バーサス~再び交錯する平行世界~   作:アズマオウ

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キリトバーサスハルユキです。最初は少しだけ前回と被りますがよろしくお願いします。

あと、第二話を修正いたしました。本当に些細なところですが。
本作品は、妄想とご都合主義でなりたっていますので、矛盾点が多いです。もしお気づきになられましたら遠慮なくご指摘してください。

ではどうぞ!

2014/12/416:39

大幅に修正を加えました。


第3話:Reunion~再会~

 《世紀末》ステージの視界は、やや暗い。だから、黒系の色はあまりよく見えないのだ。そのくらいで惑わされるハルユキじゃないが、やはりディスアドバンテージがあるのは辛い。

 ハルユキが戦っているのはまさに黒系のアバターだ。全身黒ずくめなため、視界に身を窶せる。もちろんすべてを隠すことはできないが、服の動き、からだの重心などが瞬時に判断しづらいのは、ハルユキにとっては不利となる。何故なら、ハルユキの戦闘スタイルは、相手の隙をつくタイプだからだ。

 

 ハルユキのアバター、シルバークロウのステータスは、こんな感じだ。切断、毒、熱、打撃等の耐性はあるが、腐食に弱い。設定されている必殺技は、《パンチ》、《キック》、《ヘッドバッド》とショボいものばかりだが、ハルユキのポテンシャルは別にある。《飛行アビリティ》だ。背中にある銀の翼を展開させて空を飛ぶことができるのだ。ハルユキの戦い方はパンチやキックなどを駆使して、相手をゼロ距離で凍らせて、その後、空を飛んでそこからの重攻撃を加えてフィニッシュするものだ。打撃耐性が長けている敵にはこの戦法はあまり効かないが、その際は投げ技などを駆使すればいい。タイムアップまで逃げてもいいだろう。

 

 対して相手、キリトのアバターは、打撃耐性はあまりないように見える。むしろ防御力などほとんどないといっても過言じゃないだろう。金属で守られているわけでもなく、顔面はむき出しだ。ダメージは大きくなるだろう。

 

 ハルユキは、自信がわいてきた。その自信が怒りへと変えていく。大切な人に心で語りかけて、言葉をはいた。

 

「お前を、倒す!!」

 

 

 

 

 

 

 一方キリトは喜びを感じていた。シルバークロウのポテンシャルはある程度理解している。飛行能力、打撃だけしかないアビリティのなかに無限の可能性があることも理解している。

 なぜか。それは遥か昔に宿る記憶が教えてくれたからだ。今から22年前、まだ学生だったキリトは突如偶然、銀翼の鴉の名を持つ戦士と出会い、戦ったのだ。その時の興奮は忘れてはいない。胸が踊る展開、限界まで加速された思考。すべてがキリトを刺激したのだ。

 今キリトの目の前にたっているアバターはまさにその記憶に登場した敵だ。いや、全く同一だろう。

 目の前のアバターは殺気を放って、言葉を吐く。その台詞を、キリトは聞いたことがあった。いや、言ったことすらある。キリトは、一致した偶然にニヤリと笑った。いや、この笑いに含まれていたのは、それだけじゃない。強敵と対峙する喜びが大きく占めるだろう。

 

 キリトはやる気がわいた。そのやる気は力へと変える。シルバークロウの顔を見つめながら、俺は答えた。

 

 

 

「来いっ!!」

 

 

 両者が地面を蹴り、ハルユキは拳を、キリトは剣を、突き出した。火花が散り、両者の戦いの合図となった。

 

 

***

 

 

 僕は、全力の蹴りでキリトへと近づいた。キリトの剣が僕の顔面マスクへと迫る。けれど僕は落ち着いてそれをかわす。そして懐に潜り込んで、ヘビーブローを見舞った。

 腹を丸めるキリトは、どうにか耐性を整えようと距離をとろうとするが、そうはさせなかった。キリトの頭を捕まえ、頭を後ろへと振り上げる。すると、キュイイイインと頭が光り、一気にキリトの頭に向かって降り下ろされた。

 鈍い音と共に、キリトにヘッドバッドが炸裂する。キリトは数歩のけぞり、懐が空いた。そこを見逃さず、ラッシュを開始する。

 

「喰らえっ!」

 

 僕はキリトの腹に右ストレートを浴びせる。その間に左ジャブも当てる。休む暇も与えず、僕は殴り続ける。さらに翼を少し展開させて、バック宙しながら蹴りあげ、空中でエリアルコンボを決めていく。翼を自在に操って、多彩な方向から攻撃を加えていく。回し蹴り、連続小パンチ、これらでダメージを稼いでいき、キリトのHPは2割半ほど減少した。その後、空中に浮いているキリトを地面に叩きつけた。

 

ーーこれが空中格闘技《エアリアルコンボ》の完成形です! 見ていてください!!

