銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜   作:斉宮 柴野

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読者の皆さまへ。
本作は「もしも銀河英雄伝説に、絶世の美男子(自称)で、酒と女とケーキしか頭にない貴族が紛れ込んだら?」という、半ば悪ふざけから始まりました。
主人公アルブレヒト侯爵は、己の欲望とハーレムを守りたいだけの俗物。しかしその言葉や態度が、なぜか周囲には「深遠な慧眼」「ルドルフの再来」と解釈され、勝手に歴史の表舞台へ押し上げられていきます。
彼の隣には、冷徹で優秀な専属メイド・アナスタシア。読者の皆様には、ぜひ彼女の視線を通して「英雄と呼ばれてしまった俗物の悲喜劇」を楽しんでいただければ幸いです。


俺はケーキを食ってただけなのに盟主にされた件

俺は今、最高に気分がいい。

シャンデリアがまぶしく光る帝宮の大広間。絢爛豪華、金と宝石でギラッギラ。足元の赤い絨毯なんか、たぶん俺の領地の農民が一年汗水流して稼いでも買えないやつだ。いや知らんけど。

 

そんな場で、俺はシャンパン片手に美しい令嬢たちに囲まれている。

右にブロンド、左に黒髪、おまけに背後からもドレス姿が俺にぴったり張り付いてる。これだよこれ!これこそ貴族に生まれた醍醐味!

 

「そう、あれは第七次イゼルローン攻防戦でのことだな……」

俺はわざとらしくシャンパンを揺らしながら語る。

 

「私が後方で作戦指導にあたっていなければ、帝国軍はあと三倍の損害を出していたと言われている。だがまあ、私の功績は表には出ぬ。謙虚さもまた貴族の徳、というやつだからな」

 

令嬢Aがパチパチと拍手して、「まあ!ご謙虚でいらっしゃいますのね!」ときた。

よし、きたぞ。この反応だ。俺が欲しいのはこれだ。俺は英雄、俺はモテる、俺は最高。

 

(心の声:もちろん実際は戦場なんか行きたくないけどな。死ぬのはごめんだ。俺は後方でワイン飲んでアナスタシアに抱き枕やってもらう方が性に合ってる)

 

で、そんな俺のご機嫌トークをぶち壊す声が聞こえてきた。

少し離れたところで、ブラウンシュヴァイク公の取り巻きどもがコソコソ話してやがる。

 

「聞いたか、ラインハルトのやつめ。またアスターテで功績を立てて帝国元帥になったらしい」

「姉が皇帝陛下の寵姫なのをいいことに、どこまで増長する気だ!」

 

……うわ、最悪の話題。

せっかくいい感じでハーレム空間築いてたのに、あの金髪孺子(ローエングラムとかいう成り上がり)の名前を出すんじゃねえ。場の空気が一気に萎えるだろうが。

 

令嬢たちの目も「え、ラインハルト様の話題?」ってチラチラそっちに向かう。やめろ!俺を見ろ!こっちだ!

 

俺はイラッときて、思わず独り言みたいに口をついて出た。

「……ふん。皇帝の寵姫の親族が厚遇されるのは当たり前だろう。そうでなければ、誰も娘を差し出さん。実に単純な取引じゃないか」

 

要は「くだらねえ話やめろ、俺の女自慢タイムに戻せ」って意味だったんだが、声がちょっと大きかったらしい。

近くにいた連中が一斉に俺を振り返った。

 

(心の声:あ、やべ。空気読まずに言っちまった)

 

だが次の瞬間。

 

「…………」

 

白髪の老将――メルカッツ提督が、俺を凝視していた。

驚愕と畏敬の入り混じった顔。なんだその目。俺の背中に変な汗が流れる。

 

(心の声:な、なんだよ爺さん。俺、なんか言った?)

 

メルカッツは眉を震わせながら小さくうなずいた。

「……なんということだ」

 

は?

 

「皆が感情的に非難する中、この方だけが権力構造の本質を……!」

 

いやいやいやいや!違う違う!俺はただ「俺のハーレム空間を邪魔すんな」って言いたかっただけだ!

なのに老提督の脳内では「冷徹に国家の仕組みを見抜いた慧眼の若き貴族」扱いになってるらしい。

 

「寵愛とは取引、血縁とは契約……ルドルフ大帝が到達した現実主義の境地を、この若さで……!」

 

(心の声:いや俺はただ酒飲みながら女口説きたいだけなんだが!?)

 

でももう遅い。

メルカッツが深く頭を垂れ、周囲の貴族どもが「おお……」と感嘆の息を漏らしてる。

 

令嬢Aはさらにうっとりした目で俺を見つめて、「ファルケンハイン侯爵様……素敵ですわ……」なんて言い出した。

いや素敵なのは俺じゃなくてシャンデリアだろ!?

 

その後も勘違いの嵐だった。

 

「侯爵様、やはりローエングラム伯の増長を許してはなりませんな」

「この方のように冷静な視点を持つ者こそ、帝国を正しく導けるのだ」

 

(心の声:いやいや、俺はただラインハルトの話題で萎えるのが嫌だっただけだって!)

