再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿です。


正邪決戦②

 フリーゼがアイズ達の魔力を辿って転移術でダンジョンへ向かっている際、地上は大きな変化が生じていた。

 

「ぶるわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「ぬぅんッ!」

 

 突如どこからか出現した大柄の『覆面狩人』が、モンスターの群れに突っ込んで次々と敵を薙ぎ倒していく。

 

 片は両手持ち用の黒い金棒を振るっては、相手を粉砕、もしくは吹き飛ばす。

 

 片は両手持ち用の青い刀身の片刃大剣を薙ぎ払うだけで、硬さなど関係無く斬り裂かれる。

 

 ダンジョン下層や深層に生息しているモンスター達は、一体だけでも第一級冒険者に匹敵する力を持っており、そう簡単に倒せる相手ではない。現に地上で戦っている冒険者達の中には呆気無く殺されただけでなく、生きたまま餌食になった憐れな者までもいる。

 

 何としてでも生き延びようと必死に戦っている最中、二人の『覆面狩人』が全身に魔力を迸らせながら得物を振るい、先程まで苦戦していた筈のモンスター達を簡単に倒していく光景を見せられている事で思わず動きが止まってしまうのは無理もない。

 

 ある程度片付けた後に次のエリアへ向かってモンスターの群れを瞬殺、と言う行動を何度もやった結果、不利な状況だったオラリオ側の形成が少しずつ傾き始めていく。

 

 この状況を知ったフィンは頑張っている二人の行動を無駄にしないよう、応戦中の冒険者達に押し返すよう的確な指示を下す。

 

 当然、これは闇派閥(イヴィルス)にいる指揮官も気付いている。

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ、フィンのクソったれがぁ!」

 

 闇派閥(イヴィルス)の指揮官――ヴァレッタ・グレーデは舌打ちどころか悪態を吐いていた。

 

 氷壁に囲まれているザルドとオッタルの戦いが未だに終わらないだけでなく、『下層』・『深層』クラスのモンスター達が正体不明の『覆面狩人』達によって倒される報告を聞いた事で、彼女は既に不機嫌を通り越して怒りに満ちている。

 

「フィンの野郎ぉ、まだ切り札を隠してやがったのかよぉ!」

 

 ヴァレッタは『覆面狩人』について大して知らなかった。闇派閥(イヴィルス)がオラリオの市壁を包囲している間、覆面をした正体不明の連中が信者達を次々と倒していた程度の情報しか聞いていない。

 

 ザルドやアルフィアと互角に戦っていた情報を得てもおかしくないのだが、何故か彼女の耳に入っていない。最初に報告を聞いた邪神エレボスが、闇派閥(イヴィルス)の幹部達に報せないよう情報規制をしていたから。

 

 勝利が目前に迫っていると思いきや、予想外の切り札が投入された事によって痺れを切らしたヴァレッタは、近くにいる配下達に向かってこう叫んだ。

 

「おい、てめえ等! 残りのモンスターを放て! 全部だ! 都市の中央へ誘導しろ!」

 

「ぜ、全部? す、全てですか!?」

 

 味方にも被害を及ぼそうとするヴァレッタの提案に配下が難色を示すも、そんなの知った事ではなかった。

 

 敵味方関係無く被害が及ぶ悪辣な手段でありながらも、これはオラリオ側にとって非常に不味い状況へ追い込まれていく。

 

 

 

 

 

 

 モンスターの大群が再び押し寄せてくるも、動きが全く異なっていた。爆破した門の全方位からではなく、今度は都市中央へ向かっていく。

 

 一点集中の襲撃に切り替わった事で、またしても戦況が一変してしまう。モンスターが中央へ雪崩れ込んでしまった為、バベルを覆っている結界に接触し、それを維持させている魔導士達にも被害が被っている。

 

 結界が破壊され、バベルに突撃し崩壊する事態になってしまえば、オラリオは色々な意味で終わってしまう。それどころか世界中に影響を及ぼす最悪な状況になってしまう程の。

 

 それを危惧した一部の冒険者達は動き出した。まるで死を覚悟して、中央に群れているモンスターの大群に突っ込んでいる。

 

「ぬおおぉぉぉッ!」

 

 特攻する一人の老冒険者がモンスターを斬り伏せ、彼に付いてくる二人も同様に得物を振るっていた。

 

 先頭を走るのは【ロキ・ファミリア】所属のノアール・ザクセン。既に隠居していた老齢のヒューマンだが、若き冒険者達に後を託す為に命を捨てようとしていた。同派閥の古参兵であるドワーフのダインとアマゾネスのバーラも同様に。

 

 それに呼応するように、他派閥の熟練な老兵達も覚悟を決めて後に続こうとしている。後ろにいる弟子達の制止を振り切って。

 

 彼等の行動は当然フィンも遠くから目視するも、命令違反と言う理由で放置する事にした。ノアール達のやろうとしてる事を察してるのか、心に込み上げる物を耐えながら民衆の護衛を最優先するよう冷酷な決断を下している。眷族が自ら命を捨てる行為を神々も止めようとはせず、感謝の言葉を述べながら見守るのみ。

 

(ああ、そう言えば忘れておったわい)

 

 若き冒険者達に意思を託そうと自爆する寸前、ノアールはある事を思い出した。

 

『オジ様達、その凝り固まった身体を治してる最中に死んだら許さないわよ』

 

 決戦前にローゼから死ぬなと約束をしていた。この戦いが終わった後に彼女のマッサージを受ける予定だったが、もうそれは叶わないと悟っている。

 

