高層ビルが立ち並び、その合間を縫うようにモノレールが走る、キヴォトスのデュエリス自治区。
 その一角に位置するデュエリス自治区ヴァルキューレ警察分校は、この自治区の持つ特徴に合わせて銃火器の代わりにデュエルディスクが支給されている、少し変わった学校だった。そこに所属している瀬戸ナルミは、職務には真面目だが、いまいち熱意のない女子。そんな彼女の、デュエルの記録である。

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路地裏のヘルメット団

 ―――デュエリス自治区

 ―――ヴァルキューレ警察分校

 

 ヴァルキューレ警察分校のオフィスの片隅で、瀬戸(セト)ナルミはカタカタとキーボードを叩いて報告書を作成していた。

 

ナルミ

「……放課後か。最後に定時に帰ったのっていつだっけ」

 

 ふと手を止めて窓の外を見る。そこではカードショップの袋を持った学生たちが、談笑しながら歩いているのが見える。

 

 その学生たちは、他の学校や地区の生徒ならば持ち歩いている銃を持っていなかった。代わりに身に着けているのは、デッキケースだ。それもデュエルモンスターズのデッキを入れている。

 

???

「事件発生! 事件発生ー!」

 

 ナルミが学生たちを見て遠い目をしていると、ヴァルキューレの制服を着て帽子を目深に被った生徒が、慌ただしく横切って行った。

 

ナルミ

「……何かあったのか?」

 

 さらに近くを通りかかった一人を捕まえて、質問する。帽子を目深に被っている少女はナルミに答えた。

 

モブA

「強盗事件ですよ。強盗事件。襲われたのは、高額カードも扱う高級店です」

 

ナルミ

「ああ、カード強盗ね……通りで……」 

 

 カード強盗、とりわけ高額カードを狙っての犯行というのは、そう珍しいことでもなかった。

 

 デュエリス自治区は銃の代わりにデュエルモンスターズのデッキを持つが、それでトラブルが減るかと言えばそんなことはなかった。ここはキヴォトスである。

 

ナルミ

「んー……事務仕事も飽きてきたことだし、体を動かしに行きますかね」

 

 書きかけの報告書を後にして、ナルミは使い慣れた愛用のデュエルディスクを手にすると、現場へと向かうのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

店主

「だからよぉ! 店番してたら、変なヘルメット被った連中がいきなりドアをぶっ壊して乗り込んで来たんだよ! 俺はそいつらにぐるぐる巻きにされちまって、ショーケースの中身を持ってかれるのを見てるしかできなかったってわけ!」

 

モブA

「そうですか。それで、他に何か取られたものはありませんか? レジの中身とか」

 

店主

「いや、あいつらショーケースのカードだけ狙って行きやがった! まるで最初からわかってたみたいによ!」

 

 丸っこい、もこもことした毛並みの、二足歩行でジャケットを着た芝犬が、ヴァルキューレ警察分校の制服を着た女子生徒に大声と身振りを交えながら話していた。

 

 襲われたのは、とある商店街に店を構えるカードショップ『D・アクセル』。一般的に流通しているカードパックから、そこそこな値段のするレアカードまで扱うショップである。

 

ナルミ

「夕暮れ時の犯行か……。犯人の目星はついてるのか? っても、ここいらじゃあトラブル起こすようなのは一つしかないか」

 

モブB

「ええ。店主の証言から、まずヘルメット団と見て間違いないでしょうね。やつら、今回は下見をしてから店を襲撃したようです。目当てのものだけを奪って、さっさと撤収したとか」

 

ナルミ

「ヘルメット団の連中にしては、ちっとは頭が回るようだな……。地図はあるか? この周辺の道が分かるやつ」

 

モブB

「地図ならありますけど、こんなの見てどうするんです?」

 

ナルミ

「なに、やつらが行きそうなところなんて知れてる」

 

 地図を広げて道を確認するナルミ。そして、おおよその見当を付ける。

 

ナルミ

「さて、いくか……」

 

 地図をしまうと、ナルミは歩き出した。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 とある路地裏。そこの物陰に隠れるように、3つの影があった。その影はどれも使い古されたヘルメットで顔を隠しており、その表情を見ることはできない。しかし、どこか浮足立っているような雰囲気が、確かにあった。

 

ヘルメット団下っ端A

「へへへ、ちょろいもんだ」

 

ヘルメット団下っ端B

「あの店、結構いいレアカードあったな。これでボスも喜ぶぞ」

 

ヘルメット団下っ端C

「ああ。わたしらも下っ端生活からおさらばできるな」

 

 3つのヘルメットを突き合わせて、カタカタヘルメット団の下っ端3人は、期待をにじませた声で話していた。その手には、つい先ほどD・アクセルから奪って来たレアカードが握られている。

 

 奪ったレアカードを手に、ヘルメット団内での待遇改善を夢見る3人は、近づいてくる人影に気づくことはできなかった。

 

???

