ソードアート・オンライン、通称SAOと呼ばれるライトノベルを皆さん知っているだろうか?恐らくアニメ鑑賞を趣味にしている人ならば誰もが聞き覚えのある作品かと思われる。
このSAOという物語を簡単に説明すると、主人公である桐ヶ谷和人、別名キリトがソードアート・オンラインという仮想世界の中で死んだら現実でも死んでしまうデスゲームを多くのヒロイン達と脱出をする。因みにこの小説では今時珍しく、キリトはハーレムではなく結城明日奈と彼氏彼女の関係になる。
そうして、脱出した後にも様々な「ソードアート・オンライン」やVRMMO(仮想現実大規模多人数オンライン)に関する事件に巻き込まれ、その度ヒロイン(決して結ばれないという枕詞が付く)と出会っていく感じだ。リア充砕け散れ。
…少し否定的に説明したが、俺はこの小説を一応全巻揃えている。物語自体は結構面白いのだ。キリトはともかくな。
なのでもちろん今日発売する新刊も買おうとは思った。というかしっかり発売する日にちを確認して本屋の開く時間も調べてから寝た。その後は当然熟睡だ。
ーーーそうして、今日起きた、と言うか今起きたのだが、何かがおかしい。
まず自分の部屋だ。置いてある物が全く違う、というか部屋の形も違う。ベッドから立ち上がる。当然ベッドの形もシーツの色も俺の寝た時と違った。
…と言うか俺、目線低くね?
そんな事を感じた俺は即座に机に立てかけてあった小さな鏡に目を付ける。
近づいて手に取ろうとして手が小さくなっていることに気付く。それに、何だか着ている寝巻きの色も違う気がする。
…そして、じわじわと俺に叩きつけてくる違和感に会心の一撃を叩き込んできた
……顔が!!違がう!!
特に髪の毛!何で茶髪と黄色の間みたいな色なんだよ!俺は日本人だ、黒髪だ!
それに瞳の色も黒じゃねぇし!
ーーーつまりそれは俺が誰かに成り代わってしまったことを意味していた。あははっ、何も言えね☆
うん、この俺の混乱状態を察して欲しい。朝起きたら別人、ネット小説じゃ良く見かけたけど自分で体験すると半端なくテンパるぞ⁉︎
……いや、冷静になれ、冷静だ冷静。落ち着けば視野が広がる。
………まあ、取り敢えずオッケー、現状把握をしよう。俺は誰か見知らぬ少年に憑依してしまった。現状把握終了。
っていやいやいや…。この説明だけじゃ何も分からないだろ。
そうか、この部屋を物色すれば良いのか。そすれば何の問題も無い。
まずはベッド、部屋の照明のリモコンと思われる物が置かれている。ただ窓から陽の光が漏れている為に今はあまり必要性は感じない。
…お、スマートフォン発見。これは結構な手掛かりだ。俺はガラケーだったからiPodでしかこういうの弄ったことなかったんだよな。
ロックは掛かってないようで、直ぐに待ち受けに入れた。ラッキー。
待受によると今は2022年の7月29日、6時6分らしい。夏だ。
…俺が寝た時はまず2013年だったはずだし、日にちは5月25日のはずだ。…どう言うことなんだ?
考えても分からないので、取り敢えず連絡帳を見てみる。
・親
・自宅
・兄
・学校
……………。
この少年、ぼっちだったのか。可哀想に…、俺が憑依している間に友達作ってあげるからな。多分。恐らく。
そんな彼のぼっちスマホの中身の情報を閲覧していく。動画を入れるアプリにはアニメらしき動画とゲームのプレイ動画しかない。…まあ俺もパソコンの中そんな感じだったから人のことは言えんが。
…お、LINEが隠れた所にあった。てか何でこれだけミュージックの括りの中にあるんだよ。普通はSNSだろ?
