銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜 作:斉宮 柴野
両軍、満身創痍なのか、それとも元気いっぱいなのか。
その内訳は、極めてカオスな状態となっています。ここで、開戦直前の両軍の「戦力状況」を確認しましょう。
【銀河帝国軍・戦力状況】
総兵力:約7万7千隻(残存戦力)士気:微妙(空腹と疲労と、一部の暴走)
◆中央軍(疲労困憊チーム)
・ローエングラム直衛艦隊(総数:15,000隻 → 残存:8,740隻)
・キルヒアイス艦隊(総数:15,000隻 → 残存:8,230隻)
【状況】
ボロボロだ。補給路において、ヤン・ウェンリー(魔術師)とウィレム・ホーランド(猛牛)という、同盟軍きっての「劇薬コンビ」と正面から殴り合った代償である。「敵を釘付けにする」という目的は果たしたが、その代償として艦隊の半数近くが損傷、あるいは破壊されている。
ラインハルトの美貌には疲労の影が差し、キルヒアイスの優しさにも限界がきている。 彼らは今、一番「帰って寝たい」と思っているが、総大将としての責任感がそれを許さない。
◆右翼(ピンク色の悪夢)
・ヘルクスハイマー艦隊(総数:15,000隻 → 残存:14,870隻)
【状況】
ほぼ無傷。同盟軍第3艦隊(ルフェーブル)を、「ジークへの愛の邪魔だ」という理不尽な理由で瞬殺したため、損害は軽微。旗艦の塗装はショッキングピンク。士気は最高潮(ただしベクトルがおかしい)
現在、彼女のモチベーションは「早く戦争を終わらせてジークにハグする」ことのみに集約されている。ある意味で、帝国軍最強の戦力だが、制御不能の時限爆弾でもある。
◆左翼(暇を持て余した神々の遊び)
・ルッツ艦隊、ワーレン艦隊、ファーレンハイト艦隊(各々:12,000隻 → 損害なし)
【状況】
ピカピカの新品同様。対戦相手(パエッタ、ボロディン)が、光の速さで逃亡したため、弾薬を一発も消費していない。運動不足でウズウズしている提督たちと、整備が行き届きすぎている艦艇群。彼らは「誰でもいいから撃たせてくれ」という欲求不満を抱えている。
◆予備兵力(被害者と同盟)
・ビッテンフェルト艦隊(黒色槍騎兵)(総数:12,000隻 → 残存:7,543隻)
【状況】
半壊。「敵は飢えている」と信じて突撃したら、満腹のウランフ&アップルトンに返り討ちにされた悲劇の艦隊。物理的なダメージ以上に、「ステーキを見せつけられた」という精神的ダメージが大きい。復讐に燃えているが、戦力としては大きく低下している。
・シュタインメッツ艦隊、メックリンガー艦隊(各々:12,000隻 → 損害なし)
【状況】
後方待機していたため無傷。 メックリンガーはピアノを弾く余裕がある。
【自由惑星同盟軍・戦力状況】
総兵力:約11万隻(残存戦力)士気:妙に高い(よく寝て、よく食べたから)
◆後方・総司令部(昼寝の神)
・ロボス直衛艦隊 (総数:20,000隻 → 損害なし)
【状況】
元気いっぱい。イゼルローン要塞から、たっぷりと睡眠をとったロボス元帥に率いられて到着。戦場における最大の無駄遣いとも言える、無傷の2万隻。フォーク准将をトイレに監禁したまま、悠々と戦場を見下ろしている。
◆前衛(満腹トリオ)
・第5艦隊(ビュコック)、第8艦隊(アップルトン)、第10艦隊(ウランフ) (各15,000隻 → 損害軽微)
【状況】
極めて健全。サボタージュのおかげで、艦隊運動もスムーズ。サンドイッチとコーヒーで栄養補給も完了しており、帝国軍(特にビッテンフェルト)を煽る余裕すらある。今回の主力と言っていい。
◆両翼(逃げ足のプロ)
・第2艦隊(パエッタ)、第12艦隊(ボロディン)(各15,000隻 → 損害なし)
【状況】
無傷。敵前逃亡のプロフェッショナル。「戦わなければ負けない」という真理を体現した艦隊。戦力としては計算できるが、またすぐに逃げる可能性も高い。
◆遊撃・中衛(ボロ雑巾コンビ)
・第11艦隊(ホーランド)(総数:15,000隻 → 残存:9,579隻)
・第13艦隊(ヤン)(総数:20,000隻 → 残存:11,235隻)
【状況】
壊滅的。帝国軍の主力(ラインハルト)を一身に受け止めた結果、艦隊の半数以上を喪失。ヤンは胃痛で死にかけており、ホーランドは包帯でぐるぐる巻き。本来なら後送されるレベルだが、ロボス元帥に「まだ使える」と判断され、こき使われる予定。
