「ムノーよ。我は光の勇者を消せと言ったはずだな?」
「おっしゃるとおりでございます魔王様」
「何故、我はここまで怒りを顕にしていると思う?」
「私が……光の勇者の排除に失敗したからでございます」
「そうだムノー。貴様は我の期待を裏切った」
1匹の蚊をも逃さぬ魔王の眼光が矮小な人間を貫く
「しかし、貴様は矮小な人間の身ながら12年という短き生の全てを我に尽くした。その忠義に報いて申し開きの機会を与えるとしよう」
「ムノー、何か言い分はあるか?」
ムノーは矮小な人間ながら忠義に厚い男のようだ。敬愛する主に慈悲を与えられたがその意図さえも正確に理解し魔王の望む言葉を1泊も待たせず紡いだ。
「ございません」
「それでこそ我が忠臣。褒美として苦痛を感じる間もなく葬ってやろう」
「ありがたき幸せ」
魔王が手を振りかざせば強大な炎の嵐が男を包んだ
「して、側近よ」
魔王のそばに控えていた魔族の男が立ち上がる
「ムノーの戦果を詳しく聞かせよ」
側近の男が手元の書類に目を通しながら話す
「あ、はい。ムノーは光の勇者の排除に失敗しましたが魔王軍にとって有益な働きをしたようです」
「ふむ、続けろ」
「はい、それは……
光の勇者含む5大勇者の能力及び今まで謎に包まれていた弱点の判明です」
魔王の間が静寂に包まれる
「えーと、魔王さま?」
「なんだ」
「彼とんでもなく有能ですけど燃やしちゃっていいんですか?」
「ああ、そろそろ下がってよいぞムノー」
万物を焼き払う嵐の中から平然と出てきたムノーは魔王に一礼して帰った
「は?いや、は?」
「どうした、早く続きを報告しろ」
「いやいやいやいや、え? 彼ってただの人間ですよね?」
「普通の人間だが?」
「普通の人間は5大勇者を同時に相手どって重大情報を持ち帰ってこれないしあれだけの炎に焼かれて平然としてないんですよ。というか四天王でも無理ですよこんなの」
「ムノーきゅんはひたむき系熱血修行少年だから当然だ」
「きゅん???? というか全然説明になってないですよ?」
「その証拠にこれを見よ」
側近の話をもはや聞いてなどいない魔王が魔法を行使するとムノーのリアルタイム映像が浮かぶ
『また……魔王様の意に沿うことができなかった。何たる怠慢、軟弱、無能!』
なんとムノーは厳しい任務を乗り越えたにも関わらず腕立て伏せを始めた。立てと伏せを繰り返す度『無能が!無能が!無能が!』と己を叱責するところからかの少年の誠実さを感じられる
「えぇ(困惑)……あの子むしろ報奨ものの大活躍してますよね。自己肯定感低すぎないですか」
「いや、1番の問題があるのですが彼は何故魔王様のベッドの上でトレーニングをしてるのですか?」
「ふむ? 修練場でトレーニングさせたらムノーきゅんの汗が勿体ないだろう」
「…………一応話の続きを聞きましょう」
「ムノーきゅんの汗は極上の香りを放つだろう?」
「はい(忠誠心の削れる音)」
「その香りを堪能するなら1日の4割近く過ごすベッドが最適だろう?」
「はい(忠誠心をゴミ箱に捨てる音)」
「我はムノーきゅんを抱きしめながらムノーきゅんの香りに抱きしめられることができる。我は睡眠においても魔王級なのだよ」
「はい(ゴミを見る目)」
「これ以上の説明は不要であろう。我はこの後ムノーきゅんとティータイムの予定があるのだ。さっさと報告書を読み切れ」
「終始自分の話したいことしか話してなかっただろこの女……ようやく側近になれたと思ったらとんでもない1面を知ってしまった」
「仲睦まじい母と息子のようにお茶菓子でらぶらぶ食べさせ合いっこするのだぞ!」
「知りたくなかったなあ(絶望)……もういいやさっさと読み切ろう」
その後も報告は続いた。ムノーの成果に目を輝かせる魔王に比例して側近の目は死んでいった。
「なんだこれ、人類側に壊滅的な被害与えてるじゃないですか」
「流石我のムノーきゅんだ」
「しかも勇者たちの能力だってとんでもないですよ」
闇、光の勇者→『紙一重、2人同時に仕留めなければ何をしても死なない能力に加えて闇の勇者は光の勇者の目を媒介にして遥か遠くから即死魔法を連射してくる。致命的な攻撃のみを防いで光の勇者を頭から地中に埋め込むので精一杯だった』
「とんでもなく害悪ですね。ムノー君が殺しきれなかったのも納得の能力です」
「流石我のムノーきゅんだ」
炎の勇者→『紙一重、日中限定で古の巨人を超えるパワーと伝説のエルフを超える魔力を発揮できる。平然と山を消し飛ばす威力の広範囲魔法を放ってくるので致命傷を防ぎながら日の当たらない地中に頭から埋め込み能力の発動を妨げるので精一杯だった』
「大分余裕ありますよね彼。自慢の魔法を平然と突破されて絶望する勇者の顔が想像できますよ」
「流石我のムノーきゅんだ」
氷の勇者→『紙一重、時間を凍結させることで時を止められる能力に絶望した。ホッカ〇ロで対抗し止まった時間の中、熱帯砂漠の砂中に頭から埋め込むので精一杯だった』
「そこら辺の道具屋に1枚20ゴールドで売ってますよこれ。敵ながら同情したくなってきました」
「流石我のムノーきゅんだ」
地の勇者→『紙一重、自らが起こした砂埃の中であればいかなる事象でも起こせるようだ。まさに神の所業と言える。砂埃を起こせなければそこらの農民と変わらないため頭から地中に埋め込むので精一杯だった。彼が発した「ゴールず〇し」の効果だけが不明である』
「地の勇者だけ扱いが適当すぎないですか。絶対にノリで犬〇家にしましたよね。そこまでいったら仕留めてくださいよ」
「流石我のムノーきゅんだ」
「ムノー肯定botにならないで下さい魔王様。あなたの息子?ですよ」
「喧しいぞ側近。ムノーきゅんは最強できゃわきゃわなのだから仕方ないだろう」
「一言一言がキツイなこの魔王」
「もう良い頃合いだろう。我はムノーきゅんとティータイムするのに忙しい。故に後は任せた」
「まだ仕事が残ってるのに行ってしまった。てか速いな残像すら見えなかったのですが……」
側近は再び報告書に目を落とし、ため息を吐いた
「もうムノー君だけで十分じゃないですか」
続かないったら続かない