銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜 作:斉宮 柴野
後継者を指名しないまま崩御したことで、帝都オーディンは一気に緊張の渦へと巻き込まれます。
アムリッツァ戦直後で疲弊したラインハルトは、想定外の政治戦に直面します。
貴族たちの思惑、軍の疲弊、そしてある人物を中心にまとまりつつある巨大な力。
戦場とは違う、新たな戦いの幕が上がります。
若き元帥がどう動くのか。
そして帝国はどこへ向かうのか。
その第一歩を描く章です。
皇帝崩御と、最強の結婚式
帝国軍旗艦 《ブリュンヒルト》 艦橋
アムリッツァ星域での泥沼の殴り合いから数日。銀河帝国軍旗艦《ブリュンヒルト》は、帝都オーディンへの帰路についている。
だが、その姿は「凱旋」と呼ぶにはあまりにも痛々しい。純白の貴婦人と謳われた船体は、至る所が焦げ、煤け、凹んでいる。特に、右舷後方は同盟軍のビュコック艦隊に齧られた跡がそのまま残っており、応急処置のパッチが痛々しい絆創膏のように貼られている。
艦橋の空気も重い。勝利したとはいえ、その内実は薄氷を踏むような辛勝だ。キルヒアイス艦隊は半壊。シュタインメッツ艦隊は盾となって砕けた。ビッテンフェルト艦隊は空腹で暴走してガス欠。まともに動けるのは、ヘルクスハイマ―艦隊と、ファーレンハイト艦隊くらいだ。
ラインハルトは、指揮席に深く沈み込み、疲労の色を滲ませながら窓の外の星々を見つめている。彼の金髪は少し艶を失い、美貌には深い隈が刻まれている。
「……勝った気がせん」
ラインハルトが、ポツリと漏らす。物理的には勝った。敵を追い返した。だが、精神的には完全に負けた気分だ。ロボスという名の「底なし沼」と、ヤンという名の「のらりくらりとした魔術師」に、全力を吸い取られたような徒労感が残る。
「(通信士)……閣下」
恐る恐る声をかける通信士の声も震えている。彼は、不機嫌な元帥に悪い知らせを届けるという、最も死亡率の高い任務を遂行しなければならない。
「帝都オーディンより緊急入電!最優先暗号です!発信元は国務尚書リヒテンラーデ侯!」
「なんだ?」
ラインハルトは、気だるげに振り返る。
「兄上(ファルケンハイン)からの叱責か?『随分と派手に壊したな、修理代は給料から引くぞ』とでも言ってきたか?それともリヒテンラーデ侯の嫌味か?『若造が調子に乗るからこうなる』とな」
彼は、ろくな内容ではないと予想している。今の彼は、誰かに八つ当たりしたくて仕方がない状態だ。
「……いいえ、閣下。これは……」
ヒルダが、通信文を受け取る。彼女は、その内容を一読し、ハッと目を見開く。その聡明な瞳が、驚愕に揺れる。
「……ラインハルト様。これは、叱責でも嫌味でもありません」
ヒルダは、居住まいを正し、厳粛な声で告げる。
「皇帝フリードリヒ四世陛下、崩御あそばされました」
「……何?」
ラインハルトの動きが止まる。時が止まる。艦橋の全員が、息を呑む音さえ立てられない。
「皇帝が……死んだ?いつだ?」
「昨夜未明とのことです。死因は心臓発作による急死……。御殿医の診断書も添付されています。事実のようです」
「……」
ラインハルトは、呆然とする。フリードリヒ四世。彼の姉アンネローゼを奪い、彼が倒すべき最大の敵(だと思っていた老人)。その男が、あっけなく死んだ。ラインハルトが剣を抜く前に。彼が喉笛を食いちぎる前に。
「(舌打ち)……チッ」
ラインハルトは、露骨に舌打ちをする。不敬罪など知ったことか。
「自然死か?心臓発作だと?……ふざけるな」
彼は、悔しさを隠さない。
「あと数年生きていれば、自分のしたことに報いを与えてやれたものを……。私の手で玉座から引きずり下ろし、姉上に謝罪させてから地獄へ送るつもりだったのだぞ!それを……私の手がかかる前に逃げ切るとは!」