【布陣と作戦】
同盟軍の作戦:『厚化粧の中央突破』 総司令官ロボス元帥の豪快(適当)な采配により、中央に戦力を集中。数で押し切り、帝国軍の中央を粉砕する構え。
・前衛に元気なビュコック、ウランフ、アップルトンを配置。
・両翼にパエッタ、ボロディンを置き、逃げないように監視。
・損害の大きいヤンとホーランドは、後方へ下げつつ、遊撃部隊として隙あらば投入する(使い捨てとも言う)。
帝国軍の作戦:『鉄壁の盾と、狂犬の牙』 ラインハルト元帥の苦心の采配。
・中央(シュタインメッツ・ローエングラム・キルヒアイス): ラインハルト自身が囮となり、さらに無傷のシュタインメッツを加えて防御を固める。「敵の突進をここで止める!私が耐えれば勝てる!」という悲壮な決意。
・右翼(マルガレータ):「行け!ピンク色の悪魔よ!」敵の左翼(ボロディン)を食い破り、そのまま中央へ雪崩れ込ませる算段。制御不能だが、破壊力だけは信じている。
・左翼(ファーレンハイト・ルッツ・ワーレン):元気な3提督を配置。敵の側面を突き、包囲殲滅を狙う。
・予備(メックリンガー・ビッテンフェルト):ビッテンフェルトは「ステーキへの復讐」のために温存。
役者は揃った。 アムリッツァの赤い星の下、銀河の歴史に残る、最もカオスで、最も胃薬が必要な会戦が、今始まります。
アムリッツァ星域 両軍本隊
帝国軍総旗艦《ブリュンヒルト》その純白の艦橋で、黄金の獅子ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥は、マントを翻して立ち上がっていた。
彼は、右手を高々と掲げ、まるでオーケストラの指揮者のように、全世界の視線を集めるポーズをとる。その美貌には、悲壮な決意と、燃え盛る闘志が宿っていた。
「全艦、主砲照準合わせ!我が覇道の前には、何人たりとも立ち塞がることは許さん!銀河の歴史が動く時だ!撃てぇぇぇ!!」
「ファイエル!!」
帝国軍の砲門が一斉に火を噴く。それは、芸術的とも言える光の奔流だった。
一方、同盟軍総旗艦《アイアース》その広々とした司令官席では、ラザール・ロボス元帥が、特注のランチボックスを広げていた。メニューは、揚げたての唐揚げ弁当。ニンニク醤油の香ばしい匂いが、緊張感あふれる艦橋に漂っている。ロボスは、割り箸を割り、一番大きな唐揚げをつまみ上げた。そして、口に運ぶ直前、マイクのスイッチが入っていることを思い出したように、ボソリと呟いた。
「……ファイア」
パクッ。サクッ。ジュワッ。
「ファイア!!」
オペレーターたちが復唱し、トリガーを引く。同盟軍の主砲もまた、一斉に発射された。
ズガガガガガガガガガーン!!
宇宙空間が、光と爆発の嵐で埋め尽くされる。無数のビームが交錯し、シールドが弾け、装甲が溶ける。轟音のない宇宙で、光の乱舞だけが死の舞踏を描き出していた。
「(咀嚼音)……ふむ。モグモグ。……やはり、宇宙で食う唐揚げは格別だな」
ロボスは、口の周りの油をナプキンで拭いながら、モニターを眺める。そこには、激しく撃ち合う最前線の様子が映し出されているが、彼にとってはテレビのスポーツ観戦と同じレベルの関心事のようだ。
「状況はどうだ、グリーンヒル」
「はっ。……現在、互角の撃ち合いです。しかし、我が軍の方が数が多いため、徐々に押し始めています」
グリーンヒル大将が、真面目な顔で報告する。彼は、隣で総司令官が弁当を食べているというシュールな状況にも、すでに慣れきっていた。
「ふむ。……見ろ。敵の中央(ラインハルト・キルヒアイス)は薄いぞ」
ロボスは、箸の先でモニターの一点を指し示す。
「あの金髪の小僧と赤毛の副官の艦隊だ。……報告通り、ヤンやホーランドと殴り合って消耗しているようだ。動きにキレがない。……手負いの獣だな」
ラインハルトとキルヒアイスの艦隊は、前哨戦でのダメージが蓄積しており、シールド出力も低下している。そこを、元気いっぱいの同盟軍中央部隊(ビュコック、ウランフ、アップルトン)が突いているのだ。
「このまま押し込め!中央突破だ!」
ロボスが号令をかける。
「敵の中央を粉砕すれば、あとはバラバラになった敵を追い払うだけで済む。……そうすれば、早く帰れる。私の昼寝の時間を確保するためにも、残業は許さんぞ!」
「はっ!全艦、前進!中央突破を敢行します!」
同盟軍の艦列が、猛然と前進を開始する。彼らの士気は高い。なぜなら、「勝てば早く帰ってご飯が食べられる」という、極めてシンプルかつ強力なモチベーションに支えられているからだ。