「おい」

 

 低い声が、路地裏に響く。3人のヘルメット団下っ端はびくりと肩を震わせ、そちらへと一斉に振り向いた。そこには、面倒そうにしているナルミが、デュエルディスクを手に立っていた。

 

ナルミ

「ヴァルキューレ警察分校だ。奪ったカードを返して、大人しく連行されろ。そうすれば面倒が無くて済む」

 

ヘルメット団下っ端A

「へっ、何を言うと思ったら、1人じゃねえかよ!」

 

ヘルメット団下っ端B

「あたしら3人相手に戦う気かー?」

 

ヘルメット団下っ端C

「オマエもぶっ倒して、レアカードを頂いてやる!」

 

 威勢よく啖呵を切り、デュエルディスクを構える下っ端3人。ナルミは「はぁ……」とため息をついて、自分のデュエルディスクに備わっている特殊機能を起動した。

 

 パシュッ!

 

ヘルメット団下っ端A

「な、なんだこれ!?」

 

ヘルメット団下っ端B

「ワイヤー!?」

 

ナルミ

「見るのは初めてか? デュエルアンカーは。万が一逃げられても面倒だからな。こいつで一定以上は離れられないようにした。おっと、無理に外そうとするなよ。高圧電流でビリビリするぞ?」

 

ヘルメット団下っ端A

「ぐっ……」

 

ナルミ

「ちなみにこいつはミレニアムサイエンススクール製だ。無理に外そうとしても外せないだろうがな」

 

ヘルメット団下っ端B

「な、ミレニアムだって!?」

 

ヘルメット団下っ端C

「ヤバいやつじゃん!」

 

ナルミ

「まあな。……それじゃ、ま、始めるか。デュエルをな」

 

全員

「「「「デュエル!」」」」

 

【瀬戸ナルミ】

LP4000

 

【ヘルメット団下っ端A】

LP4000

 

【ヘルメット団下っ端B】

LP4000

 

【ヘルメット団下っ端C】

LP4000

 

 

 

ヘルメット団下っ端A

「先行は貰った! まずはこいつを見な! 『二頭を持つキングレックス』! 召喚!」

 

【二頭を持つキングレレックス】

【ATK1600】

 

ヘルメット団下っ端B

「おお! 最初っから攻撃力1600! やるじゃん!」

 

ヘルメット団下っ端A

「へへへ、どうだ! わたしはこれでターンエンド!」

 

ナルミ

「……」

 

ヘルメット団下っ端B

「次はあたしのターン! ドロー!」

 

ヘルメット団下っ端B

「来い! 『サイクロプス』! さらに『執念の剣』を装備!」

 

【サイクロプス】

【ATK1200+500=1700】

 

ヘルメット団下っ端B

「降参するなら今のうちだぞー? ターンエンド!」

 

ヘルメット団下っ端C

「私のターンだな、ドロー!」

 

ヘルメット団下っ端C

「『ミノタウルス』を召喚、攻撃表示!」

 

【ミノタウルス】

【ATK1700】

 

ヘルメット団下っ端C

「さらにカードを1枚セット! ターンエンド!」

 

ナルミ

「……アタシのターン、ドロー」

 

 引いたカードに目をやって、手札から別のカードを手に取る。

 

ナルミ

「まずはこのカードだ。魔法カード強欲な壺。2枚ドローして、さらに魔法カード時を裂く魔瞳(モルガナイト)を発動

 

ナルミ

「このカードの効果は色々とあるが……まあ、今はあまり関係ないな。真価を発揮するのは次のターンからだ」

 

ヘルメット団下っ端A

「なんだぁ? 発動しても意味のないカードなんか使ってどうするんだよ?」

 

ナルミ

「次のターンになればわかる。フェザーマンを召喚する」

 

フェザーマン

『ハァッ!』

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー)フェザーマン】

【ATK1000】

 

 現れたのは、背中に翼を持った緑のマスクのヒーロー。ステータスは低く、効果も持っていない。そのことに、ヘルメット団の下っ端たちは嘲るような声をあげる。

 

