なんとなく、二次小説を書きたくなったので夏の終わりに簡単にですが、書きました。
続くかは不明です。

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進路希望

「ねぇ、卒業したらまりなちゃんはどうするの?」

 

ふと、隣から聞き慣れた声が聞こえた。

 

「はぁ...?」

 

今、私とコイツこと久世しずかは学校付近のファミレスにいる。

私たちが高校に進学してから、ママの機嫌が良い日はよくコイツとここに来ることが一つのルーティーンの様なものになっている。今朝の時点ではママの調子はかなり良さそうだったので、今日も2人でダラダラとお店に居座っているのだ。

私たちはいつも決まってポテトとドリンクバーを注文し、だいたい2~3時間ほど粘ることが多い。

 

「そんな先のことなんてまだなんも考えてねぇよ。」

 

当たり前だ。

 

私達は高校2年生なのだから、そんなことを真面目に考えたことなんてない。

確かに今は12月。今年も後数日すれば終わってしまう。

来年の4月からは高校3年生なわけで、そうなると否が応でも先のことは考えざるを得ない。何より、学校では先生達が受験を意識しろと言ってくる。

けれど、私達が進学した公立高校は偏差値が50程度の学校なので、卒業生の半分近くは卒業後には就職する。なので、私自身もそうなるんだろうなとぼんやりと考えてある程度だし、受験なんて面倒なものをしたいとは思わない。

 

そもそも、こんなクソ田舎に暮らしている私が大学に行くとなると一人暮らしは確定だ。それはママを置いていくことになわけで、あの状態のママを置いて家を出る事なんて私にはできない。

 

だから、将来の事なんて考えたって───。

 

「じゃあさ、何処か同じ大学を受験して一緒に暮らそうよ」

 

・・・何言ってんだコイツは。

 

ポテトを口に運びながら、コイツの唐突な発言に呆れかえる。

 

コイツには、常識というものがあまりない。

あのクソ親の血を継いでるからか、両親が離婚してからずっと放任されていたからか、はたまた両方が原因なのか。何が原因かは知らないが、コイツはとにかくものを知らないし、人の話も聞かない。

そんなコイツの常識の無さに、これまで何度頭を抱えたことか。

それでも、きちんと言ったことはしっかりと覚えて改善している辺り、ほんとに知らないだけなんだろうなと思う。まあ、未だにコイツの会話の脈略のなさだけは改善される兆しはないのだが。

 

それに関しては、もはや諦めているので別にいい。

 

「なんだってお前みたいなアバズレなんかと一緒に暮らさないといけないんだよ。」

 

「だって、私にはまりなちゃんくらいしか友達いないし、まりなちゃんにも私くらいしか友達いないじゃん。」

 

「うぜー、次言ったら蹴るから。」

 

本当にムカつく。

 

確かにその通りだが、コイツはそれを自分で言って傷つかないのだろうか。

まあ、傷つかないんだろうな。

なんたって、コイツは興味のない事はとことん関心がない。

いや、持てないというべきか。

そんな性格を羨ましいとは思わないけれど。

 

「で、なんでそんな事を聞くんだよ。」

 

「ほら、月曜のホームルームの時間に進路希望調査の紙あったでしょ。色々考えたんだけど、何も思い浮かばなかったの。そしたら先生に今週末まで提出を待ってもらえることになったの。」

 

「その結果、明日が期限なのに何も浮かばなかったと。」

 

うん、と小さく頷かれる。

 

本当にコイツらしいというか、そんなの適当に書いて出せばいいものをと思うのだが。

 

実は私も同じ状況だったりする。

コイツと同じ状態というのはなんか腹が立つ。

腹が立つが、実際に何も書けない自分が悪いので喉から出そうになった言葉を飲み込む。

 

さて、どうしたものか。

 

「まりなちゃんも書けてないって聞いてるから、一緒に考えたらどうかなって。」

 

なんでそれを知っている。

 

「なんで、私が書けてないこと知ってるんだよ。」

 

「先生が教えてくれた。2年生で白紙で提出したのは私とまりなちゃんだけだって。お揃いだね。」

 

「はぁーーー。勘弁してくれよ。」

 

頭を抱えてしまう。

あのクソ担任、余計なこと言いやがって。

 

「というか、そこからなんで「一緒に暮らそう」なんて話になるんだよ。説明が足りてないんだよ、説明が。」

 

「え、せっかく卒業するんだったら家を出たいじゃん。でも、一人で暮らすのはお金的に厳しいと思うし、それならまりなちゃんと一緒に暮らした方が少しは負担も減るだろうし、楽しいかなって。」

 

しずかの言葉を聞いてポテトを口に運ぶ手が止まってしまう。

コイツ、今、なんて言った?