「閣下、お待ちください!」
グリーンヒルが、鋭い声で警告する。彼は、戦況図の左側を指差した。
「敵左翼(ワーレン・ルッツ・ファーレンハイト)が伸びています!奴らは無傷です!我が軍の右翼を食い破り、側面から回り込んで半包囲を企図している可能性が高いかと!」
ファーレンハイト、ルッツ、ワーレン。彼らは、前哨戦で敵(パエッタたち)に逃げられたため、エネルギー満タンでストレスも満タンだ。「撃たせろ!暴れさせろ!」とばかりに、凄まじい速度で同盟軍の横腹に喰らいつこうとしている。
「なに?包囲だと?」
唐揚げの最後の一つを口に放り込みながら、彼は不機嫌そうに言った。
「包囲されると……帰るのが遅くなるな」
「はい。泥沼の乱戦になります」
「それは困る。……アムリッツァの夕日は綺麗だが、長居は無用だ」
空になった弁当箱を片付け、お茶を啜る。そして、まるでハエを追い払うような手つきで言った。
「うむ、ならば……あの『猛牛』を放て」
「はっ?」
グリーンヒルが聞き返す。猛牛?同盟軍に牧場ユニットなどあっただろうか。
「ホーランドだ。……ウィレム・ホーランド元帥だ」
「奴は前回の戦いでボロボロになり、包帯だらけで後方に下がっているはずだ。……だが、奴の辞書に『安静』という言葉はない」
「まさか……あの状態で出撃させるのですか?」
「そうだ。……奴に対応させよ。奴の艦隊を、敵左翼の横腹に突っ込ませるのだ」
ロボスは、残酷かつ合理的な判断を下す。
「奴は怪我の痛みでイライラしているはずだ。……そのストレスを、敵にぶつけさせろ。『適当に暴れろ』と伝えればいい。そうすれば、敵の包囲網もズタズタになるだろう」
「し、しかし……指揮系統や連携は……」
「必要ない。……暴走機関車にハンドルはいらん。レール(敵)に向けて背中を押すだけでいい」
「行け!怪我人の底力を見せてやれ!」
◆
帝国軍右翼 ヘルクスハイマー艦隊
「撃てー!そこじゃ!私の愛のビームを受けよ!」
司令官席で振るうのは、15歳の少女提督、マルガレータ・フォン・ヘルクスハイマー中将。彼女の号令と共に、ピンク色の粒子ビームが嵐のように放たれる。対峙している同盟軍左翼(第12艦隊)は、その色彩の暴力と容赦ない火力に押され気味だ。
「……ふぅ」
マルガレータは、一息つくと、目の前の敵(ボロディン)から視線を外し、戦場の中央へと目を向けた。
「我が艦隊の役目は、敵左翼の牽制と遮断……か。閣下も慎重なことじゃ」
彼女は、少し不満げに唇を尖らせる。本来なら、ジークの隣で、横顔を見ながら戦いたかった。しかし、ラインハルトは彼女を右翼に配置した。それは、「彼女の暴走を中央から遠ざけるため」というもっともな理由によるものだが、マルガレータは「私が優秀だから重要な側面を任された」とポジティブに解釈している。
「(無表情で)……不服ですか?閣下」
参謀長のオーベルシュタインが、タブレットを見ながら尋ねる。彼の顔色は、アムリッツァの赤い光を受けてさらに不気味に見える。
「突出して戦線を崩壊させるよりはマシですが。……今のところ、ボロディン艦隊は防戦一方です。このまま睨み合っていれば、役割は果たせます」
オーベルシュタインの本音は、「このまま動かないでくれ」だ。これ以上、目立つ動きをして、敵の集中砲火を浴びるのは御免だ。
「不服ではないさ。……だが」
マルガレータの瞳が、鋭く細められる。彼女の直感が、何かを告げているのだ。
「見よ、オーベルシュタイン。……敵前衛(ビュコック・ウランフ・アップルトン)の勢いを」
彼女は、中央の戦況図を指差す。そこでは、同盟軍が猛烈な勢いでラインハルトの本隊を押し込んでいる。
「あの圧力……。ただの士気の高さではない。あれは……まるで『早く帰りたい』というサラリーマンの帰宅ラッシュのような圧力じゃ!」
「……帰宅ラッシュ、ですか」
「そうじゃ!『定時だ!誰にも止めさせん!駅の改札(ラインハルト)を突破するぞ!』という、生活に根ざした必死さが伝わってくる!」
マルガレータの分析は、あながち間違っていなかった。同盟軍兵士たちの頭の中は、今夜の夕食とベッドのことで一杯なのだ。その「日常への渇望」が、帝国軍の「覇道への渇望」を上回っている。
「我が軍の中央、閣下とジークの艦隊は傷ついておる。……エネルギーも弾薬も不足している中で、あの『残業拒否パワー』を受け止めるのは酷じゃ。……押し負けるかもしれん」
