銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜 作:斉宮 柴野
魔術師ヤン・ウェンリーの静かな悪意。
そして、歴史の表舞台には名前すら残らなかったある俗物の決断。
誰もが大義のために戦ったわけではありません。
欲望、恐怖、友情、打算──
そうしたものが絡み合って、戦場は思いがけない方向へ転びます。
ひとつの会戦がどれほど多くの思惑で動いていたのか、
少しでも感じていただければ幸いです。
アスターテ星域
ヤン・ウェンリーが構築した「死の箱(キリング・ボックス)」の中に閉じ込められた帝国軍は、全方位からの十字砲火を浴び、刻一刻とすり潰されている。
帝国軍旗艦《ブリュンヒルト》
煤と傷で薄汚れ、かつての優美さは見る影もない。艦橋では、ひっきりなしに爆発音と悲鳴が交差している。
「右舷、被弾!防御スクリーン、出力低下!」
「後方のシュターデン艦隊、通信途絶!壊滅した模様!」
「前方の退路、敵第13艦隊により完全に封鎖されています!抜けられません!」
オペレーターたちの報告は、もはや死亡診断書の読み上げに近い。
「……くっ!ここまでか……!」
ラインハルトは、指揮官席のアームレストを握りしめ、ギリリと歯噛みする。蒼氷色の瞳に、屈辱の涙が滲む。負ける。この俺が、姉上に勝利を誓ったこの俺が、こんなところで負けるのか。
しかも、「子供が生まれたから張り切って突っ込んだら罠でした」なんて、恥ずかしくて末代まで語り継がれる失態だ。
「このままでは全滅だ!俺の野望も、姉上との約束も、ここで潰えるのか……!」
絶望が、若き覇者の心を覆い尽くそうとした、その時だった。メインスクリーンに、一人の男の顔が割り込んでくる。貴族直轄軍の指揮官、エルラッハ少将だ。
普段は常に誰かの顔色を窺っているような卑屈な男。だが、今の彼の表情は違っていた。血走った目。滝のような脂汗。そして、何かに取り憑かれたような、狂気じみた「必死さ」があった。
『閣下!迷っている暇はありません!』
エルラッハが、カメラに向かって唾を飛ばしながら叫ぶ。
『我が艦隊が前衛を務めます!一点突破を図りましょう!この「死の箱」の壁を、我が艦隊の質量で強引にこじ開けます!』
「なに……?」
ラインハルトは耳を疑う。エルラッハといえば、保身の塊のような男だ。一番安全な場所で、手柄だけを掠め取ろうとするタイプだ。その彼が、自ら死地へ飛び込む「前衛」を志願するだと?
「しかし!それでは貴官の艦隊が全滅するぞ!敵の火力が集中するのだぞ!」
ラインハルトが止める。だが、エルラッハは首を激しく振った。
『(必死の形相で)構いません!いや、勝算はあります!』
彼は、モニターの向こうの敵艦隊(第13艦隊)を指差す。
『敵は共和主義者です!「人権」だの「人道」だのと甘っちょろいことを抜かす偽善者どもです!』
エルラッハの論理が炸裂する。
『見てください!戦場には、先に撃破された第4、第6艦隊の生存者や脱出ポッドが多数漂流しています。……奴らは、それを踏み潰してまで撃ってはこないはず!』
人間の盾。いや、敵の良心を逆手に取った、卑劣極まりない「人質戦術」だ。
『我々が漂流者の群れに突っ込めば、敵は照準を迷う!その一瞬の隙を突くのです!我々が盾となって時間を稼げば、本隊は離脱できます!』
「貴様……それはあまりにも……」
ラインハルトは絶句する。美学に反する。だが、生き残るための唯一の道であることも事実だ。
『ラインハルト様!』
傍らのキルヒアイスが、悲痛な声で進言する。
『エルラッハ提督の言われる通りです!綺麗事を言っている場合ではありません!貴方には、生きて帰らねばならない義務があります!アレクサンデル様のためにも!』
息子の名前。その一言が、ラインハルトの迷いを断ち切る。そうだ。俺は死ねない。どんな泥をすすってでも、生きて帰って、あの子を抱きしめなければならない。
「(唇を噛み切り)……よし!許可する!」
ラインハルトは決断する。
「全艦、エルラッハ艦隊に続け!敵包囲網の一角、最も装甲の薄い部分に全砲火を集中!一点突破で離脱する!」
彼は、モニターの中の男を睨みつける。
