もしもベル君が幼少期に暴虐の魔王と出会っていたら?

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 魔王学院完結、並びにリハビリとして投稿してみる。

 ちなみに続かない。続かないったら続かない。だってダンまち、数年前に読んだきりで原作すごいうろ覚えだから


ダンまち

 夢を見る。

 

 「いいのか?俺ならばあのトカゲを一切の犠牲を出さずに滅ぼす事ができるが?」

 

 それは自分の始まり。

 

 「それじゃあ意味がない………か。確かに一理ある。これはお前たちが越えなければならない事だ。だが、お前たちが奴を倒せるようになる前に奴が蘇る可能性は高い。そうなってからでは遅いぞ?」

 

 家族を救ってくれた優しい魔王様への宣誓。

 

 「強くなるか…………しかし、お前のような幼子がその道を選ぶのは想像を絶する苦難の道だ。最悪、お前と言う存在が滅びてしまう可能性もあるが?」

 

 それでもやると決めた。誰でもない、僕自身が。家族の笑顔を、幸せを守るために。

 

 「…………良い目だ。ならば、この俺がお前を鍛えてやる。お前を、終末を覆せるほどの英雄にしてやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん…………」

 

 ダンジョン18階層。迷宮の楽園(アンダーリゾート)の森の一角で眠っていたベル・クラネルは微かに身じろぎをした後目を開ける。

 寄りかかっていた木から体を起こし、大きく伸びをすればポキポキと音を鳴らしながら体がほぐれていく。

 

 「ふう、今どれくらいだろ」

 

 完全に目が覚めたベルは魔力時計(テル)の魔法で時間を確認する。時刻は午後3時。仮眠をしたのが午後1時だったから二時間ほど眠っていたことになる。体調に問題はない。三日間の完徹で溜まってた疲労もすっかり取れている。

 本当ならば中心にある冒険者の街であるリヴィアの街の宿で休んでもいいのだが、冒険者になってまだ1か月の自分がこの階層にいることはできるだけ伏せておきたい。

 ベルは立ち上がると目の前の地面に突き刺してある紋様の如き刃紋が浮かんだナイフを抜く。それと同時にベルを包んでいた結界が消え去る。

 

 「よし、早く帰って、神様を安心させないと」

 

 定期的に思念通信(リークス)で連絡していたから無事は知っているだろうが、それでも三日も顔を見せていないのではあの小柄で優しい神は不安になってしまうだろう。

 何かお土産を買っていったほうがいいだろうかと考えながらベルはナイフを鞘に納め、地上に向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルが異変を感じたのはダンジョンの6階層の中間に辿り着いたころぐらいの時だ。

 

 「足音………?」

 

 背後から足音が聞こえてくる。それもこの階層のモンスターの物とは思えないほどに重い物が。

 それに気づいたベルは無言のまま静かに魔剣であるナイフ(護法剣パルディオン)ロングソード(迅雷剣ヴァジュル)と抜きながら振り返る。

 

 ブモォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

 焦燥が滲んだ咆哮が聞こえてきたのはその時だ。

 ベルがダンジョンの奥を赤く輝く魔眼で見据えると、2mに達する筋骨隆々の巨体に雄牛の頭を持つモンスター猛然と突き進んでくる。

 

 「ミノタウロス!?なんでこんな上層に………!?」

 

 何故ミノタウロスがここにいるのか。何故何かに追い立てられるように焦燥に駆られているのか。一気に疑問があふれ出したが、ベルはその全てを頭の隅に追いやり、即座にナイフとロングソードを構え直す。

 この階層にいる冒険者でミノタウロスを倒せる者はいないはず。このまま放置しては多くの犠牲者が生まれてしまうだろう。そんな事を見過ごすわけにはいかない。

 ベルがロングソードの切っ先を突き付けると同時に闇の奥からミノタウロスの巨体が現れる。

 構えるベルを見たミノタウロスが威嚇の声を上げ、彼目掛けて突進すると同時にベルの全身を包むように蒼い雷がはじけた瞬間、

 

 「迅雷剣。秘奥が一。霹靂」

 

 紫電と化したベルは一瞬でミノタウロスと交差し、背後に立つ。

 瞬きの間にベルがいなくなったことにミノタウロスがブモ?と間抜けな声を上げた瞬間、その巨体の中心、魔石がある場所に一文字の傷が生まれ、それに沿うようにミノタウロスは両断され、灰となる。

