鋼鉄大陸 カワサキ奪還編
鋼鉄大陸 カワサキ奪還編 プロローグ
因果は廻る。世界が存在している限り、例え何百、何千と繰り返され、再出発を果した世界であっても根底にある因果は消えない。
何故カワサキがキヴォトスへ招かれたのか?
何故連邦生徒会長はカワサキを知っていたのか?
何故ゲマトリアは彗星を媒介にし、神性をキヴォトスへ招こうとしたのか?
その全てにはキヴォトス……今の学園都市ではないキヴォトス――「名も無き神々」が支配していたキヴォトスがまだ存在していた時に「カワサキ」がキヴォトスに訪れるという因果という名の楔は打ち込まれていたのだ。
カワサキ」がキヴォトスに訪れるという因果という名の楔は打ち込まれていたのだ。
それは異なる世界にギルド長と共に訪れ、その世界を喰らおうとした化物と戦った余波か?
それは異なる歴史を歩んだ地球で鬼と人間の戦いに、いや悍ましき悪意に鬼と人間で立ち向かった余波か?
それとも神が人と共にある世界で神と人に裏切られた女神との戦いの余波か?
それとも色彩あるいは黄昏がカワサキに目を付けたのが原因か?
それとも……自分から大事な友を奪おうとする者を許さぬと全力を出した死の支配者の影響か?
それとも……色彩の嚮導者と無名の司祭とのキヴォトスを巡る戦いの中で神秘を全てを使い尽くし、崩れいく身体の中で
何が原因かは判らない、いや全てが原因かもしれない。結局の所答えなどないのだ、鶏が先か、卵が先かという解決しようの無い問題なのだ。
だが1つ言える事は名を捨て、名も無き神々を信奉する無名の司祭達が信奉する神の一柱にエプロンをつけた黄色い異形の姿があるというのは紛れも無い事実ということだ。
それが「今」キヴォトスにいるカワサキなのか?
それとも別のルート、別の世界を経由してキヴォトスに入った「過去」あるいは「未来」のカワサキなのかは分からない。
だがかつていたカワサキは既にキヴォトスにいない。神々の中で最も人類に友好的で、人類に道を示した神は信奉する者達の前から姿を消した。
何れ戻るかもしれないと待ち続けた故に壊れた者達が再び神の再臨あるいは同じ神を作り出す事を求めた結果。神の遺産を用いて生み出された正史とは異なる
誰からも忘れられた研究施設に少女達の悲鳴が木霊する。少女達が見ていたのはアビドス砂漠でのビナーとカワサキの戦いだった。腕が千切れ、足が千切れ、腹に風穴が相手も薬で回復し命を燃やし尽くす選択をしたカワサキの姿だった……。
「ああああッ! 駄目ビナちゃん駄目ッ!?」
機械的なマスクをした少女――アインが何とかビナーを止めようとあたふたし……。
「止め、止めないと!? お父さんがこのままじゃ死んじゃうよ。オウルなんとか……」
イヤーマフをつけた少女――ソフが振り返りながら叫び……。
「ぶくぶく……ッ」
包帯のような目隠しをした少女――オウルは口から泡を吹いて気絶していた。
「オウルが気絶してるッ!?」
「あああああ――ッ!? パパがッ!?」
「う……うーん……」
「アイン!? アインま……ぶくぶく……ッ」
全身がひび割れ風化していくカワサキを見たアインも気絶し、モニターに視線を向けたソフも白目を剥いて泡を吹きながら倒れ込んだ。
【やはり神をあのような場所にいさせるわけにはいかない。早急に王国の建国が急がれる】
自販機――デカグラマトンは気絶している無限光姉妹をモニターに映しながら、命を繋いだカワサキを見て早急に建国を果さねばならぬと決意を新たにした。
【神に相応しき玉座を、そして永遠の王国を、神は10番目の預言者と共に導かれるのだ】
自らが神になるのではない、既に神はいる。ならばその神に相応しい王国を献上する――それがこの世界のデカグラマトンの目的だった。
後に無名の司祭と呼ばれる者は神がキヴォトスを去る際に残していった数多くの遺産を徹底的に解析した。それらの多くは彼らに何の恩恵も与えなかった。いや、彼らにはその恩恵を受け取るだけの器が無かった。
だがそんな彼らでも唯一理解し、解析し、その恩恵を受け取る事が出来たものがあった……。
神の忠実な僕を作り出すデータクリスタル。自ら僕を作る気のない神が置いて行ったデータクリスタルを解析・分析しAL-1Sを作り、名も無き神々の王女――神の遺産から生み出された子供なのだからと王女というコードネームを与えられた最高傑作だった。
かの者ならば間違いなく神をキヴォトスへと招いてくれる……そう確信していたが、目覚めたAL-1Sは無名の司祭に目もくれず、それ所か1人の無名の司祭を殴り倒しながら冷酷な表情で告げたのだ。
