銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜   作:斉宮 柴野

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本章は、自由惑星同盟という巨大民主国家の内部に潜む矛盾を、少しばかり辛辣に、そして時に滑稽な形で描いております。
政治家、官僚、軍人、市民がそれぞれの思惑で動くことで国家がどのように歪んでいくのか。
特に今回は、トリューニヒト議長とレベロ財務委員長という「理想」と「現実」を体現する二人の対比が主題となります。

銀河を左右するのは戦艦の数だけではなく、
予算書の数字と、支持率という名の怪物である――
そんな同盟政治の裏側を、どうぞお楽しみください。


自由惑星同盟『内乱』編
正直な悪徳政治家と、過労死寸前の財務委員長


ハイネセン 最高評議会 会議室

 

 

 

 

政治の中枢である最高評議会ビルの一室、国家の運命を決定づける大会議室には、現在、酸素よりも濃い絶望が充満していた。

 

その重圧の中心にいるのは、一人の男だ。ジョアン・レベロ財務委員長。

同盟きっての良識派であり、財政規律の鬼と呼ばれる。

彼は今、目の前のテーブルに置かれた電子端末を凝視していた。

画面に表示されているのは、来年度の国家予算案の素案、いや、正確には「ヨブ・トリューニヒト議長からの要望書」という名の、国家財政への死亡宣告書であった。

 

「……というわけで、この予備費を含む追加予算は、イゼルローン方面軍のヤン司令官に最優先で拠出するように。……文句はないね?」

 

レベロの中で、何かが切れた。

 

「大ありだ!!いくら何でも贔屓がすぎる!これは予算配分ではない!特定個人への献金だ!同盟は議長、君の私物ではないのだぞ!ましてやヤン・ウェンリー元帥の私物でもない!」

 

レベロは、バンッ!とテーブルを叩いて立ち上がった。その勢いで、飲みかけの水がコップから飛び跳ね、書類を濡らすが、彼は気にも留めない。

 

「見ろ、この項目を!『イゼルローン要塞福利厚生費』だけで、中小都市の年間予算を超えている!さらに『第13艦隊特別手当』、『ヤン元帥の紅茶購入補助費(極秘)』だと!?ふざけるな!軍事費が国家予算を食いつぶしているぞ!これでは財政再建どころか、国家が破産するわ!」

 

彼の指摘は、100%正しい。民主国家において、特定の軍人にこれほどの予算を集中させるなど、独裁政治の前兆以外の何物でもない。

 

だが。その正論を受け止めるトリューニヒトは、痛くも痒くもないという顔で、肩をすくめた。

 

「レベロ財務委員長。……君の言う通りだ。実に真っ当な意見だ。……では、どうするかね?私のやり方が民主的でないと言うのなら……国民に信を問うために、今すぐ内閣を総辞職して、解散総選挙としようか?」

 

「ッ!?」

 

本来なら、野党や批判勢力が「受けて立つ!」と言うべき場面だ。だが、今の同盟において、それは「死刑宣告」と同義であった。

 

「今の私の支持率、知っているだろう?……先日発表された世論調査では、内閣支持率は85%を超え、さらに『トリューニヒト議長を信頼する』と答えた市民は90%に達している。選挙をやれば、私は圧勝する。……君たち良識派の議員は、全員落選だ。市民は『ケチな財務委員長よりも、気前のいい議長』を選ぶからね。……それでもやるかね?」

 

アムリッツァからの生還、捕虜交換による帰還兵の再就職支援、そして好景気の演出。これらによって、彼は今や「救国の英雄」であり「庶民の味方」として、神に近い人気を誇っているのだ。

 

「……無意味でしょうな。今、選挙をすれば……議長の支持率は100%を超えて、死者まで投票にくる勢いですから。……墓場から蘇ってでも、『トリューニヒトに一票を!』と叫ぶでしょうよ。今のこの国は、それくらい熱狂しています」

 

ホアンは、茶柱が立っているのを確認してから、ボソリと呟いた。

 

「ホアン……!君まで!」

 

「事実ですから」

 

「ぐっ……!政治屋と戦争屋め……!この国をどこへ連れて行く気だ!」

 

