オラリオのチャンイチもどき   作:まほうのこな

3 / 3
だから思ったんだ。死ぬほど強くならなきゃいけないって、そう思ったんだ。

 飯食って風呂入って気持ちよく仮眠を済ませた俺は、ロキの呼び出しに応じて神室へと足を運んでいた。

 

「よーやっと来よったな一矢ぁ、ほなちゃちゃっと【ステイタス】更新しよかぁ」

「わざわざする必要ある? どーせ上がってねーと思うんだけど」

 

 ロキの言葉にそう返しつつも、さっさとシャツを脱いで背中を晒す。どの能力値もほぼ上限いっぱいなんだが、まぁ神の勘的なモンが働いたんかね? 知らんけど。

 

「自分そない言うけど、前に更新したんいつ頃か覚えとるん?」

「オッタルさんとダンジョンで地味に殴り合いした後だから……半年前ぐらい?」

「派手に殺し合ってる定期」

 

 そんな定期的に殺し合ってるみたいな……。

 

「お互い手頃な相手いねーもんだから、ちょっと熱が入ったのは否定しないけどさ」

「ちょっとで階層1つお釈迦にすなや……あん時は流石に肝ぉ冷やしたんやで?」

「ウケる」

「ウケんなや!?」

  

 ケラケラと笑う俺を他所に、ご主神様は大変おこでいらっしゃる。

 ぶつくさ言いながら、指先に薄っすら滲ませた神血(イコル)で俺の背をなぞっていく。仄かな熱を感じると共に、俺は背中に浮かんでいるであろう道化師のエンブレムを想起する。

 その昔、神聖な儀式と見做されたものではあるものの、今となってはありふれたその行為。

 

「……ふーむ」

「粘ついた視線送るのはやめてもろて」

「そんなん(ちゃ)うわ」

「はいはい」

 

 顔面偏差値で眷属決めてる神の言葉なんぞ欠片も信用ならんのである。

 自分で言うのもなんだが、俺もご多分に漏れずビジュ良の範囲なのだ。まぁ顔は良いに越した事はない。人の印象ってのは、割と外見の占める部分が大きいからね。

 糸目で笑みの胡散臭いツラだったら、腹黒そうとか裏切りそうとか普通に言われるのが現実だ。

 尚、我がご主神様は乳も信用も無ェのだ。

 

「ちゃーんと上がっとったで」

「ほーん?」

 

 共通語(コイネー)で記された【ステイタス】の写しを受け取り、どれどれと目を通す。

 

 

 クロサキ・一矢

 

 Lv.7

 

 力 :SS1024→1085

 耐久:SS1000→1032

 器用:SSS1270→1401

 敏捷:SS1001→1048

 魔力:SSS1398→1490

 

 耐異常:A 神秘:C 精癒:D 魔導:D 

 

《魔法》

 

【デア・ミストルティン】

 ・回復魔法

 ・自動回復(リジェネイト)付与

 ・短文詠唱

 ・光属性

 ・詠唱式【其は死を遠ざけし落葉の新芽 光無けれど導は絶えず 辿るべき(つい)の先を指す兆し】

 

《スキル》

 

精霊共鳴(スピリッツアーオールウェイズウィズユー)

 ・魔力の知覚及び干渉。

 

 トータル350ぐらい……まぁ上がってはいる、か。

 しかし成長(ソレ)系スキルねーのに、なんで毎回上限突破してんだろうな。ロキん事だから隠し立てする事ァないと思うんだけど、どうにも疑わしいんだよなぁ。ドン観音寺的なコレも何処から生えたんだか。

 ……それはそれとして、だ。

 

「そろそろランクアップしとくかなぁ俺もなぁ」

「そんなポンポン上がられてたまるかい。神の恩恵(ファルナ)をなんや思てんねん」

「……人間止めさせるお薬的な?」

 

 冒険者辞めますか? それとも人間止めますか? ってなガハハ。

 

「何(わろ)てんねん」

 

