空の彼方から一羽の鳥がやってくる。
翼を広げ、くるりとターンして椰子の木に留まる。
高所から見下ろす眼には活気に満ちた村の広場が映っていた。
今日はデンジとレゼの結婚式だ。
男たちが集まって縛られた牛をかっさばいている。
腹が裂かれ、用意してあった大きなタライに肉と臓物がどさどさと乗せられていく。
次々と肉屋で見た形になっていく様子をデンジとパワーはうんこ座りでぼんやり見学していた。
「い~い匂いじゃのう。ワシに飲ませてくれんかのう」
「俺はステーキにして食いてえな~」
甲高い声がして、ふと振り返れば村の子供たちが集まっていた。
物珍しそうに解体現場を眺めている。休憩中のおじさんが解説を始める。あれはモモ肉、あれは肩肉。ああやって順番通りにやればお前らだって捌けるさ、と。すると傍にいた別のおじさんが「いやあれは下手くそだ」「俺なら違う手順でやる」と口を出す。すぐに村の男たちの知識自慢大会が始まった。通りがかりの買い出し部隊の女性陣に見つかってしまったのが運の尽きで、「お前らちゃんと仕事しろ!」と一喝された。男たちは皆すごすごと持ち場に戻る。
しかし鬼より怖いおっ母が居なくなってしまえば場は元通り。
男たちも子どもたちもまた集まってきて、勝ち気な少年が「俺もやってみたい!」と手を挙げる。大人全員でああだこうだとレクチャーが始まり、誰かが短刀を渡して皮と肉を切り分ける作業をやらせて全員で固唾をのんで見守った。
場に安堵の息が漏れる。
「よくやった!」
「これでお前も男だ」
少年は零れんばかりの笑みを浮かべる。
デンジが俺もやってみてえ~と思っていると、肩を叩く者がいた。
村のサッカー仲間の若者たちだ。
「デージー! 今日はおめでとう!」
「お、おお~」
“デンジ”は発音しにくいらしく、そう呼ばれていた。
若者たちは次々と祝いの言葉を投げかけてくる。
「お前も所帯持ちだな! いやあ、めでたい!」
「妻を大切にするんだぞ!」
「何を言われても始めは受け入れろ!」
「贈り物はいつでも忘れるな!」
言うだけ言うと若者たちははち切れんばかりの笑顔のまま各々の持ち場に戻っていく。
「……ウヌは人気者じゃのう」
「そうかあ?」
「ワシは退屈じゃ。メシの時間が待ち遠しい」
「俺もだよ」
デンジは活気づく村の人々を遠い目で眺めていた。
今日はデンジとレゼの結婚式。
だというのにデンジは心ここにあらずといった調子だった。
「な~んかよく分かんねえんだよなぁ。結婚式ってナンだ?」
「人間の儀式じゃろ? 適当に突っ立ってれば終わる」
「だろうけどさぁ、なんかこう、それじゃダメって気がしてきた……」
デンジは首を傾げる。
結婚式。想像と違った、という感じでもあるし、実感が湧かないといえばそうでもある。
しばらく考えてしっくりくる表現が浮かんだ。
『慣れていない』
結婚式に、ではない。
こういう社会的な催しにまともに参加した経験がないのだ。
周りに合わせて待つ、ということを初めに覚えさせられるのはいつだろう。
例えば幼稚園の入園式。あるいは小学校の入学式。
親に言われるがまま背筋を伸ばして列になって行進し、並べられた椅子に座って退屈な話をじっと聞いて待つ。
そういった経験を重ねることで人は社会に生きることを覚えていく。
でもデンジは知らない。
行事も儀式も催しも、“そうするものだから”の経験がまるで無い。
ましてや意義なんて分かりようもない。
なのに今日になったらいきなり主役。
村の皆にめいっぱいに祝われて、初めて自分が中心人物になっている事実に気がついた。
結婚式なんて壇上に上がって愛を誓ってキスをすればいいんじゃねえのと思っていたが、しかし見てみろ、こんなにも多くの人間が関わっている。全員が自分たちのためだけに動いている。悪ふざけでもなければドッキリでもない。
そして何より今朝のレゼのあの顔だ。いつもの調子で向き合っていてはいけないと流石のデンジも気がついたのだった。
だからデンジはこうして村中を見て歩いている。
これが自分事であるという実感を得るために。
「なあデンジ、ワシはもう帰るぞ。ウヌらの家でごろごろしてるから時間になったら起こしてくれ」
「お~……」
結婚式。
初めは慎ましく執り行うはずだった。