愛するジークが、定時退社の波に飲み込まれてしまう。それは許せない。
同盟軍の陣形を観察する。中央で突出している第5艦隊(ビュコック)と、その側面をカバーしている第8艦隊(アップルトン)その二つの艦隊の連携部分が、わずかに光って見えた。
「……見つけた」
マルガレータが、ニヤリと笑う。それは、獲物を見つけた猫の笑みだ。
「……よし!予定変更じゃ!」
「は?閣下、持ち場を離れるおつもりですか?」
オーベルシュタインがギョッとする。
「ボロディンなど放っておけ!あやつは『逃げのボロディン』じゃ。こちらが無視すれば、向こうも撃ってこん!」
ビシッと指差す。
「狙うは一点!敵第8艦隊(アップルトン)と、第5艦隊(ビュコック)との連結部!そこに薄い隙間がある!」
彼女は、戦術家としての天才的な嗅覚を発揮する。ビュコックは前進しようとし、アップルトンは側面を警戒している。その意識のズレが、わずかな空白を生んでいるのだ。
「そこに穴を開けて、敵の陣形を分断する!そうすれば、中央への圧力が弱まり、ジークの負担が減るのじゃ!」
「しかし、それでは側面が無防備に……」
「ええい、うるさい!ジークのためなら、私の脇腹などどうなってもよい!砲火を集中せよ!全艦、横っ飛びに突っ込むのじゃ!」
「……はあ(ため息)」
止まらない。この娘は、愛のためなら物理法則も戦術セオリーも無視して直角に曲がる。
「全艦、回頭!目標、敵中央部隊の継ぎ目!……突撃します」
◆
帝国軍総旗艦《ブリュンヒルト》
ラインハルトは、歯噛みしていた。
「くっ……!同盟軍め、数に任せて押し込んでくるか!」
正面のモニターには、ビュコック艦隊とウランフ艦隊の猛攻が映し出されている。彼らの射撃は正確で、しかも途切れることがない。こちらのエネルギー残量は危険域に入っている。
「キルヒアイス!右翼はどうなっている!マルガレータ嬢は敵を抑えているのか!」
彼の計算では、マルガレータが敵左翼を封じ込めていれば、側面からの脅威はないはずだ。
「ラインハルト様!」
キルヒアイスが、珍しく焦った声を上げる。
「マルガレータ艦隊、持ち場を離れました!……こちらに向かってきます!」
「なにっ!?」
「敵第8艦隊と第5艦隊の間隙を突いて、中央へ突入してきました!……通信が入っています!」
スピーカーから、少女の愛に満ちた(そして迷惑な)声が響く。
『ジークゥゥゥ!今助けるぞぉぉぉ!私の愛の力で、敵を粉砕してやるのじゃぁぁぁ!』
「ば、馬鹿者!」
ラインハルトが怒鳴る。
「持ち場を離れるなと言っただろう!側面が空くではないか!……いや、待て」
ラインハルトの目が、戦況図を高速でスキャンする。マルガレータの独断専行により、帝国軍の右翼はがら空きになった。だが、彼女が突っ込んだ場所……同盟軍の連結部は、まさに敵のアキレス腱だった。そこをピンク色のビームが貫いたことで、同盟軍の前進がピタリと止まったのだ。
「……結果オーライ、か?」
ラインハルトは呻く。軍規違反だ。絶対に許されない命令無視だ。だが、その暴走が、結果として中央の危機を救っている。この釈然としない感覚。兄上(ファルケンハイン)に翻弄されている時の感覚に似ている。
「……だが、これで乱戦になるぞ」
キルヒアイスが呟く。
「ホーランドが左翼を荒らし、マルガレータ様が中央を掻き回す。……もはや、陣形も戦術もありません。ただの殴り合いです」
「望むところだ!」
◆
同盟軍左翼 第8艦隊旗艦《クリシュナ》
開戦から数時間が経過し、すでに「艦隊戦」という名の泥仕合の様相を呈していた。あちこちでビームが飛び交い、爆発が起きているが、決定的な勝敗は見えてこない。
司令官アップルトン中将は、特等席(指揮官席)で足を組み、湯気の立つマグカップを片手に優雅なひとときを過ごしていた。彼の視線の先、メインスクリーンには、毒々しいショッキングピンクの光点が急速に拡大してくる様子が映し出されている。
「……来たか」
アップルトンは、コーヒーを一口すする。酸味が効いていて美味い。
「あれが、ルフェーブル中将(第3艦隊)がやられたという噂の『ピンクの悪魔』か。……悪趣味な色だ。コーヒーの黒とは相性が悪い」
「閣下!敵右翼、突っ込んできます!」
オペレーターが叫ぶ。
「識別信号『クリームヒルト』!速度、異常に速いです!狙いは本艦隊と、隣の第5艦隊(ビュコック)との間隙!我々の横っ腹を食い破る気です!」