 実際笑ってる場合でもないんだよな。

 ベルの事はさておくとしても、アイズ関連の面倒ごとに巻き込まれんの確定してんだし。巻き込まれるっつーか首を突っ込んでくっていうか……まぁ、うん。

 やる事は多いがそこらへんはどーにかなるだろう。今生に引っ張られて記憶は薄れるのが一番の心配だった事もあって、押さえとくべきポイントはちゃんと備忘録を残してあるから問題はないだろう。

 ……いやリューとアレな関係な時点で盛大にガバってはいるけども。

 まぁフレイヤ様が目ぇつけてんだろうから、いい感じに艱難辛苦を用意してくれると思いたい。頼むでホンマ女神様……などと他力本願寺してみる。世界とか運命とか、そういうのも助けてくれるやろ。

 俺の方は……正直一人でバカスカランクアップしといた方が良かった気がしないでもないんだけど、知人だけに留まらず、そこらの一般人の皆様にしても、単なるキャラとして見れなくなってるからなぁ……どうしたって絆されるのはしゃーないと思うのよ。ならまー派閥(ファミリア)のみんなを鍛えてやるしかねーじゃん? 心を鬼にして、0.3ベル運動しているわけですよ。

 

嘘です崖から蹴落として這い上がる様を毎回楽しく眺めております

 

 三首領がレベル7にランクアップしたきっかけになった『ドキッ☆四人で仲良く竜の壺ツアー。(命が)ポロリもあるかも?』の時とか、リヴェリアが可愛い悲鳴上げたり涙目で幼児退行起こしたりで……。

 あの時の彼女を思い出すと……なんていうか……その……下品なんですが……フフ……。

 

 下 品 な ん で や め と き ま す ね

 

 蒸し返すとレア・ラーヴァティン飛んで来そうだからね仕方ないね。

 それにしたって『鬼! 悪魔! 頭オッタル!』は無いと思わん? 言いたい事は分かるけど、頭オッタルってそれ本人に失礼やでホンマ。そもそもあの人、他人を鍛える事に頭使わんもん。

 ……俺も大概失礼だな?

 

「……なぁ一矢」

「おん?」

 

 声をかけられ再起動した俺を前に、ロキは口を開けたり閉じたり。何を躊躇っとんねん?

 

「自分、今でも十分強いやろ」

「何処がよ? 最強と最恐の足元にも及ばないヒヨッコじゃん」

 

 現最強ってくくりならそーかも知らんが、一足お先に光の速さでレベル8にダッシュしたい……んだけど、ランクアップに手頃な試練が転がってねーんだよなぁ、これがなぁ。バロールあたりしばき倒せば上がるんか? リポップ期間知らねーから無駄足踏みたくねーんだよな。竜の壺にダイナミックエントリーしても未だに上がらんのが納得いかねーわ。

 もしかして、それっくらいじゃもう試練にカウントされない感じ(満足出来ない体)になってんのかな。十分過ぎる程度には、死線潜ってると思うんだが。

 

「どんだけ強ぉなりたいんや」

「どんだけっても……とりあえず三大クエスト成し遂げるぐらい?」

「とりあえずで目指すとこ違うねん」 

 

 それはそう。

 とは言え、差し違えるならともかく犬死にしたくねーのよ。

 

「死にたくねーから死ぬ程鍛えるなんて、誰でもすることじゃねーかな……」

「温度差激しい発言ポンポンするのやめーや」

 

 なんだこの面倒臭ぇ女神は……俺の主神様だったわ。

 

「へーへー。用事済んだしもう行っていい? 書類整理手伝わんとだし、一級の連中(LV.5以上)の稽古もあっからさ」

「……せやな。ほな手伝ったりぃ」

 

 うぇーいと返して神室からおさらばするべく立ち上がる。今日はどーすっかな……一人ずつ丁寧にしばき上げとくか? ベートは放っておいてもいいっつーか、何かアイツ俺と稽古したがらねーからどーせ来ねーだろうけど。

 

「一矢」

「なんよ?」

 

 扉に手を掛けた所でロキから声がかけられる。

 