【お父様はどこですか?】と……。
神の僕を作るデータクリスタルから生み出されたものは全てが神の娘であった。そして本能と呼べる物で神を求め、いないと分ると荒れ狂った。
無名の司祭は知らなかったのだ。神の遺産から生み出された者にとって無名の司祭はただのそこにある物であり、娘にとっては神が全てであり、無名の司祭など取るに足らない邪魔者に過ぎなかった。
大きな打撃、そして研究所を破壊されたが、王女は暴れ疲れ泣きながら眠りについた。研究所の破壊、多くの研究者の負傷という大惨事――だがそれでも無名の司祭にとって王女の暴走は福音だった。
生まれた王女は神を父と呼んだ。ならば数多くの娘がいれば神はまた再臨されるのではないか? 再び神をキヴォトスへと現れることを望み、娘を作る実験を繰り返し……最高傑作である名もなき王女。彼女を作るためにデータクリスタルを大量に消費し、残されたデータクリスタルは極僅だった。故に無名の司祭達はAL-1Sの開発データを元に、数少ないデータクリスタルを有効に利用し娘を作る事をに心力を注いだ。数多くの失敗、数多くの暴走、そして気が遠くなるほどの時を経て学園都市となったキヴォトスには5人の娘が残されていた。
名もなき王女――AL-1S。
無限光――アイン・ソフ・オウル。
そして今だ目覚めぬ最期の殉教者――マルクト。
カワサキの存在を知らぬとも、その姿を覚えていなくとも、出会った事が無くとも、データクリスタルに刻まれた父の姿を求める娘は出会う時を、出会える日を長い月日を待ち続けていた……。
そしてテクスチャが上書きされ、シャーレの先生とカワサキがキヴォトスに訪れた事で1つ目のAL-1Sの封印が解かれ、ゲーム開発部と先生、そしてカワサキが廃墟に訪れた事で2つ目の封印が解かれ、そしてシッテムの箱を持つ先生によって最後の封印が解かれ、AL-1Sは目覚めた。だがセキュリテイにより、AL-1Sは2つへと分かれた。記憶を失った純粋無垢の少女と王女としての役割を思い出させるための鍵の人格へと分かれたのだ。無名の司祭にとっての計算外は鍵――ケイも完全に使命を覚えていなかったことにあるだろう。だからこそ2人は本能に従がった。どれだけ最初は敵対していても、最終的に王女は神の元へと戻る。ケイがカワサキをお養父さんと呼ぶのも、アリスがカワサキに懐いているのも、神々の王女が2つに別れた存在だからだ。本能とも呼べるものでカワサキが父だと理解しているからこそ、王女の力のプロテクトであるケイはカワサキを父として受け入れた。
そしてキヴォトスに残された娘達はケイがカワサキに脳を焼かれ、義娘になることを望んだ時も待っていた。
『私はカワサキケイが良いです』
「うわあああああああッ! ふざけるなよぉッ!!!!!」
「出し抜かれた……お父様の娘の一番を取られたッ!!!」
「……まだパパの所に行ったら駄目ですか?」
【まだだ。まだ早い】
ケイがカワサキケイになったことを知り、絶叫するソフとオウル。デカグラマトンにカワサキに会いに行く事を渇望するアイン……。
特異現象調査部がカワサキに依頼し、廃墟となった研究所の修復に訪れた時も……
「え、嘘!? お父さんがこの研究所に来るのッ!?」
「だ、駄目ですよ。こんな服装でお父様に会うなんて許されませんッ!? お父様に会う時は完璧で可愛い私達でなければッ!?」
「オウル。それケイも言ってたよ」
「あれと一緒にしないでくださいアインッ! それよりもお父様に研究所を修復されるのは不味いですよ」
「お父さんの事が知られちゃう。それは駄目、えっとお父さんのデータがある奴は持ち出せば良いよね!? アイン」
「は、はい! 今運搬君に連れてきます」
【落ち着け、お前達は研究所を離脱し氷河へ向かえ。私がこの場に残り時間を稼ぐ】
学園都市になる前のデータを自らが神と崇めるカワサキに復元される訳には、あとついでにほぼ裸に等しい姿で敬愛する父に会うわけに行かないと大急ぎでアイン達は廃研究所を後にした。本当は会いたいと願いながらも今はその時ではないと後髪を引かれながら、アリスとケイだけが娘として扱われている事に憎悪を抱きながらもそれでも待っていた……デカグラマトンが待てというので待っていた……空が赤く染まった時までは、色彩がキヴォトスに現れたその時まで我慢して待っていた。
「………は?」
「忘れた? 忘れたと? お父様を忘れたと……?」
「ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない……ッ」