通常なら、ここで迎撃を命じるところだ。だが、アップルトンは慌てない。彼は、ロボス元帥の「適当にやって帰れ」という教えを忠実に守る男だ。無理はしない。残業もしない。そして、面倒ごとは他人に押し付ける。
「(コーヒーを啜り)……予想通りだ」
彼は、カップをソーサーに戻す。
「まともに相手をする必要はない。……我々は、第5艦隊との連携を強化するフリをして、後退する」
「は?後退ですか?敵を通すことになりますが」
「構わん。通せばいい。……ただし、ただ通すのではない」
アップルトンは、戦術マップ上の、自軍の後方に位置する友軍を指差す。第12艦隊。指揮官はボロディン中将。
「敵の矛先を、第12艦隊との挟撃を狙える位置へ誘導せよ!……厄介払……いや、戦略的誘導だ。中央に寄ってきた報いを、ボロディンに受けさせてやれ」
要するに、「自分の担当エリアに来た面倒な客(ピンク色の暴走族)を、隣のデスク(ボロディン)に案内して帰る」という、役所仕事のような対応だ。
「了解!全艦、後退しつつ射撃!敵を第12艦隊の方角へ流します!」
◆
第12艦隊旗艦 《ペルーン》
旗艦《ペルーン》の艦橋では、司令官ボロディン中将が、副官相手にトランプに興じていた。戦況が膠着している間の暇つぶしだ。今はソリティアではなく、スピード勝負の「戦争(ウォー)」をやっている。
「……む。私の勝ちだな」
ボロディンがカードを出そうとした、その時。警報音が鳴り響く。
「敵襲!前方より敵艦隊接近!アップルトン提督が道を開けました!敵が雪崩れ込んできます!」
「……チッ」
ボロディンは、舌打ちをしてトランプの手を止める。カードをテーブルに叩きつける。
「アップルトンめ……。厄介者を押し付けてきたな。……自分のコーヒータイムを守るために、私の艦隊を金床にする気か」
ボロディンは、状況を一瞬で理解する。アップルトンが退いたことで、突っ込んでくる敵(マルガレータ)と、自分の艦隊が正面衝突するコースになったのだ。
「どうしますか、提督?……逃げますか?我々もパエッタ提督のように『戦略的撤退』を……」
副官が提案する。
「いや、ダメだ」
ボロディンは首を振る。
「ここで崩れると、私の退職金(生還ボーナス)に関わる。……それに、真正面から突っ込んでくる敵に対して背を向ければ、エンジンを撃ち抜かれる」
彼は、モニターに映るピンク色の戦艦を睨みつける。あれは、ただの艦隊ではない。物理法則と色彩感覚を無視した、走る災害だ。
「……やるぞ。迎撃だ」
ボロディンは、腹を括る。
「局所的に『縦深陣』を敷く!敵を懐深く引き込んで、三方向から包囲し、圧殺する!……あのふざけた色の船を、スクラップにしてやる!」
第12艦隊が動く。陣形を「コ」の字型に変形させ、巨大なポケットを作る。それは、飛び込んできた獲物を押し潰す、死の罠(ポケット)だ。
「さあ、来い!ピンクの悪魔よ!トランプの続きをする前に、片付けてやる!」
◆
「見えたぞ!敵の壁が割れた!」
マルガレータが、玉座から立ち上がり、扇子(鉄製)をビシッと振るう。彼女の目には、アップルトンが道を開けたことが「恐怖による逃亡」に映っている。
「敵は恐れをなして逃げ出したのじゃ!今こそ好機!このまま突き進み、敵の縦深を食い破る!」
「……閣下」
参謀長オーベルシュタイン少将が、冷静に補足する。彼は、手すりにしがみつきながら、淡々と状況を分析する。
「敵第8艦隊が後退したことで、前方に第12艦隊(ボロディン)が露出しました。……敵は中央への備えを厚くしたかわりに、左翼との連携が途絶えつつあります」
オーベルシュタインの義眼が光る。
「誘い込まれている形ですが……敵の陣形が整う前に突っ込めば、突破可能です。計算上、勝率は80%」
「80%?低いのう!」
マルガレータが笑う。
「私の計算では120%じゃ!なぜなら、愛の力は無限大だからじゃ!」
意味不明な計算式だ。だが、士気は最高潮だ。
「そこだ!愛の力で突き進め!ジークの元へ、一直線じゃあああ!!」
「突撃!!」
ズゴォォォォォォォ!!
《クリームヒルト》を先頭に、1万5千隻のピンク色の艦隊が加速する。それは、宇宙空間に描かれた巨大な一本の矢だ。同盟軍第12艦隊が作った「死のポケット(凹み)」へ向かって、猛烈なスピードで吸い込まれていく。
ボロディン艦隊の砲門が、一斉に開く。敵を十分引きつけた。あとは、十字砲火でハチの巣にするだけだ。「撃て!」という号令が下される、その直前――。
カッ!!