指輪を渡したはいいが他に何もしていないとデンジが言い出して、レゼがこう村長に申し出た。
――諸事情により目立ちたくありません。言い出しておいて勝手なのは重々承知していますが少人数で行わせてほしいんです。
その時の村長はこともなげに頷いた。
みなまで言うな、村の者たちには上手く伝えておく……と言っているも同然のしたり顔で、デンジとレゼは手を取り合って「さっすが~、村長は話が分かるッ!」と喜んだ。
それを見て村長は、ただしこれだけは譲れないと口を挟んできた。
――準備はこっちでやる。こんな大事なことを新郎新婦にさせられるか。
どうやら村のメンツにも関わる話らしい。
一つも手伝わなかったと他の村に知られたら見下げ果てた薄情者たちの集まりと思われてしまうとか。
デンジたちはこっちの文化にまだ疎い。そういうものだと言われれば是非もなく、お任せすることにした。
この時はまだ二人とも、先日家で勝手に開かれた宴と同じぐらいの規模になるだろう、と高をくくっていた。
その結果がこれだった。
村長のババアが隣の村から立派な牛をふんだくってきたあたりで怪しいと思うべきだったのだ。
気がつけば麻袋いっぱいの野菜やザルからはみ出た魚の山が積み上げられていき、村の女たちが腕をまくって集まっていた。
「料理はどうなってるの?」
「部屋の飾りつけは?」
「楽器は? 誰に任せるの?」
レゼがあっけにとられている間にも「手伝いにきたわよぉ」と増援部隊がやってくる。
準備にかかりきりになったママさん連合の子どもたちが集会所に集められ、腰の曲がった婆さんや小学生ほどの年の女の子が面倒をみる。炊事場は火山口のような熱気で女たちが汗だくになって鍋をかき回し大皿に取り分けている。
あのぉ、これって何人くらい集まるんですか……? というレゼの疑問は善意100%の笑顔によって押し潰された。
――さあ? できるだけ多くの村人に祝ってもらうつもりだから!
結論からいうと、やはり村長のババアのせいだった。
アタシらが悪魔に殺されずに済んでるのは一体誰のおかげだい、総出で祝ってやらなきゃバチが当たるよ――と村人たちをけしかけたのだ。
ただ、当人に言わせればこれでも規模は抑えたつもりらしい。
式に呼ぶのはこの村の人間だけに絞った。通例に従えば周辺の村々も招待するとのことなので、慎ましすぎる結婚式だろうという認識らしかった。
デンジたちとしてはせいぜい10人程度を想像していたのだから堪ったものではないのだが、まさかここにきて解散しろと叫んで回るわけにもいかない。後の祭りというやつだった。
「新郎が何ほっつき歩いてんだ」
デンジが顔を上げれば、すぐ傍にアキが立っていた。
「だって座って待ってるだけなんて暇だしよ」
「仮にも晴れ舞台だろ。大人しくしてろよ」
「そうなんだけどさ……」
デンジは思う。
かつて日本の公安で事後処理のハンコを押させられていた時に近い感覚だ。
自分の気持ちなんてお構いなしにレールに沿って物事が進んでいく。
このままではよく分からないうちに結婚式が通り過ぎてしまう。
これが自分一人のイベント事ならまだいい。
レゼの顔を思い浮かべる。プロポーズを了承してもらったときの幸せにほころぶあの顔を。
これから共に寄り添って歩こうと誓う自分がこんな浮ついた気持ちではいてはダメだ――そんな責任感のようなものをデンジは初めて覚えている。
「アキパイの意見を聞かせてくれよ」
「俺だって知らない。結婚してないからな」
「むう……」
「ただ、そうだな……」
アキは遠い目をする。
かつて自分に優しくしてくれた、好意を持ってくれた誰かを思い出しているのかもしれない。
「感謝の気持ちが伝わるようにしていればいいんじゃないか?」
「なにそれ」
「あの子が居てくれてよかったな、とかあるだろ。それを思ってるだけじゃダメだ。背中をしゃんと伸ばして、顔と目で分かるようにするんだよ」
「う~ん。分かったような分からないような……」
「それをここに居る人全員にやれ」
「ええ?」
「例えば村長さんだ。世話になったって聞いてるぞ。それを思い出せ。他の人らも同じだ」
「じゃあアキパイにも?」
「俺? まあ、そうだな……」
「そっちは全然思いつかねえな~」
「なんだと」
「ウソウソ。ちゃんと思い出すから待っててくれよな~」