…俺はこの時気付くべきだった。彼の境遇を。
ーー友だち(40)ーー
公式アカウント(37)
母
父
兄
……俺はそっと少年のスマホの電源を落とした。
気を取り直して、今度は勉強机の上を捜索する。机の上には手掛かりっぽい物は置いてない。あえて言うならカレンダーだ。だが先ほどそれは把握したので用はない。
引き出しが備え付けられていたので、迷わず開けてみる。
中には白紙のプリントが重なっていた。
そこで一枚手に取ってみると、裏に何か書かれていた。と言うかテスト用紙だった。問題からして中学2年位の物だと推測できる。高校3年の俺からしたら懐かしいとさえ言える。
引き出しにあるプリントを全て出してみると、解答用紙らしき物も見つけた。なぜそうかと思った理由は単純に裏からでも赤ペンが透けて見えるからだ。
これでこのぼっち少年の名前が分かると思い、俺は容姿を表に返した。
【数学 氏名:新川 恭二 100点】
新川…恭二………⁉︎
この点数は素直に凄いとは思ったが、今はそれよりこの名前だった。
新川恭二と言えばSAOの5・6巻に出てくる悪役だ。彼はデスゲームであるSAOの中で快楽殺人犯だった兄と、もう一人の仲間と共にGGOというガンシューティングゲームのプレイヤーを現実と仮想を使い分け、何人も殺した。
そうしてキリトのヒロインを狙ったところで他ならぬキリトの手により警察へ御用となった経歴を持つ。
当然他にも色々あるのだが、それを説明すると長くなるので省略する。
そんな訳で悪役も悪役である新川恭二君なのだが、彼は高校になってからは落ちこぼれたものの中学校の時はかなり優秀な学生だったらしい。
親には家庭教師を付けられ、総合病院のオーナー院長である親自身も教えられていたと言う話も原作ではあった。
…だが、それはまあ良い。
中学の時も友達いなかったのかよ、と言うのも少し思ったがそれも今は良い。
ーーー問題は、俺はSAOの世界へ飛ばされてしまったという事実なのだから。
…俺の名前は原信也、18歳の高校生で受験生だ。
……のはずが、今なぜかSAOの悪役である新川恭二君(恐らく14歳)に憑依しました。どしよ。
…いや、待てよ?
考えてみりゃ新川君はいわゆるモブキャラだろ?つまり割と自由に暮らせるんじゃね?
仮にキリトとかに憑依したらアレじゃん、行動しなかったら死人が出ちゃうよな?
例えばヒロインの一人のシノンは新川君(俺)に殺されるし、メインヒロインである明日奈は須郷と言う変態に一生閉じ込められてしまうし。
…こう考えるとSAO、めっちゃ怖いなオイ。
だがその点【原信也】こと新川恭二(俺)はいつも通りに暮らしているだけでは周りに何も被害は無いし、気をつけていれば当社比10倍近く安全な生活を送れる。まあアレだな、某シューティングゲームだとイージーとルナティック位の差はあるだろうな。
……よし。
ーーーこれを理由に俺が普通の生活を送ることを決意したのは言うまでもない。
…まあそれはそれとして、これからどうすれば良いんだ?部屋出れば良いのか?親に合えば良いのか?兄のことをいつもどう呼んでるんだ?「ようラフコフの快楽殺人犯」とかで良いのか?んなわけあるか。
取り敢えずでポケットに入れていたスマホを取り出し時間を確認すると既に7時を過ぎていた。今日が7月29日と言うことを察するに今は夏休みなのだろう。だから時間には余裕はある…と言ってもこいつはいつも何時くらいに起きてたんだ?全く検討付かないんだけど。
とかなんとか言ってたせいでフラグが立ったのか、部屋の前から足音が段々近づいて来るのが聞こえる。
恐る恐るじっとしていると、扉の向こうからこんな渋い声が聞こえた
「おい恭二!もう起床時間は過ぎてるぞ!」
……………………えっ?
ドアを開けると何か髭面の渋いおっさんが居た。これが恭二君の父親…か?全くもって恭二(俺)の顔からじゃ似つかないんだけど。にしても凄い強面だ、これならヤーさんの総長と言われても違和感0だぞ。
「どうして今日は遅くまで寝ていた?」
うわっ、超怖い。何この迫力、厚型大画面過ぎてちょっと後ずさりしそうなんだけど。覇気持ってんのか?
