GATE/BRAMA 三つの世界が交差した時   作:Kpt. Z.V.Jelačič

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Si vis pacem, para bellum

治而不忘乱


第4話:将軍の逡巡、または斬首前の走馬灯

 

 

 

 

 

 ファルマート大陸において広大な版図を有し、数多の従属国・部族を抱える覇権国家である「帝国」は更なる領土と資源を求め、また侵略戦争の常態化や極度に安定しているが故の停滞による閉塞感を打破するべく、帝国が持つ技術力を結集し異界へ繋がる“門“をアルヌスの丘にて2基建造し、“門“の先へ斥候を派遣した上で侵攻を始めた……までは良いものの、帝国軍は侵攻先である日本の銀座とノヴァ・ポロニアのノヴァ・ヴァルソヴィアという二つの大地にて手痛い反撃を受けていた。

 

 散発的ながらも迅速なノヴァ・ポロニア側の反撃に頭を悩ませる帝国の将軍、ナーレシ・エム・ヴァイログは同じように帝国遠征軍の最高指揮官に任命されたドミトス・ファ・レルヌムのことを案じつつも、竜騎兵や各部隊の伝令から報告される敵であるノヴァ・ポロニア軍の動向や自軍の損害をはじめとした戦況を聞き、幕僚や配下の指揮官達と共に帝国の為、征服や部隊再編の計画を組み立てていた。

 

 彼は皇帝モルト・ソル・アウグスタスから年下の同僚であるドミトス・ファ・レルヌムと共にそれぞれ10個軍団、約6万人の兵士とそれよりは少ない種々の怪異を預けられて異界の征服を命じられた際は自身の栄達と家門の繁栄の為、意気揚々と第二帝国遠征軍の最高指揮官職を引き受けたが、今になって少しずつ他の将軍に押し付けるべきではないかと後悔しつつあった。

 

 何せ、当初は「どちらの“門“の異界も、民草が戦に備えている様子は無し。また、魔法の存在を知らず、武器の扱いや戦の術を身につけてもいない。故に異界など恐るるに足らず」などと、ノヴァ・ポロニアからすれば失笑ものの甘い見通しの上に侵攻が決定されていたのだ。

 

 それが蓋を開けてみれば、ナーレシが率いる第二帝国遠征軍が足を踏み入れた“西門“の先に広がるノヴァ・ヴァルソヴィアでは初動こそ奇襲効果があったものの、それもノヴァ・ポロニアの主要都市上空に張り付けられているHALE(高高度長時間滞空)ドローンや軍事衛星によってあらゆる動きが監視され、帝国側が有するものより遥かに進んだ通信システムによって迅速に近隣の部隊に情報が伝えられ、馬よりも高い機動力を有する車両や鉄道と言った移動手段によって部隊が集められていた。

 

 それも、帝国が送り込んだ遠征軍より遥かに多い数が!

 

 そもそもとして、ノヴァ・ヴァルソヴィアを含めたアッパー半島*1全域を管轄する陸軍の第4軍と第5軍は2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、一部の部隊をポーランドやモルドバに派遣こそしたが、それでもなお現役の将兵だけで合計で約27万人を抱えており、そこに予備役の召集を行えば最大で80万人前後を吐き出せるようになっている。しかも陸軍のみで、である。

 

 そこに加えて空軍のNW-DOP(ノヴァ・ヴァルソヴィア防空司令部)管轄の防空部隊*2、空軍地上部隊*3と海軍銃兵、憲兵も含めれば現役将兵だけで60万はざらに超える上、対岸とも言えるロウアー半島*4に駐留する第6軍と第7軍や各軍部隊、そして両半島の郷土防衛隊や予備役まで含めれば、最早二つの半島に駐留する軍部隊だけでちょっとした大国と真っ正面切って派手に戦争できるレベルである。

 

 当然ながら各種物資・兵器もその分だけ、平時定数ではあるが大量に備蓄されている。具体的には155mm砲弾・砲身だけでソンム(仏軍単独)級の大砲撃戦を展開できるほどである。

 