 

───せっかく卒業するなら家を出たいし───。

 

そんな発言をコイツの口から聞く日が来るとは思わなかった。

 

いや、思いたくなかっただけかもしれない。

でも、何もおかしなことじゃない。

コイツにはこの町での良い思い出なんてほとんどないわけで、それならこの町に残り続ける理由なんてないだろう。コイツにとって、この町は興味のない、どうでも良い場所。

 

だったら、卒業と共に外に出て行っても何もおかしくないはずだ。

 

「大学じゃなくてもいいんだ。大学行くのはお金かかるって聞くし、普通に2人で何処かで暮らすだけでもいいし。」

 

その無計画な想像力が、すごく羨ましい。

私だって、できることならこの町を出たい。でも、ママを置いて出ることなんて私には───。

 

「まあ、その話はおいといて、まずは進路希望調査をどうにかしないと。私考えたんだけど、お互いやりたいことをノートに書いてかない?そしたら何か進路希望に書くものが見つかるかも。」

 

悪い方向に流れていた思考をしずかの提案に答えるために断ち切る。

こんなどうしようもないことを考えても仕方が無い。

 

「たっく、しょうがねぇなぁ。」

 

私は内心を誤魔化す様に笑いながらテーブルの上にあるポテトが入ったお皿を少しどかして、鞄からノートを取り出す。

するとしずかは鞄の中から筆箱を取り出して、土星ウサギのボールペンを取り出す。

 

「まずは、提案したお前から何か案を出せよ。」

 

「え、何も考えてないよ。うーん。」

 

ホントにコイツは考えなしだなと呆れ返る。いつかこの調子だと痛い目に合うと思うが、このアバズレのことだがら、なんだかんだと上手く解決するんだろうなと思う。

 

「あ、タコ食べたい。」

 

何言ってんだコイツは。

 

これからどこに行きたいかって話をしてるのに、真っ先に口から出る言葉「タコを食べたい」だなんて。

進路希望調査を埋めるための内容を考えるためにわざわざノートを出したのに、いきなりレールを外されていしまった。

 

本当にバカなやつだ。

 

その先の苦労も少しは考えるべきだ。

でも、コイツのの事だからそんなこと考えてないんだろうな。

 

それが───とても羨ましい。

 

コイツの母親は確かにクズだけど、コイツは母親に囚われていない。

無知だけど、不自由ではないのだ。

 

そんな事をぐるぐると考えていると、急に話を振られ我に戻った。

 

「ねぇ、まりなちゃんはどこか行きたいところないの?さっきから私ばっかり案を出してるじゃん。」

 

ノートに目を落とすと既に10個くらい書かれていた。

 

どれもくだらない事で、なんならこの小さな町の中でもできそうなものもあった。コイツから進路の話を出してきた癖に、既に話は明後日の方向に進んでしまっている。私も進路希望調査の紙には何かしら書かないといけないのだから、何か考えなければ。

 

───やりたいこと、何かあるだろうか。

 

「なんでもいいから、何か言ってみてよ。パッと思い浮かぶものとかない?」

 

そう言われ、少し考えたところで自然と口から言葉が漏れ出た。

 

「じゃあ、海行きたい。」

 

自分の発言に驚く。

 

海に行きたい、しかもコイツと海に行く事を私は想像していた。

家族との懐かしい思い出の場所、まだ、何も辛い事がなかった頃の記憶。

それをよりにもよってコイツと更新したいだなんて事を思う自分に驚く。

 

コイツのアバズレクソ親のせいで私の家庭は壊れたというのに、そのアバズレの血を引くクソゴミなコイツと行きたいと私は思ったのか。

怒りは湧いてこない。

代わりに、安心感だけが私を満たしている。

 

「いいじゃん。そしたら沖縄とかいいかもね、ここからだと真反対みたいな場所だし。他には?」

 

「他には───」

 

結局、この日はコイツに私も釣られてしまい話はどんどんと明後日の方向に行ってしまった。

何も見つからないまま気づけばお店を出る時間になる。

 

