GATE/BRAMA 三つの世界が交差した時   作:Kpt. Z.V.Jelačič

6 / 6
郷土防衛隊については概ねアメリカの州兵に該当する存在となります。但しアメリカのように陸軍州兵と空軍州兵に分かれておらず、徴集されたパートタイム兵員に加えて陸軍と空軍、海軍や憲兵の予備役兵も構成人員として含まれており、明確に「郷土防衛隊」として一元化されています。

その為、郷土防衛隊には航空隊も艦隊も陸戦部隊も部隊名には番号の後に必ず「予備」が付くように規定されています。
(例:第32予備戦闘飛行隊、ダリエン第2予備艦隊、第471予備戦車連隊、第75予備憲兵大隊、テール・ヌーヴ第16予備歩兵師団)

また、郷土防衛隊は航空隊を有していますが、アメリカの空軍州兵のようにステルス戦闘機や戦略爆撃機を保有しているわけではなく、あくまでも第4.5世代のマルチロール戦闘機や対地攻撃機、戦術爆撃機、輸送機のみの戦術空軍として存在しています。艦隊についても予備艦艇指定を受けたコルベットやフリゲート、駆逐艦が主力となっています。


第2章:凱旋門演習
第6話:Wojna(戦争)!!


 

 

 

 ノヴァ・ヴァルソヴィアでの“門“を用いた帝国からの侵攻を受けながらも共和国軍は迅速に現場の判断で対応し、ノヴァ・ヴァルソヴィアの防衛を達成するどころか現場判断で化学戦旅団と重騎兵*1と歩兵を先鋭に立たせての“特別地域“への逆侵攻を行い、ノヴァ・ポロニアに繋がる“門“だけでなく、その近くに建てられた同様のものらしきもう一基の“門“と丘全体の占領に成功し、付近の残敵掃討と簡易的な塹壕等の陣地構築を済ませてアルヌスの丘に留まり続けていた。

 

 そして、アルヌスの丘を抑えたノヴァ・ポロニア軍はそこで自衛隊の特地派遣隊、その先遣隊との合流を果たし、ひとまずはお互い基本的には不干渉とし。それぞれ各々の権限の内側で独自に動くことで現場はまとまり。

 そして双方の本国ではファルマートでの自国戦力の作戦行動を拡大するため政治闘争やら各種調整やら諸々の必要な手続きが繰り広げられている中。

 ノヴァ・ポロニア軍は日本よりも早く議会において、ファルマートでの展開が(事後ではあると言えど)承認され、それを受けてアルヌスの丘の基地化が急速に進められていた。

 

 そんな中、帝国も大損害を受けたと言えど手をこまねいて流れに全てを委ねているわけではなく。集められるだけの兵をかき集め、奪還のための軍団を編成し、アルヌスの丘へと差し向けていた。

 

 

「……こちら、アルファ・ウィスキー-5監視哨。司令部へ、敵大規模集団が麓から接近している。規模は概ね5万前後、攻城兵器とミュータントを連れている」

 

『司令部よりアルファ・ウィスキー-5監視哨へ、敵航空戦力については確認できるか?』

 

「あー……敵航空戦力については……竜が30騎いる、そちらのレーダーでも確認しているか?」

 

『レーダーでも捉えた、対空射撃はこちらで行う。アルファ・ウィスキー-5監視哨は手持ちの火器にて友軍を援護せよ、砲兵の射撃観測は別で行う』

 

「了解、アルファ・ウィスキー-5、通信終了」

 

 

 その、アルヌスの丘奪還のために差し向けられた帝国兵の軍勢をカニの眼のような形をした高倍率の双眼潜望鏡越しに視認したズヴォニミルは、そのまま敵の動きと規模を司令部へ報告し。

 次に目を空へ向けて見れば、そこにはどこか誇らしげにも見える様子で空を飛ぶ翼竜と竜騎士を視界に捉えた。

 

 竜騎士らは悠々と編隊を組んで空を飛んでいるが、しかしその動きも数も、とうの昔に捕捉されていたとは知らず。ズヴォニミルが司令部への報告を終えた直後、情報を共有されたノヴァ・ポロニア軍と自衛隊は手持ちの対空火器を動かし、翌竜を引き摺り落とさんと空を睨みつけさせて。

