かなり特殊なセクハラを食らうマスターの話 作:テノちに永住希望
「えっと……ここよね?」
イギリスの辺境。
こじんまりとした豪華さのかけらもない一軒家の前で、白髪の少女が何度も地図を見直して現在地を確認している。
そして、数回の深呼吸の後、意を決してその家のドアをノックする。
「……ロックさん?いるかしら?」
ギギギ、と音を立ててドアが勝手に開く。
どうやら少女の目的の人物の所在はこの家であっていたらしい。
「……何の用事だ、アニムスフィアのお嬢さん?」
「知り合いですか?」
一軒家の中、玄関から真っ直ぐに向かうことのできるリビングには黒髪で、その髪と同じような黒色のコートとベージュのデニムの男が一人。
そして、白髪の少女──オルガマリー・アニムスフィアを睨みつける肩出しのジャケットとショートパンツの目立つ少女が一人。
「……それが、あなたのサーヴァント?」
「おっと、もうそこまで話が広がっているのか」
「えぇ、だからこそあなたに会いに来たの。サーヴァントを個人で運用し続ける魔術師で、しかも先代までほぼ理論だった魔術を行使してみせた……あなた、時計塔の魔術師に狙われてもおかしくないわよ」
「そして、あなたも同じ時計塔の魔術師。そうです、ね?」
サングラスの奥に隠れていた少女の瞳が赤く輝く。
前に出ようとした少女を男が手で制する。
「まぁ、ちょっと待て──あ〜、呼び名を決めたかったな。ライダー…でいいだろう。ライダー、こいつは俺の知り合いの紹介で来たらしい。二世の目は確かだ。警戒だけでいい、手を出す必要はない」
「……いいでしょう」
少女はマスターである男の指示に従い、敵意を隠す気はないものの拗ねた様子で後ろに下がった。
「……で?本題は?」
「あなたをカルデアに招待したいの。リーダーとなるAチームはすでにお父様が集め終えているけれど、後方の予備部隊となるBチームのリーダーをあなたに任せたいの」
「ほう、それで?俺の利はなんだ?」
「カルデアは南極にある施設で住み込みになるから、先ほど言ったような時計塔の他の魔術師があなたたちに手を出すことを阻止できる。あと、一応職員として給料が出るし、カルデアには最新設備も揃ってるし……」
不安になったのか、今思いついたような利点を追加で上げ始めたオルガマリー。
すると、そこに彼のサーヴァントが食いついた。
「……最新の設備だそうです。見にいく必要があります、ね?」
「まて、対抗心を燃やすな。見に行かずとも調べればわかることだろう?ここは熟考をだな──」
「いえ、そこに立って見なければわからないものがあります。最新の設備、住居を見に行くべきです」
「……はぁ、オルガマリー・アニムスフィア、なぜ俺に目を付けた?」
サーヴァントの言葉に反論する気力すら無くしたように、彼は話す相手をサーヴァントからオルガマリーに移した。
「カルデアがこれから直面するのは歴史上の歪み、特異点よ。その修復にはなるべく多くの強い魔術師が必要になる」
「その条件なら、俺は当てはまらないのではないか?俺の魔術はごく限定的なものだ」
「いいえ、あなたこそ適任のはずよ。だって、特異点こそこの世界において最大級の
「……ほう、俺の魔術が通用する可能性に賭けると?」
「えぇ、その通りよ。あなたは私が呼び出せる中で最も特異点攻略の可能性がある魔術師なのだから」
「……わかった。ライダー、支度をしろ。行くぞ」
「えぇ、もう済んでいます」
こうして、魔術師アッシャー・ロックとそのサーヴァントがカルデアに迎え入れられた。