アキは溜め息をついて去っていった。
村は騒がしく、デンジは考え込んでいたが、やがて思いきり立ち上がる。
一つ、深呼吸。
頬を叩いて気合を入れた。
パワーはいつだって自分が主役だと思っている。
自分が動いてから周りが動く、それが当たり前の光景で、ことによると他人を尊重するという概念自体を覚えていないのかもしれない。
そんな子どもなパワーではあるが、今日だけはどうやら違うらしいと察することはできた。納得できているかと問われれば限りなく怪しいが。
(今日は特に蔑ろにされている気がするのう……)
そんなモヤモヤを抱えながらパワーが村の中をぷらぷら歩いていると、ばったりアキと出くわした。
パワーは、おっ、と声をかけようとする。先手でこんなことを言われた。
「今日は何もするなよ」
「あ~? なんじゃあ、いきなり」
「大人しくしていれば豪華な食事が出てくるぞ。勝手をしたら食べられないからな」
「分かった分かった。チョンマゲはうるさいのう」
それだけ言うとアキはどこかへ去ってしまう。
どうせまたデンジかあの小娘のところへ行くのだろう。
「むう」
パワーは唇を尖らせる。
この村に来てからずっとこんな調子だ。
せっかくデンジにまた会えたのに、あの番いになるという小娘ばかり気にして構ってくれない。アキも似たようなものでデンジばかり気にかけている。
ケッコンとやらがそんなに大事か。
この偉大なパワー様を差し置いてぇ~……?
パワーとしては、別にアキに注意されるまでもなく結婚式では大人しくしているつもりだった。
確かに旨いメシが食えればそれでいい。
だが何もするなと念押しされるとそれはそれで腹が立つ。
「ここはワシのありがたみを思い出させてやらねばのう」
パワーは邪悪な笑みを浮かべて何をしてやろうかと考える。
お祝いのプレゼント……は用意している時間がない。
余興はどうだ。血の魔人の力を使って曲芸でもやれば拍車喝采雨あられの未来が見える。
「くふふふ……。ワシの必殺技を見せる時が来おったわ」
その時、近くでどよめきの声があがる。
見れば村の女たちが輪になって揉めていた。
「おい、人間。何かあったのか?」
「あ、最近よく居る魔人の人だ。ええっとね――」
パワーが聞けば、結婚式のために呼んでいた楽団が急に来れなくなったらしい。
代わりを呼びたいところだが直前すぎてあてがない。代理となれるような村人もいないらしい。
「だったらワシに任せておけ! 演奏のウデはプロ並みじゃ!」
「そ、そうなの? ちなみに楽器は何を弾けるの?」
「うん? ピアノかのう……?」
「この村にピアノ無いけど」
「じゃあバイオリン……?」
「えっ、持ってるの? 見たことないけど」
「百万円のバイオリンじゃからのう……。普段は金庫に閉まっておる」
「ふ~ん……? じゃあ任せていい?」
「もちろんじゃ!」
パワーは我が意を得たりとほくそ笑み、一足飛びに駆け出した。
まずは音が鳴る道具を探さねばならない。
「ワシのための式じゃからのう! 礼はしっかりせんとなあ!」
新郎の控室。
デンジは鏡の前で直立不動になっている。
身にまとうのは、金糸で織られた浮織物の伝統衣装。
ほとんどオーソドックスな長袖のシャツにズボンで、細部には金糸の模様が走っている。特徴的なのは腰に太い帯がきゅっと締められているところ。
一見すると公安のスーツよりカジュアルな装いに見える。しかし鏡を前にすると格式高い空気が立ち昇ってくるから不思議だ。
デンジには、鏡の中の自分がどこか他人のように見えた。
いつもは畑や荷運びで土にまみれて働く手が、今日は指先まで香油の匂いに包まれている。
心の奥が落ち着かない。
衣装の金糸が、まるで自分に「覚悟を忘れるな」と語りかけてくるように感じる。
今の心境を一言にすると「マジか……」という気分だった。
もうプロポーズはした。
指輪も渡した。
だから結婚式なんて辻褄合わせの通過儀礼だと思っていた。それが女の子の夢だって聞くから付き合ってあげよう程度の気持ち。
でもどうやら違う。
これは決戦なのだとデンジは気が付いた。
花嫁は今どんな気持ちで自分を待っているんだろう。
自分と同じように緊張しているのか。それとも自分との未来を思い描いているのか。
式場までの距離は短い。
