「なんだこれは……」
高校のグラウンドにて少年が本を拾い上げた。
ブロンドの髪にブラウンの瞳。非常に整った容姿をしている。
そんな彼は真っ白なノートを拾い上げタイトルを読み上げた。
「TSノート……?」
パラり、とページを一枚捲る。
(この本に名前を書かれた者は性別が変わる……? 少なくともこれ作った奴は馬鹿だな)
名前を書けば性別が変わる──なんとも馬鹿げた本だ。だが月は何故かTSノートをカバンに仕舞い家に持ち帰ってしまった。
これが、夜神月の人生を変えた。
夜神月は自室で──アパートなどではない一軒家。誰もいない部屋の椅子に座りパラパラとTSノートを読んでいた。
1,この本に名前を書かれた者は性別が変わる。
9,書く人物の顔が使用者の頭にないと効果は無い。
1,名前を書いた後に19秒経過すると効果は発揮される。
9,名前だけを書いた場合名前を書かれた人物が"なりたい異性"もしくは"最も性的興奮を得られる異性の姿"に変化する。
0,名前を書いた後7分21秒容姿を詳しく変えることが出来る。性的感度も変えられるが性癖や人格を変えることは出来ない。
7,一度ノートに書かれた者は二度以降その効力は発揮されない。
2,これを使って楽しいオナニーライフを!
1.TSノートに名前を書かれた者はデスノートの効力を一切受け付けない。
「男子中学生の妄想の具現化かこれ?」
これ作った奴アホの極みだろう。夜神月はそう決めつけた。
しかしこんなものを持ち帰った自分も阿呆ではと一瞬思考が過り考えるのを辞める。
「……試しに書いてみるか」
家族との話題ぐらいにはなるかもしれ──いやしたくないな、と思いながらも月はTSノートに丁度自室のテレビで流れている犯人の名前を書く。
(10……11……12……)
19。
「……やっぱり何も起きないか」
やっぱ妄想の産物か──月がそう断じようとした時。
『……あ! 見てください! 子供たちが保育園から出てきます! ……あれ? 人質が一人多い……?』
ふと、テレビからそんな音声が聞こえる。
そんな馬鹿な、と思わず画面に釘付けになる。
そこから出てきたのは。
『うぅ……ぐす……なんで……どうして……』
ぐずぐずと泣きじゃくる、つい先ほどまでテレビに顔が映っていた通り魔の面影がある幼女が、映し出された。
■
(……何かの偶然だろう。あれは)
深夜。コンビニ。
月はTSノート持ってコンビニの中にいた。
テレビでは突如映像が終わり、その後の情報は得られなかった。
しかしあれは偶然、報道されていなかった人質がいただけなのかもしれない──と月はその可能性を考えもう一度実験すべくここに来たのだ。
「おねぇさん若いね! 今幾つ? ちょっとそこで俺達とナウでヤングなことしない?」
コンビニの外では男たちが女性を囲み、ナンパしている。
それに対し女性は「年収5億以下の男とは関わってはいけない家訓なので」と拒否し続けている。
「俺渋井丸拓男! よろしく!」
(しぶいまるたくお……渋井丸卓夫か?)