 そして、備蓄する物資や動かせる部隊が多大であるならば、それに見合った分だけの兵站。取り立て物流能力も必要になるが、20世紀初頭の都市計画によって整備された多車線道路と、一部を代替滑走路としての運用も念頭に入れた多車線の高速道路に加え、大規模に敷設された鉄道。それも標準軌(1435mm)ブルネル軌間(2140mm)の2種で敷設された地上鉄道に加え、これまた標準軌の路面電車や地下鉄があり、更には懸垂式モノレールまで存在しているし、これらを使った物資・人員の輸送についても平時から軍と国鉄の連携によって奇襲を受けた際でも迅速に対応できるように段取りが取り決められている上、軍・国鉄共同での演習も月単位で繰り返し行われている。

 

 ノヴァ・ポロニアはやろうと思えば質も量も圧倒的な差が付いた軍、それも本来より若干数が減っている程度の、一地域の駐留部隊に過ぎない野戦軍を何個も送り込めるのである!

 

 帝国や自衛隊はより少ない人員の捻出にすら苦心する中、唯ノヴァ・ポロニアというこの一国だけは、一個野戦軍を動かすに当たって大した苦労もなければ予算や物流の制約も非常に緩いと言う、いわばチーターじみた状態にあるのだから!

 

 そして、これはノヴァ・ポロニアが徴兵制。それも戦前の日本や現代のタイのような選抜やくじ引き形式のものではなく、良心的兵役拒否や代替役務付きながらも国民皆兵の原則に基づいた大規模な兵役制度を設けている為である。

 

 一応民主主義国家ではあると言うのにも関わらず、そんな制度が存在しているものだから、平時で尚且つ冷戦終結による「平和への配当」と呼称される軍縮ブームの間ですらGDP比にして2%前後を国防費に費やしていたし、ウクライナ侵攻後からは準戦時状態と見做され、以前よりも更に大量の植民地フローレン*5を国防費に注ぎ込み、GDP比にして5%を突破しつつあり、支出額は13兆7559億3760万フローレンにまで達していた。

 

 なおこの選択についてだが、ノヴァ・ポロニア市民の民族構成は大多数をポーランド系やウクライナ系、ベラルーシ系といった国防ガチ勢のスラヴ系が占める為、このような選択は妥当と言えよう。

 

 ただ一つ欠点があるとするならば、このノヴァ・ヴァルソヴィアの軍備は何よりも長い陸上国境を有するアメリカ合衆国、そしてカナダによる侵攻に対するものであって、現在のように異世界から“門“を繋げてくるような敵に対応したものではなかったことぐらいであろうか。

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 竜騎兵や配下の部隊から寄せられる報告に、ナーレシはこの戦役が初動の時点で躓いていたのではないかという疑念を抱きつつあったが、それを脳の片隅に押しやり、冷静なように振る舞って命令を下す。

 

 

「バーンナー・ソ・カーナー筆頭百人隊長の下へ伝令に行ってくれ。内容は『直ちに我の下へ戻り、陣地の防備を固めよ』だ。急ぎで伝えよ!」

 

「はっ!直ちにバーンナー・ソ・カーナー筆頭百人隊長へ伝達します!」

 

 

 ナーレシとの仲が深く、腕前も立つバーンナーの下へ迅速に命令を伝達するべく部屋から退出して駆け出した伝令を見送ってから数秒後、怪訝そうな表情を浮かべた幕僚の1人がナーレシに問い掛ける。

 

 

「ナーレシ将軍、バーンナー筆頭百人隊長が指揮する第一コホルスは引き返させるのではなく、このまま敵陣を攻撃させた方がよろしいのでは?」

 

「ふむ、確かに普通の相手ならば彼はこのまま敵の攻撃を命じた方が良いな。敵が、普通ならばの話になるが。だが実際はどうだ、初動は兎も角として、今や敵は形勢を立て直さんと郊外から送り込まれた地を這う妙な箱蛇(鉄道)や、馬のない奇妙な荷車(トラック)の車列で多くの兵や物資を送り込んでいると言うではないか。

 これは敵が奇襲に対して迅速に対応し、部隊を動かせる術を持っていると言うことに他ならない。で、あるならば敵は相応の練度を持ち合わせていると考えるべきではないかね?」

 

「……それに、帝国の技術力では到底建造や開発が困難であろう種々の妙な絡繰りや大厦高楼。そして複数の部隊から報告された、轟音と共に礫を放つ鉄の杖。

 これらを有する国が、みすみす我らの行動を見逃すはずもなかろう。故にこそ、遠征軍の中で最も優れた技量と高い戦意を有するバーンナーの第一コホルスが必要だ」

 

