バーサス~再び交錯する平行世界~   作:アズマオウ

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アクセルワールドとSAOのクロスオーバーです。バーサスの続き、やりたかったんだよねw



また、この作品は、歴史や時期がかなり食い違っていますが、その理由も後にわかります。ご了承ください。
それでもよいというなら、どうぞ!


第1話:Gameover~終幕~

「シルバークロウ、いや、ハルユキ……君。私を、全損させろ……」

 

 震え声で、僕の耳へと声が届いた。漆黒の顔面マスク越しでも良くわかる。その言葉の意味と、それを言う覚悟が。僕は、必死に説得する。そんなことはダメだと。絶対にダメだと。

 けれど僕はわかっていた。一度言い出したら絶対に聞いてくれないと言うことを。1年以上共に戦ってきたからわかる。無駄だった。

 

「そういうな……確かにここで夢を放棄するのは耐えがたいよ。でも、私にはもうひとつ夢がある。君がこの世界を終わらせるのを見ることだ。仮に私のひとつめの夢が叶わなかったとしても、それがある。だから案ずるな。私のことなど、忘れてくれ」

 

 僕は必死に否定した。なぜなら僕の夢は、目の前にいる人を頂へと押し上げることだったから。それが叶わないと言うことはすなわち、僕の夢もなくなる。だから、全損だけはできない。それに目の前にいる人がいなくなったら、僕のことを忘れてしまうだろう。それだけならまだいい。いままで過ごしたかけがえのない時間が消えてしまうのだ。それだけは、耐えられない。

 

「仕方がないことさ。それが定めだ。けれど、私にとって大切な存在は君だ。だから君のことは忘れない。さあ、早くしろ。奴はまってはくれないぞ!」

 

 嫌だ、嫌だ。こんなの嫌すぎる。けれど……《白の王》は待っていなかった。武器を降り下ろし、酷薄な笑みを浮かべていた。だから僕はーー。

 

 

 

 

 

 すべてを、壊した。目の前にいる人の夢を、継ぐために、叶えるために、そして、苦しみから解放するために。

 すべてを壊したこの僕に与えられたフォントがある。

 

 

 

『You level up 10!!』

 

 

 そう、僕は世界の終わりへと、たどり着いたのである。

 

 

 

 

***

 

 

 

 《Brain Burst 2039》というプログラムを僕が受け取ったのは、2年前、2046年である。僕は当時いじめられっ子で、現実などくそったれと思っていた。取り柄はゲームは人並み以上に上手いくらいだ。けれど、学校でのマドンナである黒雪姫先輩と、《ブレインバースト》がすべてを変えてくれた。いじめられていた生活も一変し、避けていた親友との関係を取り戻し、ライバルや師匠も出来た。僕の生活は充実していたのだ。

 このプログラムは、簡単にいってしまえば、格闘ゲームであるが、それもただの格闘ゲームじゃない。現実で、思考を一千倍に加速できる能力、すなわち《加速能力》を手にすることができるのだ。加速するにはゲーム内でのポイント、《バーストポイント》が必要で、これがなくなると加速できなくなるどころかブレインバーストを永遠に失う。ブレインバーストのプレイヤー、すなわち《バーストリンカー》達は加速するためにこのゲームで戦い続けているのだ。現実を犠牲にして。

 けれど僕には関係ない。僕にとって現実はくそみたいなものだったからだ。いまの僕の現実は、加速世界と、《ネガ・ネビュラス》というレギオンーーいわゆるギルドーーの皆で過ごす時間なのだ。だからこのプログラムを悪く言うつもりはない。

 このゲームの目的は加速能力の維持だけじゃない。レベル10までたどり着くことである。ブレインバーストにはレベルというものがあり、強さを示す指標になる。対戦で得られるバーストポイントを消費してレベルアップでき、新しい技やアビリティ、ステータスアップが出来るのだ。それを繰り返していき、レベル10になればゲームはクリアされる。ただ、ポイントをためまくって、勝ちまくってのレベルアップは9までだ。10に上がるためには、レベル9を5人倒さなくてはならないのだ。しかも、レベル9同士の戦いは、全バーストポイントをかけた戦いになるよう決められており、なかなか挑めない。負けたらすべて失う戦いに進んで、しかも5回も挑めない。だから、レベル9のプレイヤー、すなわち《王》は、自身の加速能力の保持のために休戦協定を結んだのである。