けれどデンジはこれまでの人生で最も長い道のりに感じた。
***
幸せとはなんだろう。
具体的に挙げるのは難しい。
自分の心の中から思い浮かべようとすると、いつの間にか多くの人間が共感できるであろう形を探してしまう。例えば名曲のメロディー。ヒットした映画のクライマックス。有名ドラマの最終回。
しかし、皆が欲しい幸せとは本当にそれなのだろうか。
どこか、決して届かないところに希望や光を一束に集めた白金色に輝くイメージがあって、皆が本当に求めているのはそういうものではないだろうか。
***
昼下がりの村に、香辛料の匂いが満ちていた。
椰子の木の下に並んだ長いテーブルの上では、金色の布をかけた皿が陽光を反射して、蒸気を立てる鍋の中ではカレーがぐつぐつと煮えている。
女性たちは色鮮やかな民族衣装を揺らしながら、笑い声を交わしている。
「もうすぐ新郎が来るよ!」
少年の声が響くと、村の誰もが手を止めて顔を上げた。
花で飾られた道を着飾った少年がゆっくりと進んでくる。
歓声が上がり、男たちは皿を並べ始めた。
料理の香りが風に乗って広がる。
大鍋の中では祝いの象徴とされる色鮮やかな黄色のご飯がふっくらと炊き上がり、バターやスパイスの芳香が鼻をくすぐった。
隣ではトマトソースと唐辛子、スパイスで煮込んだチキン料理が煮立ち、太陽の下で宝石のように輝いている。
さらにその奥では、村長たちが牛肉のスパイス煮を味見していて、ココナッツミルクの香ばしさと唐辛子とレモングラスの香りが混じりあい、まるで村全体が一つの台所のようだ。
花々の香り、料理の匂い、人々の笑い声が混ざり合う。村が祝福で満ちていく。
椰子の葉のざわめきと、遠くで鳴く蛙の声さえも祝福のリズムを刻んでいるようだ。
デンジが歩みを進めるたびに足元で裾がさらりと鳴る。
村人たちの視線を浴びながら緊張に固くなっている。
その家の前で立ち止まり、息を整えた。
白いカーテンの向こうに、妻となる女性――レゼが座っている。
くぐり抜けると、部屋は花の香りで満たされていた。
少女は静かに座っていた。
淡い金の衣装に身を包み、頭には薄いヴェールがかけられている。
その姿を見た瞬間、デンジは息を呑んだ。
まるで夢の中で思い描いていた理想の人がそのまま現れたように思えたからだ。
「……デンジ君」
その声にようやく現実が戻ってくる。
デンジはどうにか笑みを浮かべ、妻の前で膝を折る。
「似合ってる……。その、なんだ、」
「うん」
「あれだ、あれ……」
「?」
デンジは俯いて、目元を拭う。
時折、すんと鼻をすする音。
「え。泣いてる……?」
「や、ちが……ごめっ」
レゼは指を伸ばし、デンジの震える指先に重ねる。
少しの沈黙。デンジはゆっくり顔を上げた。
慈しみを伴った瞳と目が合って、照れくさそうに頬をかく。
苦笑いを零した。
「……悪い。なんか一気に来た。……すごく、きれいでさ」
レゼも照れくさそうに笑みを返した。
――まさかこんな場所にまで辿り着くことができるなんて。
幸福とそれに感謝する心が二人の胸にこみ上げている。
「これから、よろしくな。俺、超頑張って……幸せにする」
「うん、私も。私も……」
二人、両手を包み合い、静かに頷いた。
讃美歌のように祝福が降りそそぎ、外では太鼓がもう一度鳴り響く。
歩調を揃えて外に出る。
誰もが祝い合っていた。デンジと仲の良い若者たちも、子どもも大人も村長も、アキだって晴れやかな顔で拍手を送っている。その傍らではコケピーも元気に跳ねていた。
進行役の女性が一歩前に出て、澄んだ声で告げた。
「それではただ今より新郎新婦を祝福する音楽が奏でられます。本日のために急遽演奏を快諾してくださったパワーさん、どうぞお願いいたします!」
会場が静まって、皆の視線が横手のステージに向けられた。
デンジは「ん?」と思った。
アキは「は?」と眉根を寄せた。
「ガハハハ!」
壇上にパワーが駆け上がる。
手には黒い電子機器。ラジカセを持っている。
「お前ら! ワシの演奏を聴けえ~!!」
田舎村には不釣り合いな無骨でデカいスピーカーにコードを繋ぎ、バツン!とノイズ音を走らせる。スピーカーから低い唸りが漏れる。
パワーは構わずに音量ツマミを一気に回した。
その瞬間、
キィイイイイン!!