ヘルメット団下っ端A

「ははは! なんだその雑魚モンスターは!」

 

ヘルメット団下っ端B

「攻撃力1000ぽっちじゃ、逆立ちしたって勝てないぞ!」

 

ヘルメット団下っ端C

「手札が悪かったのか? サレンダーするなら今のうちだぞ!」

 

 そんな言葉を聞き流して、ナルミは手札から別のカードを手に取った。

 

ナルミ

「魔法カード『R-ライトジャスティス』を発動。アタシの場の『E・HERO』の数だけ、場の魔法、罠カードを破壊する。その伏せカードを破壊だ」

 

ヘルメット団下っ端C

「なっ、『炸裂装甲』が……」

 

ナルミ

「ふーん? 攻撃反応罠か。破壊しといて正解だったな」

 

ナルミ

「さらに、魔法カード融合を発動。フィールドのフェザーマンと、手札のバースト・レディとで融合する。融合召喚、現れろE・HERO(エレメンタルヒーロー)フレイム・ウィングマン」

 

フレイム・ウィングマン

『トゥアッ!』

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー)フレイム・ウィングマン】

【ATK2100】

 

ヘルメット団下っ端B

「ゆ、融合モンスター! 融合デッキ使いか!」

 

ヘルメット団下っ端A

「だが攻撃力はたったの2100、そしてカード3枚も使って1体だけ、手札の残りも2枚しかない。大したことはできないはずだ!」

 

ナルミ

「……装備魔法アサルトアーマーをフレイム・ウィングマンに装備。そして、アサルトアーマーを墓地に送って効果発動。このターン、フレイム・ウィングマンは2回攻撃ができる」

 

ヘルメット団下っ端A

「に、2回攻撃だと!?」

 

ナルミ

「バトルだ。フレイム・ウィングマンでサイクロプスに攻撃」

 

【ヘルメット団下っ端B】

LP4000→3600

 

ヘルメット団下っ端B

「こんな程度のダメージで、痛くもなんともない!」

 

ナルミ

「ああ、そう? ただ、フレイム・ウィングマンはバトルでモンスターを破壊すると、その元々の攻撃力分だけ、相手にダメージを与える効果がある」

 

ヘルメット団下っ端B

「えっ!? なにその効果!? あっちゃー!?」

 

【ヘルメット団下っ端B】

LP3600→2400

 

ナルミ

「おっと、執念の剣は墓地へ送られたらデッキの一番上に戻る効果がある。デッキトップに戻しな」

 

ヘルメット団下っ端B

「え、そんな効果があったの……?」

 

ナルミ

「自分の使うカードくらいはテキスト確認しておけ……。まあいい。続いて、フレイム・ウィングマンでミノタウルスに攻撃する」

 

【ヘルメット団下っ端C】

LP4000→3600

 

ヘルメット団下っ端C

「くっ……!」

 

ナルミ

「効果はさっき説明したよな? ミノタウルスの元々の攻撃力、1700ポイントのダメージを受けてもらう」

 

【ヘルメット団下っ端C】

LP3600→1900

 

ヘルメット団下っ端C

「ライフが半分も削られるなんて!」

 

ナルミ

「それじゃ、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 ナルミの場に伏せカードが1枚出現する。

 

ヘルメット団下っ端A

「私のターン! ドロー! へへへ、いいカードを引いたぜ。キングレックスをリリース! 現れろエレキテルドラゴン!」

 

【エレキテルドラゴン】

【ATK2400】

 

 2つの頭を持つ恐竜が光の粒子になって消え、代わりに現れたのは、電気を纏った青い鱗のドラゴン。効果こそ持たないものの、そのステータスはナルミのフレイム・ウィングマンを上回っている。

 

ナルミ

「そのカード……」

 

ヘルメット団下っ端A

「ははは、そうだ! こいつはあのショップから奪ってきたレアカード! せっかく持ってるカードも使ってやらなきゃただの宝の持ち腐れだからなあ!」

 

ヘルメット団下っ端B

「ひゅー! やるじゃん!」

 

ヘルメット団下っ端C

「あいつをぶっ飛ばせ!」

 

ヘルメット団下っ端A

「いくぜ! エレキテルドラゴンでその赤緑のヒーローに攻撃だ! 正義の味方だろうと力の差の前には無力だってことを教えてやる!」

 

ナルミ

「……リバースカードオープン。罠カード援軍」

 

ヘルメット団下っ端A

「なにっ!?」

 