それにも負けずキチンと返答を出す俺マジイケメン。…いや冗談ですよ?
「…ごめんなさい、おr…僕、ちょっと昨日は復習を遅くまでしてたから起きれませんでした」
…危ねえ、【俺】って言いかけた…。
けど確か原作でも話し方こんな感じだったよな?ただ俺には物凄い違和感しかないけど。いつも一人称は俺だし、口調もこんな柔らかくないしな。
だがそのかいが在ってこの答えに満足したのか、恭二の父は「あ、ああ。気をつけろ」と言って歩き始める。多分向かう先は朝ごはんのある、リビングだと推測。なので俺もその姿を追いかける。やったー許してもらえたー(棒)
短い廊下を抜け、階段を下り、またもや廊下を抜けた突き当たりのドアを開けるとそこには一般家庭のリビングがあった。テーブルがあってソファーがあってテレビがあって…とそんな感じで。
父(仮)は四つあるうちの一つの席に座るといただきますと言って朝飯を食べ始める。俺もそれに習って食べ始める。うん、美味い。ただのスクランブルエッグだけど。
つかさっきから思ってたんだが、この人病院の院長だろ?何で家がこんな小さいんだ?普通は豪邸とはいかなくとも、もうちょい大きく作れるだろ。
「恭二」
「……あ、はい」
突然呼ばれたからビックリした…
というかやっぱ違う名前を呼ばれるのは違和感しかないな。
にしても今度は何だ?
「今日は家庭教師の方は来られない上俺もこれから後20分くらいで病院へ行く。だから家にはお前しかいないがちゃんと勉強しろよ」
「分かりました」
ほうほう、それはそれは……超ラッキーだな。これを機にこの街周辺の事を調べる事が出来る。
後ついでにSAOの事も調べられるかもしれない。これはチャンスだ。
と言ってもまあどうせこんな暇、まだまだたくさんありそうだけどな。
「明日からは家庭教師の方が毎日来てくださる、だから気合い入れとけ」
ってふざんけな!自由束縛し過ぎだろ!
少しだけ高校の時、追い詰められた恭二の気持ちがわかった気がした。
「あ、そういや兄さんは?」
つい疑問に思ったことが口から出てしまう。兄の事をどう呼んでいたかは分からなかったが、まあ仕方ない。この呼び方で定着させよう。
「そういや恭二には伝えてなかったか。今日は身体の検査で病院に一泊している」
「そうなんだ…」
そういや原作でも体が弱いんだっけか?それで確か父親は早々に自分の経営する総合病院を弟である恭二に継がせることにして、期待を一身に掛けた結果がSAOの六巻なんだよな。その過程にもイジメや成績の低下とか色々あったらしいが、それでも殺人は肯定できない。何があっても、とは言う気はないが【新川恭二】の殺人動機は不幸な自分の人生に絶望した末だったはず。それで他人を巻き込んだのだから、それは通り魔と変わらない。俺は決して通らない道だ。
「じゃあ俺は病院へ行く。今日は帰れるか分からない、帰れても遅いから先に寝ろ」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
いつの間にか朝ごはんを食べ終わり服を着替え終わった父は俺の返答に頷いてドアから出る。
…これで俺は今日1日自由だ!
そんな事を考えつつ朝ごはんを早食いした俺は一人暮らししていた習慣で台所を借りて…と言う表現も変だが、台所で洗い物をする。食器は二人分、言うまでもなく俺と父親の分だ。…母はいないのだろうか?