「ぎゃあ!?」
「わああ~!?」
「パッ、パワー! お前!」
鋭いハウリングが会場に突き刺さる。
パワーが慌ててラジカセを叩くと、怪獣の遠吠えのような音圧が空気を掻き乱す。
飛びこんできたアキがツマミを調整して、ようやく音量が落ち着いた。
「すっすいませんすいません! お前もちゃんと謝れ!」
「ワシのせいじゃない! スピーカーにトラップが仕掛けられてたんじゃあ!」
その姿がまさに出来の悪い妹に苦労させられる兄貴そのもので、デンジとレゼは顔を見合わせて噴き出した。
「パワ~! おめーが祝ってくれようとするなんてなあ~!」
「そうじゃ! ワシ祝おうとした!」
「お前はちゃんと反省しろ!」
「あははは! 早川家っていつもこんななの~!?」
会場の村人たちはあっけにとられていたが、新郎新婦が楽しんでいるならむしろ喜ばしい。談笑と口笛、そしてスピーカーから流れ出るアップテンポな曲調が会場の空気を揺らす。村長のババアは仏頂面のままフンと鼻息を鳴らした。
こんな式もたまにはいいだろうさ、と。
『
Co
Op
Wh
If
ここは日本からもソ連からも遠く離れた異国の地。
太陽がぎらぎら輝く空と、自然の生命力が息づく大地――その間の空間に突風が通り過ぎていく。
渦を巻き、螺旋状に空へと駆け上がる。
鳥の羽がふわふわと浮いている。
吹き荒れる風に乗って、くるくると、咲き乱れる花びらのように舞っていく。
全てが自由だった。
デンジとレゼは声をあげて笑い合い、揃って視線を天へと昇らせる。
手を繋ぎ、いつまでも世界へと繋がる空を見上げていた。
まずは何よりも読んでくださった読者の皆様、そして感想を下さった皆様に大感謝申し上げます。
映画に触発されて突発的に書いた一話目は良かったのですが、二話目の途中で気付きました。これ続きを書いていくのすごく難しいぞ、と。数々の感想がなければ早々に終了していたでしょう。背中を押して下さりありがとうございます。
正直に言いますと、結婚式だけは直球で書かないつもりでした。何故なら超苦手なことが分かりきっていたからです。しかし毎回思いつくままに書いていたせいで気がつけば式をやる流れになっていて、泣く泣く時間をかけて書きました。もっとふんわりと『一年後――』みたいな締めにしようと思ってたのにさあ!
さて。初期衝動といいますか、今作でやりたいと思ったのは「デンジとレゼが何の憂いもなく幸せに暮らす」ことです。
しかしその条件を満たすためにはマキマの存在があまりにも邪魔でした。何だよ小動物の目を借りるって。どこに隠れ住んでも安心できない。そうなると海を隔てて人も居ない無人島しかない。無人島といえば南の島、それって楽園なイメージあるよね……って設定が決まりました。
でもやってみるとこれが本当に大変なんですね。
なんの問題もない舞台設定、ストーリー……そんなものをどうやって描けばいいのか。
登場人物は二人だけ。因縁もなければ色恋話もクリア済み。
こっ、これ無理ぃ! ってなりましたね。恋のライバルをぶっこみたくて仕方ありませんでした。具体的にはアサ・ヨル襲来。その誘惑が頭をよぎるたびに初期衝動を思い出し、なんとかかんとかやってきました。ほのぼのしたお話を書ける人は本当にすごいなって思います。私はどうしようもなくなってコケピーを出し、手癖になってる不穏系な話でお茶を濁し、とうとう無人島を脱出させてしまいました。もはや第一話の楽園なイメージからはかけ離れてしまいましたが、これはこれでよかったかなとも思っています。皆様は如何でしたか?
本日また映画を観てきました。
思い返せば原作をちゃんと読み始めたのもジャンプ掲載時のレゼ編からで、その時から今までずっと脳を焼かれています。映画のせいで、おかげで、その熱は高まっている気がします。原作第二部で一コマでいいから出てきてほしい気持ちもあり、行方不明のままで痛みを残し続けてほしい気持ちもあり。
そんなお話を自分でも書いてみたいです。ではまた。