引退したソシャゲに異世界転移したらヒロインが全員病んでた件   作:西沢東

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今話で1章終了です。

余談ですが、本作は初期コンセプトとして「伏線ギャグ」があります。自分は戦闘シーンが苦手→なら伏線ギャグにすれば盛り上がるのでは?、という仮説を元にプロットを製作し、引退ソシャゲゲーム転生の部分は後から決まった、という経緯で本作は作られました。なのでベーゴマ基地オウミはヒロイン陣より先に決まっていたり。
……が、蓋を開けたらシリアス方向がかなりいい感じに書けてしまい、「伏線ギャグは蛇足になってしまう、むしろシリアスにがっと寄せるべきでは?」とずっと悩み続けながら、とりあえず初期コンセプトに殉じて一旦書き上げた形です。2章が始まる前ににしれっと戦闘シーンが差し替えられていたら色々察してください()。


1章エピローグ

 『アマテラス』、藍田、ニンジャパンツ野郎が大地の割れ目に落ちた10時間後。外は暗く月の光のみが辺りを照らしており、アブラクサスはどこにもいない。

 

 ウララは装甲車の外に出て、通話に出ていた。スピーカーに向かってウララは元気よく挨拶をする。

 

「お疲れ様っすレイン様!」

『お疲れ様、ウララちゃん。話は聞いているわ』

「っす!」

 

『アマテラス』が大地の割れ目に落下すると同時に、ウララと戦っていた「飛竜」たちはどこかへ飛び立ってしまった。他のアブラクサスは基地オウミに叩き潰されており、もはや通信を阻害する者はいない。

 

 画面に映るのはウララの上司にあたる特ア対討伐統制局長レイン。報告書は既に提出したものの、やはり直接話をしたいということで連絡がかかってきたという訳だった。レインの顔色はウララが今までに見たことが無いほど明るい。

 

『昨夜に通信妨害と山の消失を観測、同時に地鳴りと異常な電磁波の感知。北は『ツクヨミ』、西は『アマテラス』、もうお終いと思ったけれど……まさか倒すとはね。母体を倒したのは『統率者』様以来の快挙よ、よくやったわ』

「報告書送った後の通信担当の第一声が「虚偽報告をやめろ!」だったくらいっすからね」

『ごめんなさい、電波妨害が突如切れたことは分かっていたけれど、まさか『アマテラス』が死んだという考えには辿り着かなかったらしいわ。まあ、母体には実に55年苦しめられているわけだし、突如そうなるなんて想像するのは難しいでしょう』

「まだ死んだとは限らないっすよ」

『それは勿論。近いうちに専門の調査部隊を送るわ。ただ行動不能になったのは間違いない、私としては凄く安心したわ。……基地オウミが無くなったと聞いた時はショックだったけれど。私も一時期住んでいたから』

「そうっすね。物心ついてからずっとあそこにいたから、ちょっとショックっす……」

 

 ウララはそうは言うものの、その顔に浮かんでいるのは解放感だった。アブラクサスだらけの世界で、隠れるように、時にはある種の檻のように感じていた場所でもあった。ウララはあの基地が嫌いだったわけではない。だがあの基地には閉塞感が充満していた。息苦しいほどに。

 

 それが無くなった。しかも母体『アマテラス』討伐という快挙もついてきて。

 

『行方不明者と事実上の敵前逃亡兵はいるようだけれど死者はゼロ。無限にアブラクサスを生産する母体を老朽化した基地一つと引き換えなら安いものだわ。改めて、ありがとうね。特別報酬も追って渡すから、楽しみにしておいて』

「っす!」

『任務に忠実で、最後までやり遂げたあなたを誇りに思うわ』

 

 現時点で日本周辺に存在するアブラクサスの母体は計4体。そのうちの一体が活動不能になったことにより、アブラクサスの増産に歯止めがかかるだけでなく、人類側の消耗速度も減っていく。移動時の接敵確率も徐々に減少し、物資や人員の輸送が捗るようになる。防衛に割く人員を減らし、訓練や休養に充てることができるようになる。

 

 この一日は紛れもなく、人類の勝利であり復活の第一歩と呼べる瞬間であった。『統率者』消失以来、初の。

 

 

 