 だが、それを破ったのが黒雪姫こと《ブラックロータス》。彼女は赤の王を殺し、加速世界に混沌をもたらした。その後はブラックロータスは身を引いていたが、新米バーストリンカー《シルバークロウ》が現れたことにより、再び復活した。そして加速世界を《加速》させるために、《王》たちに戦いを挑んでいた。

 そして、僕たちは2048年1月、2人の王たちを倒した。黄色の王《イエローレディオ》、青の王《ブルーナイト》。あと3人で黒雪姫先輩はレベル10になれる。そう思ったのだが。

 青の王を倒した瞬間、アップデートが行われた。内容はレベル9独特のルール改訂だ。いままでは各人5人倒さなくてはならなかった。しかし、アップデート後では必ずしもそうする必要はなかった。なんと、たくさんのレベル9を倒したレベル9を倒すと、そのレベル9が倒した人数を倒したことになるようになったのだ。例えば、3人倒したレベル9を倒すと、3人倒したことになる。

 そのアップデートを知ったレベル9達は、一斉にブラックロータスへと戦いを挑んだ。同じくレベル9になった《銀の王》シルバークロウと、ネガネビュラスのメンバー達は、黒の王を守り続けどうにか撃退していった。が、白の王《ホワイトコスモス》の襲撃は防げなかった。しかも、銀の王以外は、エネミー狩りへと行っていた。

 その結果、黒雪姫は敗れ、全損へと陥ろうとしたその瞬間。僕は、有田春雪は、ブラックロータスを殺した。その後、怒りによって僕は自分以上の力をだし、狂ったようにホワイトコスモスを苦しめて、殺した。

 

 これで僕は5人倒したことになり、ゲームをクリアした。けれど僕に残されたものは……なかった。

 

 

 

 

 

 

 これは、僕がレベル10になって、ゲームをクリアした2048年2月の話である。

 

 

 

 

***

 

 

「えー、それでは課題ファイル25をニューロリンカーに転送するので、明日までに提出すること。では、今日の授業はここまで!」

 

 教師が静かに告げていき、教壇から降りていく。教師の姿が廊下へと消えていくと、教室に騒がしい空気が流れていった。

 僕はそのなかで一人教室を出て、トイレへと向かう。用を足しにいくわけではない。トイレの個室に座り込み、ただそこで時間を潰すのだ。そう、かつて僕がいじめられていたときと同じ方法で。

 

「ダイレクト・リンク」

 

 そう小さい声で僕は呟いた。すると僕の意識は薄れていき、フッと暗闇へと消えていく。ただこれは普遍的な現象だ。2048年では当たり前の技術である《フルダイブ》が起こっているのだから。

 やがて僕の意識が戻り、目を開けるとそこはファンタジーっぽい世界だった。まあ、ただの学校のローカルネット空間なのだが。生徒が使っているのであろうか、露出度の高いアバターや、勇者然としたアバターなどがちらほら見えている。それに対し僕のアバターは、ブタだ。小さな子ブタだ。でも、この姿を非常に気に入ってくれた人がかつて……。

 いや、もうその人は僕のことなど忘れている。もう赤の他人なんだ。僕は思いを降りきらんと急いで走った。

 たどり着いた先は、誰もいないスカッシュコーナーだ。ここで、僕は時間を潰すつもりだ。余りにも需要がないため、アップデートされていない。けれどここなら思う存分鬱憤を晴らせる。迷わず僕は、豚の蹄を読み取り機に当てる。すると、スカッシュゲームが起動する。ラケットが現れ、それを握るとゲームがスタートした。

 僕は出てきたボールをただひたすら叩きつけた。後悔も、悲しみも、すべてぶつけて、ただはね返す。

 あの世界で鍛え上げた反応速度のお陰か、かつて刻みあげたハイスコアを楽に越していく。だからなんだと言いたいが。

 無限に放出されるボールにただ追随し、ただ叩き続けること数百回。ついに集中力が途切れ、ゲームオーバーになる。僕は、ただ虚無感に襲われていったが、それ以上考えるのをやめてこの世界から抜け出した。