(すまんな、ローゼ。お前さんの診断(マッサージ)を受けるのは暫く先になりそうだ)

 

 次に彼女と再会するのは数十年後だから気長に待つことにした。肉体が無い魂だけの状態でマッサージを受けれるかは不明だが。

 

 ノアールはこの場にいないローゼに内心謝罪をしながら、腹に巻いていた起爆剤を着火させてモンスター達を道連れに――

 

「ちょっとオジ様方、何勝手に死のうとしてるのかしら?」

 

「自ら犠牲になろうとする行為は否定しないが、目にした以上見過ごせないな」

 

 しようとする寸前、突然現れた二人によって阻止されてしまった。

 

 

 

 

 

「全くもう、急いで駆けつけて正解だったわ!」

 

「間一髪だったな、ローゼ」

 

 各地にいる深層クラスのモンスター達を迎撃していたローゼだったが、進路が急に中央へ向かった事に疑問を抱いていた。

 

 だが、彼女はそんな事よりも嫌な予感が過った。

 

 何故か分からないが今すぐ中央へ向かわないといけないと自身の直感に従い、リヴァルを連れて到着すると、老兵のノアール達がモンスター達を道連れにしようと自爆する光景を目にする。

 

 目にした瞬間に二人は闘気(オーラ)を解放し、超スピードで一気に辿り着いて自爆を阻止させる事に成功した。その所為で顔を隠していた覆面の布が闘気(オーラ)の熱で燃えて、ローゼ達の素顔が露わになってしまったが。

 

「お、お前さん達、何故此処に……!?」

 

 ローゼとリヴァルの全身から発している闘気(オーラ)による所為か、モンスター達は何かを感じ取ったかのように動きを止めていた。

 

 ノアールだけでなく、ダインやバーラ、他の熟練冒険者達も二人の姿を見て愕然としながらも凝視している。

 

 フィンから正体がバレないよう『覆面狩人』として動くよう指示されていたにも拘わらず、ローゼ達はそんなの知った事ないと言わんばかりに堂々と顔を晒していた。

 

 その所為で熟練冒険者達はローゼを、嘗て冒険者活動していたミア・グランドの若い頃にそっくりだと懐かしんでいる。違いがあるとすれば、あの時の彼女は長身ではなかったくらいだが。

 

 彼女だけでなく、リヴァルを凝視している冒険者(特にエルフ達)もいる。ハイエルフかつリヴェリアの弟君は冒険者でもないのに、モンスター達を相手に恐れないどころか、逆に威圧させている事に畏敬の念を感じざるを得ない。

 

「ワタシ、言った筈よね? 勝手に死んだら許さないって」

 

「そ、それは……だが、今はこうするしか……!」

 

 睨みながら問うローゼに、ノアールは思わず目を逸らしそうになるも、不利な状況を打開するには仕方なかったと何とか反論しようとする。

 

「却下よ。そんな死に方するくらいなら、ワタシのテクで気持ち良く逝かせてあげるわ」

 

「おい、ローゼ」

 

 ローゼがマッサージの事を言ってるのは重々理解してるリヴァルだが、端から聞けば卑猥な内容だと思わず指摘してしまう。

 

 ミア・グランドの若い頃を知っている者達であれば絶対に言わないと断言しても、妖艶な笑みを浮かべながら口にするドワーフの美女を見た事で、一部の老兵達は少しばかり興奮する程だった。

 

『ガァァァァァァァァァッッ!!』 

 

 すると、痺れを切らしたかのように、先程までローゼとリヴァルの闘気(オーラ)に威圧されていたモンスター達が再び動き出そうとしていた。

 

 夥しい足音と雄叫びを聞いた事で、ドワーフとハイエルフの表情は直ぐに切り替え――

 

「「ハァァァァァァァッ!」」

 

 横に並びながら再び全身から今まで以上の闘気(オーラ)を放出し、更には得物をフルスイングするように振りかぶっていた。

 

「お前達、一体何を……!?」

 

「おいおいおいおい! お前ら何をやらかす気だ!?」

 

「何かとんでもない事が起きそうな気がするよ!」

 

 二人から発する途轍もない波動にノアールだけでなく、ダインとバーラも思わず叫んでしまう。

 

「オ、オリヴァス様! あれは一体!?」

 

「怯むなぁ! あんなの虚仮威(こけおどし)に過ぎん!」

 

 闇派閥(イヴィルス)側も当然恐怖しているが、現地の指揮官であるオリヴァスはハッタリだと叫んでいた。

 

 人間とは別にモンスターの中にも恐怖を感じるのもいるが、結局は本能に抗えず、そのままローゼとリヴァルに襲い掛かろうとする。

 

「リヴァルゥ! 足腰衰えてないわよねぇ!?」

 

「誰に口をきいている、ローゼェ!」

 

 互いに軽口を叩き合いながらも、二人の闘気(オーラ)は最高潮に達していた。

 

 そして――

 

「「闘海(とうかい)!」」

 

 ローゼとリヴァルが同時に武器を振るった瞬間に巨大な衝撃波を放たれる。

 

 直線上にいるモンスター達は抗う間もなく吞み込まれるだけでなく、闇派閥(イヴィルス)も同時に巻き込まれていく。

 

 あらゆる物を吹き飛ばしながら進んでいく衝撃波は、破壊されている都市門すらも突き抜けた数秒後、凄まじい爆発音だけでなく、荒れ狂うような突風とオラリオ全体に響き渡る地震を引き起こしていた。




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