貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る   作:しば犬部隊

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41話 男の指、えっど

 灰クソプレイヤーにとって、共通の認識が1つある。

 俺達はゲームにおいてはこの世界の全盛期を見る事が出来ないという点だ。

 

 絢爛たるミリタルナはゲーム開始時に魔族や他国との戦争、クーデターによる内乱で国は乱れ、やがて滅ぶ。

 

 神秘たるエルフのガラスの森も同じく、魔族の侵略によって荒れている状態でしか向かう事は出来ない。

 

 そして、魔術師の楽園にして、クレーター湖の真ん中に出来た街というロマンあふれるルラカナ。

 

 そこに至っては、プレイヤーが足を踏み入れる頃には既に滅びている。

 

 各地で手に入る魔術の説明文や、アイテムテキスト、作中で入手できる本や伝承で以てプレイヤーは魔術師の国というファンタジー溢れるロマンな地に想いを馳せていた。

 

 伝承の中で語られるルラカナの魔術師達も、”淵源”と呼ばれる魔術、ひいてはこの世の真理を探究する求道者たちとして描かれていた。

 

 滅びているからこそ、想像が掻き立てられる。

 灰クソプレイヤーはルラカナの魔術師にちょっと憧れていたのだ。

 

 で、そのルラカナの魔術師の実態は──。

 

「……ちんちんは見せられません。何故ならちんちんを見せる事は恥ずかしい事だからです。

 

「「「「「「わーおおおおおおおおおおおおお!! 貞淑!!」」」」」」

 

 バカなのか?

 バカ広い講堂の中心。

 

「くっ、ちんちんを見る事が無理なら──少し触ってみてもいいですか!!??」

 

「触らせる事も出来ません。何故ならちんちんを触る事はエッチな事だからです」

 

「「「「「「「「わーおおおおおおおおおお、えっち……!!」」」」」」

 

 バカだった。

 

 バカ質疑応答に応える度に、教室は大いに沸く。

 教師っぽい魔術師も興味深そうにメモを取りながらうんうんと頷く。

 やめちまえ、教師。

 

「あ、あの、じゃあ、手、手を握る事は、可能でしょうかっ!」

 

 次は黒髪三つ編み猫背の魔術師少女。

 嘘みたいな瓶底みたいな分厚い眼鏡をしている、委員長っぽい真面目そうな子だ。

 この子は比較的普通の──

 

「で、出来ればその後、右の頬を叩いて”誰がお前のような陰気な女と手を繋ぐか、豚め”と冷たく罵って貰う事は出来ますかっ!!??」

 

「特殊性癖はありませんでのお断りさせて頂きます」

 

「「「「「「「「「「わーおおおおおおおおお!! 優しい!!」」」」」」」」

 

 バカかもしれない。

 

「あっ、こ、断られたっ、うっ、うっ……ううっ……うっ、気持ちいい……」

 

 魔術学院はもう手遅れのようだ。

 月、落ちてもいいかもしれん。

 

『マスタァがグれた……る、ルラカナを護るって頑張ってたのに、お、おいたわしや……』

 

 そうだった、こんなバカでも彼女達は魔術師。

 1人1人が一騎当千の力を持った理外の化け物達。俺の平穏の為には彼女達に壮健でいて貰わねば……。

 

 学院に侵入したのがバレた事を穏便に済ませる為に、ここは……仕方ない。

 

「その、ほ、他に質問はないでしょうか?」

 

「「「「「「!!!!!」」」」」」

 

「待って、積極的、じゃない?」

「本に書いてあった男ってもっと、こう……お高い感じじゃなかった?」

「ミリタルナから輸入した春本だと、もっと生意気な感じだったよね?」

「え、でも、可愛くない? なんか、こう歩みよってくれる感じ、可愛くね?」

「昔の魔術師って、あんな可愛くてか弱い生き物を実験材料にしてたってマ?」

「うわ、ちょっと引くわ……」

 

 ひそひそ、ひそひそ。

 

「じゃあ、あの、質問です! か、彼女はいますか!?」

 

 桃色の髪のギャル。

 レナリアさんと登校していたのほほんな雰囲気のギャルだ。

 

「「「「「「「「っ」」」」」」」」」」」」

 

 ずん、と空気が重くなる。

 ごくり、誰かが唾を飲み込む音すら聞こえた。

 

「いえ、いません」

 

「「「「「「「「「「「「「!! わーおおおおおおおおお」」」」」」」

 

「じゃあ、その、ど、童貞、ですか?」

 

 一斉に静まる変える講堂。

 ……まあ、別にいいか。

 この世界では別に隠す必要も、恥ずかしがる事もない。

 

「童貞です」

 

「「「「「「「「「「WAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOO!!」」」」」」」」」

 