 一瞬でミノタウロスを葬ったベルはふう、と息を吐きながらロングソードとナイフを下ろす。

 

 「とりあえず、血の臭いはしなかったからこいつの犠牲者はいないと思うけど………」

 

 もしかしたら他にもここに迷い込んだミノタウロスがいるのではないだろうか。

 偵察がしたほうがよさそうかな、とベルが考えた瞬間、ダンジョンの奥から足音が聞こえてくる。

 新手か、とベルは素早く振り替えるが、すぐにその足音がモンスターの物とは違うことに気付く。

 人間。それもこの速度を出しながらもブレない規則正しい足音から高位の冒険者であると予測出来る。

 だが何よりも。

 

 「この魔力は........」

 

 この魔力をベルは知っている。学区と共に確認しに行った黒竜の封印と同じ魔力。確かあの封印を維持しているのは.........

 ベルがソードとナイフを鞘に納めると同時にダンジョンの奥から現れたのは軽鎧を身に着け、剣を手にした美しい金髪の少女だ。歳はベルと近いだろうが、その立ち姿に隙はほとんどない。間違いなく、高位の冒険者だ。

 

 (金髪の高位冒険者って……もしかして)

 「あの、すいません。もしかしてロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインさんでしょうか?」

 「あ、はい。そうですけど………」

 「そうでしたか……あの、実は先ほどミノタウロスを一体倒したのですが、それを追いかけているように見えますが、何かあったのですか?」

 「え!?君が……!?」

 

 はい、と頷くベルをアイズは驚愕した表情で見つめる。

 純白の髪に赤い瞳をした兎の様な印象の少年だ。

 腰に鞘に納まったナイフとロングソードを履いているがその身に纏っているのは白い、どこか学区の制服を思わせるデザインの服だけと言うラフな格好をしていて、軽鎧はおろか革鎧すら身に付けていない。

 その純朴そうな見た目も相まってレベル1の駆け出しの冒険者どころか冒険者にすら目の前の少年は見えない。

 そんな少年がミノタウロスを倒した?あり得ない。だが、少年の自然体でありながら一切隙のない立ち姿から彼が並みならぬ実力を持つことは分かる。

 どう言う事だろうか、と混乱しているアイズをベルは小さく首を傾げながら見上げていたが、少ししてあの、と大きく声を上げる。その声で現実に引き戻されたアイズの肩が大きく跳ねる。

 

 「あ、はい!な、何……?」

 「いえ、すいませんが……あのミノタウロスについて、何か知っていることがあるなら教えてほしいのですが……」

 「あ、それは…………ごめんなさい」

 「ごめんなさい……とは?」

 

 ベルが首を傾げていると、アイズはたどたどしくも説明をしていく。

 なんでも彼女が所属するロキ・ファミリアは遠征からの帰還の最中だったのだが、そこでミノタウロスの群れと遭遇。戦闘に突入した瞬間、群れが一斉に逃げ出してしまったらしい。

 ほとんどは仲間たちと仕留めたらしいが、仕留めきれなかった何体かが上層に辿り着いてしまった。

 

 「で、その内の一匹を僕が倒した、と言う事ですか……あの、他のミノタウロスは?」

 「他のミノタウロスは全部倒した。貴方が倒したのが最後の一匹」

 「そうですか。失礼ですが、犠牲者は?」

 「ううん。私たちが追いかけてたから、何かあれば見てた……と思う」

 「それなら良かった……」

 

 ほっとしたようにベルが息を吐いていると、アイズはじっとベルを見つめてくる。

 困惑したようにベルが首を傾げていると、アイズは静かに口を開く。

 

 「……どうして、君は……そんなに強いの……?」

 「え?どうしてって………修業したからですが?」

 

 いきなりなんだろうとベルが首を傾げながら答えるとアイズも同じように首を傾げる。

 

 「修行?」

 「はい。死ぬような修行を師匠の下、何年も」

 「死ぬような……」

 (まぁ、実際に何十回と死んだんですけど……)

 

 ベルはその事を口にはしない。それをこの世界で口にしたら文字通り大混乱の引き金になりかねない。

 過酷と言う言葉すら生ぬるい修行の日々を思い出し、思わずベルが遠い目をしていると、アイズがずいっ、と顔を近づけ、

 

 「あの………それってどういう修行なんですか……?」

 「え、えっと……それはちょっと………」

 