 その間に牽引式の105mm軽榴弾砲と155mm榴弾砲を装備したノヴァ・ポロニア砲兵は地上の敵へ正確な射撃を叩き込むべく、散発的な試射を始める。

 

 ズン、ズズン、と遠くから2種類の砲声が轟き、そこから少しばかりしてドン、ドドン、と大小の差はあれど榴弾が地面に着弾し、周囲に爆風と破片と巻き上げた土埃とを撒き散らしていく。

 そして、試射の結果から弾道計算の修正や装薬量、砲身の角度や方位の変更を終えて二射目を放つ。

 

 

「……おや、今度はかなり纏まっているな。多少散らすように射撃管制へ連絡するよ」

 

「そんなことは砲兵も管制も観測員から言われているでしょうから、大尉も銃を取って敵を撃ってくださいよ」

 

「……分かっているさ。別に他意なんてないんだけどね、意見具申は大事だろう?」

 

「そー言う御託は結構です。ほら、大尉も貴族なら狩猟でスコープ付きの小銃くらいは扱っているでしょう?大尉は僕と一緒に敵を狙撃しますよ!」

 

「……ノーヴィ・ダルマチアは小銃より散弾銃の方が狩猟に便利なんだけどなァ……」

 

 

 そして、監視哨にいるズヴォニミルはと言えば、砲兵の試射を潜望鏡越しに眺めてl安息員の真似事をしながら仕事を楽にやり過ごそうとしていた魂胆は少しばかりあったものの。同じ監視哨に詰め込まれた年若い19歳程の、新兵から抜け出したての二等兵に魂胆を見抜かれて尻を叩かれ、二等兵から少しばかり年季の入ったボルトアクション式の狙撃銃を押しつけられる。

 そもそもズヴォニミルが持つ技能は“前線航空管制“であり、航空機による対地攻撃の観測や修正指示はできるが、だからと言って砲兵に対するそれができるわけでもない。そもそも陸軍はちゃんと自前で観測員を揃えている。

 

 

「ほら、大尉はこれを使ってください。ウェザビー(Weatherby)ですよ、ヤンクが売ってる頑丈で性能の良い猟銃です。弾は機関銃用の8×65mm*2、製造は日本のホーワ(豊和)*3、スコープはウチの光学兵器工廠謹製。武器係曰く調整はしてあるとのことです」

 

「……はぁ、まあいいさ。ウェザビーのMark Vが良い銃だってのはよく分かっているよ、あんまり使ったことはないのだけれどね」

 

「ぼやいてないで砲兵の撃ち漏らしを撃ってくださいよ!大尉!」

 

 

 押しつけられた狙撃銃を手に取り、うろ覚えの操作手順に従って安全装置を解除してボルトを操作し、薬室を開放。

 二等兵がさっさと射撃位置に着き、可変倍率の照準器と調整可能な二脚を取り付けた選抜射手仕様のケデシュ小銃を土嚢に委託し、減音器である程度抑制された銃声を鳴らしながら射撃を始める中。ちまちまと薬室から固定弾倉へ5発の8mm機銃弾を送り込み、最後に薬室へ直接1発の曳光弾を挿入して閉鎖し。

 カバーを外して照準器を覗き、盾を構えて前進する重装歩兵の姿をクロスヘアに捉え、癖を掴む為に盾目掛けて発砲。銃口から火薬の燃焼で加速された弾頭が飛び出ると同時に、強めの反動が銃口を蹴り上げ、肩に過度ではないが短く強い衝撃を与えて照準は少しズレる。

 

 

「……おや、当たったなぁ……外れると思ったのに」

 

 