 拍手。

 物凄い拍手が響き渡る。

 勉強しろよ、なんの為に学校来てんだ。

 

 その後も色々なセクハラを受ける。

 そして、最終的には──

 

「あ、あの、やっぱり、普通に手だけ、繋いでいただけませんでしょうか!?」

 

「ヒュー! 委員長すげえゼ!!」

「流石、一学年最優秀生徒かつ、春本保有者ランキングトップ!!」

「私達が実は結構ビビッてプチセクハラしか出来ていないのに、かねてからずっとボディタッチ狙ってっぞ!!」

「やっぱ委員長しか委員長の資格はないね」

「ドスケベ委員長!! 最高だぜ!!」

 

 最悪の声援に押されながら再び三つ編みおさげメガネ少女が、おずおずと手を差し出してくる。

 

 めんどくさい事になりそうなので、断ろうとしたが──。

 

「……っ」

 

 ぷるぷると俺に手を差し出してくる彼女の手が震えている事に気付いた。

 もしかして、彼女は……俺が怖いのだろうか?

『違うと思うけどなあ……』

 いや、きっとそうに違いない。

 

 ルラカナにはほとんど男がいない。

 

 魔術師に非ずんば人にあらずを地で行く厳しい女性至上主義の国だ。

 

 そんな中、突如現れた俺という異物。

 本来なら恐怖や嫌悪の対象になってもおかしくない俺を、受け入れようとしてくれてるんじゃないのか?

 

 そうだ、そうに違いない。

 灰クソ本編であれだけ、意味深なアイテム説明文に語られていた魔術師が、こんなちょっとスケベな男子高校生みたいなノリの顔だけは良いギャル達のはずがない。

 

『そうかなあ……』

 

 そうに決まっている。

 流石にお前、ちんちんみせてとか、童貞ですかとか、本心で言ってるワケないだろ。

 あれは、俺の緊張をほぐす為に言ってくれたんだ。

 

『ほんとかなあ……』

 

 ラミィは納得いってないみたいだが、俺はもうそういう風に思う事にした。

 

「もちろん、喜んで。それだけなら、はい」

 

「わっ、えっ。えっ」

 

 早速、差し出された手をぎゅっと握る。

 そうだ、コミュニケーションに男も女もない。

 魔術師たちが俺の事を知ろうとしてくれているのなら、俺はそれに真摯に答えるまで──。

 

「うお、指なっが……」

 

「ん?」

 

「あ、いえ、なんでも、うひ。て、手、お、大きいんですね。うお、手の甲の血管えっど、あ、あの、この血管、さ、ささささささささ触ってもいいですか?」

 

「……は、はい」

 

 ぷにっ。

 震える指先、おさげ魔術師の細長い指が俺の手の甲を這うよう触る。

 

「むっ」

 

 いかん、少しくすぐったい。

 

「え、い、今の、あ、喘ぎ声? うお、男の子、え、え、え、え、えっど、うっ、ふう……」

 

 たらり。

 おさげ魔術師が、鼻から血を出して倒れた。

 

「おっと」

 

 間一髪で彼女を片手で抱きとめる。

 うわ、軽いし、細いし、小さい。きちんと食べてるのか?

 

「あの、大丈夫ですか? 鼻血が……」

 

「っえ? 私、倒れて……? え、ええ、ええええええ! だ、だ、抱かれてるっ!! 私、男の子に、今、抱かれてっ──あふん……」

 

 おい、気絶した。

 なんなんだよ、この子。

 と思っていたら、教室がめちゃくちゃ静かになっている。

 

「え?」

「待って、え? そういうサービスもあるの?」

「嘘……手のひら愛撫して……その後抱かれるって……」

「おい、もう春本よ? 目の前で春本よ?」

「……ちょっと、私行ってくるわ」

「え、ちょ、ずるい!! 私も!!」

 

「えっ」

 

 気付けば、なんか、列が出来ていた。

 そそっと列の先頭の魔術師が委員長と呼ばれていた魔女っ子を回収、長机の上に寝かせてしゅばっと戻ってくる。

 

 そして。

 

「あ、あの、わ、私、しょ、処女ですっ!! ど、童貞がタイプです! よろしくお願いします!!」

 

 赤い髪のスレンダーな魔術師。

 顔を真っ赤にして手を差し出してくる。

 

 ……ラミィ、これは?