「エルラッハ!死ぬなよ!貴様が死んだら、誰が俺の盾になる!」
それは、ラインハルトなりの精一杯の激励だった。すると、エルラッハはニヤリと、欲望に満ちた(ある意味で頼もしい)笑みを浮かべた。
『フン。ご心配なく。……生きて帰れば、ブラウンシュヴァイク公への口添え、頼みましたぞ!「エルラッハこそ忠臣の鑑」と!あと、ボーナス査定はSランクで!!』
通信が切れる。金と出世。その不純な動機こそが、今の彼を支える最強の柱だった。
◆
「全艦突撃!エンジン出力限界突破!ローエングラム伯の道を作れぇぇぇ!!」
エルラッハの絶叫と共に、彼の艦隊が動き出す。それは、統制の取れた艦隊運動ではない。「どけぇぇぇ! 俺のボーナスが通るぞぉぉぉ!」という、欲望の暴走機関車だ。
同盟軍第13艦隊。その包囲網の一角を守っていた分艦隊(フィッシャー指揮下)は、この常軌を逸した突撃に動揺する。
「敵艦、突っ込んできます!漂流者を盾にしています!撃てません!」
「構うな!撃て!……いや、ダメだ!味方のポッドが!」
ヤンの懸念通り、現場の兵士たちは引き金を引くのを躊躇った。そのコンマ数秒の迷い。 それが、生死を分けた。
ズガガガガガ!!
エルラッハ艦隊が、ビームを乱射しながら同盟軍の艦列に食い込む。シールド同士が接触し、火花が散る。強引なこじ開け。同盟軍の包囲網に、わずかな、しかし致命的な亀裂が入る。
「今だ!駆け抜けろ!」
ラインハルトが叫ぶ。白亜の《ブリュンヒルト》が、エルラッハが開いた血路へと飛び込む。その背後には、生き残った帝国軍艦艇が、我先にと続いている。
「抜けた!包囲網突破!」
オペレーターが歓声を上げる。地獄からの生還。九死に一生を得た瞬間だ。
だが。まだ終わってはいない。
帝国軍の最後尾。戦艦《タンホイザー》(ティアマト戦後にラインハルトからプレゼントされた艦)の艦橋。ジークフリード・キルヒアイス中将は、モニターの中で遠ざかっていく白い戦艦を見つめ、静かに頷いた。
「ラインハルト様が抜けた!よし、次は我々だ!……いや」
キルヒアイスの手が止まる。戦況図を見る。エルラッハ艦隊は、先ほどの突撃で半壊し、使い物にならなくなっている。今、ここで全員が逃げ出せばどうなるか?体勢を立て直したヤン・ウェンリーが、背後から猛烈な追撃をかけてくるだろう。そうなれば、傷ついた《ブリュンヒルト》は逃げ切れない。
「……ダメだ。誰かが蓋をしなければ、追いつかれる」
誰かが。誰が?エルラッハはもうボロボロだ。ファーレンハイトも手一杯だ。ならば、残っているのは。
キルヒアイスの脳裏に、様々な顔が浮かぶ。ラインハルトの笑顔。アンネローゼ様の優しい、そして少し独占欲の強い瞳。アルブレヒト元帥の「お前も家を買えよ」という言葉。 新築のマイホーム。ふかふかのベッド。
(……帰りたいな)
本音が漏れる。だが、その本音よりも重いものが、彼の中にはあった。
「全艦、反転!」
キルヒアイスの声が、艦橋に響く。迷いはない。澄み切った声だ。
「我が艦隊は殿を務める!敵の追撃をここで食い止める!ラインハルト様を逃がせ!味方を一隻でも多く逃がせ!」
「閣下!それでは我々が!」
副官が悲鳴を上げる。この状況で踏みとどまるということは、死を意味する。第13艦隊の火力を一身に浴びることになるのだ。
キルヒアイスは、ニッコリと笑った。それは、いつもの穏やかで、誰からも好かれる好青年の笑顔だ。
「構わん!……ラインハルト様が生きていれば、帝国は負けない。それに、私が死ねば、アンネローゼ様にあの世で叱られるからな。そう簡単にはくたばらんさ!」
彼は、自分に言い聞かせるように叫ぶ。
「撃てぇッ!敵の視界を焼き払え!」
《タンホイザー》が反転する。逃げる味方の背中を守るように、両手を広げて立ちはだかる。その姿は、まさに盾。
同盟軍第13艦隊旗艦《ヒューベリオン》
ヤン・ウェンリーは、モニターの中で反転する戦艦を見て、目を見開いた。
「……正気か?あの数で、我々を止める気か?」
「提督!敵艦、突っ込んできます!特攻です!」
「……見事な殿だ。だが、容赦はできない」
ヤンは、カップを置く。
「撃て。……彼のような勇者が死ぬのは惜しいが、これも戦争だ」
ドゴォォォォォォン!!