 どぉん、と重い銃声が一つ鳴り、発光体の燃焼で描かれる赤い弾道は超音速で照準通りど真ん中……ではなく、ほんの少しだけ左上にずれて盾に命中。

 そして盾には4300Jものエネルギーで丁寧に加速された弾頭の勢いを若干気休め程度に削ぐ程度の効果しかなく、そのまま胴鎧へ着弾し。胴鎧でもまた少し勢いは削がれたものの、従来の小銃弾よりも強力な対物火力を重機関銃に与える為に設計され、製造された8mm弾は盾一枚と胴鎧程度では防ぐこともできずに、弾頭はついに帝国兵の体に着弾して彼を地面へ崩れ落ちさせる。

 

 しかし初弾からの命中を叩き出したズヴォニミルはと言えば、それに喜んで自身の腕前に胡座を描くどころか、少しばかり驚いた様子で独り言を呟きながらもボルトを操作し、素早く次弾を薬室に送り込んで次の標的を照準器に捉える。

 その間に二等兵はと言えば小銃で素早く敵兵を撃ちながらも時折ズヴォニミルが持つ狙撃銃をチラチラと見やりながら、独り言へ興奮しているのを隠そうともせずに口を挟む。

 

 

「ウェザビーですよ、ウェザビー!それもホーワ製にうちのスコープと弾です、外れようがないですよ!」

 

「……随分と元気だな、これの持ち主か?」

 

「いいえ!ですが……ちょっと触ってみたくはありますね。ウェザビーのMark V、それもホーワ製は高いんですよ。何せすでに生産終了してしまっているし、中古品もあまり出回らないか値上がりしているかなんです。なんせ、もっと古いザウアー(Sauer)&ゾーン(Sohn)生産品よりも高いんですよ?確か前にうちの銃器のオークションで出品されてたのは改造と部品交換ありの1992年生産品で84か5ドゥカートくらいはしたはずです。かなりの高級品なんですよ!」

 

「ふぅん……そうか。私はマンリッヒャーの方がちょっと好きかな、弾も7mmの方が好みだ。8mmは反動がキツく感じるね、何事も適量ってものがあるんだ……そう、適量ってものがね」

 

 

 双方が持ち込んだ各種口径の榴弾砲や迫撃砲による砲声だけでなく、機関銃や小銃による盛んな銃声が響く中でも平然と会話ができるのは、ノヴァ・ポロニア兵が標準で装備する電子耳栓の恩恵であり。その恩恵を諸に受けながら、ズヴォニミルと二等兵は共に小銃で次々と敵を狙い撃っていく。

 そして監視哨や塹壕に三脚や二脚で据え付けられた機関銃は盛んに銃弾と空薬莢と弾帯とを吐き出し、近代戦の洗礼を火砲と共に帝国の軍勢へ浴びせ掛けていく。

 

 国防のために製造された物といえど、本質的には効率的に敵を──つまりは人間を──殺傷する為に設計を凝らされた兵器群の活躍は多大なるものであり。

 結果として、戦闘はすぐにとまでは行かないものの、日が傾く頃には砲声も止み、銃声も生存確認で死体に撃ち込まれるまばらなものを除けば同様に止んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 斯くしてアルヌスの丘奪還を目論んだ帝国軍の第一陣は完膚なきまでに叩きのめされ、一矢報いることも、塹壕に接近する事も叶わず。ただ近代兵器の火力によって徹底的に且つ一方的に擦り潰され、悲惨なまでの大敗北を喫することとなったのである。

 

 ただただ敵を狙って一方的に、反撃されるリスクも無しに銃を撃つだけの戦闘が終結し。塹壕から出た双方の兵士が残敵掃討と生存者の回収・拘束や戦場掃除の為に麓の方へ向かっているのを横目に、ズヴォニミルは先程まで使っていた日本製アメリカ企業販売の狙撃銃から弾を抜いて本来の管理者である憲兵の武器科へ返却し。

 自走対空砲指揮官であった頃に使っていたビグネロンの代わりに、もっと古いベレッタの短機関銃をスリングで肩からぶら下げたままに、アルヌスの丘に急ぎで建てられたプレハブ建屋の司令部に招かれていた。

 そして、司令部の中には陸軍どころかズヴォニミルをはじめとした空軍や海軍に憲兵とまるで所属を統一させるつもりもなければ、そもそもバチバチの陸戦が本職でもないようなノヴァ・ポロニア軍尉官の数名と、伊丹をはじめとした陸上自衛隊の尉官が数名。