ナルミ

「フレイム・ウィングマンを対象にして発動。このターンの終わりまで、フレイム・ウィングマンの攻撃力は500ポイントアップだ」

 

フレイム・ウィングマン

『オォォォォ……』

 

 赤いオーラを纏うフレイム・ウィングマン。

 

【E・HEROフレイム・ウィングマン】

【ATK2100→2600】

 

ヘルメット団下っ端A

「攻撃力2600だと!?」

 

ヘルメット団下っ端B

「ウソだろ!」

 

ナルミ

「さて、これでエレキテルドラゴンの攻撃力を上回ったな。迎え撃て、フレイム・ウィングマン!」

 

フレイム・ウィングマン

『ハァッ!』

 

ヘルメット団下っ端A

「くそっ! 私のレアカードが!」

 

ナルミ

「お前のじゃない。フレイム・ウィングマンの効果だ。バトルで相手モンスターを破壊したことで、攻撃力分のダメージを受けてもらう」

 

ヘルメット団下っ端A

「う、うぉぉぉ!」

 

【ヘルメット団下っ端A】

LP4000-200-2400=1400

 

ナルミ

「ターンエンドだ」

 

ヘルメット団下っ端B

「ぐっ、あたしのターン、ドロー! ……ル、ルイーズを守備表示で召喚してターンエンド……」

 

【ルイーズ】

【DEF1500】

 

ヘルメット団下っ端C

「私のターン、ドロー。……タイホーンを守備表示で召喚。さらにカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

【タイホーン】

【DEF1400】

 

ナルミ

「アタシのターン。前のターンに発動しておいたモルガナイトの効果を発動。このデュエル中、アタシの通常ドローが2枚になる」

 

ヘルメット団下っ端A

「な、なんだその効果!?」

 

ヘルメット団下っ端B

「2枚ドローとかインチキだろインチキ!」

 

ナルミ

「こっちは3対1の不利を背負ってるんだ、モルガナイト無しでも2枚ドローくらいはさせてほしいところなんだがな」

 

ナルミ

「それにこれは正常な効果処理だし、何もメリットだけじゃない。……ま、デメリットもあってないようなもんだけど」

 

 そう言って肩をすくめるナルミ。

 

ナルミ

「……バトル、フレイム・ウィングマンでモンスターのいないヘルメットにダイレクトアタックする」

 

ヘルメット団下っ端A

「私か!?」

 

ヘルメット団下っ端C

「させるか! 罠カード発動!」

 

ヘルメット団下っ端C

「『融合態駆除装置』! 場の融合モンスター1体を破壊する!」

 

 攻撃する直前に爆散するフレイム・ウィングマン。

 

ナルミ

「……ピンポイントな除去カードか。バトルは終了。……カードガンナーを守備表示で召喚。さらにカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

【カードガンナー】

【DEF400】

 

ヘルメット団下っ端A

「ふぅ、一時はどうなるかと思ったが、まだツキはあるようだな! ドロー!」

 

ヘルメット団下っ端A

「お、こいつはまたいいカードを引けたぜ! こいつは相手の場にだけモンスターがいる時、手札から特殊召喚ができる強力モンスターだ!」

 

ナルミ

「その特徴的な召喚条件……まさか」

 

ヘルメット団下っ端A

「はーっはっはっはっ! そのまさかだ! 来い、サイバー・ドラゴン!」

 

サイバー・ドラゴン

『ギュオォォォ!』

 

【サイバー・ドラゴン】

【ATK2100】

 

 下っ端Aのフィールドに出現する、黒い装甲の機械竜。

 

ナルミ

「攻撃力2100か……。カードガンナーの守備力では耐えられないな」

 

ヘルメット団下っ端A

「覚悟しろ、ヴァルキューレの犬め! サイバー・ドラゴンでカードガンナーに攻撃!」

 

ナルミ

「……カードガンナーが墓地に送られたことで、1枚ドローする」

 

ヘルメット団下っ端A

「これでお前を守るモンスターはいなくなったな! ターンエンド!」

 

ヘルメット団下っ端B

「あたしのターン、ドロー! 魔法カード馬の骨の対価! ルイーズを墓地へ送って、追加で2枚ドロー!」

 

ヘルメット団下っ端B

「……ふふふ、あたしもいいカードを引けたぜ。現れろあたしの最強モンスター! 電動刃虫(チェーンソーインセクト)!」

 

電動刃虫(チェーンソーインセクト)

【ATK2400】

 

ナルミ

「……それもD・アクセルから奪ったカードか?」

 