マルガレータの全身に、電流のような衝撃が走る。根源的な、本能の警鐘。
「(顔を赤らめ、身を震わせる)……!!!」
彼女は、目を見開く。モニターに映る敵の陣形。「コ」の字型に開いた、その形。それが、彼女の脳内で、とんでもない「画」に変換される。
「……いやらしい!」
「は?」
オーベルシュタインが聞き返す。
「突撃中止!!緊急停止じゃ!!面舵一杯!!」
その声は、戦術的な命令というよりは、痴漢に遭った乙女の悲鳴だ。
「なっ!?」
操舵手がパニックになる。全速前進中に急ブレーキ?しかも面舵(右旋回)?慣性制御が死ぬ!
だが、司令官の命令は絶対だ。操舵手は、反射的にハンドルを右に切り、逆噴射ボタンを叩き込む。
ギュルルルルルルンッ!!
物理法則を無視した、超弩級戦艦のドリフト。《クリームヒルト》の船体が、きりもみ回転しながら直角に曲がる。後続の艦艇も、慌ててそれに続く。玉突き衝突寸前の、神業的な回避機動だ。
ガアンッ!!
「ぐっ!?」
オーベルシュタインが、手すりに頭を強打する。義眼がズレそうになる。
「なっ!?なぜ急停止を!?勝機が見えていたのに!」
彼は、額を押さえながら抗議する。計算上は突破できたはずだ。なぜ止めた?
マルガレータは、シートベルトにしがみつきながら、顔を真っ赤にして叫んだ。
「……罠じゃ!」
「罠?だから、突破できると……」
「違う!そういう意味の罠ではない!」
彼女は、敵の陣形(凹み)を指差す。
「乙女の勘じゃ!!見よ、あの敵(ボロディン)の艦隊の形を!」
「……凹型陣(ポケット)ですが?」
「バカモノ!あれは……『妾を深く誘い込んで、四方八方から全身を舐め回そうとしておる』陣形じゃ!!」
「………………は?」
オーベルシュタインの思考が停止する。艦橋の全員が凍りつく。
「分からぬか!あの形は、両手を広げて待ち構える変態のポーズじゃ!あの中に飛び込めば、前後左右からいやらしい視線(照準)を浴びせられ、服(装甲)を剥ぎ取られ、辱めを受けるのじゃ!」
彼女にとって、集中砲火とは「熱視線」であり、包囲殲滅とは「集団痴漢」なのだ。
「いやらしい視線を感じたのじゃ!『へへへ、ピンク色のお嬢ちゃん、こっちにおいで』という心の声が聞こえたのじゃ!」
「(心底嫌そうな顔で)……下品な」
吐き捨てるように言う。
「被害妄想も、そこまでいくと才能ですね。……敵の指揮官(ボロディン)が聞いたら、名誉毀損で訴えられますよ」
「うるさい!貞操の危機なのじゃ!」
彼女の純潔は、ジークフリード・キルヒアイスに捧げられるべきものであり、薄汚い同盟軍のおっさん(ボロディン)に奪われてはならないのだ。
「中には入らん!外に出るぞ!」
彼女は、新たな進路を指示する。敵のポケットの中ではなく、その外側。ポケットの縁を掠めるようなルートだ。
「敵第12艦隊の側面(わきばら)を削るように進軍する!……変態の手を払い除け、その横っ面を張り倒してやるのじゃ!中枢を叩く!」
◆
一方、変態扱いされたボロディン中将。彼は、唖然としていた。トランプを落とすほどに。
「……バレた?」
敵艦隊が、ポケットの入り口で、あり得ない急制動をかけ、直角に曲がったのだ。まるで、落とし穴の直前で立ち止まったかのように。
「いや、なんだあの動きは。……ドリフトだと?戦艦で?」
常識外だ。あんなGをかけたら、乗員はミンチになっているはずだ。
「殺そうと思った瞬間に、逃げられたぞ。……勘がいいのか、それとも単に操艦ミスか?」
「閣下!敵艦隊、側面へ回り込みます!!」
副官が叫ぶ。マルガレータの艦隊は、ボロディンの包囲網の外側を、高速で滑走している。そして、すれ違いざまに、猛烈な砲火を浴びせかけてくる。「変態!」「死ね!」という罵倒(通信)と共に。
「うわぁぁ!側面が!装甲が薄いところを!」
「敵のビームが痛い!なぜか精神的にも痛い!」
同盟軍の艦艇が被弾する。真正面で受け止めるつもりだったボロディンにとって、側面からの攻撃は痛手だ。
「思い切った手に出てきたな!……クソッ、トランプの続きができん!」
「全艦密集隊形!側面を固めろ!敵を防げ!……あのピンク色の暴走族を、何としても止めるんだ!」
◆
同盟軍右翼 第11艦隊