結論の出ないまま、私達はお店を後にした。帰ったら適当に考えて埋めなければならない。一体、何のための時間だったのか。

 

そう考えると、少し腹が立ってきた。

 

・・・ほんと、ばかみたいだ。

 

でも、将来について考えるのは案外、楽しいのかも。

なんて、思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったっく、どうすんだよ。結局何も決まらなかったじゃねぇか。」

 

隣を歩くまりなちゃんから愚痴が聞こえる。

結局、私たちの話合いはグダグダになってしまい、何も決まらなかった。

話は明後日の方向に流れてしまい、気づけば退店する時間。

時刻は22時。

夜も深くなってくる時間で、帰って少し家事をしたらもう寝ないといけない。

まりなちゃんとファミレスを後にして、ゆっくりと帰路に着く。

 

私たちの家は学校からかなり離れたところにあるので、帰るのにも一苦労だ。

冬になると流石に自転車で通学するのは難しいので、1時間に一本程度のバスで通学をしている。バスから降りた私たちは、家までの道をゆっくりと歩く。

さすが田舎と言うべきか、ほんの気持ち程度の街灯があるだけなので夜空がハッキリと見える。

昔は良くお星さまにお願い事をしたっけ、とぼんやりと昔を振り返る。あの頃は良いことなんて何もなかったけれど、ここ最近は「今はそんなに悪くないな」と思えることが増えてきた。

 

いつもの見慣れた通学路、

いつもの見慣れた星空、

そして、なんだかんだと私にペースを合わせて隣を歩いてくれるまりなちゃん。

 

そんな当たり前が私は凄く嬉しい。

決して、私には手に入らないものだと思ってたから。

 

ツンと刺す様な冷えた空気にやられたのか、ふと、センチメンタルなことを考えてしまう。

 

まりなちゃん自身は気付いていないようだけど、少しずつ変わっている。

たぶん、まりなちゃんは母親に対する叶わない願いを諦められる。

証拠はないけど、些細なきっかけ一つできっと解放されると思う。

 

だから、私もまりなちゃんもずっと一緒にいるなんてできない。

 

この関係は、ずっとは続かない。

そのうちお互いに恋人ができて、結婚して、子供を産んで、そうやってどんどんと会える時間も減って、おはなしする時間もほとんどなくなると思う。それは凄く悲しいし、寂しいことだ。

 

───でも、それは今じゃない。

 

ふと、手に何か触れた様な気がした。

 

「げ、今日も雪かよ。」

 

ゆっくりと空から雪が舞い降りて来る。

 

「この感じだと積もりそうだし早く帰ろう。」

 

そう私が言うと、同じ事を感じたのか、まりなちゃんの歩くペースが急に速くなった。慌てて私も歩くペースを上げる。

 

「明日の朝は雪かきしないとじゃん。めんどくせー。」

 

「まりなちゃんの家はお母さんが手伝ってくれるからいいじゃん。私は1人でやらないといけないんだよ。」

 

「いや、それは機嫌が良い時の話な。そんなものに期待なんかしてらんねぇよ。」

 

そんなくだらない話をしていたら、私の家の前についてしまった。

 

「じゃ、また明日。」

 

まりなちゃんはそんな一言だけ残して、そうそうに会話を切り上げ歩き出した。

 

「また明日。」

 

私もまりなちゃんにお別れを告げ、歩き出す。

 

家の中に入るとチャッピーが嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

「ただいま、チャッピー。」

 

チャッピーのモフモフした体を撫でまわした後、家に上がって簡単に家事をして、お風呂に入って布団につく。

そこで、ようやく進路希望調査が白紙なことを思い出した。

でも、布団から出るのはめんどくさいし、何より、ようやく暖かくなってきたところなので、このままやっくるであろう眠気に身を任せてしまいたい。

 

───あした、なんとかすればいいや。

 

そう、自分を納得させて目をつむり、心地の良い眠りに身をまかせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻はもうじき午前零時。

 

降り積もる雪は街も道も足跡さえも包み込み、

世界そのものを、白紙に変えていく。

 

何も描かれていない真っ白な景色(みらい)

 

月明かりは、眠る彼女達を優しく照らしている。




個人的に、二人の関係性は友人以上にはなり得ないのかなと思い、そういう方向性の話を書きました。感想とか誤字とか、なんでも待ってます。

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