第13艦隊の一斉射撃が、《タンホイザー》を包み込む。紅蓮の炎。シールドが悲鳴を上げ、装甲が融解する。それでも、艦は下がらない。一歩も引かず、味方が逃げ切るまでの時間を、その身を削って稼ぎ続ける。
「キルヒアイスぅぅぅ!!」
遠ざかる《ブリュンヒルト》の中で、ラインハルトの絶叫が虚しく響き渡っていた。
アスターテの星々が、赤く、悲しく燃え上がっていく。それは、若き英雄たちの青春の終わりを告げる、残酷な狼煙のだった。
◆
「敵、一部が突破! 旗艦を含む主力部隊、逃走体制に入りました!」
オペレーターが叫ぶ。その声を聞いた分艦隊司令のダスティ・アッテンボロー准将が、身を乗り出す。彼の目はまだ死んでいない。むしろ、獲物を逃した猟犬のようにギラギラしている。
「逃がすかよ!提督!追撃しますか!?今なら追いつけます!相手は手負いだ!」
アッテンボローは、コンソールをバンバンと叩く。
だが、司令官席に座るヤン・ウェンリーは、冷めた紅茶を揺らしながら、モニターをぼんやりと見つめていた。
「(モニターを見つめ)……いや、やめておこう。深追いは禁物だ」
「は?なぜです?」
運用責任者のフィッシャー准将も、驚いた顔をする。
「今なら確実に仕留められますぞ。このまま逃せば、敵はまた勢力を盛り返してくるでしょう。禍根を断つなら今です」
軍事的な常識で言えば、フィッシャーの意見が正しい。殲滅戦において、撤退する敵を追撃するのは最も効率の良い戦果拡大の手段だ。だが、ヤンは首を横に振った。
「(漂流する無数の救命ポッドを指差し)……見てくれ。この光の海を」
ヤンが指差したモニターには、破壊された第4、第6艦隊、そして帝国軍の艦艇から放出された無数の救命ポッドが、蛍のように漂っている。
「彼らの回収が先だ。味方はもちろん、帝国の兵士もね。これ以上、放置すれば酸素欠乏や寒さで死ぬ者が出る」
「それは……そうですが」
「それにだ。……敵の殿の動き、見たかい?」
ヤンは、モニターの端で燃え上がりながらも、なお抵抗を続ける戦艦を指差す。
「見事すぎる。自分の命を捨てて、主君を逃がそうとするあの気迫。……あんなのを相手にまともに喧嘩を売ったら、タダでは済まないよ」
ヤンは肩をすくめる。
「『窮鼠猫を噛む』と言うだろう?追い詰められた鼠は、猫の鼻を噛みちぎるものだ。ここで無理に追えば、こちらの被害も拡大する。せっかくの『無傷の勝利(に近い大勝利)』に傷がつく」
「……うぐっ」
アッテンボローが言葉に詰まる。確かに、あの戦艦の暴れっぷりは異常だ。死兵と化した敵に突っ込むのは、リスクが高い。
「勝ちは勝ちだ。これ以上の流血は無意味だよ。……それにね」
ヤンは、声を潜めて、誰にも聞かれないように(と言いつつ、全員に聞こえる声で)呟いた。
「あまり完勝しすぎると、トリューニヒト委員長に何をさせられるか分かったものじゃないからね」
これだ。これこそが、ヤンの本音だ。今でさえ「民主主義の守護神」などと持ち上げられて迷惑しているのに、ここでラインハルトの首を取るような完全勝利を収めてしまったらどうなるか。間違いなく、パレードやら講演会やら、政治的なプロパガンダに利用されまくり、一生飼い殺しにされる。年金生活どころか、過労死コース一直線だ。
「(苦笑)……承知いたしました」
参謀長のムライ准将が、呆れつつも敬礼する。彼は、ヤンのそういう「欲のなさ」を信頼しているのだ。
「戦闘終了、救助活動に移行します。……アッテンボロー提督、追撃中止。網をしまってください」
「チェッ。……ま、先輩がそう言うなら仕方ないっすね。今日のところは勘弁してやりますか」