 

 バウンドしたキリトの体を僕は追撃する。キリトはまるで動けず、ただ無抵抗にやられるだけだ。このまま近くにある廃ビルへと追い込んで、空中からの重攻撃で決めれば終了だ。

 

 僕の計画通り、キリトは壁に叩きつけられた。その後、僕は空中へと舞い上がった。風切り音が鳴り、マスクに風が打ち付けられた。そして僕は、空中の一点に留まって、じっと目を凝らして地上にある黒の一点に狙いを定める。

 

「う、おおおおおおっっ!!」

 

 僕は、体を弧を描いてぐるんとターンし、一気に地上へと高速で接近した。だが、狙いとなった黒の一点はまるで動いていない。それに対し、僕は疑問を感じていた。

 

(キリトは恐らく僕のポテンシャルを知っているはずだ。なのに逃げようともしない。いったい何を考えているんだろう?)

 

 僕は、落下を続けていた。こうなったら、動かないなら望み通り倒してやる。距離はどんどん縮まり、姿が認識できるほどにまで迫る。僕は拳を引いて、キリトの顔へと狙いを定める。キリトはこちらをちらっと見て、僕をにらむ。それに一瞬だけ驚くが、迷わずに拳を突き出した。

 

ーーどうでるか……!? キリトっ!

 

 

 

***

 

 

ーーさすが、シルバークロウだな。

 

 俺ーーキリトは、高速で迫る銀の鴉を睨む。同時に彼のその果てしないポテンシャルに、感心した。だが、俺も悠長なことをいっている場合ではない。直撃したら間違いなく負ける。先程のシルバークロウのラッシュはかなり効いた。どうにかやり過ごし、反撃しなくてはならない。

 俺のポテンシャルから考えて残された手段は3つだ。

 1つ目は、ただガードする。剣を構えて、奴のダイブアタックをどうにか軽減するのだ。ただ、威力は恐らく果てしないものになり、再帰するまでに時間がかかってしまうだろう。俺には遠距離攻撃がある訳じゃないから、却下だ。

 2つ目は、回避することだ。ノーリスクにしのげ、反撃もしやすいだろう。だが、そううまくいく保証はない。

 シルバークロウの最大のポテンシャルはただひとつ。飛行アビリティだ。ということはすなわち、俺の回避行動も読めているということだ。いくら躱しても、追随してくることだろう。だからこれも、却下だ。

 なら3つ目は……。

 

 いや、もう思考する時間は残されていなかった。なぜなら拳が迫っていたからだ。なら、3つ目を実行するしかない!!

 俺は拳をしっかりと凝視する。狙いは俺の左頬だ。それを確認した俺は、目線を強くした。

 

ーー勝負だ、シルバークロウ!!

 

 俺はグッと重心を斜め後ろにずらす。その瞬間、シルバークロウのマスクがピクッと揺れ動く。

 俺は倒れながら、右足を振り上げる。すると、規定のモーションを認知して、右足の爪先が発光する。狙いは、シルバークロウのみぞおちだ。これが決まれば、俺は形勢逆転できる。逆に決まらなければ、全てが終わる。だからこれは、俺の博打だ!