 唐突に集められた尉官たちは彼ら彼女らより概ね同年齢か、或いは若干年下程の見た目をした、それでいて階級はかなり上の女性将校や、彼女より大分年上ながらも階級は下の佐官らの前に立ち。

 

 呼び付けられた尉官の全員は所属や人種、性別に関係なく誰もが何もわかっていない阿呆面か、完璧に理解しているように見せかけた澄まし顔のどちらかを晒しながら直立不動の姿勢を保っていた。

 

 

「初めまして、御機嫌よう、副王陛下に忠義を捧げる勇敢な騎士たる共和国軍将校諸兄・諸姉と日本国自衛隊将校の皆様。私は今次作戦たる凱旋門演習の統括官を副王陛下より拝命いたしました、ノヴァ・ポロニア植民地共和国陸軍所属、中将のルドヴィカ・イヴォナ・クンチェヴィチです。

 出自は第一共和国、ポーランド王冠領はワベンジの紋章氏族に連なるノヴァ・ポロニア貴族で、国王選挙選出権保持者でもあります。どうぞよしなに」

 

 

 が、そんな尉官達の様子は眼中にないかのように、にこやかな微笑を浮かべた女性将校もといルドヴィカは自国の尉官に対しては公用語であるポーランド語で、自衛隊の尉官に対しては側に侍らせている日系兵の通訳を経由した日本語で尉官達を呼び出した理由を滔々と語る。

 

 

「皆様には事前に各自の上官方からお伝えされたと思いますが、この場で改めて、明確に命令いたします。

 皆様にはこれより、偵察分隊を編成して敵地における長距離偵察任務に従事していただきます。これには敵軍の動向調査だけでなく、山岳や河川といった地形や街道といった戦術上把握すべきものの把握。そして村や都市での情報収集や、現地住民との交流とそれを通じての情報収集・現地協力者の確保が重要な目標となります」

 

「もちろん、皆様は現地住民との交流を行うことも任務に含まれますが、敵正規軍やそれ以外の野生生物、それから匪賊といった敵性勢力との偶発的な戦闘に備え、十分な自衛・撤退戦ができる程度の装備や弾薬が我々より供給されますのでご安心ください」

 

「これは、自衛隊の方とも事前に協議した上で合意しておりますし、我々の君主たる副王陛下からもそちら(自衛隊)へ我々の武器を提供することについての承認をいただいております。

 遠慮せず、損失なく任務を終えられるよう上手に活用してくださいまし。部下の家族へお悔やみの手紙を書くのは私達将校の仕事であり、そして将校にとっては最もやりたくない仕事なのですから」

 

 

 ルドヴィカと通訳が語り終えたところで全員へ給仕の従卒からグラスに入った紅茶が配られ、一息入れたところで今度はにこやかな微笑みを消し。コネや血統によるお飾りとしてではない、本物の貴族、本物の将校としての風格を放ちながらも、その狼のような琥珀色の目を細めて睨みを効かせながら一瞥して。

 

 

「ですので、先にも言いましたが、武器の使用に制限は設けませんし、交戦規定も同様です。我々としては敵兵がどれだけ死のうとも、敵地の民間人に戦闘で被害が出ようとも、至極どうでも良いことです。そもそも、我々の観点から見てどちらに転ぶかわからない第三者は敵も同然ですし、敵が大量に死ぬことで悲しむのは彼らの家族と自称人道主義者くらいなものでしょう。

 そして、我々にとって最も人道に即した行いというのは、侵略者を徹底的なまでに殲滅することなのですから」

 

「それに、我々が重視するのは自軍の損失だけですし、皆様の任務は情報収集です。くれぐれも、本分を違えないでくださいね。

 特に自衛隊の皆様、貴方方も本国から持ち込んだものは兎も角として、我々が供与するものについては、状況に応じて躊躇せず最低限の措置だけを施しての放棄をしても構いません。兵士と装備と、どちらがより価値が高いのかは皆様も重々承知しているでしょう?どれだけ立派な装備を持っていても、それを動かす兵隊の質。特に士気の面で宜しくないのであるならば、装備に劣れど戦意の高い民兵の方がずっとマシであるように」