アッテンボローは、帽子を目深にかぶり直す。第13艦隊の砲火が止む。アスターテの宇宙に、つかの間の静寂が戻ってくる。
ヤンは、遠ざかる帝国軍の光を見つめながら、心の中で呟いた。
(……逃げ切ったか、ローエングラム伯。そして、あの戦艦の指揮官。……君たちのような優秀な敵がいると、私の老後も安泰とはいかないな)
◆
一方、九死に一生を得て逃走中の帝国軍。
旗艦《ブリュンヒルト》の艦橋は、お通夜と安堵が入り混じったような、奇妙な空気に包まれていた。
艦はボロボロだ。内装パネルは剥がれ落ち、あちこちで火花が散っている。だが、エンジンは生きている。ヤンの追撃が止んだことで、彼らはなんとか安全圏へと脱出しつつあった。
「(荒い息を吐きながら)……はぁ、はぁ……。どうにか、落ち着いたか……」
ラインハルトは、指揮官席に深く沈み込んでいた。全身から冷や汗が吹き出している。 生きた心地がしなかった。あと一歩。あと数秒遅れていたら、確実に宇宙の塵になっていた。
「……キルヒアイス!キルヒアイス!応答せよ!無事か!?」
ラインハルトが叫ぶ。彼が一番心配しているのは、自分の命よりも、殿を務めた親友の安否だ。
ざーっ、ざーっ。ノイズ混じりの通信音。沈黙の数秒間が、ラインハルトには永遠に感じられた。
『……こちら、キルヒアイス……』
途切れ途切れの声。だが、確かに聞き覚えのある、穏やかな声だ。
『……ラインハルト様。……ご無事ですか?』
「キルヒアイス!!」
メインスクリーンに、映像が戻る。そこに映っていたのは、煤だらけの顔で、頭に包帯を巻き、右腕を吊った状態のジークフリード・キルヒアイスの姿だった。背景の艦橋は半壊しており、天井からケーブルが垂れ下がっている。まさに満身創痍。だが、彼は生きていた。そして、ラインハルトに向けて、いつもの優しい微笑みを向けていた。
『(煤だらけの顔で)……どうにか。旗艦をかなりやられましたが……生きています。機関部は無事ですので、航行に支障はありません。……追いつきます』
「(安堵で力が抜け)……良かった……!本当に良かった!」
ラインハルトの目から、涙が溢れそうになるのを必死にこらえる。生きていてくれた。 それだけで十分だ。
「お前が生きていれば、艦などいくらでもくれてやる!あんなボロ船、捨ててしまえ!帰ったら、ファルケンハインに言ってもっといい船を用意させる!」
ラインハルトは叫ぶ。
「昇進もさせる!大将だ!お前なら何でもなれる!あの『バルバロッサ』も、大将になれば貰える!純金でコーティングしてやるからな!だから死ぬな!」
『ふふ。……純金は趣味が悪いので遠慮します』
キルヒアイスが弱々しく笑う。その笑顔を見て、ブリュンヒルトのクルーたちも、ようやく肩の力を抜いた。
だが。まだ確認しなければならないことがある。もう一人の「功労者」についてだ。
「……おい。エルラッハ提督は?通信が繋がらんが」
ラインハルトが問う。あの、卑屈で、金に汚くて、でも最後の最後に漢気(?)を見せた貴族。彼が盾になってくれなければ、今の自分たちはいない。
艦橋に、重苦しい沈黙が落ちる。シュターデンが、沈痛な面持ちで歩み出る。
「(沈痛な面持ちで)……ご報告いたします」
シュターデンの声が震える。
「エルラッハ提督の艦隊は……閣下の盾となり、敵包囲網への突撃を敢行しました。その結果、敵の集中砲火を一身に浴び……」
言葉が詰まる。
「……旗艦轟沈。エルラッハ提督は、戦死なさいました」
「な……」
ラインハルトが絶句する。死んだ。あの男が。「ボーナス査定を頼む」と笑っていたあの男が。