勝ち逃げだ。あの老人は、贅沢三昧の限りを尽くし、最後は苦しまずにポックリ逝った。ラインハルトの復讐心は、行き場を失って空回りする。
「……感傷に浸っている場合ではありません」
冷徹な声が、ラインハルトの熱を冷ます。オーベルシュタインだ。彼の義眼は、皇帝の死すらも「計算式の一部」として処理している。
「皇帝は後継者を指名せずに死にました。……これは、銀河帝国にとって最大の危機であり、同時に好機です」
オーベルシュタインは、淡々と事実を並べる。
「遺言はありません。皇太子もいません。……ここから、オーディンは嵐になります。権力の空白を埋めるため、魑魅魍魎が動き出すでしょう」
「……そうだな」
ラインハルトは、気持ちを切り替える。死んだ老人に用はない。問題は、生きている人間たちだ。特に、あの「底知れない兄貴分」がどう動くかだ。
◆
急遽、ブリュンヒルト内の作戦会議室に主要メンバーが集められる。ラインハルト、キルヒアイス、オーベルシュタイン、ヒルダ。そして、なぜか特等席でクッキーを食べているマルガレータ。彼女は「ジークのそばにいたいから」という理由だけで、堂々と会議に参加している。
「さて、状況を整理しよう」
ラインハルトは、円卓の中央に座る。彼の顔には、戦闘中とは違う種類の緊張感が張り付いている。政治闘争のゴングが鳴ったのだ。
「後継者候補はどうなっていますか?」
キルヒアイスが尋ねる。彼は、政治には疎いが、ラインハルトのために必死に理解しようと努めている。
「(扇子で口元を隠しながら)……ふふん。そんなことも知らんのか、ジーク」
マルガレータが、偉そうに解説役を買って出る。彼女は、宮廷のドロドロとした人間関係については、誰よりも詳しい。生き字引ならぬ、生きゴシップ誌だ。
「皇族の皇位継承権を持つのは三人じゃ。……まずは、皇帝の長女の夫であるブラウンシュヴァイク公の娘、エリザベート」
彼女は指を一本立てる。
「次に、次女の夫であるリッテンハイム侯の娘、サビーネ」
指を二本立てる。
「そして最後に、皇帝の唯一の直系の孫、エルウィン・ヨーゼフ二世。……まだ5歳の幼児じゃな」
三本の指が立つ。この三人が、玉座に近い位置にいる。
「通常であれば……」
オーベルシュタインが引き取る。
「ブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯が、互いの娘を女帝にしようと争い、門閥貴族が真っ二つに分裂するところです。……内戦が起きるのが、歴史の必然でしょう」
権力欲の強い大貴族同士が、自分の娘を即位させて実権を握ろうとする。それは、帝国史において繰り返されてきた血みどろのパターンだ。
「……ですが」
マルガレータが、ニヤリと笑う。悪魔の笑みだ。
「今回は、その二つに分けて争う理由がないのじゃ」
「なぜだ?」
ラインハルトが眉をひそめる。あいつらは仲が悪いぞ。犬猿の仲だぞ。顔を合わせれば嫌味を言い合う関係だぞ。
「忘れたか?ローエングラム伯」
マルガレータは、爆弾発言を投下する。
「エリザベートとサビーネ。……この二人は、誰の婚約者じゃ?」
「……あ」
ラインハルトの思考が一瞬停止する。婚約者。そういえば、そんな話があった気がする。政略結婚の話が。
「……そうだった」
「そうじゃ。……二人とも、ファルケンハイン元帥の婚約者じゃぞ?」
「あ……」
ラインハルトの口から、間の抜けた声が漏れる。忘れていた。いや、あまりにも馬鹿馬鹿しくて記憶の隅に追いやっていた。アルブレヒト・フォン・ファルケンハイン元帥。あのやる気のない男は、その「無害そうな顔」と「絶大な人気」を買われ、ブラウンシュヴァイク家とリッテンハイム家の双方から、「うちの娘を貰ってくれ」と懇願されていたのだ。しかも、本人が断りきれずに(あるいは面倒くさがって)曖昧にしていた結果、事実上の二重婚約状態になっている。
