほどまでに世界を憎悪するのか。
偽りの先生とは、一体誰の事か。
しかし、それは今考えることでは無い。
「ユメ、セリカと共に向かおう。私達の戦いは始まってすらいない」
『は、はい!アロナちゃんやパパ様と合流しましょう!』
疑問を振り払い、アダムとユメ、セリカは夢を駆ける。
女王と鍵。
その言葉が意味するものを、アダムには心当たりがある。
「アリス…そして、ケイか」
〜
アダム先生。
私は、あなたが大嫌いです。
〜
「ふふ…」
『アダム先生?』
そういえば、私は彼女に嫌われていたな。
まさか殺されるほどではないと、思いたいが…
「いや、何でもない。皆を助けに行こう」
『はい!あ、あの…』
「?」
『えへへ…とっても、格好良かったです!』
「…光栄だ」
少なくとも、目の前の生徒にカッコいい姿は見せることができた。今は、それだけでいい。
そう自身を納得させ…
アダム達は、悪夢を駆け抜けるのであった。
アダム「これは……」
オメガモン『アダム先生!』
アルフォースブイドラモン『もー!何処行ってたのさ!!』
アダムが見たもの。
それはデジモン達が懸命に戦う…
ドギラゴン【ゴギャアァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!】
緑色の、ドギラゴンの姿であった。