 ここまでは、純粋な祝砲だった。ここまでは。

 

『ところでだけれど』

 

 ふと、レインの声が低く沈んだ。探るように。虚偽を許さないと言わんばかりに。

 

『報告書には、臓器で編まれた化け物が突如現れたと書かれてあったわ』

「……っす」

 

 ウララは、ニンジャの存在について報告書で省かなかった。その最たる理由は大地に千切れたまま放置された臓器の山。『アマテラス』に殴られ砕けた破片は、回収するにはあまりにも多く。結果として、ウララは自身が見たままの結果のみを書いた。

 

 『アマテラス』に基地をぶつけたこと。援護の中、自身と藍田とミハルの三人で突撃したこと。突如謎の怪物が現れたこと。そして『アマテラス』と謎の怪物の戦う隙を突いて爆弾を起爆、割れ目の下に叩きつけたこと。それ自体に、問題はない。人の力では倒せない『アマテラス』を重力の力で倒そうとするのは至極当然の考えだ。急に化け物が出てくるのも、この世界では当たり前だ。だが、この臓器で編まれた化け物が問題だった。

 

 ウララは知る由も無かったが。レインはかつて言っていた。『ないわ。学者のデータとサンプルだけ。急に現れた『ナニカ』の暴走で、研究施設は滅茶苦茶。でも、理論上は来ているはずよ』。その時レインは情報漏洩を防ぐためにその外見を言わなかったが、その『ナニカ』とはすなわち。

 

『臓器の化け物は、私たちも見たわ。ノイルコードを強制起動して、情報波位相伝播体の座標を改竄した時に。恐らくあれは、法則改竄へのカウンターなのだけれど。これは任務だったはずよ、私の命令よ』

 

 ウララの背筋が凍る。レインの顔と声は、どんどん歪んでいった。あの時のように。彼女が突如どろりとした欲望を吐き出したあの時と同じように。

 

 

『──ねえ、そこにお父様がいるの?』

 

 

 ウララは任務に忠実な兵士である。常に善い自分であろうとする。この問いに、自身は真っすぐ答えるべきである。疑惑を、謎を、真実を。

 

(でも、ここで藍田さんが『統率者』かも、なんて言ったら。本部に取られて、もう会えなくなるかもっす。また、基地の中で。義務感と恐怖に震えて過ごさないといけない)

 

 ウララの頭の中に、能天気な顔で笑う藍田が、真剣な顔で訓練に取り組む藍田が、車酔いをして青い顔をする藍田が、そして『アマテラス』に立ち向かう藍田の姿が浮かぶ。

 

 「惚れてるの?」と自分がからかわれたその意味、今自分が何を胸に抱いているのか、ウララはここにきてようやく自覚した。

 

 藍田がまたいなくなるかも、という恐怖を前にして。

 

 何度でもウララの論理的な思考は言う。『統率者』の件について、報告するべきだと。本部でその力を最大限使ってもらい、人類の勝利に寄与するべきだと。

 

 だから。

 

「──あの化け物はきっと『アマテラス』に反応して来たんっすよ」

『でもあなたの報告によれば2週間前に急に現れた男が──』

「全く別人っすよ、顔写真見るっすか?」

 

 ウララは画面に向かって笑いかけた。

 

 

「『統率者』様はいなかったっす」

 

 

 初めて、任務に背いた。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 そして同時刻、同じ結論にミハルもまた達していた。藍田と一緒にいるために。藍田を助けるために。嘘をつかなければならない。

 

 

「お、お疲れ様です!」

『お疲れ様です、ミハル』

 

 同様にミハルは、別の場所でナハトジークに呼び出されていた。

 

 ミハルのノートパソコンには以前の定例会議と同じく、各基地のメカニックが集まっていた。

 

 やばい、バレたとミハルは焦る。戦闘員たちは割れ目に落ちて『アマテラス』が死んだ、という結果を見る。しかしメカニックは直ぐに気づく。そんな少人数で、こんな真似ができるわけがない。ましてや未完成の歩行機能を使用した基地オウミの突進という策が成功したことを信じられない。

 

『この報告書は本当でしょうか』

「……はい」

 

 だから、裏に何かがあると絶対に気付かれる。でも、隠さなければ。どうやって隠そう。ヤギ人間なんて言い訳は利かないし、基地オウミの前世がベーゴマとでも言うべきなのだろうか。