 

 足が逆上がりのように弧を描いていく。シルバークロウは必死に翼を傾けてそれを避けようとする。だが、余りに凄い前進ベクトルを変えることはできないようで、苦戦している。これがチャンスだ。体術スキル《弦月》で、勝負を決める。

 俺の右足が鈍い音と共にシルバークロウの胸を蹴り上げた。シルバークロウの体は一瞬フワッと浮いて、前進ベクトルが弱まる。だが、それでも俺の攻撃が効いたのか、制止することができず、そのままシルバークロウは俺の背後の壁へと衝突し、壁へと穴を開けていった。

 

 

 

 

***

 

 

「い、てて……」

 

 僕は、思いっきり壁に衝突してしまった。その勢いで壁をぶち破ってしまい、廃ビルの中へと入っていった。その間に色々なものに体当たりしてしまい、瓦礫まみれになってしまった。

 

 視界は瓦礫で埋め尽くされ、光はほとんど差さない。僕はとりあえず岩をどけるため、腕に力を入れる。意外と岩は軽かったので、簡単に抜け出せた。そこらじゅうに舞う砂ぼこりを払って、僕は息を吐く。

 僕のダイブアタックは確かに躱されやすい。僕の唯一のポテンシャルは飛行アビリティだ。それを知らないバーストリンカーは存在しないと言っていい。だからかならず逃げようと、上空を見上げてくるはずだ。

 だが僕とて、簡単に避けられるつもりはない。僕はレベルアップボーナスをすべて飛行アビリティに費やし、何度も血の滲むような努力をしたのだ。だからほとんどはずすことはない。ないはずだったのに。

 

 だが、今回は回避のみならず、迎撃までされたのだ。しかも全く新しい方法だ。下へと潜り込んで、打撃を加えたのだ。そうすることで、僕にショックを与えることができ、停止することができない。全く新しい方法でやられたことに感心するとともに、悔しく感じた。

 

ーー僕もまだまだだ。

 

 やれやれと首を振って、気を取り直す。そうだ、まだ戦闘は終わっていない。キリトは2割半、僕は3割ほど減っている。大した差でもない上に、まだ全然減っていない。

 グッと拳を握りしめ終えると、キリトが僕の開けた穴から姿を表した。キリトは穴から廃ビルへと入り、右手に剣をぶら下げて左手で腹をさすりながら僕へと近づいてくる。どうやら先程のラッシュがまだ効いているようだ。それだけでもまだましなのだ。

 キリトは、僕との距離が10メートルほどになるまで近づいて歩みを止めた。そして笑いながら口を開く。

 

「全く、アンタなかなかだぜ、シルバークロウ」

 

 キリトの誉め言葉に僕はありがたく感謝しておく。

 

「そりゃどうもだ。でも、アンタの迎撃方法もすごかったぜ」

 

 僕の誉め言葉にキリトはニヤリと笑う。そして、何故か謎めいた表情を浮かべていた。

 

「はは、まあな。まあ、これが¨二回目¨だからな。さすがに対策はたててあるさ」

 

ーー二回目、だと?

 

 僕は、キリトの言葉に違和感を覚えた。二回目というのは、どういう意味だろうか。僕は少なくともキリトと戦ったのははじめてだ。キリトなんてアバターは聞いたことは……。

 いや、うっすらと思い浮かんできた。一年前、僕は奇妙なバーストリンカーと戦った。名前は覚えていないが、梅里中学校のローカルネットに侵入してきたようなので、戦ったのだが、あのバトルは白熱していたのを覚えている。

 けれど僕はあまり覚えていない。

 

「どういう、ことだ?」

 

 僕はキリトに問うた。キリトは、あーと言うように頭をさすっていた。

 

「あー……やっぱり覚えていなかったか」

 

「覚えていないも何も、僕はお前と戦ったのははじめてだけどな」

 

「そうか。だがな、これだけは言える。俺とお前は一度会い、戦ったんだ」

 

「そう、なのか……」

 

 僕は信じられないようにいった。だけれども嘘をいっているようには思えない。けれどにわかに信じがたい。まずブレインバーストの開発者と戦ったことなんてない。そもそもそんなことになったら大騒ぎだ。

 

「まあ信じられない気持ちもわかるけどな」

 

 キリトはうーんと唸りながら剣を弄ぶようにポンポンと手のひらに打ち付ける。やがてあっと思い付いたような声を出して言葉を放つ。

 

「そうだ。この言葉、覚えているか?」

 

「この言葉、だと? 覚えているわけないだろ」

 

 覚えていないといっている人にそんなこと言うかよと思った。けれど、キリトに言われた次の言葉は、こんな言葉だった。

 

「いいデュエルだった。いつかまたーー戦ろう!」

 

