徒然草と青溟鳥   作:上条@そぉい!

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公式が彼女の誕生日を祝っていたのを見て、忘れていたので慌てて書きましたよ。来年も祝わせてほしい。


祝え!

 ある日の事だ。陽も天高く登り、日差しが暖かく感じ始める寒空の中で誰よりも弟子として古株だった橘福福はその場にいたメンバーを集めた。

 

「どうしたんだ、大姉弟子?」

 

 歩くたび、ほよよんとたわわなお腹が揺れる。その場の誰もが思った疑問を、潘引壺が尋ねる。大姉弟子と呼ばれた少女はふふん、とその尻尾を揺らし目を輝かせて言った。

 

「今日が何の日か、わかりますか?」

「何の日か……?すまない、まだ日が浅くてよく分からないんだが、衛非地区に何かあるのかい?祭りとか」

 

 その言葉に返すのは今最新の弟子、アキラである。

 

「いやぁ、そういうのは無かったはずだ。あれか?飲茶仙で何か催しがあるとか?」

「いえ!違います!」

「んー、でも雲嶽山の伝統的なものはまだ先だしなぁ」

 

 私、儀降ユキもちょうど良さそうな岩に腰を置き考えてみる。何もなく橘福福この子がこんな事言うわけもなく、そこには何か理由があるはずだけど。残念ながらその場にいる私達にはそれが何なのか、全く分からずにいた。

 

「何で誰も覚えてないんですか!今日は!我らが師匠の誕生日なんです!!」

 

 その言葉に、誰もが思い出したように「あ」と言葉を漏らした。

 

「そう言えば、そうだった」

 

 今朝も特に変わった様子もなくうちの妹は出掛けて行ったが、あの様子では自分の誕生日にも気がついていないのでは無いか。いや、それより姉の私が忘れていると言うのは不甲斐ないのだけど。

 

「しまった、何も用意をしていないぞ」

 

 首に手を当て、しまったと顔を歪めるアキラに、焦った様子の潘引壺。

 

「だったら何か祝わないと……買い物行ってくる!」

「私も行きます!師匠を盛大に祝うんです!」

 

 ドタドタと騒がしく適当観を飛び出した2人を、見つめることしかできないアキラと私は立ち尽くす。

 

「えーっと、どうしようか」

「そうだねぇ……」

 

 参った、何も思いつくものがない。とりあえず、いつも以上に掃除して綺麗にして、お祝いの飾り付けでもしておくべきか。

 

「それなら、僕がやるよ。リンも起こしてくる」

「あ、私も手伝うよ」

「でも、大師匠はその足だろう?無理はしないほうがいい」

 

 う、それを言われると困る。しかし、いざ祝おうと皆が動く中で自分だけ手持ち無沙汰になるのは居心地が悪い。何かしらするべきだろうか……うーん。

 

「そうだ」

 

 その中で思い付くものがあったので、私は早速出掛けることにした。場所の準備はリンとアキラに任せよう。

 

「そう言うわけなんだけど、私にご教授下さい!」

「いいよ、前にお世話になったし」

 

 この通り!と手を合わせ頭を下げたら、すんなりと了承を得られた。彼女は紅豆。飲茶仙の看板娘だ。いつも店先で客引きをしている姿を見るが、今回私が彼女に頼んだのは──

 

「でも、何でウチに?潘引壺さんとかいるでしょう?」

「そっちも忙しそうだし、何より、私が作ろうとするものに関してはここが一番詳しいと思って」

「へぇ、嬉しい事言ってくれるね」

 

 パタパタと扇子で口元を隠し笑う紅豆さんの案内で厨房を借りた。そこで作るのは──

 

「それじゃ、まずは……生地作りからだね」

 

 チャーシューまんである。儀玄の好物だ。これを手作りで渡せば、きっと喜んでくれるだろうと思って、私は作ることにしたのだ。

 

「うんしょ……」

 

 粉を練る。練るうちに次第に纏まり、生地へ変化していく。こねるのも意外と力がいるもので、結構腕が疲れてしまう。

 

「ふへー、鈍ったなぁ」

 

 足を不自由にしてからその手の動きができなくなり、体が鈍っているのを実感した。しかし、そうこうしてるうちに、生地が完成する。それを少し休ませてる間に、中身の餡作りだ。

 

「作り方はね──」

「ふむふむ」

 

 横であれやこれやと説明を受けながら一つ一つ作っていく。そうして、最後の蒸し工程を経て、完成した。

 

「できたぁ」

「おー、よく出来てるんじゃないかな?」

 

 見た目はいい。肝心なのは味だ。一つ千切って、味見。

 

「うーん……」

「あれ?美味しくない?」

「いや、そう言うわけじゃないんだけどね」

 

 なんというか、納得できるものでは無かった。美味しい、美味しいのだが、これでは足りないような気がしてならない。折角のお祝いを妥協したくない私は、再び最初から作り直すことにした。紅豆さんは、そんな私に根気よく付き合ってくれた。店のこともあるだろうに。

 いくつも試作し、納得できるものが完成した時にはもう外は薄暗く、陽が沈みかけていた。私は片手で作ったものを入れた紙袋を抱えて紅豆さんに頭を下げる。

 

「ありがとう紅豆さん、こんなに付き合わせてしまった」

「いいのいいの、お礼を言いたいのは私だし」

「お礼を?」

「この街を守ってくれて、ありがとう」

 

 そう言って、にっこりと笑う彼女に、私はジーンとしてしまった。私がしてきた事がこうして、誰かの感謝として返ってきた事になんだか感無量というか、無駄じゃ無かったんだなと、実感した。

 

「ほらほら、早く行ってきて、きっと皆待ってるんじゃない?」

「あ、そうだった、ありがとね!」

 

 杖を握る手を強くし、急ぎ足で適当観へと向かった。朝とは打って変わって、適当観は華やかな装飾で飾られており、幾つもの蝋燭の光が相待って、とても神秘的であり、荘厳さがあった。

 

「あ、帰ってきましたよ!師匠」

「良かった、朝から姿が見えなかったから心配したんだ」

 

 既に皆が集まり、ドーンと置かれた机には所狭しと料理がずらっと並べられており、どれだけ力を入れて作ったのか一目瞭然だ。その主役、儀玄は私の帰りに気がついて振り返った。

 

「姉様?」

「お帰り、儀玄」

「ただいま、姉様」

 

 そこからはお祭り騒ぎだ。皆で料理を囲み朗らかに笑う。テンションの上がった福福が辛い料理を知らずに食べ、悶絶する姿に儀玄も笑顔を見せていた。

 

「あぁ、そうだ。忘れないうちに、これ」

「これは?」

 

 紙袋を儀玄に渡す。不思議そうに中身を見る儀玄に私は笑って言う。

 

「これ、私が作ったんだ。食べてほしい」

「姉様が?」

 

 紙袋から出してみる。売られてるものと違い、形も不揃いで歪なチャーシューまん。それをパクりと食べた儀玄の顔が綻んだ。

 

「……美味しい」

「良かった」

 

 手に幾つも生傷を作ってしまったが、妹の笑顔でチャラだ。これが見れただけでその価値はあったと私は笑った。

 

「誕生日、おめでとう儀玄」

「……ありがとう、姉様」

 

 誕生日プレゼントは、10年の時を経て彼女の手の中に。儀玄はこの日を忘れないだろう。

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