分からないことを考えても仕方ないので、洗い終わったものを脇にあった水切り棚に丁寧に置いていく。壊したら叱られそうだからだ。
そしてさっきの道を逆流して恭二の部屋に戻る。この部屋、あんまり遊べるものが無いんだな。本とかどうみても中学の参考書だし、漫画が一冊もない。これじゃ暇が潰せない。
勉強机へ行き、机の引き出しをバンバン開けていく。これを見られたら強盗と勘違いされる可能性もあるが、まあ誰も居ないし大丈夫だろ。
先ほどは一番下しか開けてなかったので、今度は一段目から開けていき、中の物を見てみるとサイフや通帳などが入っていた。お、銀行カードと一緒だ。これはちょうど良い、今日は外に出ようと思ってたしな。
お金、大事。
残金を見ると財布は2万円、銀行カードに20万ほどあった。流石病院の院長の息子…と言うよりは使う機会が無かっただけじゃないか?
あんな束縛された生活じゃなかなか金使うシーンなんてなさそうだしなー。
そもそもこれから毎日家庭教師が来て学習とか普通に可笑しいだろ…。
まあ、そんな訳でお金と銀行カード、通帳を机の上に出しておく。
次に着替える為に衣装棚を除く。
…まあ、普通で安心した。確かに原作の挿絵では普通に服来てたから、予想通りっちゃ予想通りなんだけどな。
適当にあったパーカーとズボンを履く。今日は夏らしいので半ズボンの少し長いやつだ。
ついでに寝巻きのポケットに入れてたスマホを机の上に置いておく。外で絶対使うからな。
後は外に出るには家の鍵が必要だ。
なので勉強机の引き出しをまたもや探していると、大した物が入ってなかった二段目の引き出しの底が持ち上がるのに気付いた。
……どこのキラだお前は。
そうして持ち上がると中にはお目当ての物である鍵が入っていた。
….つまり、この鍵は親からくれた物ではないんだろうな。何しろこんなところに隠すくらいだ、多分親から鍵を借りて外出する機会があって、そん時に鍵屋で鍵を複製でもしたんだろ。まあそれは良い。
…それより俺の疑問はどうやってこの引き出しの底を作ったのかの方に向いているんだが。
恭二、恐ろしい子!
そうして外出する為の準備を全て終えた俺は財布と携帯を全てズボンのポケットに突っ込んで部屋から、あれよあれよと家から出た。忍び足で。多分第三者から見られたら不審者として警察コース真っしぐらだろう。
家の外は簡単に言えば住宅街だった。と言っても車の音的に直ぐそばに大きな道路が走っているのは感じた。絶対この地域二酸化炭素多いだろ。自然破壊はんたーい。
俺は家に鍵を掛け、先ずは俺は住所を確認する為に電柱を見た。
【本郷 四丁目】
…おいおいおいおい、つまりここら辺って確か東大とか伊勢丹とかがある場所だよな?都会の真ん中じゃねぇか!ふざけるな!
…すいません、実はさっきから車の音で分かってました。
そんな訳の分からないノリになりつつも大通りに向かって歩き始める。大通りはすぐに見えた。そしてそのまま道に進むと少し時間はかかったものの、今度は線路が見えた。
それを目線で辿って行くと駅が見えたので歩いていくと水道橋駅に着いた。
「水道橋ね……なら秋葉原にでも行くか」
そんな独り言を呟きつつ、少し道を逸れて銀行に入る。理由は単純、かっこいいから…では当然なく、ナーヴギアを買うためである。当然フルダイブゲームなんてオーバーテクノロジーは俺の居た世界には無かったからな、なら買うしかないだろ。うん。
因みにこれがもし俺の勘違いで、SAOの世界じゃなかったらこのお金はまた銀行に戻す所存でもある。ご利用は計画的に。
取り敢えず10万円程ATMから取り出し、水道橋から秋葉原へと電車で移動する。がたんごとんと進む電車の中は朝だからか、それなりに空いている。
そして到着。前にも来たことはあるが、やはり秋葉原は混んでいた。ましてや今日は夏休み、仕方のないことかもしれない。沢山のオタクがいますよ、ハイ。まあ別に構わないが。
因みに実は個人的には秋葉原にはあんまり良い印象は持っていない。特にあの客引きとか強引だしな。大阪のガールズバーにも匹敵するしつこさだ。恭二的アドバイスをすると、あいつらはこちらが無視を一貫してきめ込めると舌打ちをして別のターゲットの元へ行く。ソースは俺、まあこのくらいは処理できなければこういう場所を歩くことは出来ない。皆も試してみよう!