幾つかの候補を、月はTSノートに書いていく。
そうして幾つもの名前を書き──
「あ、あれ?」
突如、渋井丸拓男の姿が変わる。
黒髪ロング。金の瞳を持つ美女だ。
服装こそ渋井丸拓男時と何ら変わりはない。だが男の服装からでも隠せない胸と尻。そして美貌。
街中に行けば間違いなく十人中十人が振り返る圧倒的美を持つ女に、変化した。
「きゃー!! 美しい!!! お姉さまとお呼びしても?!」
突如ナンパされていた女性が叫び、今度は逆に渋井丸拓男に詰め寄る。
それに対し仲間であったナンパ達に助けを求めようと視線を向けるも、男たちは何が起こったかわからずおろおろしている。
「……本物、なのか。これ」
さぁてこれどうしよう。夜神月は全てを見なかったことにして少々前かがみになりながら家路についた。
■
数日後。
何故か女になった通り魔もナンパ男も報道されず、ネットを見てもそのような情報は一切上がらない中、月は悩み続けていた。
「……本当にどうしようこれ」
はぁ、とため息と共にTSノートを手に取る。
これはどうするべきか。どう処理するべきか。
燃やすか、埋めるか。あるいは誰かに譲渡するか。
だがどれも現実的ではない。そもそも燃やせるのか。
「あなたがこのノートの所有者ですか?」
そんな時、声が聞こえた。
「な、うわ!」
がた、と椅子から転げ落ちる。
「へ、変態だー!!」
月は叫んだ。
現れたのは全裸の痴女だった。
まだ発達期なのだろう中学生っぽい体を惜しげも無く晒している。
胸も尻も年齢相応。だが多少──何がとはいわないがナニを挟める程度の大きさ。
銀の髪を靡かせ、青い瞳で月を見つめている。
ぎりぎり、どういう原理なのかわからないが銀の髪がゆらゆら動くことで大切な所はぎりぎり隠れているのはどういう原理なのか。月は混乱する。
「騒いでも無駄ですよ? 私はあなたにしか認識されませんから!」
「クソ! なんてこった! 最近オ○ニーしてないからってこんな幻覚が見えるようになったのか!」
やられた! と月は頭を抱えた。
「あなたのオナニーの有無と私が見えることに関係性はありませんよ。というか私幻覚じゃないですよ」
ほら、この通り現実に干渉できますよーと、ぺたぺたと歩く。
そうして歩いた先は本棚の裏。
そこから月が隠し持つエロ本をその手に取った。
「やめろバカ! それはお前絶対やっちゃいけないことだろうが!」
月は叫んで立ち上がり本を取り返した。
尚エロ本は屈強な男が女になり触手にいいようにされた挙句卵を植え付けられ産むという中々ハードな本である。
「ふむふむ。本を見る限り元から素質はあったようですねぇ。いいですねいいですね」
ふぅ、とまるで絶頂したかのように女が止まり、両手を広げた。
何かを歓迎するように、あるいはナニを受け入れるかのように。
「さぁ夜神月君。この本を使って全ての犯罪者をあなたにとって都合のいい性奴隷に造り替えましょう!」
「するわけねぇだろ馬鹿が!」
夜神月は今生で一番と言っていい程に、叫んだ。
■
あれから数日。世間が謎の犯罪者だけを殺して回るというキラなる者に注目を浴びせている中、月は受験生らしく自室で勉強に励んでいた。
そして少し休憩、と自室のテレビをつければ何とも凄い光景が映っており、月はテレビに集中する。
『さぁキラ! 私を殺して見せろ! どうした? 殺せないのか!』
テレビに堂々と映るLの字。そして声だけでキラなる者を煽っている。
「大変ですねぇ。世間は」
もぐもぐ、とイカをそのまま少女がしゃぶりながら答えた。食べるか喋るかどちらかにしろと月は呆れる。
「ほんとにな。全く犯罪者だからって殺しまくるなんて……キラって奴は頭がどうかしてるよ」
「ふむ、犯罪者と犯罪者予備軍の性別を変えたあなたも頭がどうかしてるのでは?」
「馬鹿野郎お前それは超えちゃいけない一線だろうが」
はぁ、と月はため息をついた。
「だが……幾つか聞きたいことがある」
「あっなんです? 私処女なんで具合はいいですよ♡」
「ちげぇよなんでその発想に至った?」
全くこいつは、と悪態をつきながら月はTSノートを取り出す。
「この本。意図的に最後の文だけが隠されている」
「……ふむ? 性癖ではなく?」
「ちょっと黙ってろ。……この説明文。1919072……この1919はイクの語呂合わせ、つまり絶頂だ。そして072は0721……オナニーの語呂合わせになる。
説明文にも書いてあるからな。直ぐに気づけたよ。最後が2で終わっていたからな……そして鼻を近づければわかるミカンの匂い。これは良くあるあぶり出しの奴だ。最近流行っているな」
「ふむ。ミカンではなく私のマン汁の匂いでは?」
「お前に恥じらいというモノはないのか? というかマ……女性の匂いなんて僕が解るわけないだろう」
「ああ。童貞でしたね」
「うっさい! そこは今関係ない! ……兎も角だ、マッチで焙ったらこの文字が出てきたよ」
月はノートを開き、掲げる。
そして指先で最後の文を示す。
「1,TSノートに名前を書かれた者はデスノートの効力を一切受け付けない。──これはなんだ? デスノートとはいったいなんだ?」
「案外早く気付きましたね。流石刑事局長の子です」
「それは関係ない。この程度誰だってわかる」
そして、と月は付け足す。
「TSとはtranssexual。性転換を指す言葉だ。それが頭につくTSノートはその効果の名を指しているとみていい。ならばデスノート──頭にデス。
DEATHが……死がついてるノートは書かれた者が死ぬノートのことなんじゃないか?」
鋭い眼で、月は女を見つめる。
自称TSノートの製作者。TSノートの行く末を見守ると言う少女を。
「今世間で流行っているキラは、このデスノートを持っているんじゃないか? 僕がTSノートを拾ったように。
何者かが──あるいはお前がデスノートを、誰かに拾わせて、それを使っている」
問い詰めるように、鋭い眼で月は少女に問いかける。
「更に0,名前を書いた後7分21秒容姿を詳しく変えることが出来る。性的感度も変えれるが性癖や人格を変えることは出来ない。……何で態々明記したんだ?