「というか、そろそろ合同結婚式の予定じゃったはずだ。……12月じゃったか?」
マルガレータは、他人事のように言う。
「つまり、どちらが女帝になろうと……あるいは、特例法を作って二人同時に嫁ごうと……実権を握るのは誰じゃ?」
「……ファルケンハイン元帥か」
「その通り」
マルガレータは、ポンと手を叩く。
「『ファルケンハイン元帥の妻の実家』グループじゃ。……ブラウンシュヴァイクもリッテンハイムも、目指すゴールは同じじゃ。『ファルケンハインを皇帝の配偶者(国婿)にして、自分たちが外戚として権力を振るう』ことじゃ」
「……」
「両家は、争う必要がない。……手を取り合って、元帥を神輿に担ぐじゃろう。『さあ、アルブレヒト殿。貴方がこの国の主です』とな」
沈黙。会議室に、絶望的な静寂が降りる。通常なら対立するはずの二大勢力が、アルブレヒトという「共通の推し」を介して、ガッチリとスクラムを組んでしまう。最強の化学反応だ。
「(顔色が悪い)……つまり」
キルヒアイスが、青ざめた顔でまとめる。
「門閥貴族勢力が真っ二つに割れるどころか……ファルケンハイン閣下という『絶対的な英雄』をカスガイにして、過去最強の結束を見せるということですか」
「……悪夢ですね」
オーベルシュタインも、さすがに表情を曇らせる。計算外だ。アルブレヒトの「モテすぎ問題」が、ここに来て政治的な核兵器として炸裂するとは。
「対抗馬は、リヒテンラーデ侯が擁立するであろうエルウィン・ヨーゼフ二世のみ。……しかし、5歳の幼児と老人のコンビでは、あの『アルブレヒト親衛隊(全貴族連合)』には勝てません」
勝負にならない。人気、実力、兵力、財力。全てにおいて、アルブレヒト陣営が圧倒している。
「(机を叩く)くそっ!」
ラインハルトが、バンと机を叩く。コーヒーカップが跳ねる。
「予定ではもう少し後の、我々の力が整ってからの崩御のはずだったが……!タイミングが悪すぎる!」
ラインハルトは、天を仰ぐ。死んだ皇帝に文句を言いたい。「死ぬならもっと空気読め!」と。なぜ今なのか。なぜ、我々がアムリッツァで消耗しきっているこのタイミングなのか。
「ヒルダ。……我々の戦力で、対抗できるか?」
ラインハルトは、縋るように尋ねる。
「……無理です」
ヒルダは、即答する。彼女は嘘をつかない。
「現在の状況で、ファルケンハイン元帥を盟主とする貴族連合軍と、内戦を戦う余裕はありません。……我が軍はアムリッツァで半壊しています。稼働戦力は4割以下。物資も底をついています」
彼女は、タブレットの画面を見せる。そこには、修理待ちの艦艇のリストが延々と続いている。
「ラインハルト様。……今の状態で喧嘩を売れば、3日で負けます。物理的に」
「……艦隊の再建にかかる時間は?」
「オーベルシュタイン。答えろ」
「……新造艦の建造、兵員の補充、そして練度の向上……。どれほど短く見積もっても、半年はかかります」
オーベルシュタインが無慈悲な数字を告げる。半年。政治の世界において、半年という時間は永遠にも等しい。
「(苦渋の表情)……半年」
ラインハルトは呻く。
「その間に……兄上が即位でもしようものなら、全てが終わるぞ」
◆
「……それに、そもそもの軍事力の差も絶望的です」
キルヒアイスが、タブレットの画面を切り替えながら、淡々と、しかし残酷な事実を突きつける。彼は、ラインハルトにとっての精神安定剤であり、同時に、現実を直視させるための冷たい鏡でもある。
「我が軍はアムリッツァで消耗しました。対して、貴族直轄軍……すなわちファルケンハイン元帥の軍と、彼を盟主と仰ぐブラウンシュヴァイク、リッテンハイムの軍は、ほぼ無傷です。戦力比は1対5、いえ、予備役を含めれば1対10にもなるでしょう」
「1対10か……。アスターテ会戦よりも酷いな」
