飯食って風呂入って気持ちよく仮眠を済ませた俺は、ロキの呼び出しに応じて神室へと足を運んでいた。
「よーやっと来よったな一矢ぁ、ほなちゃちゃっと【ステイタス】更新しよかぁ」
「わざわざする必要ある? どーせ上がってねーと思うんだけど」
ロキの言葉にそう返しつつも、さっさとシャツを脱いで背中を晒す。どの能力値もほぼ上限いっぱいなんだが、まぁ神の勘的なモンが働いたんかね? 知らんけど。
「自分そない言うけど、前に更新したんいつ頃か覚えとるん?」
「オッタルさんとダンジョンで地味に殴り合いした後だから……半年前ぐらい?」
「派手に殺し合ってる定期」
そんな定期的に殺し合ってるみたいな……。
「お互い手頃な相手いねーもんだから、ちょっと熱が入ったのは否定しないけどさ」
「ちょっとで階層1つお釈迦にすなや……あん時は流石に肝ぉ冷やしたんやで?」
「ウケる」
「ウケんなや!?」
ケラケラと笑う俺を他所に、ご主神様は大変おこでいらっしゃる。
ぶつくさ言いながら、指先に薄っすら滲ませた
その昔、神聖な儀式と見做されたものではあるものの、今となってはありふれたその行為。
「……ふーむ」
「粘ついた視線送るのはやめてもろて」
「そんなん
「はいはい」
顔面偏差値で眷属決めてる神の言葉なんぞ欠片も信用ならんのである。
自分で言うのもなんだが、俺もご多分に漏れずビジュ良の範囲なのだ。まぁ顔は良いに越した事はない。人の印象ってのは、割と外見の占める部分が大きいからね。
糸目で笑みの胡散臭いツラだったら、腹黒そうとか裏切りそうとか普通に言われるのが現実だ。
尚、我がご主神様は乳も信用も無ェのだ。
「ちゃーんと上がっとったで」
「ほーん?」
クロサキ・一矢
Lv.7
力 :SS1024→1085
耐久:SS1000→1032
器用:SSS1270→1401
敏捷:SS1001→1048
魔力:SSS1398→1490
耐異常:A 神秘:C 精癒:D 魔導:D
《魔法》
【デア・ミストルティン】
・回復魔法
・
・短文詠唱
・光属性
・詠唱式【其は死を遠ざけし落葉の新芽 光無けれど導は絶えず 辿るべき
《スキル》
【
・魔力の知覚及び干渉。
トータル350ぐらい……まぁ上がってはいる、か。
しかし
……それはそれとして、だ。
「そろそろランクアップしとくかなぁ俺もなぁ」
「そんなポンポン上がられてたまるかい。
「……人間止めさせるお薬的な?」
冒険者辞めますか? それとも人間止めますか? ってなガハハ。
「何
実際笑ってる場合でもないんだよな。
ベルの事はさておくとしても、アイズ関連の面倒ごとに巻き込まれんの確定してんだし。巻き込まれるっつーか首を突っ込んでくっていうか……まぁ、うん。
やる事は多いがそこらへんはどーにかなるだろう。今生に引っ張られて記憶は薄れるのが一番の心配だった事もあって、押さえとくべきポイントはちゃんと備忘録を残してあるから問題はないだろう。
……いやリューとアレな関係な時点で盛大にガバってはいるけども。
まぁフレイヤ様が目ぇつけてんだろうから、いい感じに艱難辛苦を用意してくれると思いたい。頼むでホンマ女神様……などと他力本願寺してみる。世界とか運命とか、そういうのも助けてくれるやろ。
俺の方は……正直一人でバカスカランクアップしといた方が良かった気がしないでもないんだけど、知人だけに留まらず、そこらの一般人の皆様にしても、単なるキャラとして見れなくなってるからなぁ……どうしたって絆されるのはしゃーないと思うのよ。ならまー
嘘です崖から蹴落として這い上がる様を毎回楽しく眺めております
三首領がレベル7にランクアップしたきっかけになった『ドキッ☆四人で仲良く竜の壺ツアー。(命が)ポロリもあるかも?』の時とか、リヴェリアが可愛い悲鳴上げたり涙目で幼児退行起こしたりで……。
あの時の彼女を思い出すと……なんていうか……その……下品なんですが……フフ……。
下 品 な ん で や め と き ま す ね
蒸し返すとレア・ラーヴァティン飛んで来そうだからね仕方ないね。
それにしたって『鬼! 悪魔! 頭オッタル!』は無いと思わん? 言いたい事は分かるけど、頭オッタルってそれ本人に失礼やでホンマ。そもそもあの人、他人を鍛える事に頭使わんもん。
……俺も大概失礼だな?