『……うううん、手、つ、繋いであげれば? ど、どう、かな?』

 

 言われた通り手を繋ぐと、また三つ編みさんと同じように。

 

「うっわ。待って、指、長っ、ごつごつしてる……あっ、手首も骨が、浮き出て……えっど……うっ、本当に、ありがとうございました……この感触で、これからいくたびの夜を超える事が出来ますっ……」

 

 鼻血を垂らしながら自分の席に戻っていく赤髪さん。

 それを皮切りに、なんかプチ握手会が始まってしまった。

 

 なんなんだよ、この人達。

 

 教師っぽい人、止めてくれ。

 

「ライナ先生も並んでるじゃん!」

「こ、こほん! し、仕方ないでしょ! ほんとは私があの子の世話人だったのに! レナリアに魔術戦負けちゃったからこんな時くらいしか男に触れる機会がないのよ!! 80年規模の処女、舐めないでくれる!!??」

「おいたわしや、センセイ……」

 

 ダメっぽいな。

 

 そういえば、レナリアは──。

 

「私のなのに私のなのに、もう、一瞬で皆のものになっちゃう……私がちょっといいなって思った人は、皆、誰かに取られちゃうんだ……」

 

 まだバッド入ってもうて。

 そんなバッド入っているレナリアとふと、目が合った。

 

 しおしおになって教室の隅で親指を噛んでいた彼女が、急に目をまん丸に開いて。

 

「──み、皆!! もう、もう終わり!! ボディタッチはダメよ!! 彼のストレスになるわ!! 実験動物じゃねーっつうの!!」

 

 レナリアが、列に割り込んで並んでる魔術師を千切っては投げ、千切っては投げ。

 力強いな……。

 そして放り投げられた魔術師も慣れているみたいで、ふわりと空中浮遊で受け身を取っている。

 なんで、しっかり皆、実力者なんだよ。

 

「ぶーぶー、レナリア!! ずるいぞー! 権力の乱用だ~!」

「そうだそうだ~、自分だけえっちな童貞を侍らせてずるいぞ~!」

「そうやって自分好みに仕込もうってんだな~!」

 

「うるっさいわね!! 喪女共! こちとらアンタ達みたいに万年恋愛脳じゃないのよ!!」

 

 それでも続く魔術師達のブーイング。

 中にはコミュニケーションの一環だろうが、炎の弾や、水球、そして殺意のない魔力の矢礫を展開しながら文句を言う子もいた。

 

 混迷を極める教室。

 静止するのが役割なはずの教師まで一緒になってブーイングを。

 

 レナリアが。

 

「とにかく私の!! なの!!」

 

 声を一喝。

 

「こいつは、私のだから! ダメっ!!」

 

 その、瞬間だった。

 

「「「「「「「「──っ!!」」」」」」」

 

 星渦の魔術、発動。

 レナリアの頭上に生まれた黒い──宇宙のような虚空。輝く星がちりばめられたそれが周囲の魔力を強制的に吸収する。

 

「あっ」

 

 一気に静まる教室。

 しまった……星渦の魔術は、少し目立ちすぎる。

 月見台の魔術学院に、異端認定される可能性も──。

 

「「「「「「すっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいい!!」」」」」」」

 

「え?」

「え」

 

 俺とレナリアは同時に声を漏らした。

 

「お嬢様、凄いじゃないですかああああああああああ!! なんですか、今の!!

「レナリアつえええええええ!!」

 

 めっちゃ受け入れられていた。

 なんでも、この教室のメンバーはずっと、レナリアが魔術を使えない事を気にしていたらしい。

 

 良い奴らかよ。

 

 なんなんだよ、この魔術師学院。

 ギャル+アマゾネス+体育会系なの意味わかんねえ。

 

 お、俺の魔術師へのイメージが……。

 

 だが、これで少しは皆落ち着いて──。

 

 その瞬間だった。

 

 ぶうんっ。

 

 魔術陣、空中に起動。

 

 虚空に浮いたそれから現れるのは──長い黒髪、2メートル近い長身。

 すげえ美人の魔術師。

 口元半分を覆う尖ったマスク。

 黒い帳のようなローブ。

 

 ちょっと雰囲気あるな……。

 

「「「「「「「「……」」」」」」」」

 

 教室の全員、レナリアを除く全員がその場に片膝をついて黙っている。

 

「ようこそ、おいで下さいました。猟犬の魔女」

 

 ライナ、というらしい先生が彼女に頭を下げる。

 すげえ序列あるじゃん、ルラカナ。

 だが、魔女?

 マザリィさんと同じ、ルラカナの保有する戦力である強力な魔術師なのか?

 

「ライナ、ごめんなさい、授業中に。少し、学生たちに伝えておきたい事がありまして」

 

 魔女はぐるりと教室を見回して。

 

「この月見台の魔術学院に──不死が紛れ込んでいます」

 

 魔術師たちが息を吞む。

 

 ……マジかよ。

 そして、猟犬の魔女がぬるっと俺の眼前に。

 

「お客人、貴方は──()()()()()()()、ですか?」

 




読んで頂きありがとうございます。

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