ヘルメット団下っ端B

「ちげぇし! これはあたしがこつこつお小遣い貯めて買ったレアカードだ! 半年もお菓子我慢してようやく買えたんだぞ!」

 

ヘルメット団下っ端A

「通りで3時と夕飯前のおやつ食べてなかったのか!」

 

ヘルメット団下っ端C

「てっきりダイエットしてるのかと思ってた」

 

ヘルメット団下っ端B

「ダイエットも込みだよ!」

 

ヘルメット団下っ端A

「成果は?」

 

ヘルメット団下っ端B

「……。バトルだ! 電動刃虫! ダイレクトアタックしろ!」

 

ナルミ

「チッ……!」

 

【瀬戸ナルミ】

LP4000→1600

 

ヘルメット団下っ端B

「よっしゃあ!」

 

ヘルメット団下っ端A

「ライフを半分以上一気に削ったぜ!」

 

ヘルメット団下っ端C

「サレンダーするなら今のうちだぜー?」

 

ナルミ

「誰がするか。……電動刃虫の効果で、1枚ドローさせて貰うぞ」

 

ヘルメット団下っ端B

「へ? なんだその効果」

 

ナルミ

「だから自分の使うカードのテキストくらいは把握しとけ」

 

ナルミ

「……電動刃虫は、戦闘を行うとダメージステップ終了時に、相手に1枚のドローを許す効果がある。ま、下級にしては高すぎるステータスの代償ってとこだな」

 

ヘルメット団下っ端B

「ほ、ほんとだ……」

 

ヘルメット団下っ端A

「なにやってんだ! 相手に砂糖送ってどうする!」

 

ヘルメット団下っ端C

「それを言うなら塩っ気。まあまあ、相手の場にはモンスターもいないし、ダイレクトアタックでライフを削り切っちゃえば、1枚ドローさせるくらいはどうでもよくなるって」

 

ヘルメット団下っ端A

「む、確かに……そうだな」

 

ヘルメット団下っ端B

「それじゃ、あとは任せたぞ!」

 

ヘルメット団下っ端C

「オッケー。私のターン、ドロー。タイホーンを攻撃表示に変更して、装備魔法幸運の鉄斧を装備。これで攻撃力は500アップ!」

 

【タイホーン】

【ATK1200→1700】

 

ヘルメット団下っ端C

「バトル! ダイレクトアタックで止めを刺せ、タイホーン!」

 

ナルミ

「そう簡単にやられるわけにはいかないな。罠発動、ヒーロー見参!」

 

ヘルメット団下っ端A

「罠だと!」

 

ナルミ

「これは相手モンスターの攻撃宣言時に発動できるカード。相手は私の手札を1枚ランダムに選び、それがモンスターカードなら特殊召喚できる」

 

ナルミ

「アタシの手札はカードガンナーと電動刃虫の効果で2枚になっている……さあ、選びな」

 

ヘルメット団下っ端C

「それなら……右! 右のカードだ!」

 

ナルミ

「右ね。どうやら運は私に味方してるらしい……。フレンドッグを守備表示で特殊召喚!」

 

【フレンドッグ】

【DEF1200】

 

ヘルメット団下っ端A

「モンスターカードだったか!」

 

ヘルメット団下っ端C

「外したか。けど、モンスターは残さない! タイホーンでフレンドッグに攻撃だ!」

 

ナルミ

「フレンドッグが戦闘で破壊された場合、墓地の融合1枚とE・HERO1体を手札に戻すことができる。攻撃してくれてありがとう」

 

ヘルメット団下っ端A

「なぁ!? おいなにやってんだよー!」

 

ヘルメット団下っ端C

「ご、ごめん。あんな効果持ってるとは知らなくて……」

 

ヘルメット団下っ端B

「け、けど、あたしらが圧倒的に有利なのは変わらない! 3対1だ、このまま数で押し切ってしまえばいい!」

 

ヘルメット団下っ端A

「それもそうだな!」

 

ナルミ

「果たして、うまくいくかな? アタシのターン、モルガナイトの効果で2枚ドローする」

 

ナルミ

「……フェザーマンを召喚し、魔法カード馬の骨の対価を、フェザーマンを墓地へ送って発動する。さらに2枚ドロー」

 

ナルミ

「……来たか。手札から魔法カード融合を発動。手札のワイルドマンと沼地の魔獣王の2体で融合。現れろ、E・HEROワイルドジャギーマン!」

 

ワイルドジャギーマン

『ハァッ!』

 