 流石に教えられる内容ではないためベルが困ったように苦笑を浮かべるも、アイズは変わらずじっとベルを見つめ続ける。

 

 「あの………そ、それでは、僕はこの辺で!」

 

 これ以上はボロが出るかもしれないと考えたベルは、軽く頭を下げるとそそくさとダンジョンの奥に向かって駆け出す。

 

 「あ、ま、待って!」

 

 それに気づいたアイズが慌てて追いかけ、角の向こうに消えたベルを追って角を覗き込み、

 

 「え?」

 

 そこにベルはいなかった。アイズが角を覗き混むまでの僅か数秒の間に白い髪の少年は消えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョン6階層から5階層へと転移したベルはそのままギルドに赴き、自身の担当アドバイザーであるエイナ・チュールに五階層にミノタウロスが出現した事を正直に報告。ミノタウロスと戦った事でエイナから特大の雷を落とされながらも何とか解放された後帰路についていた。

 北西と西のメインストリートの間。大勢の人でごった返すメインストリートとは対照的に人の気配が無く、寂れた雰囲気を醸し出す裏路地をベルは慣れた足取りで進んでいく。

 そしてたどり着いたのは裏路地にはあまりにも似つかわしくない場所だった。

 まず目に飛び込んできたのは白い花が咲き誇る丁寧に手入れがされた花壇がある庭だ。花が風に揺れる様はまるで白い海原のようで夕日の光も相まって幻想的な光景を作り出している。その奥にはその庭を見守るかのように小規模だが、汚れ一つない美しい白い壁をした立派な教会が建っている。

 

 「ただいま戻りました」

 

 ベルが教会の玄関を開けて中に入る。中には小さなステンドグラスが見下ろす礼拝堂が広がっており、その奥には幾つかのドアが見える。その一つが勢いよく開き、

 

 「おかえり、ベル君!」

 

 顔を出したのは小柄な体躯に不釣り合いなほどの立派な双丘を持ったツインテールの少女。だが、その身からベルが感じ取るのは抑え込まれた神気。

 駆け寄ってくる主神(ヘスティア)の笑顔を見たベルの肩から力が抜けると同時にヘスティアが飛び込んでくるが、ベルはその身を柔らかく受け止める。

 

 「全くベル君はどこまで僕を心配させるんだい!三日間もダンジョンに潜りっぱなしなんて!」

 「す、すいません。ですが、定期的に思念通信(リークス)で連絡は……」

 「それとこれとは話は別さ!無事は分かってても心配はするんだよ!」

 

 心配させた罰だと言わんばかりに頭を掻きまわすヘスティアにベルは申し訳なさそうに唇を曲げる。

 

 「すいませんでした。心配をかけて。でも、僕は………」

 「分かってるよ」

 

 ベルの言葉を遮ってヘスティアは手を放し、彼を見つめる。その表情は童顔からはかけ離れた大人びた物だった。

 

 「ベル君のやろうとしている事は知っている。君が目指している物も知っている。それを全て知ったうえで、僕は君の主神になった。だから止めはしない。でも、それでもさ、心配はさせてよ。君の無事は祈らせてよ」

 「………」

 「神が祈るって言うのも変だけどさ、それでも祈りたいんだ。君のために」

 「………はい」

 

 ああ、本当に、この神と出会えてよかったとベルは思う。こんなにも優しく、けなげな神様と出会えた。家族になれた。そんな神が、自身の背を押してくれている。自分の身を案じ、無事を祈ってくれている。こんなにも嬉しい事はない。

 

 「それじゃあ、片付けが終わったらご飯にしよっか」

 「あ、その前にお義母さん達に報告しておきますね」

 「ああ、そう言えば今回はソロで30階層まで行ったんだっけ?」

 「はい。確かお義母さん達が到達した階層が71階層………まだまだですねぇ」

 

 世間話のように彼らはとんでもない事を口にしていた。ヘスティア・ファミリアの団員はベル・クラネル一人。秘密裏ながら協力の契約(ゼクト)を結んだファミリアは複数あり、たまにダンジョン攻略もしているが、今回の攻略は完全なソロだ。

 つまり、たった一ヶ月でベルは単身で30階層にまで到達しているという事だ。どう考えても尋常なことではない。前人未踏のまさに偉業だ。

 