 

 目が醒めると、再び現実世界のトイレの個室へと戻された。僕はため息をつき、とぼとぼと教室へと戻る。いや、もう帰ろうかな。僕はそう思った。まだ午前11時だけれども、もうこれ以上学校にいたくない。

 僕は教室に戻って、荷物をまとめた。その様子を見た僕の親友であり、《シアン・パイル》を操るバーストリンカーであり、レギオンメンバーでもある黛 拓武は声をかける。

 

「ハル、今日は帰るのかい?」

 

 穏やかな声で僕に問うた。僕は素っ気無さそうにウンと頷いた。もう誰とも話したくない。だから僕はじゃあとだけ言って教室から去った。

 僕は足早に廊下を歩いてイラつきながら昇降口へと向かった。そして階段を降りようとして角を曲がったときだった。

 

「きゃあっ!?」

 

 悲鳴が聞こえた。それと同時に誰かと接触した感覚が現れた。僕はデブだから倒れなかった。けれど衝突した人は床へと倒れている。僕は大丈夫ですかと近寄ったが、その寸前、僕の体は固まった。

 二本の触覚に似たアホ毛、細い体、美しい容姿、長い髪の毛、そして、強さのなかに見える弱さの感じ。すべてが見覚えがあった。

 

「先……輩……」

 

 僕は小さく呟いていたが、それは目の前に倒れている少女には聞こえなかった。

 

「いたた……すまないな。前を見ていなかった」

 

 少女は僕に言った。僕はなにも話せなかった。まるで他人行儀だ。僕をただ一人の生徒としか見ていない。

 

「おい、どうしたんだ? なにか不満なのか?」

 

 少女が威圧的に問い詰める。僕は混乱していた。いや、頭ではすでにその理由は知っていた。そう、ブレインバースト消失による《記憶喪失》のせいだ。

 ブレインバーストが消えると、それに関する記憶は一切消えてしまう。僕の知っている少女は僕を他人だと思っていない。師弟、いや親子のような関係なのだ。だけど、いまは彼女の記憶がない。それがかなり悲しかった。僕がそのなかにいないと思うと、胸が痛かった。

 

 僕が考えている間に、少女は不機嫌な顔になっていく。僕は答えないわけにはいかなくなったようなので、僕はどうにか答えた。

 

「え、ええだいじょうぶです。僕も不注意でした。すいません」

 

 僕はもう耐えられなかった。これ以上、見ていられなかった。いられなかった。だから、僕は走った。この場から逃げた。そして、涙をこらえて学校を出た。

 

ーーこんなの、残酷すぎるだろ……。

 

 僕は、歯をギリギリならした。すべて僕のせいだ。先輩を助けることなんて出来たんだ。なのに、なのに……僕が弱いせいだ。すべて、僕の、せいだ!!

 

「くそぉっ!!」

 

 僕は、ただ走った。叫びながら、悔やみながら……。

 

 

 

***

 

 

(先程の少年、どこかで見たことがあるな……。見たことだけじゃない。あの少年になにか特別な感情を抱いていた……ような気がする)

 

 黒雪姫は、悶々と廊下を歩きながら考えていた。先程衝突した肥満体質の男子生徒についてだ。ただの、関係のない一般生徒だがなぜか引っ掛かるのだ。どこか心の拠り所にしていたような気がした。守っていた気がした。そして……。

 

 いや、そんなわけはないのだ。黒雪姫はあの少年にあったことすらない。何を考えているのだろう。

 でも、あの少年はものすごく悲しそうな顔をしていた。いまにも泣きそうな顔をしていた。大切なものを失ったような目をしていた。

 

 まあ、いい。とにかく授業を受けなくては。

 

 私は少し駆け足で教室へと戻った。その時にはすっかり違和感を忘れていた。




感想、お気に入り、評価お待ちしております。

次回バーストリンクします!
そして、あらすじの《Kirito》の正体は……?あ、もうわかりますね。

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