性癖。人格を変えれないと。そしてデスノートの存在──これらを考えるに、性癖や人格を変えれるノートもまた、存在するんじゃないか?」
答えろ、と月は立ち上がり、少女を睨んだ。
「──いいですねいいですね。その言葉攻め。ちょっとイキましたよ──そのご褒美です。たった一つ情報を開示してあげましょう」
少女はイカをしゃぶるのをやめ、ごくんと飲み込んだ。
「あなたの言うことに対し、たった一つだけ答えてあげましょう──"ノートは複数存在します"と。
残念ですがそれ以上は答えれません。答えたくありません」
「……何故だ。何故答えない? 何かしらの制約でもあるというのか?」
神に近い存在を名乗るくせに、と月は蔑んだ目で見て──直ぐに後悔した。
「だって、そんなことをしたら──つまらないじゃぁないですかぁ」
にまぁ、と顔を歪めた少女に月は本能的な──魂が舐められる恐怖を感じた。
■
数日後。
部屋の中でTSノートの守護者だが見守り人だが何かわからないモノはいまだ月に憑りついていた。
そして月が勉強に励む中、少女はただ一人ベットに寝ころびエロ本を堂々と読んでいる。
この光景を家族に見られたらどうしようと月は思いながらこの程度の奇行に慣れてきている自分を恥じた。
「ねーねー月君。TSノートに書きましょうよー」
「……そんな暇は無い。学生の本分は勉強だ」
「えぇー? 勉強なんてどうでもいいですよ。TSノートを使えば世界のどんな権力者でも自分にとって都合のいい性奴隷に出来るんですよ?
そうなれば人生バラ色ハーレムです。労働の楔から解放されるのです」
「あのな。僕は労働それそのモノを否定する気は無い。確かに色々面倒だがそれを実際にしなくて済むようになったとしても、それはそれで苦痛だ。
安定したとまではいかないがある程度の労働は人間が真っ当に生きていくのには必要なんだよ」
「えー? まっとうに生きていく必要ありませんよ。どうです? 爆乳ロリ娘集めておっぱいベットにダイブするとか極楽だと思いません?」
「なんでロリと爆乳が共存してるんだ。正反対だろ」
「いえ? 別にそこまで珍しくないですよ。最近だと百キロ越えのおっぱい持つロリっ子の漫画とかありますし」
「何それ怖い」
参考書を読みながら、月が問答を繰り返す。
「というか、いい加減お前の名前を教えろよ。お前だとかこいつって呼ばれてていいのか?」
「それはそれで興奮するのでいいのです」
「無敵か? お前」
はぁ、と月がため息を尽き、最近ため息多くなったなと嘆く。
「というかエロ本買いません? 私エロ本欲しいです月君」
「僕は未成年だ。エロ本は買えない」
「はーつっかえ。オナニーします」
「辞めろ。お前ほんとそれは辞めろよ。お前がそういうことすると汁とかベッドに付くんだよ! 家族にバレないように掃除するの大変なんだからな!」
お前の実体の有無はどうなってるんだ、とツッコミたくなるが月は我慢する。
「じゃあどこでオナニーすればいいんですか? 街中でオナニーしろとでも? あっそれはそれでいいですね考えるだけで興奮します」
「するな阿呆。だから興奮してそこから流すな! 部屋が汚れる!」
ええい、と月が机を叩き、立ち上がった。
「タオル持ってくるからちょっと待ってろ!」
全くこいつは! と憤慨しながらドアを乱暴に開け、部屋から出て行った。
オナニーするためのタオルすら用意してくれる。聖人だろうかと少女は思う。
そしてふと、画面の向こう側を見て呟いた。
「……これで相手さん達に見えていれば公開オナニーショーとイケたんですがねぇ」
■
同時刻。ある一室で会話を聞いていた者達が居た。
「……これはどういうことでしょう」
ホテルの一室。
高級ホテル──とまではいかない一室で男たちが男の部屋を隠し撮りするという珍妙な光景が繰り広げられている。
「む、息子が……心の病気だったなんて……」