「!!」

 

 その言葉を聴いた瞬間、頭に何か冷たいものが刺さった気がした。そう、記憶の奥底に眠っている何かが取り出されていくような感じだ。そしてその記憶の中には、黒のコートを羽織った強い剣士の姿があった。あの戦いは、今までで一番楽しかった。何故であったかどうかも分からないが、手汗を握る展開、限界まで加速された知覚、全てが僕を刺激し、快感を産み出していった。

 そうだ、あの時だ。僕は確かに戦ったんだ。バーストリンカー《Kirito》と……。キリトがいった言葉は、僕とキリトが最後に拳と剣を交えた瞬間に聴いたのだ。あの言葉は僕にとって一番印象に残っていたのだ。

 

 僕は衝撃で体が凍っていた。まるで凍結アビリティを用いられたときのようにだ。

 

「思い出してくれたようだな……ようやくほんとの戦いが出来そうだな」

 

「なんとか、思い出したよ。よく分からないけど、とにかく全力で戦った戦いだったとおもう」

 

 僕の言葉にキリトはにっと笑う。

 

「それで十分だ。俺は嬉しいよ。ーーさて、始めよう」

 

 キリトはグッと腰を落とし、僕も腰を落とし拳を握る。再び両者の緊張が高まっていき、体がうずうずしてくる。

 ここでようやく僕はキリトのポテンシャルをようやく思い出した。彼のポテンシャルは僕と同じ接近タイプだが、拳よりリーチの長い剣である。そしてその剣術はかなりのものだ。

 

 相手はきっと僕のポテンシャルを承知している。だから、単純な攻撃はまるで通用しない。かなり難しいだろう。でも、やるしかないんだ。

 

 

 僕は足に力を込めて、踏み込みの準備をする。キリトも同様にした。僕の行動はただひとつ。剣の間合いに入らないよう、懐に潜り込んでラッシュを続ければいい。ダイブアタックは通用しないことがわかったので、ラッシュを続けるしかない。退屈だが、まるで味がないが、それしかない。それこそが、僕の戦法だからだ。

 

ーーいくぞ……お前を越えて、勝ってやる!

 

 そう決めて、僕は地面を蹴った。キリトも、同時だった。足を踏み出したときにはいつしか先輩の夢を侮辱する製作目的に対する怒りと、今目の前にいる数少ないライバルに対する昂揚感が混ざりあっていた。そう、「感情による暴力的な戦い」から僕が本当に望む戦い、「ただの娯楽としての、真剣勝負」へと変わったのだ。体のボルテージが上がっていき、知覚の加速が始まった。今なら、本気で戦える。

 

 地面を蹴り、滑空して、右の拳をつき出す。キリトも、剣を右から左に払い、迎撃する。

 両者の武器がぶつかって、火花が散る。今の僕には火花がよく見える。それだけ思考が加速されているのだろう。ただでさえ、1000倍に加速されているのに。

 僕はばっと後ろに跳んで距離をとる。キリトも同様にする。そして再び接近し、拳と剣を交える。

 火花が激しく散っていき、高次元のスピードで互いに攻撃していく。僕の《エアリアルコンボ》による連続打撃と、キリトの剣術はどちらも互角であり、削りダメージのみが蓄積されていくのみだ。ボディーブローを放っても剣に阻まれてしまう。本来《エアリアルコンボ》は初見では絶対に対処不可能なはずだ。しかしキリトは見事に対応している。どうやら僕のラッシュ作戦は上手くいきそうにないようだ。

 

 らちが明かないと思った僕はそう考えた僕は、殴る拳を解き、両手を伸ばしてキリトの両肩を掴んだ。その後、キリトの腹へと膝蹴りする。密着戦になればこっちが有利だ。

 九の字に曲がったキリトは、必死に全身を振って離れようとする。だが、僕の手は離れることなく、連続で蹴り続ける。

 ある程度キリトのHPを減らした僕は、動けなくなったキリトをハイキックで上空へと打ち上げた。抵抗する術のないキリトは易々と打ち上げられる。僕はそのまま翼を展開して上昇し、どこまでも舞い上がるキリトを追った。キリトに追い付いたところで僕はパンチを繰り出す。その後落ちないようにキック。目にも止まらぬ早さで再びラッシュする。キリトは必死に剣を掲げて身を守るも、僕のキックによって剣は真下へと落とされていった。その後はもうキリトに守るものもあるはずもなく、どんどん打撃が入っていった。

