一通り準備を終えた俺達は街を出る。
ついてきてくれたのは、ソウゴ、ジュンコ、オレガノのだけだった。
リュウスケ達は何やら美しい姿を持つモンスターマスターにスカウトされ、ついていったらしい。
準備を進めている間、ソウゴとリュウスケは互いに最強を目指すライバルとして裏でバチバチしてたらしい。
ロマンが溢れて良いことだ。
雪道を抜けて南下している最中だった。
『何だ?』
突然周囲の時間が止まった。
落ちる木葉は空中で停止し、川の流れも止まり、飛んでいる鳥も空中で止まっている。
『これは…』
「何だ何だぁ?」
警戒していると、突然上空から老人の声が聞こえ、その声の正体が下りてきた。
この声を俺は覚えている。俺をこの世界に転生させた神様の爺さんの声とその姿だ。
「冒険の途中で済まんのぅ」
『……どうしたんだ?』
「実はやってほしいことがあってのぅ。いきなりで申し訳ない」
神様は俺達に訳を説明し始める。
東の国の一件で現れたジャックという名のオムド・ロレスはどうやら俺のいた前世の世界の凶悪犯罪者で、死因は毒ガス作成での事故死。
迷惑極まりない奴がこの世界に転生してしまったことを気づいていなかった神々は、ハーゴン神殿での戦いで発覚し、危険視した。
そして現に強くなり、進化を続けて実力を付けて行っている俺達にジャックの討伐を依頼するに陥ったという事らしい。
……天界の転生者の選び方雑じゃないか?
『んで、その尻拭いを俺達がしろという事か』
「悪いとは思っておる。じゃけども、神が
「このジジィ…!なんて奴を転生させてんだよ!」
どうやらあまりの雑さと神々の責任の無さにソウゴの怒髪天を衝いてしまったらしい。
頭の上のナイトドールが拳を握り、神様に右ストレートを決めた。
「こぉんの…クソボケがぁ!!!!!!」
鋭く突き出された右ストレートは神様の頬を捉え、直撃する。
「ぐほぉあー!!!」
神様は3mほど吹っ飛ばされ、木にぶつかった後によろよろと立ち上がった。
『ソウゴ。いくら神様に恨みがあるとはいえ、これはやりすぎだ』
「けどよ…これで、恨み言は無しだ。オレはあくまで、神様を一発ぶん殴る。それだけだ!」
成程、それで済ませて依頼を受けるつもりだったのか。
「あ、あまりに痛いパンチじゃったわ…これは孫にぶん殴られて以降、久しぶりじゃった。どうか、謝罪させてほしい」
神様は杖を置き、俺達に頭を下げた。
前世、俺のいた会社の社長は何より社員を大事にしていた。
より面白いゲームを作る会社の存続のためには時として部下に…他社に深く頭を下げるほどの人物だった。
俺はそれを思い出し、神様に話す。
『顔を上げてくれ。神様が下等生物に頭を下げるのもどうかと思うが、要は後に危険とされるジャックを倒せばいいんだろう?それは勇者にも話すつもりなのか?』
「勿論じゃ」
『そうか…わかった。その依頼、受けよう』
その言葉に神様は「本当か!」と俺の肩を掴む。
「恩に着るぞ!そうとなれば、皆にいくつか転生しても使える呪文を授けよう!」
『呪文?』
全員急遽ステータスボードを開く。
すると呪文リストに「ルーラ」と「リレミト」「レミラーマ」が追加された。
ドラクエシリーズの重要な呪文類の三種を貰えるとはラッキーだ。これでいつでも一度行った場所へ飛べるな。
「奴は今頃南の国のどこかで身を潜めておる。恐らく邪魔をした者たちを倒すために力を養ってるはずじゃ、頼んだぞ」
そういって神様は天に帰る。
数分後、世界が動き出す。
「どうすんだ?スローライフを目指すにもジャックは倒すけど、オレ達の住む場所も探さねぇといけねぇ」
『そうだな。まずは南の国で俺達の拠点を作るぞ』