(……俺のせいで)
ラインハルトの胸に、重い鉛のような塊が落ちる。あの時、自分がもっと早く撤退を決断していれば。いや、そもそも自分が功を焦って突出したせいで。
「……最期は?」
ラインハルトが絞り出すように問う。
「……立派なものでした」
ファーレンハイト少将が、口を開く。 彼もまた、その場に立ち会っていた一人だ。
「(淡々と)通信が途絶える寸前まで、彼は叫んでいました。『どけぇ!俺の出世街道だ!』と。……そして、敵艦に特攻同然に突っ込み、自爆して敵の陣形を崩しました」
ファーレンハイトは、少しだけ目を伏せる。
「彼は勇敢でした。……いや、欲望に忠実でした。最期まで退かず、見事に突破口を開きました。……帝国貴族としての役割を、立派に果たしたと言えましょう」
「うむ。彼のおかげで、我々は生き残れたのです」
メルカッツ提督も、深く頷く。
「彼の動機が何であれ、その行動は英雄的でした。……彼のような男が、帝国を救ったのです」
あの、打算的で、口を開けば「口利き」を求めてきた俗物が。自分のために死んだ。その事実は、ラインハルトにとって、どんな高潔な騎士の死よりも重く、そして生々しくのしかかった。
ファルケンハイン元帥が作った「システム」欲望を肯定し、それを力に変えるシステム。 それが、一人の俗物を英雄に変え、そして死なせたのだ。
「(拳を握りしめ)………承知した」
ラインハルトは、顔を上げる。その瞳には、今までとは違う、大人の色が宿っていた。 ただの夢見る少年ではない。他人の命と欲望を背負って立つ目だ。
「彼の死を無駄にはしない。……彼の家族と家には、篤く報いるよう、ブラウンシュヴァイク公に私から口添えしよう。最高ランクの勲章と、子々孫々までの繁栄を約束させる」
ラインハルトは宣言する。それは、死者との契約だ。
「……ファルケンハイン元帥にも、彼の功績を特別に報告する。『エルラッハこそ、真の忠臣であった』とな。……約束通り、太字で報告書に書いてやる」
それが、せめてもの手向けだ。あの世のエルラッハも、それで満足して成仏してくれるだろう。「閣下、さすが話がわかりますな!」と、あの卑しい笑みを浮かべて。
《ブリュンヒルト》は、傷ついた体をひきずりながら、帝都オーディンへの帰路につく。 そこには、敗北の苦味と、友の生存の喜び、そして「俗物の英雄」への奇妙な敬意が混ざり合っていた。
歴史の歯車は、彼らの血と涙と欲望を吸い込んで、さらに大きく回り始める。
◆
【アスターテ星域会戦 戦闘結果】
帝国軍
参加兵力:21,000隻
損失艦艇:7,893隻(エルラッハ少将戦死)
結果:敗北
同盟軍
参加兵力:50,000隻
損失艦艇:29,300隻
内訳:第4艦隊(パストーレ中将戦死)、第6艦隊(ムーア中将戦死)は壊滅。
第13艦隊(ヤン中将)は、損失わずか550隻という奇跡的な損害軽微。
結果:アスターテ星域防衛成功により、同盟軍の勝利
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
もし読んでいて
「ここが良かった」
「この人物の描写が気になる」
「この戦術はどういう意図?」
など、ご感想があればぜひ聞かせてください。
皆さまの反応が、次の戦いや人物描写の大きな力になります。
帝国と同盟の内乱どちらから見たいですか?
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銀河帝国
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自由惑星同盟