彼は知っている。この好景気が、借金の上に成り立つ砂上の楼閣であることを。そして、そのツケを払わされるのが、将来の世代であることを。だが、目の前の「正直な悪徳政治家」は、そんなことは百も承知で、今の快楽を選んでいるのだ。

 

「まあまあ、落ち着きたまえ、レベロ君。……血圧が上がるぞ。私は何も、ヤン元帥だけを特別扱いしているわけではない。……他の艦隊の再建についてもある程度融通しているよ。……状況はどうかな?ネグロポンティ君」

 

話を振られたのは、国防委員長ネグロポンティだ。彼は、トリューニヒトの腰巾着として知られる男で、常に議長の顔色を伺いながら生きている。

 

「はい!議長!ご報告申し上げます!イゼルローン方面軍は、ヤン・ウェンリー元帥の卓越した指導の下、すでに万全の態勢です!新造艦の配備、兵員の補充、訓練……すべてスケジュールを前倒しで完了しております!そして、第5艦隊と第10艦隊も、今年中には再建が終わるでしょう。……ビュコック提督やウランフ提督も、予算がついたことを喜んでおられました」

 

その顔には、主人に褒められたい犬のような媚びへつらいが張り付いている。彼は、誇らしげに言う。まるで自分の手柄のようだ。

 

「うむ。よろしい」

 

「ですが……他の艦隊は……まあ、少しずつやりましょう。……何せ、予算が足りませんので」

 

「お前が金を出し渋るからだ」と言わんばかりの目だ。第3艦隊など、アムリッツァで壊滅した他の部隊の再建は、後回しにされている。予算のパイは決まっている。ヤンに極端に配分すれば、他が割を食うのは算数の理屈だ。

 

「当たり前だ!どこにそんな金がある!国家の借金は天文学的数字だぞ!これ以上国債を発行すれば、通貨の信用が崩壊する!君たちは打ち出の小槌でも持っているつもりか!」

 

「レベロ君。君は数字に強いくせに、経済の心理というものを分かっていないな。……現在は、帰還兵200万人による『特需』が生まれているのだよ。彼らは、私が支給した『復興クーポン』や『一時金』を使って、家を買い、車を買い、酒を飲んでいる。……消費が爆発し、金が回り、企業は儲かり、税収も(一時的には)増えている。経済が回っているのだ」

 

「それは……!政府が借金してばら撒いた金が、市場を一瞬回っただけだ!持続性がない!」

 

「だからこそだ。この波を……一過性の祭りではなく、安定した好景気につなげるのが、君の役目ではないかな?財務委員長」

 

「なっ……!」

 

「まさか、天下のジョアン・レベロともあろう者が、『できません』と言うほど無能ではないだろう?……私がせっかく作った『景気の波』を、君の無策で殺してしまうのかね?」

 

見事なまでの論理のすり替えだ。トリューニヒトは、自分で放火しておいて、「火を消すのが消防士の役目だろう?まさか消せないとは言わせないよ」と言っているようなものだ。

 

「……ッ!!わかっている!!……死ぬ気でやっておるわ!君がばら撒いた尻拭いを、私が寝ずにやっているんだ!」

 

彼は、自分が罠に嵌められていることを理解しつつも、職務への責任感から、その挑発に乗らざるを得ない。この国で一番まともな男が、一番苦しんでいるという地獄絵図。

 

「それならば良いがね。とにかく、優先順位はこうだ。第一に、イゼルローン方面軍。……ここには無制限に注ぎ込め。第二に、その他の軍全体の再建。第三に、経済対策。第四に、帰還兵たちへの福祉。……その他の予算は、ギリギリまで……いや、乾いた雑巾を絞るように削りたまえ。教育、文化、地方交付金……削れるところは山ほどあるだろう?」

 

彼は、レベロが辞めないことを知っている。レベロは、この国を見捨てることができない不器用な男だからだ。だからこそ、骨の髄まで利用できる。トリューニヒトは、指を折って数える。そして、彼は冷酷に言い放つ。

 

「……正気か?軍事費の総計が歳出の40%を超えるぞ!……これは、戦時中とはいえ異常だ!民主国家の予算ではない!ルドルフ大帝の再来か、君は!」

 