 

 

 かと思えば表情を変え、にこりと笑みを浮かべながら手をぺちんと軽く合わせて。子供へ言い聞かせるような声色で放つ言葉に、ノヴァ・ポロニアの尉官はその通りだというように静かに頷いて。

 自衛隊の方はと言えば、ルドヴィカの合わせた手から意図を汲み取った従兵によって配られた和訳済みの資料を見てからルドヴィカの顔へ視線を移し、また資料へ視線を戻して。

 

 

「その……一つ質問をしてもよろしいですか?」

 

「どうぞ、機密に触れさえしなければ喜んでお答えしましょう」

 

「でしたら……ノヴァ・ポロニア軍が持ち込んでいる機材には新型の物も多くあるようですが、その理由について教えていただけないでしょうか」

 

「ふむ。それについては我々が帝国から侵攻を受けた当時、我々が即座に動かせる戦力にはその新型装備を有する師団が多くを占めていたこともあります。ですが、それ以外にもう一つ。

 ここは異世界の地です。ここにいるのは我々か貴方方か、或いはここの住人か。その三者のみの視線しかありません。と、なればここは一種の他国の誰にも見られない兵器の試験場とみなすこともできましょう。でしたら……そちらでいう、鬼の居ぬ間に洗濯、でしょうか?その諺のように、こちらで存分に試験をやってしまおうという魂胆です。

 ……貴方の求める答えはこれで満足ですか?」

 

「はい、満足であります」

 

「よろしい。他に質問はありますか?」

 

 

 1人の自衛官が手を挙げて質問を投げかけ、それにルドヴィカがことわざを交えて答える。

 実際、自衛隊側が持ち込んだ車両や銃器等の装備は74式戦車や75式自走155mm榴弾砲、60式装甲車、64式自動小銃といった旧式で、自衛隊にとって失っても大した痛手にならないようなものがほとんどである。

 それに対してノヴァ・ポロニア軍の方はと言えば、海軍や空軍と言った例外はあるものの、(比較的)古い物であったとしても十分な近代化改修を受けて一線級として通用するものがほとんどであり、更には近年になって採用された新型装備すらも混ざっている。

 そして、例外である海軍や空軍はと言えば、一応はちゃんとした冷戦期から冷戦後の自動小銃が主力であるものの、ちらほら1930年代から40年代にかけて製造されたようなスオミやベレッタ短機関銃が第一線で現役を張っていたりする有様ではあったりするのだが……念の為に言っておくと、部品の取り替えや銃床のポリマー化、ピカティニーレールの増設と言った近代化改修は行われている。それはそれとしてノヴァ・ポロニア軍はこのままスオミやベレッタとViSをM2ブローニングやB-52のように1世紀は徹底的に使い倒すつもりじゃないか、とか噂されてたりはするのだが。

 

 とまあ余談はともかくとして、実際に自衛隊とノヴァ・ポロニア軍とではかなり装備や人員といった面において差が生じており、それは投射できる火力において特に顕著である。

 自衛隊においては自走式や牽引式の155mm榴弾砲と、F-4EJファントムに搭載できる程度の航空爆弾が限界であるが、ノヴァ・ポロニア軍の場合はそれらに加えて地上発射型の戦術弾道弾(通常弾頭)や戦術爆撃機、そして戦術核弾頭を搭載した空中発射型巡航ミサイルを持ち込んでいる。

 

 

「それで……ああ、そうでした。本国は先程、正式に“帝国“へ宣戦布告をいたしました。それに伴い、我々ノヴァ・ポロニア軍は今後作戦行動を拡大する予定がありますことと、他国からの観戦武官を受け入れますことをお知らせいたします。自衛隊の皆様はその旨を確とそちらの上官や本国へお伝えくださいませ」

 

「それでは、我々からの用事はこれで以上となります。皆様、各自の持ち場に戻ってもらっても構いませんよ」

 

 