 

 幕僚の問いかけに、ナーレシがよく知る配下達から多く寄せられた報告をベースにした反論をぶつけ、更には彼らが司令部として使う、人工山の上に築かれたオブワンディヤグ城から見える、遠くに林立する商業用の高層ビルや、その中でも非常に高く、豪奢でありながらも荘厳さを感じさせるゴシック様式のノヴァ・ポロニア共和国軍司令部ビルを示してみせる。

 

 高層ビルと言う明確な物証に、彼らからしても信用を置くに値する部隊からすら寄せられた種々の報告。それを根拠としたナーレシの反論と計画は、技術的格差や迅速に態勢を立て直し、反撃に写ろうとしているノヴァ・ポロニア軍の動向を鑑みても正しい選択ではあった。

 

 だがしかし、たとえ彼の配下において最も優れた技量や装備を有するバーンナー・ソ・カーナー率いる第一コホルス(大隊)が複数あったとしても、ノヴァ・ポロニアと帝国の間には絶望的な格差が存在している為、精々が消費弾薬を増やす程度にしかならないが。

 

 

「でしたら将軍、現在陣地に集結している部隊をここに留め置かせて防御を固めた方がよろしいでしょう」

 

「ふむ、そうだな、そうしよう。部隊を一つ引き抜くだけじゃダメだな、気づかせてくれてありがとう。君の意見を採用する、防御構築の指揮は君に任せた。しっかりと守りを固めてくれよ!」

 

「はっ!私めにお任せください!」

 

 

 幸か不幸か、残酷な真実を知らない彼らは大した意味のない防御陣地を構築し、すぐ近くまで迫る反撃に備えていた。

 

 

「む、これは…………!?」

 

 

 将校の1人が眼下の広場に天幕を立てて陣地を築く後詰め部隊へ防御を固めるよう指揮するべく、司令部から退出したその瞬間。彼らは窓に張られた、ノヴァ・ヴァルソヴィアの歴史におけるワンシーンを描いたステンドグラスを突き破って室内へ飛び込んできた一機の飛行物体を目撃し、それを破片と爆風の嵐の中で網膜に焼き付けながら彼らの意識は途切れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命中!室内の敵士官級人員は全滅です!」

 

「ふむ、室内の損害も許容範囲と見ても良い。概ね上からのオーダー通りってところかね」

 

 

 突如としてステンドグラスを突き破って現れてはナーレシを始め、第二帝国遠征軍の幕僚達を一気に刈り取った飛行物体の正体は、ポーランドのWB エレクトロニクスで開発され、ノヴァ・ポロニア陸軍に制式採用されてライセンス生産が行われていた"ウォーメイト"徘徊型弾薬であった。

 

 それは、帝国軍が占領して司令部を置いたオブワンディヤグ城と、陣地を築いているアニシナーベ広場を奪還する為、上位組織の師団や旅団司令部をすっ飛ばして陸軍総司令部直々に指揮されて送り込まれた第14ポーランド機械化歩兵連隊"オブロンツィ・ソワソン(ソワソンの防衛者)"が放った一撃であり、その照準は偵察ドローンや、オブワンディヤグ城内に張り巡らされた監視カメラによって定められていた。

 

 

「……それでは、上位者として連中に教育を施してやろう!」

 

「総員、前進せよ!勝利は我らのものぞ!」

 

 

 突如として爆発が発生して慌てふためく帝国兵を他所に、銃口へサプレッサー(減音器)をねじ込み、レシーバー上のピカティニーレールに照準器を乗せてM-LOKハンドガードに直接バイポッド(二脚)機能を有するフォアグリップとレーザーサイトを取り付けた自動小銃を両手で保持し、都市戦用に灰色をベースとした幾何学的なデジタル迷彩の戦闘服とボディーアーマーに戦闘服と同じ迷彩が施されたカバー付きのヘルメット。そしてパッシブ式の戦術外骨格*6を着込んだ兵士達が、連隊指揮官である大佐の命令を受けて前進し、兵士の盾になるように装軌式のIFV(歩兵戦闘車)や装輪式のAPC(装甲兵員輸送車)がその先を進んで行く。