「ナーヴギア!ナーヴギアを4万8千円で売ってます!ナーヴギアは当店で!」
「ナーヴギア売ってるよー!5万円を切って何と4万7千円!こんな機会滅多にないよー!」
…にしても何か今日は売り子が凄い叫んでるな。まあそのおかげでここがSAOの世界だと分かったから良いけど。ここは剣とファンタジーの(仮想)世界だやったー。
下らない事を考えつつ安全を重視した俺は某家庭量販店でナーヴギアを買うことにした。お値段の方は5万と2千円、まあ仕方ない出費である。
ついでにソフトも見てると、SAOの発売予告がなされていた。予約分はもう完売しているらしい。流石の売れ行きである。今頃茅場さんはウハウハだろう。金とか興味なさそうだが。
…まあ、SAO本体を買うかどうかは今度悩むにして、次に今売られているナーヴギアのゲームで面白そうなのを適当に一本選んで買う。これも1万円、高い買い物だよ本当。
パソコンは部屋にはなかったが、まあ置く場所ないしスマホさえあれば大抵のことは出来るから良いかと結論づける。それに見つかったら捨てられそうだし。ナーヴギアは衣装棚にでも隠せそうだからそこに置いとくつもりだけど。
そうしてこのまま秋葉原観光をしても良いのだが、もし今の【新川恭二】の学校のクラスメイトに会ってしまったら少しマズイ、というかめんどくさい。
なので目的は果たしたから帰ることにした。
水道橋駅で降りた時に、まだ朝11時過ぎと言うことを駅の時計で確認、そこで一つ大事なことを思い出す。
…そういや俺昼飯とかどうするんだろう、と言う内容を。
家で冷蔵庫は覗いてないから昼飯あるかどうか分からないが、それでも家的にあるような雰囲気ではなかったしな…。それに外出はあまり許されてなかったっぽいから恐らく…自炊…か?
まあ俺も自炊は出来る、伊達に高校で一人暮らしはしてない。だけどそれとこれは別だ。こんな訳の分からない憑依してしまった状況下で呑気に自炊出来るはずない。かと言って昼ごはん食べないのは嫌だ。
コンビニ買うのはダメだ。なぜならそれを家で食べたらまずゴミをどうする。それにもし食べカスとかを気付かずに放ってしまって見つかったら今日外出してしまったことが見つかってしまう。
…じゃあ答えは一つ。[外食する]である。
ちょうど駅前にマクド○ルドがあったので、俺はそこに入る。一人で入るのに躊躇いは無かった。ぼっちで入って店内で食べるのは初めてだが。
……ぼっちって、辛いな。
一人で注文し、二人席に一人で座り、一人で食べ終わり、ナーヴギアとソフトの入った袋を持ちつつ片手でお盆の上のゴミを片付け、店内を出る。一人で。
…何か店の中の同情の視線が痛いんですが。友達?いないですが何か?
そんな乾いた笑いを心の中でしつつも家への帰路を辿る。にしてもこの辺って公園無いのか?あったら絶対ベンチで黄昏るのに。沈む太陽を見つつ、缶コーヒー片手に。…何か風情があるよな?
まあそんな悠長な事は言ってなれないのが現実だけどな。新川家は(恐らく)厳しいのである。
家へ帰ると俺はナーヴギアを衣装棚の奥へ突っ込み、底抜け引き出しに鍵と財布から4万円を取り出し中に隠す。もし財布を調べられても良いようにだ。小銭は…まあ衣装棚の服のポケットにでも入れておけば問題ないだろう。
そうしたら後はスマホを弄るだけだ。取り敢えず世間の情報をニュースサイトで見ていく。当然だが、知らないものばかりである。
こんな感じで憑依初日の時間は過ぎていく。
続かない(多分