 最後の最後に自衛隊側へ盛大に爆弾を投げつけながらも、ルドヴィカから尉官達へこれ以上語ることはなし、と場をお開きにして。

 自衛隊の方は通訳が訳した爆弾に狼狽えて互いの顔を見合わせ、頭を抱えたりしながらコソコソと何かを囁き合う。情報過多で背景に宇宙が浮かんだり甲高い声で鳴く子猫になるのもさもありなん。

 何せ、自分達は米中露をはじめとした他所の国からの要求を跳ね除けている最中だと言うのに、共同戦線を組むことになった新波蘭*4の方は堂々と世界に向けて帝国に対する宣戦布告はするわ、他所の国から観戦武官の受け入れは初めるわと妙に戦争に慣れたような動きを見せているのだから。

 

 そんな彼らを尻目に、ノヴァ・ポロニアの尉官達はもう用事がないならさっさと持ち場に戻るか、と司令部を後にしていた。

 置いて行かれた伊丹ら自衛隊尉官は新波蘭尉官に置いていかないで、と雨に打たれた哀れな捨て犬のような目を向けていたとかいないとか。

 

 

 

 

 

Casus belli(開戦事由)

 

 

「本日を以て我ら、ノヴァ・ポロニア植民地共和国はファルマートの“帝国“によるノヴァ・ポロニア植民地共和国の正当なる領土にして国防の要たる要塞都市、ノヴァ・ヴァルソヴィア市に住まう市民に対する虐殺と暴行、公共財産の破壊及びノヴァ・ポロニア植民地共和国に対する挑発と敵対行動その他を含めた諸々の侵略行為に対し、国際連合憲章第7章第51条に基づいた個別的自衛権の発動及び国際連合憲章第7章第42条に基づいた軍事的制裁を実行することを全世界の善なる人々に宣言する」

 

「……我々は、“帝国“の暴虐を決して忘れぬ。我々は全知全能の神と子と聖霊と共に前進し、勝利する。

 我々はかつて我々に戦火が降り掛かった時の如く、祖国と我らの神聖なる黄金の自由と独立とを守護し、我らに戦火をもたらす全ての敵を敵地にて殲滅する!!」

 

「汝、獣の如き蛮族よ、槌矛を法とし、その跡に非道の汚臭を放つ者よ。我らは汝らの暴虐に決して屈さず、汝らの軍勢と獣とを全て打ち砕きて栄光と共に凱旋す。我らは不屈故に、我らは無敵故に、我らは不撓故に、勝利を掴み取らん。神は我らと共に、祖国は我らと共に」

 

「神よ!我らを導き賜え!我らを祝福し賜え!我らを守護し賜え!ハレルヤ!」

 

 

 整えられた長い口髭を蓄え、少し巻いた長い焦茶のオセレーデツィを左肩に垂らして黒い上等な仕立てのスーツに身を包み、政治の場よりも戦場に立つ姿の方が似合う厳しい顔付きをした恰幅の良いウクライナ系の大法官*5が身の内から溢れる強い感情を押し留めようともせずにその声や表情に乗せ、国璽と御璽2つの印章が捺印された羊皮紙の巻物を広げ、カメラとマイクの前で異世界の敵、ファルマートの帝国に対する宣戦を全世界に向け堂々と宣言する。

 

 その姿は電波に乗せられ、映像として、音声として、写真として、或いは口伝で広められて行く。

 

 なおノヴァ・ヴァルソヴィア市での動乱については公開する必要性がないと考える者もいるだろうが、そもそも軍や軍司令部と法執行機関及び司法機関の為の都市、という性質こそ強いが、ノヴァ・ヴァルソヴィア市は大都市である為に他国から訪れる者は官民*6共にそれなりにいるし、帝国の攻撃に巻き込まれた者も居たが故に、やむを得ず情報封鎖ではなく宣戦布告という形での情報公開を選択した為である。

 

 その為、数カ国の駐在武官や軍・警察の留学生とカナダ軍の将校が観戦武官兼拉致被害者の捜索協力者としてノヴァ・ポロニア軍の後詰部隊に同行し、“門“をくぐり抜けてファルマート入りを果たしていたりもする。とはいっても他国軍の介入を許すつもりまではないので、これが各国に対する最大限の譲歩になるのだが。