教育や文化を削り、軍事に全振りする。それは、もはや民主主義国家の予算配分ではない。軍事独裁国家のそれだ。

 

「おや。レベロ君。……君は忘れているようだが、ヤン元帥には、イゼルローン方面の全星系の行政権も付与してあるのだよ。ヤン元帥の管轄下には、居住可能な惑星も、民間人のコロニーも含まれている。……つまり、彼に渡す予算の中には、インフラ整備費も、教育費も、医療費も含まれているのだ。名目は『軍事費』だが、実態は『地方行政費』だよ。純粋な軍事費ではないよ。……ヤン元帥が、その金で学校を建てようが、病院を作ろうが、あるいはブランデーの出る蛇口を作ろうが、彼の自由だ」

 

だが、書類上は筋が通ってしまう。イゼルローン回廊周辺の星々は、全て「軍政下」にあるため、そこへの予算は全て軍事費として計上できる。トリューニヒトは、ヤンを「一介の司令官」ではなく、「辺境の太守」に仕立て上げたのだ。

 

「それでは……それでは軍閥化ではないか!!特定の地域、特定の軍人に、行政権と予算と軍事力を集中させる……。それは、中央政府から独立した『王国』を作らせるのと同じだ!ヤン・ウェンリーは王にでもなる気か!」

 

ヤン・ウェンリー王国。イゼルローン公国。呼び方は何でもいいが、同盟の中に、もう一つの国が生まれようとしている。そして、その国の主は、あの「昼寝好きの魔術師」なのだ。

 

「……それに値する功績を、彼は立て続けていると思うがねえ」

 

ヤンがいれば、帝国は攻めてこない。ヤンがいれば、クーデターも鎮圧できる。ヤンがいれば、自分は安心して権力の座に座っていられる。ならば、ヤンに王国の一つや二つくれてやっても、安いものだ。

 

「それに、彼が『王』になりたがらなければ、それでいい。……なりたがれば、それはそれで面白い」

 

「……ぐっ、ううっ……。ホアン……胃薬を……」

 

「……どうぞ。私の分も残り少ないですが」

 

「……分かった。……修正案を作る。……だが、これだけは言っておくぞ、議長。君は……歴史に、最悪の扇動政治家として名を残すことになるぞ」

 

「光栄だね。……無名の善人として忘れ去られるより、悪名でも歴史に残る方が、政治家冥利に尽きるというものだ」

 

そのブレなさこそが、今の同盟を支える唯一の柱であるという皮肉。こうして、自由惑星同盟の次年度予算は、レベロの胃壁と引き換えに、ヤン・ウェンリーへの超優遇措置を含んだ形で成立することになる。イゼルローン要塞には、札束の雨が降り注ぎ、ヤンは「金がありすぎて使い道に困る」という、新たな地獄を味わうことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

TV番組「同盟の今を問う」スタジオ

 

 

 

 

自由惑星同盟のメディア王、ハイネセン・ブロードキャスティング・コーポレーション(HBC)の第一スタジオ。

 

セットは無駄に豪華だ。金ピカの装飾に、極彩色のライト。観覧席を埋め尽くす数百人の市民たちは、まるでロックスターのライブに来たかのような興奮状態で、今か今かと主役の登場を待ちわびている。

 

「さあ、お待たせいたしました!今夜のスペシャルゲスト、この方です!我らがリーダー!最高評議会議長、ヨブ・トリューニヒト氏の登場です!」

 

アナウンサーが声を張り上げる。

 

ファンファーレが鳴り響く。スモークが焚かれる。政治番組の演出ではない。

 

歓声がスタジオを揺るがす。スポットライトの中、悠然と現れた男。ヨブ・トリューニヒト。

彼は、完璧に計算された笑顔と、仕立ての良いスーツで身を包み、観客に向かって手を振りながら、革張りのソファに深く腰掛けた。

 

「議長!本日はお忙しい中、ありがとうございます!空前の好景気に沸く我ら同盟ですが、今後の展望をお聞かせください!国民は、貴方の言葉を待っています!」

 

「ふむ……。今後の展望か。正直に話してもよいのかね?……私は自他共に認める『悪徳政治家』だが?放送コードに引っかからないか心配だ」

 

その動作一つ一つに、黄色い声援が飛ぶ。異常だ。完全にアイドルだ。

 

ドッ!!