同盟軍右翼戦線。対峙するのは、帝国軍左翼を担う3個艦隊。勇将ワーレン。名手ルッツ。そして、猛将ファーレンハイト。合計3万6千隻の、無傷でピカピカの精鋭部隊である。
対する同盟軍は、パエッタ中将率いる第2艦隊(1万5千隻)
彼らは「戦わずして勝つ(逃げる)」ことを信条としており、戦意は限りなくゼロに近い。そして、その前衛に躍り出たのが、ウィレム・ホーランド元帥率いる第11艦隊である。この艦隊は、前哨戦でラインハルト本隊と殴り合い、半壊している。装甲は穴だらけ、エンジンは異音を発し、乗員は疲労困憊。常識的に考えれば、即時撤退してドック入りすべき状態だ。
だが。その旗艦《エピメテウス》の艦橋では、一人の男が、血の滲んだ包帯をなびかせて絶叫していた。
「見ろ!敵だ!敵の山だ!」
彼は、全身を包帯で巻かれたミイラ男のような姿で、指揮官席の上に仁王立ちしている。アドレナリンと鎮痛剤の過剰分泌により、テンションは成層圏を突破している。
「敵は3個艦隊!3万6千隻!上等だ!数が多ければ多いほど、俺の『芸術』を描くキャンバスが広がるというものだ!塗りつぶしがいがあるぞ!」
「元帥!落ち着いてください!傷口が開きます!」
副官が悲鳴を上げる。だが、ホーランドは止まらない。彼は、目の前の大軍を見て、恐怖するどころか、ビュッフェ会場に来た大食いファイターのように目を輝かせている。
「元帥!戦力差は歴然です!正面からぶつかっては蒸発します!我々は半個艦隊しかいないのですよ!?」
ラップが正論を訴える。1対5以上の戦力差。まともに撃ち合えば、3分で宇宙の塵だ。
「誰がぶつかると言った!馬鹿者が!」
ホーランドは、副官の頭を包帯だらけの手で叩く。
「正面衝突など、二流のやることだ。俺の戦いは芸術(アート)だ。もっと流麗で、もっとトリッキーで、もっと迷惑な戦い方をする!」
「め、迷惑……?」
「そうだ!我々は突撃と補給を繰り返す、いつもの戦法で行くぞ!今回は、後ろにいい『壁』がいるからな!」
ホーランドは、背後のモニターを親指で指す。そこには、パエッタ中将の第2艦隊が、不安そうに佇んでいる姿が映っている。
「名付けて……作戦名『ドルフィン・アーティスティック・サイクロン・ロック』だ!!」
ドヤァ。ホーランドがポーズを決める。意味不明だ。イルカなのか、嵐なのか、岩なのか。語感だけで適当に繋げた単語の羅列にしか聞こえない。
艦橋のクルーたちが困惑する中、一人の男が素早くマイクを取った。参謀長のジャン・ロベール・ラップ少将だ。彼は、ヤン・ウェンリーの士官学校時代の同期であり、この猛獣使いとしてのスキルを極限まで高めている苦労人である。彼は、即座にホーランドの電波な発言を、軍事用語へと翻訳する。
「全艦に告ぐ!作戦名『D・A・C・R』発動!」
ラップの声は冷静そのものだ。
「内容は以下の通り!我々は、後方に位置する第2艦隊を、『移動式防壁』および『臨時補給基地(ガソリンスタンド)』として利用する!」
「えっ?」
「第11艦隊は、第2艦隊の前面に突出して斉射(フェイント)を行い、敵の砲火を誘う。そして、撃たれる直前に反転し、第2艦隊の後ろへ隠れる!」
ラップは、タブレットで図解を示す。それは、水面から飛び出すイルカの動きそのものだ。
「隠れている間に、第2艦隊からエネルギーと弾薬を強引に補給する!回復したら再び飛び出し、撃っては隠れる!これを無限に繰り返す!」
「な、なるほど……!」
「敵を幻惑し、釘付けにせよ!第2艦隊を盾にして、我々は矛となるのだ!」
完璧な翻訳だ。ホーランドの「パエッタを使って遊ぶ」という意図を、高度な戦術機動へと昇華させている。
「よし!ラップ、お前の翻訳はいつも最高だ!行くぞ野郎ども!ダンスの時間だ!」
傷だらけの第11艦隊が、一斉に加速する。
◆
帝国軍の3個艦隊が、整然と前進してくる。その目前で、同盟軍第11艦隊が、奇妙な動きを開始した。
ズババババ!
ホーランド艦隊が、第2艦隊の盾の隙間から躍り出る。全砲門を開き、無差別にビームをばら撒く。
「敵襲!」
「撃ち返せ!」
帝国軍が反応し、応射する。数千条の光の矢が、ホーランド艦隊へ殺到する。だが。
ギュルン!
ホーランド艦隊は、被弾するコンマ1秒前に、凄まじい速度で反転。パエッタの巨大な戦艦の後ろへ、スルスルと滑り込む。
ドガガガガガ!