 キリトのHPは残り6割ほどにまで減少した。僕は止めを刺そうと、打たれ続けて力が抜けているキリトの腹に、思いっきり力を込めた踵落としを決めた。

 

「これで、終わりだぁぁぁっっ!!」

 

 どすっと鈍い音が響き、キリトはまっすぐ上空から落ちていった。高度は50メートルほどもある。この高さでは受け身をとらない限り、一撃死してしまうほどのダメージを受けてしまう。だから僕はキリトを上空から落とした。これは先輩から教わった方法だ。先輩から教わった方法で倒すことで、僕が先輩のことを忘れていないという証明をしたかったのかもしれない。この男を倒して、先輩の夢を壊したことを謝らせたい。憎悪の念は多少たりとも消えてない。

 でも、ここで勝負が決まるわけがないと思っている僕、すなわちキリトを信じている僕もいた。キリトレベルのバーストリンカー……いや、戦士なら受け身をとって反撃に出るはずだ。憎悪はあっても、僕の戦いの基礎理念は楽しむことだ。だから、受け身をとって反撃してほしいとも思った。

 

 

 けれど高速で落下していくキリトの行動は不思議だった。もがきもせず、受け身の準備もしない。ただ、体を九の字に曲げながら下にして落ちていくだけだ。気絶しているのか、それともまだ別の打開策があるのか。それとも……諦めたのか?

 

ーーこの勝負を侮辱しているのか? また僕たちは戦えるのに、それを放棄するのかよ!?

 

 僕はキリトの行動の不審さに怒りを抱いていた。掴み掛かって非難しようと翼を展開したが。

 

 突然、キリトの体が光の粒子に包まれた。それはやがて黄金のようにきらめき、あまりの眩しさに思わず腕をかざす。

 

ーーなんだこの光は……!? 必殺技? いや、ゲージは減ってない。じゃあ、心意技なのか……? だとしてもこの状況で、発光技をやる意味は……。

 

 そう、キリトが光を発している間にも、落下は止まらない。最後の悪あがきか。そう思っていたのだが。

 やがて光は失せた。僕はかざしていた腕をどかすと、キリトの姿はなくなっていた。

 

ーーなに? キリトはいったいどこに? まさかテレポーテーションか? でも心意ではできないはず……。威力拡張でも範囲拡張でもない。ならいったい何が……?

 

 僕は辺りを見回した。キリトを探そうと必死に目を凝らすが見つからない。僕は勝負から逃げたと思い、思いきり叫ぶ。

 

「どこだっ! キリト!!」

 

 反応はない。だが僕の声が虚空に広がり、力をほんの少しだけ抜いた瞬間。

 

 

 

「こっちだぁっ!!」

 

 僕ははっと声のする方向へと首を向けた。はるか上空からだ。だが、キリトには飛行アビリティなどはなかったはずだ。ということはまさか強化外装か?

 

 高速で思考をしている間にも、キリトはすでに僕から10メートルほどにまで迫っていた。しかも、僕の方が位置が下だ。いったいどうやって……。

 ふとみると、キリトの姿は変わっていた。服装はおろか、容姿までもが先程とは違っていた。髪型は寝ているショートカットではなく剣山のようにツンツンたっていて、耳はとがり、顔は女っぽさが消えて、無邪気な男の子のような顔をしている。服装は相変わらず黒を基調としているが、微妙にコートの柄が違う。そして、何よりの変化は、背に妖精の羽らしきものが映えていることだった。

 

ーーあれで飛んできたのか!? ということはさっきの心意の光はまさか……!?

 

 僕の思考が結論へとたどり着くその前に、キリトの、先程まではなかった大振りな両手剣が、僕の右肩から左腰までをざっくりと切り裂いた。僕は銃に撃たれた鴉のように、上空から落ちていった。




最後のキリトの行動と変化は次回詳しく説明していきます。まだまだ続く!

それと、この世界線が何故おかしくなったかは、まだ説明できていません。戦いが終わったら説明します。
では、感想、お気に入り登録、評価などをお待ちしております。

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