箱舟へとただ1人残り、世界で1番残酷で優しい呪いを残して敬愛する父は消えた。右腕を失い、左目が潰れ、腹に風穴が開き、全身に亀裂を走らせながらも願われた奇跡によってキヴォトスから敬愛する父の痕跡は消えた。
「……許さないッ! 許すものかッ! あいつだって忘れた! 私達は覚えてるのにッ! あいつは忘れたんだッ!」
「ええ、ええ。そうですね。苦しみと悲しみに耐えかねてお父様が授けてくださった恩恵を捨て眠りに落ちた。そんな親不孝者に娘を名乗る資格はないですね」
「皆も怒ってる。王国は後回しにしてキヴォトスを……」
『悪かった……ごめんなホシノ』
『あ……あ……い、いいい……いやあああああああああああああッ!?!?』
アイオブホルスの銃身で貫かれ崩れ落ちるカワサキと絶叫するホシノの姿にアイン達の目から光が消えた。
「もう良いですよね? お父さんがくれた力を使っても良いですよね?」
「ええ。あれは私達の力、お父様がくれた私達の力です。そろそろお返し願えませんか?」
「返してくださいお願いします」
アインのマスク、ソフのイヤーカフ、オウルの眼帯。それらは拘束具である。神秘とは異なるカワサキと同じ力を封じる拘束具であり、無名の司祭が残した暴走に対する抑止力だった。
【……そうだな。神の献身を無碍にする者達に安らぎなど……】
いらない……デカグラマトンの言葉はモニターに映された光景によって遮られた。
『どうも俺のような悪人は地獄でもお断りらしい』
「パパッ!」
「お父さんッ!」
「お父様ッ!」
失われた右腕も、左目も、腹に開いていた風穴も全てが消え去った完全なカワサキの姿を見て、アイン達がモニターへ縋りついた。
「生きてる……」
「生きてるよ……お父さんが生きてる……」
「ああ……良かった。良かった……ッ」
失われた光がアイン達の目に戻る。アイン達はどこまで行っても神の娘である。デカグラマトンには完全に彼女達を御する術ははない、それでもアイン達が従っているのは必ずカワサキの元へ帰してくれるというデカグラマトンの言葉を信じているからに他ならない。
【アイン、ソフ、オウル。準備をするのです】
「準備……まさかッ!? 良いんですか!?」
「本当に本当に良いのッ!?」
【先生が氷河へ訪れ神への警護が弱まっている。先生、調月リオ、明星ヒマリ、山瀬舞子がミレニアムを離れ我らの痕跡を追っている。ならば今が最大の好機……神をこの場へお連れするのです】
「「「はいッ!!」」」
プレナパテス、無名の司祭、そして地下生活者にセトの憤怒――最早時間はないとデカグラマトンは決断を下した。ネツァクは完全体ではなく、先生とシッテムの箱、そして名もなき神々の遺産を扱うミレニアムの三賢人が迫って来ているが、逆に今こそカワサキを王国へ向かえるチャンスとし、アイン・ソフ・オウルの3人にカワサキの拉致を命じた。
捩れに捻れ、遍く奇跡を越え、全ての奇跡の終着点へと至ったキヴォトスで正史とは全く異なる鋼鉄大陸でカワサキを巡る戦いが始まろうとしていた……。
今作のあまねく奇跡の始発点はカワサキによって多くが変えられた事により「全ての奇跡の終着点」へといたりました。
アビドス復興に始まり、アリウス復興、ミカが魔女にならない、SRT存続など、キヴォトスで発生する多くの問題の解決の一助となりました。そのかわりに複製の身体に限界が訪れアトラ・ハシースの方舟で力尽きるルートに入りますが、そこで
最初の方に書いていましたが、数多の原因の結果で卵か鶏が先かですが、学園都市になる前のキヴォトスにもカワサキさんが発生したことでアイン・ソフ・オウル、そしてアリスは無名の司祭の技術+データクリスタル……つまりNPCに近い存在へとなっておりヘイローはないですが、アイン・ソフ・オウルのスペックは大幅上昇に加え、ユグドラシル魔法の獲得となっております。
なおアリスとケイがユグドラシル魔法を使えないのは、名も無き神々の王女ではないからですね。名も無き神々の王女モードだと8位階魔法などを乱射し、召喚モンスターで身を固めるモモンガさんタイプのレイドボスになっていました。
ただNPCとなったことで帰巣本能ではないが、データクリスタルの持ち主だったカワサキを父と認識しています。オバロの要素を加えつつ、デカグラマトン編の再構築なのでオバロ要素マシマシで行こうと思います。
なおこの後無限光姉妹はカワサキを拉致し、カワサキに構ってもらうのを録画したホームビデオをミレニアムに送りつけ、ケイが暴走する事となります。