ラインハルトは、苦々しい顔で呟く。彼は、数的不利を覆すのが得意だが、それは「敵が無能」である場合に限られる。
「さらに悪いことに」
キルヒアイスは続ける。彼の赤毛が、憂鬱そうに揺れる。
「敵陣営には、あの『双璧』……ロイエンタール提督と、ミッターマイヤー提督も組み込まれています」
「うぐっ……」
ラインハルトが呻く。その二人は、ラインハルトが喉から手が出るほど欲しがっていた人材だ。だが、彼らは現在、ファルケンハイン元帥の腹心として、ガッチリと敵陣営に組み込まれている。
「疾風ウォルフの機動力と、金銀妖瞳の用兵術。……この二人が、無尽蔵の物資を持つ貴族軍を指揮するのです。……無理ゲーです、ラインハルト様」
キルヒアイスが、若者言葉を使ってしまうほどに状況は深刻だ。あの二人が本気を出せば、多少兵士の質が悪くても、数の暴力でこちらを圧殺するだろう。
「……双璧だけなら、まだなんとかなるかもしれん」
ラインハルトは強がる。彼自身の天才と、キルヒアイスの補佐があれば、あるいは……。
だが、その淡い希望を、ピンク色の悪魔が粉砕する。
「甘いのう、ローエングラム伯」
マルガレータが、最後のチョコクッキーを齧りながら口を挟む。
「お主は、一番恐ろしい存在を忘れておる」
「一番恐ろしい存在?」
「そうじゃ。……双璧など、所詮は現場の指揮官に過ぎん。ファルケンハイン陣営には、もっと根本的で、もっと絶対的な『支配者』がおるじゃろう?」
マルガレータは、ニヤリと笑う。
「そして何より……アナスタシア様もいらっしゃるしの」
ゴゴゴゴゴゴゴ……。
その名が出た瞬間。会議室の室温が、物理的に5度下がった(気がした)。空調が故障したわけではない。「アナスタシア」という単語が持つ、呪術的な冷却効果だ。
アナスタシア。ファルケンハイン元帥の副官であり、公私にわたるパートナー。そして、あの怠惰な元帥を影で操り、帝国軍の膨大な事務処理、兵站、人事、根回しを完璧にこなす、氷の才女。彼女が睨めば、ブラウンシュヴァイク公でさえ直立不動になり、彼女が微笑めば(滅多にないが)、予算委員会が即決で承認印を押すという伝説の女傑だ。
「……はい」
キルヒアイスが、身震いをする。彼は、かつてアナスタシアに「書類の不備」を指摘された時のトラウマが蘇ったのだ。あの時、彼女は一言も怒鳴らなかった。ただ、絶対零度の瞳で見つめられ、「書き直しですね」と言われただけで、キルヒアイスは三日三晩うなされたという。
「あの『氷の副官』にして最強の奥様(予定)が、ファルケンハイン閣下の背後に控えています。……ファルケンハイン閣下ご自身が出張らずとも、アナスタシア様が指揮を執れば……」
キルヒアイスは、想像するだけで胃が痛くなる。アルブレヒトは「戦いたくない」と言って手加減してくれるかもしれない。だが、アナスタシアは違う。彼女にとって、反乱軍(ラインハルト)は「処理すべき未決裁書類」であり「排除すべきコスト」でしかない。
「今の我々では……確実に負けます。事務的に、効率的に、そして冷徹に処理されます。補給線を断たれ、情報網を遮断され、給与口座を凍結されて終わりです」
「……給与口座の凍結は勘弁してほしいな」
ラインハルトが弱音を吐く。英雄といえども、金がなければ部下はついてこない。アナスタシアは、その急所を平然と突いてくるだろう。
「……耐えるしかないか」
ラインハルトは、椅子に深く沈み込む。武力で挑めば、双璧に殴られ、アナスタシアに干上がらせられる。勝ち目がない。万に一つもない。
「ええ。賢明な判断です」
オーベルシュタインが、義眼を不気味に光らせて同意する。彼は、常に「勝てる確率」しか愛さない男だ。
「今は面従腹背。……リヒテンラーデ侯と手を組みつつ、ファルケンハイン元帥への忠誠(という名のポーズ)を崩さぬことです」
オーベルシュタインは、冷たい指先で机をタップする。