 「しっかし、君の師匠も凄い事を言うねぇ……ダンジョンの完全攻略を成し遂げろなんて……」

 

 そして、そんな前人未到の偉業すら、ベルにとっては通過点に過ぎない。ベルの師匠が課した最終試練。それこそがダンジョンの完全攻略。それを成し遂げた時、ベルは奴に挑む事ができる。

 

 「それでも成し遂げますよ………隻眼の黒竜を討つために」

 「………そっか。分かった。なら僕は最後までそれを見届けよう。君の主神として」

 

 その言葉を噛み締めるようにベルがはい、と頷くとヘスティアは小さく微笑んだ後、奥の部屋に歩いていく。

 その背を見送ったベルはすぐさま思念通信(リークス)を使う。

 

 『アルフィアお義母さん。聞こえる?ベルだけど………』

 『ベルか。戻ってきていたのか』

 『うん」

 『一先ず、無事に戻ってきたのなら何よりだ。で、どこまで潜れた?』

 『今日で30階層まで潜れたよ』

 『ほう、そこまで行けたのか。中々じゃないか』

 

 滅多なことでは褒めない義母が感心したように声を漏らし、思わずベルは頬を緩める。

 

 『だが、それで気を緩めているようなら大問題だ。まだ私達のファミリアの到達階層すら超えていないのだ。ダンジョンがどれほど深いのか分からない以上、まだまだ序盤の可能性すらあるのだぞ』

 『確かに……アノスさんが潜ったダンジョンは2000階層以上はあったっていう話だしね……ここもそれぐらいあってもおかしくはないか……』

 『まぁ、流石にそれはないと思うがな。と言うかあってたまるか』

 

 憮然とした声にベルが苦笑を浮かべると、

 

 『まぁ、だが……よく無事に戻ったな、ベル』

 『……』

 『前から言っているが、お前の目指す道は過酷な道だ。あの魔王共はよほどのことが起きない限り手を貸しはしない。どうしようもなく辛い事だ。……それでも、やるのだろう?」

 『……うん』

 『なら止めはしない。だが、時には荷を下ろして休む必要もあるだろう。その時は戻って来い。ここはお前の家なのだから』

 『うん、分かった!』

 『よし。それじゃあ後でな』

 

 思念通信(リークス)が途切れると、ベルは目の前のステンドグラスを見上げれば、そこに描かれたヘスティア・ファミリアのシンボル(重なった炎と鐘)がベルを優しく照らしている。

 よし、とベルは決意を新たにするようにむん、と力を込めるとホームの奥へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、とある一人の魔王に鍛えられた少年が悲劇を覆す英雄になるまでの、迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)、その序章である。




 ベル·クラネル
 幼少期にとある魔王と出会い、家族を助けられる。そこで彼にとっての英雄はと魔王のような人物、すなわち目の前の悲劇を覆す者となった。その時家族の憂いである黒竜を知り、自分が黒竜を討つ事を決意。魔王に自身を鍛えてくれるよう頼む。そして現在、黒竜討伐の最終試練兼準備としてオラリオを訪れている。
 現在の実力は義母と叔父を同時に相手取れる程。
 愛剣である迅雷剣ヴァジュルと護法剣パルディオンは剣術の師匠から譲ってもらった物。

暴虐の7日間

 7年前、オラリオに突如として暴虐の魔王と名乗る一派が冒険者、闇派閥双方を相手取って文字通り蹂躙した日々。
 暴虐の魔王の一派は当人含めて僅か10人ほどしかいなかったが、オラリオの冒険者、闇派閥の誰一人として彼等には敵わず、オラリオは滅亡寸前まで追い込まれた。だが、最終的にゼウス・ヘラ派閥の生き残り、アルフィアとザルドの命と引き換えに魔王は退けられたが、かの魔王はいつの日か復活し、ダンジョンを開放すると宣言し、その恐怖を民衆は未だ忘れられずにいる。
 ちなみにこの件での冒険者及び民間人の死者はゼロ。闇派閥に関しては信者に死者はいなかったが、構成員の死者はかなりおり、天界に強制送還された神も多数存在している。そしてその後始末はギルド並びに冒険者たちに丸投げされたのだが、闇派閥に関わったギルド職員、商人、その他諸々が一気に判明した結果、その処理は膨大なものとなり、終わったのは半年後だったとか。一部の派閥、及びギルドからはその半年間の方が暴虐の7日間よりも地獄だったとの意見も。

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