「あんま心配かけんといてや」

「……いや知らんが?」  

 

 またぞろやかましくなりそーなロキを遮る様に扉を閉めた。

 ここ最近は派閥の運営やら育成で大人しくしてんだから問題ないやろがい。実際、本来よりもイイ感じに仕上がってるわけだし? そろそろ自分磨きに時間かけてもバチ当たらんはずだろう。

 とかなんとか思いつつも、今日の稽古内容を吟味しながら自室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ホンマもうアイツは……」

 

 ロキは溜息交じりにそう零すと、机に置かれた小瓶を手に取る。

 その中身は、一矢を眷属にしてからお世話になっている【ディアンケヒト・ファミリア】謹製の胃薬である。

 因みに『薬に頼るのは良いですが、胃痛の原因を取り除くのが一番ですので、くれぐれも呑みすぎぬ様にして下さい。薬ではなくお酒をです』などと某聖女に言われていたりするのだが、一番の原因は自慢の眷族なので酒は控えていない。自棄酒の機会が増えているのは誤差のはず……と本神は供述しており、全ての元凶である一矢は知らぬ存ぜぬの一点張りである。

 苦いが効き目は抜群なソレを飲み干し、一矢に知らせていないスキルに想いを馳せる。

 

英雄渇望(ヒエロスクピディタス)

 ・上限突破(リミットブレイク)

 ・渇望が続く限り効果持続

 ・渇望が満たされた時に全てを失う

 

「……なんちゅうスキル(モン)抱えさせとねんウチは」

 

 それを抱えてる一矢当人にも物申したいのだが、スキルを知ればダンジョン狂いリターン間違い無しである。とんだクソゲーだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

生まれ変わったら赤髪の幼馴染ができました(作者:お米大好き)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

▼ 冒険者に闇派閥、時にはモンスターにさえ巫山戯る少年、タクトは、いつも軽い態度で物事に臨んでいた。しかし、その飄々とした性格の裏には彼だけが知る『ある秘密』が隠されていた。▼「あ、もう原作始まるんですね」


総合評価:3081/評価:7.6/連載:14話/更新日時:2025年07月01日(火) 04:24 小説情報

養育ファミリア メジェド・ファミリア(作者:個体識別番号0111)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 オラリオに昔から存在するファミリア、メジェドファミリアここでは多くの子供たちが暮らしている。▼「ねーねーメジェド様ーいつもそこでたってなにしてるのー?」▼ペカーー▼「わー!ひかったー!」▼ペカペカ▼「ぴかぴかしてるー!すごーい!」


総合評価:336/評価:7.4/短編:11話/更新日時:2026年05月09日(土) 20:00 小説情報

ダンジョンに家族を求めるのは間違っているだろうか(作者:アロンソ卿)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ベル・クラネルに憑依転生した現代人が、前世では捨てた家族を求める。▼元々、英雄への願望というのも薄くそのような気質があるわけでもない彼は、果たしてどのような物語を紡ぐのだろうか。


総合評価:1282/評価:8.12/連載:26話/更新日時:2026年03月01日(日) 11:16 小説情報

騎士王は迷宮都市でひっそり暮らしたいけど、エクスカリバーのビームの撃ち方とかわかりません(作者:meiTo)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

▼・一般人の30代男性▼・Fateはネットや広告などで知ってる程度▼・ダンまちも殆ど知らない『にわか系』です。▼※勢いと創作意欲がある時だけ書きます


総合評価:1035/評価:6.64/連載:15話/更新日時:2026年03月29日(日) 16:17 小説情報

女子力の低いアストレア・ファミリア&転生ラディッツ(作者:色々残念)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ダンまちを全く知らない人がラディッツの身体でダンまち世界行きとなり、女神アストレアと出会って、アストレア・ファミリアの眷族となって生きていく話▼そしてアストレア・ファミリアの女子達の女子力は低い


総合評価:1877/評価:7.89/短編:8話/更新日時:2026年02月01日(日) 12:34 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>