「幸い、ファルケンハイン元帥は『やる気』がありません。……彼自身が積極的に貴官を排除しようとはしないでしょう。むしろ、『面倒だからラインハルトに任せるよ』と言ってくる可能性が高い。……その隙を利用するのです」
「兄上の『惰性』につけ込むわけか。……情けない話だが、仕方あるまい」
ラインハルトは唇を噛む。だが、この屈辱を飲み込まねば、明日はない。
「暗い顔をするな、金髪の」
マルガレータが、空になったクッキーの缶を振る。
「光明はあるぞ。……先の戦いでのプロパガンダ工作の影響で、ローエングラム閣下の平民層からの支持は高まっておる」
「民衆はこう言っておる。『腐敗した貴族の中で、唯一まともなのが、あの金髪の孺子(こぞう)だ』とな」
「……孺子か」
ラインハルトは、かつてブラウンシュヴァイク公にそう呼ばれて激怒したことを思い出す。だが、今はその響きが違って聞こえる。
「(ニヤリと笑う)……孺子か。……悪くない呼び名だ」
彼は、口元を歪める。それは、老獪な貴族たちに対する、若き挑戦者としての不敵な笑みだ。
「『世間知らずの若造』だからこそ、しがらみなく改革ができる。……『青臭い正義感』があるからこそ、民衆は夢を託せる。……そういうことだな?」
「飲み込みが早いのう。……伊達に顔が良いだけではないようじゃ」
マルガレータが褒める(?)。
「よかろう」
ラインハルトは、マントを翻して立ち上がる。その姿には、先ほどまでの迷いはない。彼は、戦場を宇宙空間から、政治の場へと移す決意を固めたのだ。
「今は剣を鞘に収める時だ。……アナスタシア夫人に睨まれないよう、大人しくしていよう」
彼は、窓の外に広がる星の海を見つめる。その先には、帝都オーディンがある。
「だが、見ていろ。……軍事で勝てぬなら、政治で勝つ。民衆の心を掌握し、貴族どもが結婚式や利権争いで浮かれている間に、その足元を崩してやる!」
「証明してやるのだ!俺の力が、兄上(という巨大な虚像)を超えうることを!……そしていつか、アナスタシアの財布の紐を緩めさせてやる!」
目標が少し小さくなった気がするが、気にしてはいけない。千里の道も一歩からだ。
「ジーク、ヒルダ、オーベルシュタイン!オーディンへ戻るぞ!……まずはリヒテンラーデ侯に取り入るための、最高級の菓子折りを用意せよ!」
「はっ!」
ラインハルトは決意した。彼は、武人としてのプライドを一旦棚上げし、政治家としての冷徹な仮面を被ることを選んだのである。
しかし。彼はまだ知らない。彼が「最大の好機」と考えている「兄上の結婚式」が、どれほどの地獄であるかを。
帝都オーディンでは、今まさに、ファルケンハイン元帥が「二人の公爵令嬢との結婚」と「アナスタシアの冷ややかな視線」という、銀河帝国軍全軍よりも恐ろしい戦場に立たされようとしている。そこには、物理法則も政治理論も通用しない、純粋な「女性たちのパワーゲーム」が展開されているのだ。
「……なんか、背筋が寒いな」
帰路につくラインハルトが、ふと漏らした言葉は、未来への不吉な予言であった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
読者の皆さまは、
どの場面が一番意外だったか
誰の発言が印象に残ったか
ラインハルトの苦悩をどう感じたか
ファルケンハイン陣営の強さをどう見たか
など、いろいろ思うところがあったかと思います。
ぜひ皆さまの「一言感想」をお聞かせください。
それが次の展開を書く力になります。
帝国と同盟の内乱どちらから見たいですか?
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銀河帝国
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自由惑星同盟