一人、がっくりと膝から崩れ落ちる。
崩れ落ちたのは夜神総一郎。夜神月の父である。
家族がキラ──大量殺戮犯の可能性があるとカメラと盗聴器を付けられ、その上息子が見えない誰かと会話をしている。
その会話声を聞くだけで総一郎は心に深い傷を負った。
「……それはないでしょう。ちゃんと見てください」
「何を……L……息子の異変にすら気づけない愚かな父だったんだ私は……」
「いやよく見てください画面を」
「なにを──」
そこで総一郎はようやく、画面を見る。
そこには、空に浮かび上がるエロ本を目にした。
「な、なんだあれは?!」
総一郎は息子が虚空に話しかけ、会話を成立させていたところで倒れこんでしまった。
だから気づけなかった。虚空にエロ本が浮遊しているという現象に。
更にエロ本はパラ、パラとページが捲られ、布団が謎に湿る。
「……夜神月。彼がキラである可能性は非常に高いでしょう。そしてキラでなかったとしても──彼は"何か"と対話をしていた。
それがいったい何なのか。単なる心の病気では済まない。その会話内容も精査するべきでしょう。
その"何か"が幽霊なのか悪魔なのかスタンドなのか。実際がなんだとしても──その話を聞きださなければならない」
『ほら! タオル持ってきてやったぞ! するならこれを使え!』
『ほんと月君いい男ですね。私と一発しません?』
『するわけないだろ! するならまともな女とする!』
『えー? いいんですか? 私の具合は最高ですよ? 人間では決してあり得ない肉体構造による快楽はあなたがTSノートを使っても決して得られるものではありません』
『……それはちょっと気にな……いや駄目だ。するならまともな──人間の女とするべきだ! それにこういった行為は恋愛関係にある者同士がすべきだ!』
『硬いですねぇ。硬いのは頭じゃなくてそのおちんぽだけにしません?』
『ちんこだけ硬くするとかないわ! いいからその汁止めるかタオル使え!』
しかしなんでこうぱんぱん下ネタが飛び出すのだろう。二人はやっぱり心の病気ではないか。そう心配した。
■
「……父さん。いきなりこんなところに連れ出して、いったいなんだよ」
「あれじゃないですか? レッツ家族を含めて乱交パーリナイじゃないですか?」
「お前ほんと黙ってろ」
小声で呟き腕を振るう。
他者から見れば突如腕を振るったようにしか見えないが月の腕は正確に少女の腹に当たった。
そして少女は「腹パンアクメですか。いいですね。いい性癖だ……!」とまたから汁を垂れ流す。もうやだこいつと月は空を仰ぎたくなった。
あれから数日。無事大学に合格した月は突如ホテルの一室に呼び出された。
受験時に少女が胸を押し付けたり「カンニングではなくガンクンニしろおらぁ」と股間部を見せつけてきたが月は乗り越え、主席の座を取ったのだ。
そうしてこの女と大学に通うのか、と少々絶望していた時に突如自らをLと名乗り、更には自分をキラ──大量殺人犯と疑う流河。Lが話を持ち掛けてきた。
突如大事な話がある、と連れられた先はまさかのホテル。
そして連れ出された先には父とその同僚である刑事達。この集まりは一体なんだと月は思案する。
「思案ではなくしゅあぁん♡すべきでは?」
黙ってろ、と言いたくなるが月は黙る。ここで叫べは自分はただの異常者にしか見えないから。
「……さて。先日ぶりですね月君」
「……流河か。……もしかして僕をキラと断定し、捕まえようとでも思って連れて来たのか? 無理やり自白でもさせようと?」
「そうではないですよ。ただちょっとお話がしたいだけです」
「あぁ。月……実はな、お前が時折虚空と話すのを、見てしまったんだ」
「なっ……──バレていたのか」
「……やはり自覚はあると? いえ。他者から"虚空と会話しているように見える"という自覚はあったのですね」
(……クソ! やっぱりこいつ頭いいな!)