「……なぁ一矢」
「おん?」
声をかけられ再起動した俺を前に、ロキは口を開けたり閉じたり。何を躊躇っとんねん?
「自分、今でも十分強いやろ」
「何処がよ? 最強と最恐の足元にも及ばないヒヨッコじゃん」
現最強ってくくりならそーかも知らんが、一足お先に光の速さでレベル8にダッシュしたい……んだけど、ランクアップに手頃な試練が転がってねーんだよなぁ、これがなぁ。バロールあたりしばき倒せば上がるんか? リポップ期間知らねーから無駄足踏みたくねーんだよな。竜の壺にダイナミックエントリーしても未だに上がらんのが納得いかねーわ。
もしかして、それっくらいじゃもう
「どんだけ強ぉなりたいんや」
「どんだけっても……とりあえず三大クエスト成し遂げるぐらい?」
「とりあえずで目指すとこ違うねん」
それはそう。
とは言え、差し違えるならともかく犬死にしたくねーのよ。
「死にたくねーから死ぬ程鍛えるなんて、誰でもすることじゃねーかな……」
「温度差激しい発言ポンポンするのやめーや」
なんだこの面倒臭ぇ女神は……俺の主神様だったわ。
「へーへー。用事済んだしもう行っていい? 書類整理手伝わんとだし、
「……せやな。ほな手伝ったりぃ」
うぇーいと返して神室からおさらばするべく立ち上がる。今日はどーすっかな……一人ずつ丁寧にしばき上げとくか? ベートは放っておいてもいいっつーか、何かアイツ俺と稽古したがらねーからどーせ来ねーだろうけど。
「一矢」
「なんよ?」
扉に手を掛けた所でロキから声がかけられる。
「あんま心配かけんといてや」
「……いや知らんが?」
またぞろやかましくなりそーなロキを遮る様に扉を閉めた。
ここ最近は派閥の運営やら育成で大人しくしてんだから問題ないやろがい。実際、本来よりもイイ感じに仕上がってるわけだし? そろそろ自分磨きに時間かけてもバチ当たらんはずだろう。
とかなんとか思いつつも、今日の稽古内容を吟味しながら自室へと戻るのだった。
「……ホンマもうアイツは……」
ロキは溜息交じりにそう零すと、机に置かれた小瓶を手に取る。
その中身は、一矢を眷属にしてからお世話になっている【ディアンケヒト・ファミリア】謹製の胃薬である。
因みに『薬に頼るのは良いですが、胃痛の原因を取り除くのが一番ですので、くれぐれも呑みすぎぬ様にして下さい。薬ではなくお酒をです』などと某聖女に言われていたりするのだが、一番の原因は自慢の眷族なので酒は控えていない。自棄酒の機会が増えているのは誤差のはず……と本神は供述しており、全ての元凶である一矢は知らぬ存ぜぬの一点張りである。
苦いが効き目は抜群なソレを飲み干し、一矢に知らせていないスキルに想いを馳せる。
【
・
・渇望が続く限り効果持続
・渇望が満たされた時に全てを失う
「……なんちゅう
それを抱えてる一矢当人にも物申したいのだが、スキルを知ればダンジョン狂いリターン間違い無しである。とんだクソゲーだった。