帝国軍のビームは、ホーランド艦隊ではなく、その背後にいた第2艦隊の前面装甲に直撃する。
「ぎゃあああああああッ!!」
第2艦隊旗艦《パトロクロス》の艦橋で、パエッタ中将が絶叫する。彼は、自分の艦が揺れるたびに、椅子から転げ落ちそうになる。
「ふざけるなホーランドォォォ!!何をしている!私の艦隊を盾にするな!」
パエッタは、通信スクリーンに向かって怒鳴り散らす。彼の目の前で、味方のはずのホーランド艦隊が、チョロチョロと動き回っている。出て行っては撃ち、戻ってきては隠れる。まるで、親の後ろに隠れて石を投げる悪ガキだ。
「隠れるな!出て行け!正々堂々と戦え!敵の弾がこっちに当たってるだろうが!!」
パエッタの悲痛な叫び。第2艦隊は無傷だったはずが、ホーランドのせいで、みるみるうちに被弾率が上がっていく。シールド出力が低下する。
『おっ、パエッタ提督!ナイスカバーだ!』
ホーランドの能天気な声が返ってくる。
『貴官の艦隊は装甲が厚いからな!俺たちの代わりに被弾してくれて助かる!ついでに、エネルギー充填用のケーブルを繋がせてもらうぞ!』
「はあ!?やめろ!人の電気を盗むな!」
『ケチなことを言うな!仲間だろう!さあ、満タンになったらまた行くぞ!そらよっ!』
ホーランド艦隊は、第2艦隊のエネルギーパイプから強引に電力を吸い上げると、再び元気に飛び出していく。
「ああっ!また出た!戻ってくるな!」
パエッタは頭を抱える。彼の「無傷で帰る」という計画は、味方の手によって粉砕されつつあった。
「フハハハ!!パエッタのおっさんが絶叫して応援してくれてるぞ!」
ホーランドは、パエッタの罵倒を100%の善意として受け取る。
「『もっとやれ!』『私の屍を越えてゆけ!』と言っているのだ!泣ける友情だな!期待に応えて暴れ回れ!」
「元帥、それは幻聴です!」
帝国軍左翼 ファーレンハイト艦隊
「なんと……」
彼は、感嘆の声を漏らす。彼の視線の先では、同盟軍の艦隊が、まるでマジックショーのように点滅している。出たと思えば消え、消えたと思えば横から撃ってくる。そして、その後ろには、悲鳴を上げている(ように見える)別の艦隊がいる。
「まるで幽霊か、あるいは幻影か。……実体が掴めん」
「閣下!敵の動き、予測不能です!」
参謀長が悲鳴を上げる。
「ロックオンできません!照準を合わせると隠れ、照準を外すと撃ってきます!モグラ叩きです!」
「しかも、後ろの第2艦隊が邪魔で、決定打を与えられません!流れ弾は全て後ろの艦隊に吸収されています!」
帝国軍の砲撃手たちは困惑している。前の敵を撃とうとすると後ろの敵に当たり、後ろの敵を狙うと前の敵が邪魔をする。視界の中を、ボロボロの戦艦が高速で横切るため、気が散って仕方がない。
「(ニヤリと笑う)……なるほど」
ファーレンハイトは、口元を歪めて笑う。彼は、貧乏貴族として苦労してきた分、こういう「泥臭くて狡猾な」戦い方が嫌いではない。
「盾(パエッタ)を使い捨てにするのではなく……盾と剣を高速で入れ替えているのか」
他的分析は鋭い。通常、盾となる部隊は前衛に立つ。だが、ホーランドは、盾を後ろに置き、自分が前に出て、危なくなったら後ろに下がるという、逆転の発想(というか卑怯な手)を使っている。しかも、それを艦隊単位の高速機動で行っているのだ。
「狂っているが、理に適っている。……被弾した艦は後ろへ下がり、回復した艦が前に出る。回転寿司のように戦力を循環させているわけか」
「しかし閣下、あれでは味方(パエッタ)が迷惑でしょう」
「知ったことか。……勝てば官軍だ」
ファーレンハイトは、膝を叩く。
「さすが同盟の最精鋭(?)だ。……こんなデタラメな機動を、実戦でやってのけるとはな」
彼は、ホーランドという男に興味を持つ。自分と同じ匂いがする。戦いを楽しみ、常識を嘲笑う、生粋の武人の匂いだ。
「面白い。……この『イルカ踊り』に付き合ってやろうじゃないか!」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
アムリッツァ開戦編は、
銀河級の戦術と、個性のぶつかり合いの混沌
を描く、シリーズ屈指の山場になりました。
・ラインハルトの苛烈さ
・ロボスの唐揚げ精神
・マルガレータの愛の暴走
・ホーランド&ラップの狂気の芸術
・アップルトンとボロディンの悲喜劇
あなたのお気に入りのシーンはありましたか?
帝国と同盟の内乱どちらから見たいですか?
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銀河帝国
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自由惑星同盟