 

 目的は帝国軍に占領された広場と城への攻撃と奪還に敵指揮官の排除。

 

 ただし指揮官の排除はウォーメイトによる先制攻撃で達成した為、残るはアニシナーベ広場とオブワンディヤグ城の奪還の二つになる。

 

 彼らノヴァ・ポロニア兵が向かう先に屯する敵は後詰の3個軍団、約1万8千名と怪異が数千体、そして騎兵のための軍馬が数百頭。それに対してノヴァ・ポロニア側は一個機械化歩兵連隊、定数通りの4800名にIFVやAPCを始めとしたAFV(装甲戦闘車両)が400両。それも、自走迫撃砲や自走榴弾砲による援護と、帝国の翼竜では到底到達しようのない高高度に陣取るHALEドローンによる監視が付いている。

 

 

 

 

 

 場所は変わって戦場となったアニシナーベ広場から、要塞地区はそのど真ん中に堂々佇むノヴァ・ポロニア共和国軍司令部ビル、そこの地下に設けられた合同指揮所となる。

 

 

「……この戦いが世界に知られたら、国際世論はやかましくなりそうですな」

 

「はん!仮に外野が騒いだとて、戦場になっているのは我らの土地だ。我々は侵略者に最大限の反撃をくれてやっただけに過ぎん。それで騒ぐようなら、(国外)はともかく(国内)はボボク*7共が無駄に騒ぎ立てる喧し家を袋に詰めて(誘拐して)黙らせてくれるさ」

 

 

 指揮所の中央にて、上等な生地を使って仕立てられた制服に身を包み、鞘に収められたサーベルやブロードソード、打刀を腰に吊るした陸軍や空軍の高級将校達はVR(仮想現実)HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被り、VR空間に投影された立体地図上で彼我の動向や投入可能な兵力を見ては帝国に対する次の一手、そして戦闘の主導権を確保するべく作戦計画を立てている。

 

 その最中にふと1人の将校が呟き、彼女の呟きを聞き取ったもう1人はどこかお気楽そうに嘯きつつも指を動かし、グローブ型のコントローラーで情報の確認や足元に投影される地図へ部隊配置を入力している。

 

 彼ら彼女ら将校達は作戦計画を立て、ノヴァ・ポロニア自慢の戦術級C4Iシステムであるシナプサ*8でそれが最前線に立つ兵士達へ伝達され、官給品のPDAを見た兵士達は伝達された計画に従い、現場の判断や解釈で計画を遂行して行く。

 

 何せそれが最も効率に優れた、先進国家の戦い方なのだから!

 

 何から何まで圧倒的な技術格差をぶつけ、アニシナーベ広場やオブワンディヤグ城の戦闘は最早まともなものと言いにくいものとなっていたが、それもこれも侵略してきた方が悪いのである。たとえ対応が過剰防衛と言えるようなレベルに達しつつあると言えど、国際法に則って考えれば悪いのは全て帝国側である。

 

 民間人に対する虐殺、民間資産の略奪、婦女暴行に捕虜とした一般市民の奴隷化、遺体損壊に他国の主権が及ぶ土地の不当な占領。それらの暴虐は宣戦布告無しの侵略から始まった以上、どうしたって擁護のしようはないし、徹底的に叩かれても仕方はない。何せ侵略を受けた以上、正義は間違いなく被害者であるノヴァ・ポロニアにあり、非は全て帝国にだけあるのだから!

 

 だから、IFVの履帯で地面に倒れた帝国兵がぐちゃぐちゃに轢き潰されるのも、武器を捨てて通じるはずもない言語で命乞いをする帝国兵が問答無用でノヴァ・ポロニア兵が持つ小銃に頭を撃ち抜かれるのも、スクトゥムを構えて戦列を組んだ帝国兵に自走迫撃砲の160mm榴弾が速射で叩き込まれて破片と爆風で引き裂かれ、歩兵が使う94mmロケットランチャーで焼夷弾が撃ち込まれて生きたまま丸焼きにされるのも、至極当然の末路である。

 

 

「侵略者共、お前達の死に様を一応憐んではやるが、赦しは与えてやらぬ。

 お前達は誰を敵に回したのか、じきに知るだろう。その時になって赦しを乞うても無駄だ、我々はお前達を徹底的に叩き潰してやる。

 安らかな眠りなど到底望めると思うな!

