兄貴になってた時は絶望したけど、弟のことが嫌いなわけじゃない。死亡フラグが怖かっただけ。
戦争も終わった今なら、安心して向き合える。
「……フェリクス、いつもありがとう」
そう伝えると、意味がわからんと言いながら目をそらされた。まあ、そうなるか。口は悪いけど優しい奴で、ずっと俺のことを支えてくれた。家から出られなかった俺に果物剥いてくれたりとか。
「俺さ、ずっと死ぬべきだと思ってたんだ」
「何を馬鹿げたことを」
「前に、俺はちょっとだけ未来を知ってるって言ったろ」
敵に乗っ取られてるわけじゃないことを信じてもらうために、必死に色々暴露したあの時。
「その未来で俺は死んでたんだ。……だから俺が生きてる世界ってものが想像できなかった」
「だとしても、兄上は現に生きている」
「ようやく生きてていいんだって思えたんだ。……多分フェリクスのお陰で」
今でも鮮明に覚えてる。
――違う! もっと前だ!
俺が『グレン』と入れ替わったのはもっと前だと断言してくれたこと。
「ちょっと昔話させてよ」
フェリクスはというと、黙って聞いてくれる。
「俺が、グレンと入れ替わった時の話」
それからは、ただ、懺悔だった。本来より早く弟から、皆から、グレンを奪ってしまったこと。
「お前の意志でそうしたわけではないのだろう」
「それはそうだけど」
「ならばお前が謝る必要はない」
それだけ。それだけが、暖かかった。
「兄上はいつだったか俺に負けて悔し泣きしたことがあったな」
「……あった。あれ悔し泣きじゃなくて俺が弱いから死んじゃうって焦ってたやつ。『グレン』の名誉の為に言っておくと、あいつ死ぬまでお前より強かったんだぜ」
「仮定の話は無駄だ。今ここにいるお前の話をしろ」
今の俺、か。
「フラルダリウスとしてはブレーダッドを守るべきなんだ。それが騎士の在り方。……だけど、俺はそう思えたことがない。友達としてディミトリを守りたいだけなんだよ」
「前半は同意だ。後半は……お前らしいな」
「フェリクスが家継いだら、俺は旅に出ようかなーって」
「俺が家督を継ぐのは確定事項なのか」
フェリクスは何かを考えた後、重大なことに気づいたという顔でこちらを睨みつけてくる。
「兄上に紋章がないからか?」
「え? 関係ないけど」
「関係ないだと!?」
そう言ったら、なんか、弟は急に笑い出した。理由がさっぱりわからないけど。
「……『前』がそうだったってだけだよ」
「兄上が死んだからだろう、それは」
「確かに」
「自分が死ぬ前提の話はやめろ。……兄上の価値を思い知らせてやらねばならんな」
「なんだよそれ」
「そういや前の世界のディミトリ、味覚なかったんだよな。今は大丈夫そうだから安心したけど」
「……何故分からない?」
***
【後日談】
フラルダリウス公爵フェリクスを生涯支えたのは、理想の兄とは程遠いと彼自身が語ってやまなかった男、グレンであった。
「我が兄ながら情けない」と嘆じた記録も残っているが、その声音には不思議と誇らしさが混じっていたと伝わる。
フェリクスにとって大切だったのは、死して美化された理想像ではなく、現実で隣に立ち続けた『兄』その人であった。
***
【余談 引き抜きペアエンドだとこうなる】
戦の果て、家を捨てた兄弟は傭兵となった。
弟は『死を運ぶ剣士』、兄は『死にたくないと叫ぶ癒し手』。
正反対の二人は背中を預け合い幾多の戦場を生き抜いた。
やがて彼らは伝説と呼ばれる――
「死神と祈りの兄弟」として。
番外編案
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ベルナデッタ(引きこもり)
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ヒルダ(みんなの兄とみんなの妹)
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リンハルト(もしかしたら仲良く)
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フェリクスの反抗期の話
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幼馴染組以外の青獅子の絡み