自身と同じ全科目満点での主席入学者。椅子の座り方は非常に変だが頭が回る。
頭脳では自分と同じかもしれない──と月は戦慄する。
「これあれじゃないですか? もうTSノートの存在ばらすしかないんじゃないですか?」
にやにやと、少女は笑いながら月の耳元で囁く。
それに対し
「ああ。そうするしかないようだ」
あっさりと、少女の提案を受け入れた。
「えっ」
きょとん、と少女が止まる。先ほどまで垂れ流しになっていた股間部からの液体も止まった。
「父さん。そして流河。これから話すことは荒唐無稽。到底信じてもらえるようなことじゃないのは百も承知。だが信じてもらえないと話にならない」
肩にかけたバッグから、月は一つのノートを取り出した。
タイトルに同等とTSノートと書かれた本だ。真っ白な表紙に赤くTSノートだけ書かれた異様な本。
それに対しL以外の全員が怪訝な眼で月とノートを見る。いったい何が始まるというのか。
「まず第一に。この本の存在だけは信じてもらえないと話が進まない。僕をキラだと疑ってもいい。僕の言葉の全てを疑ってもいいだろう。だがこの本を──TSノートだけは信じてほしい。
それさえ信じてくれるのならば、僕は全力でキラ逮捕に協力しよう」
「……キラ逮捕に協力って、自分の名前を書く気です?」
「ああ。それはするよ。あとでね」
「……うぉーい。まじですか」
面白くなってきた、と少女はワキワキと腕を動かす。
「……月。いったい誰と会話しているんだ? いや、だがその本……TSノート? いったいなんなんだ?」
何かの冗談では? と松田が疑問を抱くも、月のその目は真剣そのものだ。一切の揺らぎ亡き目にこの場の全員が──Lでさえ動揺する。
「さて、どう書くか……」
「あ、今ここで女にならなくていいですよ? その本他者に触れるだけで私の存在認識できるようになるので」
「お前ほんとそういう大事なこと先に言えよ!! これ家族が先に触れてたらどうするんだ!」
堂々と怒り、叫び声をあげる。
その姿に全員が"やはりただの精神異常者では? "と疑問を抱くが月は気にしない。
そのまま頭を掴みアイアンクローのごとくぎりぎりと頭を握りしめる。
「きゃー! 月君のエッチ!」
「エッチじゃねぇしHはHでもお前に味わわせるのはhellの方にしてやる!!」
これなら名前を書いてTSノートの効力を信じさせる必要は無いな、と多少の安堵を感じる。
最後にこの変態! と叫び、もう疲れたと頭を離した。
「……はぁ。全く。父さん。流河。この本に触れてくれ。それですべてがわかる」
何が何だかわからない。全員が止まっているにも関わらず一人月は話を進める。
流石に信じてもらえないか、と月が諦めかけた時流河が立ち上がった。
「信じる、信じないはまずその本に触れてからにしましょう」
「──ありがとう流河。君とは生涯の友人になってもらおう」
なるだろう。ではなくなってもらおう、という言葉に疑問を抱くもLはノートに触れた。触れてしまった。
「? ……? え……!? なに? なんですかあなた?! ていうかなにをしているので?!」
「なにって……ただおまんこおっぴろげて歓迎しているだけだが?」
「お前の誰ともそういうことをする姿勢ある種尊敬するよ。いやほんとに」
流河が見たのはいたいけな少女が全裸でガニ股。かつ女性器を両手で広げている光景だった。
なんだこれは。いったい何が起こっているのか。理解できないというよりしたくない光景だ。よく見れば足を伝いカーペットに妙な染みが出来ている。
「え、L? どうした?」
そこに不安の声を総一郎が上げる。
その姿をLは認識し、この少女が自分と月にしか認識されていないことを悟る。
「……なるほど。なるほど。全員道連れです。全員本に触れてください」
「わ、わかった……そういう話だからな」
そして一人ずつ、ではなく全員が同時に触れた。
「welcome」
「「へ、へんたいだー!」」
全員が目にしたのは全裸の少女。更に蟹股で何故か自身の胸をその手で指している。
「さぁ始めようL。共にこの変態と。世界最悪の犯罪者であるキラを捕まえよう」
「すみません今からでも辞退できません?」
「許さん」
この事件に関わったのは人生最大の失敗かもしれない。Lは嘆いた。
かくしてデスノートとTSノートによる戦いが始まったのだ。