 

 

 むしろNBC兵器やクラスター爆弾を投入しなかっただけ理性や情が残ってるとも言えよう。何せ超大国の嗜みとして、当然ながら核兵器は戦術級も戦略級も大量に抱え込んでいるし、クラスター爆弾もまた同様である。そして化学兵器や生物兵器も研究用だがある程度は種類も数も揃えている。

 

 そうでなくても、通常戦力においてもその経済力と工業力と人的資源を活かして優れた質を有する戦力を大量に揃え、円滑に動かせるようにシステムが組まれている。

 

 そんな国が、ノヴァ・ポロニア植民地共和国という国家であり、帝国にとって───あるいは日本にとっても───到底太刀打ち出来ない、いわば炎龍のような存在である。違いと言えば、ロケットや亜神のような常人を卓越した個があったとしても到底ノヴァ・ポロニアの優位が揺るぎそうにはないくらいだろうか。

 

 

 

 何はともあれ、矮小な愚かで野蛮極まりない悪の帝国は、優れた文明を有する偉大な正義の共和国の逆鱗に触れ、恨みを買って怒りの一撃が振り下ろされつつある。たったそれだけである。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ノヴァ・ポロニア共和国軍機関紙 Hejnał Wojskowy(ヘイナウ・ヴォイスコヴィ)紙 8月29日号 より一部抜粋

 

 我がノヴァ・ポロニア植民地共和国は"門"の先に存在する国である"Czesarstwo(帝国)"からの侵略を受け、"Czesarstwo"と交戦状態にある事は周知の事実であるが、昨日8月28日を持って遂に共和国大セイムは正式に"門"の先への共和国軍の展開追認及び増派決議と"Czesarstwo"中枢の確保、そして講和条約の要件策定を完了し、対"Czesarstwo"戦に向けての正式な政府予算の編成も行われた。こちらは政府官報曰く近日中に決議が行われるとのこと。

 

 現在"ĆW-Łuk triumfalny(凱旋門演習)"*9は国王陛下及び常任評議会のみが承認され、共和国軍の予算・物資によって作戦行動が行われているが、これによって共和国軍は活動範囲を現在の"アルヌスの丘"を起点とした半径25km圏から拡大することが可能となり、敵中枢への打撃もまた可能となる。

 

 また、共和国軍は"門"の先にて日本のJLSS*10が派遣した先遣隊らしき部隊と遭遇し、平和的な接触に成功した。

 

 それによってJLSSの先遣隊より「日本においても銀座に"Czesarstwo"の侵攻を受けた」「現在は"門"の先の地域を"Tokuti/特地"(日本語でRegion Specjalnyを指す特別地域の略称)と呼称し、ここにJLSSの派遣部隊を送る計画が立てられている」との情報が得られた。

 

 JLSSの先遣隊と接触した共和国軍将兵の1人にして、我々ヘイナウ・ヴォイスコヴィ紙取材班のインタビューに応じたセヴェルィン・ボイコ中尉(第5ウクライナ・コサック銃兵師団、名誉称号"スロボダ・ウクライナ" 第27シーチ銃兵連隊、名誉称号"コショヴィーイ・オタマーン・フセヴォロド・オルシャンスキー"所属)からは「JLSSの装備は私が知る限り、2025年時点で使用しているものより古いものと見受けられる他、彼らは我が国の存在を知らず、実在するのか訝しんでいた。また、我々の兵士が持つ銃器やその部品、装具類に興味を示し、入念な観察を行ない、質問を投げかけてきた」

 

「私は通訳を介して彼らに我々が持つものの中で知っているもの、心当たりがあるものはないかと問い掛けたところ、我々の小銃に取り付けられたM-LOKハンドガードや兵士が装着する戦術外骨格、将校用のタブレット端末、そして我々の装甲戦闘車両や火砲については一切知らない、との答えが返ってきた。恐らく彼らJLSSの兵士達は、我々とはまた違う場所から来た可能性があると見られる。このことは軍の上層部にも伝えてあるし、我々現場に展開する者は概ね事実であると見ている」

 

「現状我々がどのような事態に巻き込まれたのかは不明であるが、我々とJLSS及び日本の側で共通している事項はある。それは"Czesarstwo"からの侵略を受けたことと、"Czesarstwo"に対して賠償や謝罪を得る為に部隊を展開している、あるいは展開しようとしていることである。私としては奇妙な始まりではあるが、我が国と"向こう側"の日本との友好と紐帯を確固たるものとし、足並みを揃えて共同で敵に対抗していくべきであると考えている」との答えが返された。

 

 "門"の先から現れたJLSSの存在は、彼らが我々の味方となり得るかどうかも不明な状況の中、誰にとっての奇貨となるのだろうか?