 

 仮に『統率者』とバレれば、ナハトジークに薬漬けにされたあげくノイルコードを使用するだけの日々を送ることになってしまう。だが、自身の報告書は穴だらけだ。

 

 どうしようどうしようどうしよう。半ばパニックになるミハルを落ち着かせるように、ナハトジークは優しく語り掛けた。

 

『……もう一度報告書を読み上げてごらん』

「は、はい!」

 

 ミハルはナハトジークに言われ、深く深呼吸して、画面に報告書を表示し、必死に心を落ち着けながら震える声で読み上げた。

 

 

 

 

「『アマテラス』にベーゴマと化した基地オウミを突撃させベーゴマバトル、チャージスピンが足りなかった基地オウミは敗北するも隙を突かれた『アマテラス』は唐揚げになってしまいました。急に出てきたニンジャが『アマテラス』に殴りかかったタイミングで爆弾を起爆、唐揚げとニンジャを割れ目の底に叩き落すことに成功しました」

『……』

『……』

『……』

 

 一切嘘はついていない。まだ18歳でメカニックとしての教育しか受けていない彼女が全力で書いた報告書は、確かに事実のみを記載していた。

 

 うん、事実を記してはいるのだが。

 

『すまなかった、私が第一種異常応答剤を使えなんて言ったからこんなことに!』

「え」

 

 画面の向こうで、メカニックの一人が机に頭をこすりつけるかのようにして深々と謝罪する。予想外の反応にミハルは呆然とした。

 

 ただ、そうなのだ。ウララは上手くかみ砕いで誤魔化したが。真っすぐ説明すると今回の一件の顛末は訳が分からない。どう見ても薬物乱用の類で精神が錯乱したものの文章であった。

 

『私の基地から直ぐに治療薬を送る。口が過ぎた、心の奥底から謝罪する!』

『ああこんなになるまで放っておいたなんて!』

『正確な報告は他部署経由で確認します。上司命令です、とにかく脳の治療に専念しなさい、いいですね』

 

 以前の定例会議の日に、ミハルを責め立ててきた面々が悲痛な面持ちで謝罪を繰り返す。当たり前だが、基地をベーゴマにすることも母体を唐揚げにすることも急にニンジャが出てくることも一般的ではない。

 

 故に。他部署からも伝わってくる『アマテラス』討伐の連絡から。ミハルは第一種異常応答剤を使ってまで『アマテラス』に立ち向かった英雄であると推察されていた。

 

「ちがうちがうちがうちがう───!」

『そうですよね、本当におかしな人は自分がおかしなことに気づけませんから。まずは脳の治療です』

 ミハルは目を白黒させて、必死に否定しようとするが全てスルーされる。幸か不幸か、不自然な作戦について問いただされるというイベントからは、自然と回避することに成功していた。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

「……という感じっすね」

「酷い目にあったぜ……」

「ご苦労さんお二人とも……」

 

 そして最後に俺、藍田は。ご想像の通り割れ目から無事に帰還し、ウララ達が使用している装甲車内で足を伸ばして背中をかいていた。傷口、治療してもらったけど痒くてつい触っちゃうんだよな。寝るのにも邪魔だし、早く治って欲しいぜ。

 

 割れ目に落下した俺が平然としているのを見て、通話を終えて戻ってきたウララとミハルは少し呆れのまざった声で俺の肩をつついてくる。

 

「しかし割れ目から本当にぬるっと帰ってきたっすね」

「散歩の帰り道みたいなノリだったよな」

「墾田永年私財法もサメも飛べるんだから俺も飛べるに決まってるだろ」

「総理大臣は飛べなかったけどな、あの映画」

「全部飛べたらダメだと思うんっすけど……」

 

 割れ目に落ちた後。そのまま落下して即死……になるわけが無く。そもそも俺の持つ濁刃は奥義で爆発を巻き起こす。そして俺は奥義を何回でも使える。なら、奥義を何度も撃ってその反動で飛べば、飛翔が可能という理論であった。

 