 

 

 

*1:
長距離進撃・浸透を念頭に置いて従来の騎兵から再編成された機械化部隊。諸兵科連合部隊としても編成されている。コサック騎兵やフサリア、槍騎兵が該当する

*2:
ノヴァ・ポロニア軍は前線からのフィードバックや第一次大戦での戦訓から、戦間期にスウェーデン(8×63mm Patron m/32)やノルウェー(7.92×61mmRB Norsk)、イタリア(8×59mmRB Breda)と同様に小銃用の7mm弾とは別で採用した重機関銃用強装弾。将来的には8.6×70mm弾へ更新される予定であるが、その割には今でも軍向けの新規生産が継続されている

*3:
実際にノヴァ・ポロニア軍へ納入したのはアメリカの民間企業ウェザビー社なのでセーフ!セーフです!

*4:
ノヴァ・ポロニアの漢字及び繁体字表記。

*5:
他国の首相に相当する。英国の大法官と違い、国璽の管理を担当していない

*6:
官においては士官学校・軍大学に留学している外国軍将校候補生や警察学校・警察大学校へ留学・研修に訪れた外国警察官及び各国領事館の駐在武官、視察に訪れた外国文官及び武官がある。民においては幾らかの一般観光客、鉄道や軍事、航空機といった各種分野のオタク達に加えて水上の国境を超えて訪れたカナダ人の貨客船乗員や観光客達等

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

誰が悪魔博士だよ(作者:蓮太郎)(原作:ハイスクールD×D)

皆が名古屋弁を想像しそうな転生者が人類のリーダーとなるため奮闘する。▼そして悪魔博士と呼ばないでください、名古屋弁はツールで変換してるので勘弁してください。


総合評価:724/評価:8.85/連載:3話/更新日時:2026年07月29日(水) 22:21 小説情報

CyberPunk: EDGE CASE(作者:エネーロ)(原作:Cyberpunk2077)

目が覚めたらそこは最悪の街だったーーー▼ふと気づくと2020年代のナイト・シティ。▼体は時代錯誤(2077)のクロームまみれ。能力はMOD基準。▼企業にバレたら実験動物よろしく解剖コース。▼生き残る道を探しながら、ジョニー達と関わっていくことになる奮闘劇。▼本作品は設定作成、本文一部にAIを利用しています。▼


総合評価:3610/評価:8.8/連載:28話/更新日時:2026年07月30日(木) 00:00 小説情報

世界に冠たる帝国よ永遠たれ(作者:ちんすこー)(原作:幼女戦記)

存在Xは悩んでいた。▼どんなに試行してもターニャちゃんが自分を信仰してくれない。▼悩んだ存在Xは知り合いの天照大神ちゃんから貰った面白そうな魂をターニャちゃんの世界にぶち込むことにした。▼※▼この作品は敵国をなぎ倒す爽快ストーリーではありません。▼ちなみに作者は一次大戦や独ソ戦みたいな大出血戦が大好物です。つまりそういうことです。▼AIは補助として使用してい…


総合評価:3456/評価:8.52/連載:73話/更新日時:2026年10月19日(月) 16:38 小説情報

エルフの集落のババア専(作者:ジジイ)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

エルフの集落は、誰も彼も美男美女。ただしエルフが美醜を判断するのは顔ではなく魂らしい。そんな世界に転生した俺が惚れたのは、優雅で色っぽい美女たち。──なお、エルフの感覚では、全員とびきりのババアである。


総合評価:8740/評価:8.85/連載:13話/更新日時:2026年10月05日(月) 21:00 小説情報

貞操逆転世界を三大欲求強めに生きるだけ(作者:逆転逆転逆転逆転逆転)(オリジナル:現代/恋愛)

よく寝て、よく食べて、よく抱かれて。▼マルチ投稿


総合評価:3216/評価:8.56/連載:6話/更新日時:2026年09月19日(土) 02:04 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>