怖いもの見たさは猫を殺す   作:シキセ

1 / 10
ネタバレあるかも。随時更新予定。
 ※挿絵は作者の名状しがたき手描きイラストです。気が向いたら増えます。


設定資料

■登場人物紹介

 

▼猫田 正樹(ねこた まさき)

 

【挿絵表示】

 

二教院大学の一年生。文学部所属。

あだ名は「タマ」。本人としては単に名字(猫田)に由来するものだと主張しているが、周囲からは「好奇心は猫を殺す」という言葉に引っかけてからかわれることも多い。本人も否定はするものの、妙に危ない場面に首を突っ込みやすい性分であることは否めない。

 

外見はごく普通の男子学生。特別目立つところはなく、本人も「地味」を自認している。ところが一度事件に巻き込まれると、気づけば中心に立っていることが多い。

 

ある出来事をきっかけに、第二文芸部へと関わることになり、なぜか「副部長代理」という肩書を背負わされてしまう。代理であり試用期間だというのだが、気づけばいつの間にか部の活動に巻き込まれ、怪異との遭遇が日常になっていく。

 

タマ自身に特別な力はない。ただの人間である。だからこそ、怪異と向き合うときには恐怖を抱き、葛藤もする。けれども「怖いもの見たさ」を抑えきれず、一歩を踏み込んでしまう。

 

---

 

▼狐藤 灯(ことう あかり)

 

【挿絵表示】

 

二教院大学の三年生。第二文芸部の部長。

学内では奇人として知られており、狐面をつけ、巫女装束をまとい、しばしば後ろ歩きで廊下を進む姿が目撃されている。その風貌から「人外めいている」「怪異そのものではないか」と噂されることもしばしば。

 

実際のところ、学内での彼女の存在感は圧倒的である。容姿だけなら美少女と評されることも多いが、奇抜な振る舞いと組み合わさることで独特の雰囲気を漂わせている。彼女を見かけた学生は一様に「忘れがたい」と証言する。

 

性格は一見すると飄々としており、からかうような物言いを好む。だがその実、常に冷静で落ち着いており、状況を俯瞰して判断できる芯の強さを持つ。第二文芸部の部員からは、変人扱いされながらも信頼されている。

 

彼女の家系は、遠海地方に根を持つ旧家「狐藤家」であり、神社を管理している。地方の伝承や怪異についての知識が深く、それを活かして怪異に対処する術を持つ。物語の中で彼女が果たす役割は「導き手」。タマを怪異の世界へと引き込み、また生還へと導く。

 

灯の存在は、第二文芸部そのものの象徴である。彼女がいる限り、この奇妙な部は活動を続け、怪異と対峙し続けるのだろう。

 

▼須田 公子(すだ きみこ)

 

【挿絵表示】

 

二教院大学の二年生。文学部日本民俗学専攻。

もともとは地元・遠海出身で、幼いころから祖父母に伝承や年中行事の話を聞かされて育った。学内では目立たない存在で、第二文芸部には名目上籍を置いているものの長らく幽霊部員だった。

 

外見は黒髪のショートボブに黒縁眼鏡が特徴で、やや小柄。控えめな雰囲気ながら整った顔立ちをしており、表情はおだやかだが芯に強さを感じさせる。服装はシンプルで清潔感のあるスカートスタイルが多く、調査や授業の時には書籍や資料・録音機材などを詰め込んだ大きなリュックサックを背負っていることが多い。その姿が「どこか旅の研究者のようだ」と同級生に言われることもある。

 

性格は内向的で真面目。大人数の場では口数が少ないが、興味のあることには深く掘り下げて調べる根気強さがあり、現地調査でも相手の話をじっくり聞き取り、丁寧に記録する習慣が身についている。普段は物静かだが、知識を問われると淡々と説明できる落ち着きも持つ。

 

学内では「調査好きな子」という印象がある程度で評判らしい評判はなく、本人もそれを気にしていない。しかし、周囲が知らないところで地元資料の収集や整理を手伝ってきたため、民俗学研究会では陰ながら頼られる存在となっている。表に出ることは少ないが、コツコツと積み重ねる性格と確かな知識、そして現地の人々に自然と受け入れられる柔らかな受け答えや気配りが彼女の特徴であり、調査先の年配者から「話しやすい子」と親しみを込めて呼ばれることも多い。こうした地道な姿勢が、彼女にしか築けない独特のネットワークと信頼関係を少しずつ広げている。

 

---

 

備考

第二文芸部は、第一文芸部から分かれた異端の存在。

灯はその中心にいる人物であり、タマはそこへ引き込まれた新入り。

 

■遠海怪異録

1. 【籠目婆】(沿岸部)

遠海の海辺集落に伝わる老婆の怪異。廃屋の窓から覗き込み「籠目歌」を口ずさむという。見られた者は歌を繰り返し、やがて人形のように縮んでいく。沿岸漁村では、飢饉の際に子供を籠に入れ海へ流す風習があり、それが婆となって戻ると恐れられている。近年も廃屋周辺では不気味な鼻歌が聞こえると報告が絶えない。

 

2. 【面越し】もしくは【鏡迷路】(都市部)

那珂宮市の繁華街では、夕暮れになるとガラス張りのビル街がひどく静まり返る。シャッター通りと化した旧市街の路地では、鏡や水たまりに映る自分の顔がわずかに遅れて動く、あるいは“二重”になって見えるという噂が絶えない。