 勿論方向制御は滅茶苦茶だった。でも、そもそもの話として俺の体重は標準の人間のもので、そして濁刃の奥義は小型アブラクサスを一撃で撃破する威力を持つ。だから爆炎の排気口を割れ目の底に向けて奥義を撃てば、理論上は可能である。めっちゃきりもみ回転とかしたけど。割れ目側面の亀裂とかで休憩しながら、徐々に上がっていきようやく無事に帰ってきたのだが、それを見た二人の顔が驚愕とかではなく逆立ちしながら九九をするミドリガメとかを見るような目つきだったのだけは未だに納得がいっていない。泣けよ感動のシーンだぞ。

 

 一方の『アマテラス』とニンジャは想定通りというかなんというか、割れ目に落下していった。どうなったかは見えなかったが潰れたような異様な音が響き渡っていたので、まあほぼほぼ死んだと思っていいだろう。……あれで生きててすぐに第三ラウンド、とかなってたら100%負けてたから本当に助かったぜ。

 

 それはさておき、ウララは運転席に座り、ミハルは後部座席に『アマテラス』の素材を詰め込んだ箱と共に座る。俺は濁刃を持ち、助手席に座った。

 

「とりあえず資源も無いっすし、一先ずこの割れ目付近から移動するっすよ。忘れ物ないっすね?」

「濁刃の片方、割れ目に落とした……」

「別にいいだろ、結局あれよりあのにんじゃ?の方がダメージ与えてたし」

「一応借り物だからなあれ!?」

 

 シートベルトを付ける。その時、ウララが俺にぼそり、と告げた。

 

「因みに藍田さん、『統率者』の件については今からじっくり聞くっすからよろしくっす」

「うっ」

「ウ、ウララ。実はこいつはヤギ人間で……」

「そんなわけないじゃないっすか、常識的に考えて」

「「うっ」」

「何で二人とも胸を押さえてるんっすか!?」

 

 さてウララにもどう説明しよう。やっぱゲーム関係の話は伏せるべきなのだろうけど、あまり隠すとミハルと違って鋭いからバレそうだしどうしようか。

 

 頭を悩ませる俺を見てくすりと笑った後ウララがアクセルを踏み、車が鈍い音と共に動き出す。

 

 本当に色々なことがあった。別の世界に来て、未だに帰る方法も見つからない。死は未だに身近なまま。だがそれでもやれることをやり、死に打ち勝った。

 

「まあこんなところで死んでられないもんな、とりあえず乗り越えられてよかった」

「『アマテラス』はこんなところ、じゃすまないっすからね……」

「いいじゃねえか、ウララ、次の目的地は?」

「とりあえず小さい無人補給基地を経由して、この二つの基地のどちらかに──」

 

 晴天の下を、俺達の乗る装甲車は走っていく。車内の空気は外に負けないほど穏やかで、暖かかった。

 
















ミッション
☑ ステータス画面の機能を理解しろ
☑ 濁刃を手に入れろ
☑ 自身のLvを70まで上げろ
☑ ウララの好感度を10まで上げろ (10)
☑ ミハルの好感度を10まで上げろ (10)
☑ アマテラスの襲来に備えよ 
☑ ウララとミハルを仲直りさせろ
☑ アマテラスを撃退せよ!


□シナリオリザルト
・ルート『焔天の果て』を攻略しました。『アマテラス』討伐報酬としてノイルコード:ステータスの位階が上昇します。
・英雄度が78(-245)上昇しました。英雄度が上昇すると市民からの反応・支援が得られますが、好感度の上昇値が大幅に上がり、また好感度10を超える確率が大きく上昇します。また、英雄らしくない行動を取ると英雄度上昇値が下がります。
・ユニット『ウララ』『ミハル』に経験値が入りました。Lvが上昇します。
・ユニット『ウララ』『ミハル』の状態異常が軽減されました。
・常設ミッション『ウララの好感度を11以上にするな』が追加されました。
・常設ミッション『ミハルの好感度を11以上にするな』が追加されました。
・『アマテラス』討伐及び英雄度上昇により過去使用ユニット4体の活動が活発化しました。追加で4種のENDに分岐するようになりました。
・『アマテラス』討伐により、特異個体3体が休眠より目覚めました。
・グランドシナリオ『■■■■■■■■■■■■』が進行しました。
・反動により地■にア■■■■■が出現しました。


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