【E・HEROワイルドジャギーマン】

【ATK2600】

 

ヘルメット団下っ端A

「こ、攻撃力2600!?」

 

ヘルメット団下っ端B

「だが、たった1体じゃこのターン負けることは無い!」

 

ヘルメット団下っ端C

「次のターンで巻き返しだ!」

 

ナルミ

「お前らに次のターンなどない。装備魔法ジャンク・アタックをワイルドジャギーマンに装備」

 

ナルミ

「このカードを装備しているモンスターが、相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、その破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える」

 

ナルミ

「そして、ワイルドジャギーマンは相手のモンスターすべてに1回ずつ攻撃が可能だ!」

 

ヘルメット団下っ端A

「なんだって!?」

 

ナルミ

「いけ、ワイルドジャギーマン! サイバー・ドラゴン、電動刃虫、タイホーンに攻撃しろ!」

 

ワイルドジャギーマン

『ハァァァッ! ハァッ!』

 

ヘルメット団下っ端A

「ば、ばかなぁ!」

 

ヘルメット団下っ端B

「あたしらのモンスターが!」

 

ヘルメット団下っ端C

「ぜ、全滅!?」

 

【ヘルメット団下っ端A】

LP1400→1000

 

【ヘルメット団下っ端B】

LP2400→2200

 

【ヘルメット団下っ端C】

LP1900→1000

 

ナルミ

「敵モンスター、全滅! さらに、ジャンク・アタックの効果! 戦闘で破壊したモンスターの、それぞれの攻撃力の半分だけダメージを与える!」

 

ヘルメット団下っ端A

「ほげー!?」(LP1000-1050=0)

 

ヘルメット団下っ端B

「ぐふぅ!?」(LP2200-1200=1000)

 

ヘルメット団下っ端C

「あいたぁ!?」(LP1000-600=400)

 

ヘルメット団下っ端B

「ぐぅ、一人やられたか……だが、まだライフは残ってるぞ! そして、お前のモンスターはもう攻撃を終えた!」

 

ヘルメット団下っ端C

「攻撃できるモンスターも全滅したし、もうこれ以上の攻撃はできない! 見てろ、次のターンで」

 

ナルミ

「だから言っただろ。お前らに次のターンは無い。速攻魔法融合解除! 融合モンスター1体を、融合素材となったモンスターに分離させる!」

 

ナルミ

「ワイルドジャギーマンを融合デッキに戻し、素材として使ったワイルドマンと沼地の魔獣王を特殊召喚する!」

 

ワイルドマン

『オォッ!』

 

沼地の魔獣王

『グォォォン』

 

【E・HEROワイルドマン】

【ATK1500】

 

【沼地の魔獣王】

【ATK1000】

 

ナルミ

「これはバトルフェイズ中の特殊召喚だ。よって攻撃は可能! ワイルドマンと沼地の魔獣王で残りのヘルメットに攻撃!」

 

ヘルメット団下っ端B

「ま、待て! 話せばわか……ぐわー!」(LP1000-1500=0)

 

ヘルメット団下っ端C

「やられたー!」(LP400-1000=0)

 

ナルミ

「デュエル終了。ヘルメット3人確保だな。お前たちが奪って行ったレアカードも返してもらうぞ」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ヘルメット団下っ端たちをデュエルで制圧し、駆けつけたヴァルキューレ警察分校の応援に引き渡すと、ナルミは警察分校に戻って来ていた。

 

 書きかけだった報告書と、そして今回の件の報告書、2つの報告書を書かなければいけないことに、ナルミは深いため息をついた。

 

???

「お疲れ様、ナルミ。今日の事件もヘルメット団が暴れたんでしょう?」

 

ナルミ

「ミチカか……。ああ。懲りない連中だよ」

 

 ミチカと、呼ばれた桃色の髪の女子は、ナルミと同じくヴァルキューレ警察分校の制服を着ている。彼女は缶コーヒーを一本、ナルミのデスクに置いた。

 

ミチカ

「その様子だと今日も残業みたいね」

 

ナルミ

「これも仕事だからな……」

 

ミチカ

「いつも仕事仕事、だと疲れちゃうわよ。今度の週末は非番なんでしょ? 駅前に新しいカフェが出来たって聞いたわ。気晴らしにでも行ってみたら?」

 

ナルミ

「新しいカフェか……。ああ、覚えていたら行ってみる」

 

 そう言って缶コーヒーを開けると一口飲み、報告書の続きに取り掛かるのだった。


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