 

スタジオに爆笑が巻き起こる。普通の政治家が「私は悪徳だ」と言えば、辞任騒動になる。だが、この男が言うと、なぜかエンターテインメントになる。

 

「正直でよろしい!」

 

「期待してるぞ、ヨブ!」

 

「もっと言ってくれ!」

 

彼らは、「嘘をついて善人のフリをする政治家」に飽き飽きしているのだ。だから、「俺は悪党だ」と開き直るトリューニヒトに、逆説的な信頼(あるいは共犯意識)を寄せている。

 

「ははは!よろしくお願いします。……では、早速ですが、視聴者からの質問です。さて、ヤン・ウェンリー元帥のイゼルローン方面軍に、国家予算を集中しすぎとの意見もありますが……?『他の艦隊が可哀想だ』という声も届いております」

 

アナウンサーは、フリップを出す。鋭い質問だ。レベロ財務委員長が聞いたら、胃薬を飲みながら「その通りだ!」と叫ぶだろう。

 

だが、トリューニヒトは眉一つ動かさない。

 

「それは事実だ。……否定しないよ。意識的に、意図的に、そして徹底的に集中している。なぜなら、アムリッツァで最も損害があったのは、第13艦隊と第11艦隊だからだ。……彼らは最前線で地獄を見た。多くの仲間を失い、傷つき、それでも生きて帰ってきた」

 

演技だとしても、上手すぎる。スタジオの空気が、一瞬でしんみりとしたものに変わる。

 

「確かに……ヤン元帥とホーランド元帥は、最も過酷な激戦区におられましたからね……」

 

「そう!だからこそだ!命を懸けて戦った者に報いる。……信賞必罰は重要だ!ヤン元帥は同盟の英雄であり、最強の盾だ。……彼がいなければ、今頃ここには帝国軍の戦艦が浮いているかもしれないのだぞ?諸君、考えてみたまえ。……隣に強盗(帝国)が住んでいて、そいつが包丁を研いでいるのが見える。……そんな状況で、『警備会社への支払いは高いから節約しよう』と言って、防犯対策をしないで金儲けに専念できるかね?安心して夜眠れるかね?」

 

彼は、観客一人一人の目を見つめるように語る。

 

「できません!」

 

「できないよな。……だから私は、盾を磨くのだ。ヤン・ウェンリーという最強の盾を、金でピカピカに磨き上げるのだ!それが、君たちの安眠と、私の財産を守るための必要経費だ!」

 

観客の一人が叫ぶ。完璧な論理のすり替えだ。軍事費の増大を、「ホームセキュリティ代」という身近な例え話に置き換えて納得させた。

 

「そうだ!」

 

「ヤン元帥を守れ!」

 

「金ならあるぞ!(給付金で)」

 

拍手の嵐。誰も「財政赤字」のことは気にしていない。

 

「なるほど、分かりやすいです!……では次に、これも厳しい意見ですが……軍事を優先するあまり、国民への還元が疎かになっているのでは、という意見もあります。……教育予算の削減などが指摘されていますが」

 

アナウンサーは次のフリップをめくる。痛いところを突く。未来への投資を削って、現在の軍備に回しているのは事実だ。

 

「そうだな。……耳が痛いよ。現在のところ、国民には……雇用の確保と、大幅な減税と、一時金の給付くらいしかできていないが……不足だろうか?……これ以上、何を望むのだ?『もっと金をくれ』と言うのかね?」

 

確かに、今の政府は大盤振る舞いをしている。これ以上を望むのは強欲ではないか、という空気が流れる。

 

「『バラマキ』は民主政治が最も嫌う不健全な行為だと、私は大学の政治学科で習ったがね?……教科書通りなら、私は今すぐ給付金を止めて、増税をすべきなのだが……そうしてほしいかね?」

 

「いやだー!」

 

「増税反対!」

 

「だろう?君たちが『バラマキ』を望むから、私は悪徳政治家として、教科書を破り捨てて金を配っているのだ。……共犯者だよ、我々は」

 