 

 しかしながら我々は間違いなくJLSSや敵軍に対して質の面で圧倒的な優位を確保していることには変わりはなく、また量に関しても必要であれば直様送れるようにインフラが整備されている為、我々の勝利を確信しても問題はない。

 

 

 

 

 

*1
ノヴァ・ポロニア呼称はグルヌィ・ミシガン(Górny Michigan)

*2
SAMサイトや戦闘機隊、早期警戒管制機

*3
ズヴォニミルが指揮する自走対空砲小隊や空軍基地警備隊等

*4
ノヴァ・ポロニア呼称はドルヌィ・ミシガン(Dorny Michigan)

*5
Kolonialny Floren / Nova Polonia Floren | ノヴァ・ポロニアフローレンとも呼称される。略称はKF、NPF。ノヴァ・ポロニアにおける法定通貨であり、上位単位としては植民地/ノヴァ・ポロニアドゥカート(Kolonialny / Nova Polonia Dukat | KD/NPD)が、補助単位としては植民地/ノヴァ・ポロニアピアストル(Kolonialny / Nova Polonia Piastr | KP/NPP)が存在する。1ノヴァ・ポロニアドゥカートは60ノヴァ・ポロニアフローレンに相当し、また100ノヴァ・ポロニアピアストルで1ノヴァ・ポロニアフローレンとなる。由来はドゥカート金貨及びフローリン金貨、ピアストル銀貨

*6
あくまでも兵士の補助を行うもの。カナダのMAWASHI社が開発したUPRISEに近い形式

*7
Bobok:ポーランド語(マウォポルスカ及びヴィエルコポルスカ方言)でポーランドの民間伝承に登場する悪魔で、伝承によると夜に悪童を詰める袋や叩くための杖や棒を持って通りを歩き、悪童を叩いたり誘拐する。子供を怖がらせて躾けるために使われる。/ノヴァ・ポロニアにおいては秘密警察・防諜機関である王立内務保安省/Królewskie Ministerstwo Bezpieczeństwa Wewnętrznegoを指す。

*8
Synapsa/ノヴァ・ポロニア共和国軍が使用する戦術級C4ISTARシステム。作戦級はネウロン(Neuron)、戦略級はネルヴ(Nerw)となる

*9
ĆWはĆwiczenia wojskowe(軍事演習)の略。Łuk triumfalnyは凱旋門を指す。

*10
Japońskie Lądowe Siły Samoobrony(陸上自衛隊)の略




補足:
ノヴァ・ポロニアの君主は副王、ないし国王と呼称される。

正式な名称は

"ノヴァ・ポロニア植民地及びノイ・クールラント植民地に於けるポーランド国王及びリトアニア大公、クールラント公の代理人にしてノヴァ・ポロニア植民地及びノイ・クールラント植民地に住まう諸民族の庇護者"

"ノヴァ・ポロニア植民地共和国大セイムと市民の信任を受けた法と正義と信仰、そして諸民族の自由の庇護者にして新世界におけるノヴァ・ポロニア植民地共和国の主"

となる。

なおノヴァ・ポロニア副王の君主号はポーランド系とリトアニア系、ベラルーシ系、クールラント系が用い、ノヴァ・ポロニア国王の君主号はそれ以外の市民が用いる。

また、ノヴァ・ポロニア副王/国王の君主号は男女問わず一貫して副王(Vicerex/Wicekról)、国王(Rex/Król)のみが使用される。これはポーランド王国においてヤドヴィガ・アンデガヴェンスカ及びアンナ・ヤギェロンカが女王(Regina/Królowa)ではなく男性君主としての国王として即位したことを前例とし、踏襲したものである。
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