最初はほんの半拍のずれだが、目を逸らすたびに映像は歪みを増し、笑う口元が耳まで裂けるほどに広がっていく。眼鏡の奥の瞳が赤く濁り、瞬きをせずにこちらを睨み返すことさえある。

やがて、鏡像は現実の自分と別の動きを始め、肩や足の角度を反転させ、こちらの歩調にもう一拍遅れた足音を重ねてくる。反射面の中で増え続ける“自分たち”は、微妙に異なる仕草で群れを成し、視線を外した瞬間、囁き声で耳の奥に滑り込む。まるで向こう側の“僕ら”が、鏡の中から呼びかけているかのようだ。

この現象の原因とされるのが、都市開発の際に旧市街地下から発掘された「二面像」と呼ばれる遺物である。市役所の収蔵庫に厳重に保管されているが、時折そこから笑い声が響くと噂される。

地元では、その像が“鏡を境界にした複写の通路”を開き、人を迷わせる「鏡迷路」を生み出しているのだと囁かれている。

通りすがりに鏡像と目が合った者は、気づけば旧市街の路地を何度も同じ角で曲がっているという。出口はいつも入口のふりをし、帰り道は別の誰かの歩みにすり替わる。生還できた者は少なく、その多くが「映らない自分を見た」と語っている。

 

3. 【蛇輪】(田園部)

遠海平野の農村に残る禁忌は「輪をくぐるな」。田畑の隅に古い縄輪が埋められており、くぐった者は体に鱗が浮かぶ。夜になると村中を徘徊し、女を求めて蛇の鳴き声を響かせるという。農村の古記録には「蛇神を嫁に迎える祭礼」があったとあり、今も田植えの時期に怪異が現れると恐れられる。

 

4. 【霞廊】(都市部・旧市街)

遠海市の旧市街、海風が吹き抜ける安宿街の一角には、いまも「霞廊」と呼ばれる廃れた宿の名が残っている。昭和末に廃業して久しいその建物は、夜ごと廊下が白く霞んで揺れるという噂で知られる。肝試しに訪れた者の証言によれば、足を踏み入れた途端、薄闇の中の廊下は果てしなく伸び、扉を開けるとそこは宿の客室ではなく、処刑場のような石畳の広間に変わっていたという。並んでいるのは人ならぬ人影──かつての宿泊客か、あるいは働いていた女たちか──いずれも笑顔のまま静止しており、視線を外した刹那に姿が崩れる。

古い記録では、この宿は戦時中に軍の秘密施設として転用され、処刑や取り調べを隠す場だったとされる。潮風に晒された木の廊下は幾千の足音を吸い込み、怨嗟と恐怖の気配を刻んだまま廃墟となった。現在も好奇心から廃業した施設を訪れた者の中には、「霞の部屋」と呼ばれる見えないはずの扉を目撃し、そこから戻れなくなったと囁かれている。遠海の住人たちは、その場所を夜に通ることを避け、「あの廊下の奥には過去の音が棲んでいる」と静かに伝え合っている。

 

5. 【影嚙】(山間部)

遠海山間の集落に、仲間を率いる青年の背後に「牙を剥く影」がつき従う話が残る。影は仲間を次々と喰らい、青年だけを庇護した。村外れの祠には「影を祀るな」と刻まれた石碑があり、かつては影を信仰対象にしていたとも言われる。現代でも登山客の一部に「黒い犬影」を見たとの証言がある。

 

6. 【覆面道】(山間部〜郊外)

遠海市郊外の旧道に、深夜「仮面をかぶった行列」が現れる。避けて走ると必ず古びた食堂に迷い込み、店主が「近道」を勧める。その道を進んだ者は翌朝、行列の最後尾に仮面をつけて歩く姿で発見される。旧道沿いの廃屋は、地元では「覆面庵」と呼ばれ恐れられている。

 

7. 【双屍眼】(湖沼地帯)

遠海湖畔の廃寺から出土した古像には「双屍眼」と呼ばれる瞳が刻まれている。覗いた者の影に眼が開き、死の衝動に駆られるという。湖畔の村人は「死者を二度見るな」と言い伝え、像を湖底に沈めたが、近年ダイバーが“笑う死体の影”を目撃したと報告している。

 

8. 【潮繭】(沿岸部)

遠海沿岸の漁村で地蔵を壊した少年が、人形の群れに纏わりつかれ繭のように覆われた。村の言い伝えでは、海から這い上がるものを封じるために「人形と貝殻で地蔵を護った」とある。廃村となった今も、海辺には白い人形が波に揺れて漂う。観光客が拾うと必ず病を得るとされ、立入禁止となっている。

 

9. 【呼び庵】(森林地帯)

遠海の山林に迷い込むと、夜に茶屋が現れ声をかけてくる。出された茶を口にすると顔が崩れ、声が二重に響く異形に変わってしまう。かつては旅人の名を呼んで“声”を差し出させる儀式が行われたとされ、森に迷った者の中には「呼ばれた」と錯乱状態で発見される者もいる。

 

10. 【婆蛇駅】(都市部・終端駅)

遠海市の外れに存在するという幻の「婆蛇駅」。夜行列車が時折停車し、九尺の老婆と蛇尾の音がホームに現れる。降り立った者は戻れず、線路を進んでも追いつかれてしまう。駅の存在は公式記録には残っていないが、鉄道会社社員の間では「婆蛇に出会えば退職するしかない」と囁かれている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。