再び爆笑と、大きな同意の拍手。「共犯者」と言われて喜ぶ市民たち。もはや、このスタジオは正常な判断力を失っている。

 

「教育や芸術への補助金のハードルが上がったのは事実だ。……それが軍事に関係していることも肯定しよう。しかし、考えてみてほしい。際限なく予算を投入していけばどうなるか……。無限に金が湧いてくるわけではないのだ」

 

トリューニヒトは、真面目な顔を作る。

 

「はい。……どうなりますか?」

 

「同盟は……フェザーン国債を買いすぎて破綻してしまう。……いや、その前に。レベロ財務委員長が、過労でハゲる方が早いかもしれんな。……彼の毛根は、今、風前の灯火だ」

 

爆笑。ドッカンドッカンと笑いが起きる。国の財政危機を、一人の官僚の頭髪問題にすり替えた。レベロへの同情よりも、笑いが勝つ。残酷な笑いだ。

 

「ははは!レベロ委員長の頭皮が心配ですね!……では、議長はあくまで『同盟のためになる』と思い、心を鬼にして行動している……ということですね!」

 

感動的なBGMが流れ始める。「国を思うリーダーの苦悩」という演出だ。

 

だが。トリューニヒトは、そんな安っぽい演出を自らぶち壊す。

 

「いや、違うな、アナウンサー君。……君は勘違いをしている」

 

「え?」

 

「同盟のためになることをやると……私が選挙に勝てて、甘い汁……ゴホッゴホッ!……失敬、喉が。……正当な対価としての権力と、名誉と、そして引退後の安泰な生活を頂けるからやっているのさ。私は政治家だ。……ボランティアではない。慈善事業家でもない。プロフェッショナルとして仕事をこなすが、それ相応の利益(リターン)は頂くよ。……タダで働くのは、ヤン・ウェンリーのようなお人好しだけだ」

 

公共の電波で。ゴールデンタイムに。「自分のためにやっている」と。清々しい。ここまで欲望に正直だと、逆に信頼できる気がしてくるから不思議だ。「裏でコソコソ金を受け取る奴より、表で堂々と『金くれ』と言う奴の方がマシだ」という、究極の消去法的な支持心理。

 

「ははは!……あくまで『法の範囲内』で……ですか?」

 

アナウンサーが、冷や汗をかきながらフォローを入れる。

 

「その通りだ!法は守る!私が作った法だがな!法の範囲内で私が儲けて、ついでに国民も儲ける!……ウィン・ウィンの関係だ!そうしたいものではないか、諸君!清貧に甘んじて飢えるより、強欲に生きて満腹になる方が、人生は楽しいぞ!」

 

高らかに笑う。彼は立ち上がり、両手を広げる。

 

「トリューニヒト!トリューニヒト!」

 

「正直者!」

 

「お前が一番だ!」

 

「俺たちも儲けさせてくれ!」

 

観客が総立ちになる。スタンディングオベーションだ。熱狂の渦がスタジオを飲み込む。そこにあるのは、民主主義の完成形なのか、それとも衆愚政治の極致なのか。区別がつかない。

 

「……というわけで。この番組を、もしレベロ委員長が見ているなら……。テレビを見ている暇があったら、ぜひ経済対策に関して、早く良い案を持ってきてくれたまえ!予算修正案の締め切りは明日だぞ!私は君の仕事が終わるのを……自宅で優雅にティータイムをしながら待っているよ!頑張りたまえ、我が友よ!」

 

トリューニヒトは、騒ぎが収まるのを待たずに、カメラに向かってウィンクをする。公共の電波を使って、部下に残業を強要した。

 

 

スタジオは熱烈な拍手と爆笑で満たされた。カメラのフラッシュが焚かれ、トリューニヒトの笑顔が全国の家庭に配信される。同盟の夜は、狂ったように明るい。




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

もし
・この政治劇が面白かった
・トリューニヒトの悪徳がもっと見たい
・レベロが可哀想で胃が痛くなった
・ヤン王国(仮)の未来が気になる
どんな感想でも構いません。

読者の皆様の声が、次の展開を形づくる大きな力になります。
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