 

俺は必死に令嬢たちの腰に手を回して、再びハーレムに集中しようとする。

だがもう遅い。俺の「一言」が勝手に独り歩きして、周囲では「ルドルフの再来」とか「深遠な若き智将」とか盛り上がってる。

 

おい、やめろ。勝手に俺を大物にするな。

俺はただの俗物だ。酒と女とベッドがあればいいんだ。

 

でも誰も聞いちゃいねえ。

 

シャンデリアの下で俺はシャンパンをあおりながら、心の中で叫んでいた。

 

(心の声:……なんでこうなるんだ!?俺は英雄じゃねえ!ただの涎垂らした俗物だぁぁぁ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやいや、なんで俺はこんなとこにいるんだ?

ブラウンシュヴァイク公爵邸。門閥貴族のトップ中のトップ、あの巨漢ジジイの屋敷だ。屋敷っつーか城だな、ここ。廊下が無駄に広いし、壁に飾ってある絵もでかすぎるし、移動するだけで疲れるんだが。

 

俺としては本当は昼寝してたかったんだ。ベッドに潜って、アナスタシアに紅茶でも持ってきてもらって、のんびり鼻歌でも歌いたかった。なのに気がついたら馬車に乗せられて、気づけばこの部屋だ。誰の仕業か?もちろんアナだ。あいつが勝手に「はい、今日はブラウンシュヴァイク公からのお招きですよ」なんて言って俺を送り出しやがった。忠義?いやいや、ただの嫌がらせだろ、絶対。

 

で、目の前にはブラウンシュヴァイク公。体格デカすぎ。丸太みたいな腕でワイン持ってやがる。顔は赤らんでて、血管浮きまくり。正直、酔っ払った熊にしか見えねえ。

 

「アルブレヒト君!」

でけえ声だ。鼓膜が震える。

 

「先日の夜会での貴殿の言葉、感服いたしましたぞ!」

 

(心の声:は?俺、なんか言ったっけ?夜会では女の子にちやほやされて、酒飲んで、最後に涎垂らしてアナに拭かれたくらいしか覚えてねえんだが?)

 

「皆が若造への嫉妬に狂う中、貴殿だけが冷静に本質を見ておられた。まこと、帝国貴族の鑑!柱となるべき男よ!」

 

(心の声:え、まさかあの愚痴?俺が「ローエングラムの出世なんて親族優遇だろ」ってぼやいたやつ?いやあれ完全に俺のハーレムトーク邪魔された腹いせだったんだが!?)

 

そして追い打ち。

 

「どうだ。我が娘エリザベートを娶る気はないか?」

 

出たよ縁談!面倒くせえええ!!

エリザベート嬢……確かに胸はでかかった。ドレスからはみ出さんばかりで、正直ちょっと気になってはいた。でも結婚?いやいやいや、無理無理。結婚なんて自由が死ぬ。俺の毎夜の酒池肉林が台無しだ。

 

でもここで「嫌っす」なんて言ったら、このオッサン絶対怒る。怒ったら俺、丸太パンチで壁ごと吹っ飛ばされる。どうする?どうする俺!?

 

「……はあ。エリザベート嬢は、その……大変、見事な身体つきをされておりますな」

 

あ、やべ、本音出た。胸にしか言及してねえ。

 

でもブラウンシュヴァイク公の反応は意外だった。

 

「ほう!」

 

顔がパアッと輝いた。

 

(心の声:え、なに?俺、今変なこと言った?)

 

「見栄えや家柄ではなく、まず母胎としての健全さに着目するとは!現実主義者よ!まこと気に入った!」

 

(心の声:いやいや!ただの巨乳好き発言だから!現実主義とか言うな!)

 

【数日後:リッテンハイム侯爵邸】

 

で、今度はリッテンハイム侯。こっちはこっちでねじ曲がった顔してニタニタ笑ってる。屋敷の雰囲気もブラウンシュヴァイク邸とは真逆で、やたら陰気。窓小さいし、天井低いし、圧迫感ハンパない。落ち着かねえ。

 

「アルブレヒト君」

また来た。嫌な予感しかしない。

 

「ブラウンシュヴァイクの老いぼれが娘を押し付けようとしておるそうだな!」

 

(心の声:押し付け……まあ、間違ってねえ)

 

「だが筋肉質の女など何の値打ちもない!我が娘サビーネの方が、才色兼備、万事において勝っておるぞ!」

 

(心の声:筋肉質って言うなよ。まあ確かにエリザベート嬢は健康的すぎる感じではあったけどさ。それよりサビーネ嬢……脚は綺麗だったっけ?でも顔は気が強そうだったよな……ああもう、どっちもどっち!)

 

俺は心の中で頭抱えつつ、とりあえずお茶を濁すことにした。

 

「は、はは……。いやはや、どちらのお嬢様も甲乙つけがたく、私のような若輩者にはあまりに畏れ多いお話で……」

 

そう言った瞬間、リッテンハイム侯の目がギラリと光った。

 

「ふむ……!」

 

(心の声:な、なんだよ今度は!?)

 

「そうか、ブラウンシュヴァイクにも同じ返答をしたのだな?……我ら両家を天秤にかけ、慎重に帝国の未来を見定めておられるのか!」

 

(心の声:違う違う違う!俺はただ決められなかっただけ!優柔不断なだけ!でも勝手に深読みされて評価爆上げされてる!?)

 

気づけば俺は、両陣営から「慎重な現実主義者」として勝手に持ち上げられていた。

俺の本音は「どっちも面倒くさい」「女の好みで迷ってる」だけなのに。

 

いやあ、恐ろしいな。勘違いって。

俺はただ胸と脚で悩んでただけなのに、周りは「帝国の未来を見据える男」扱い。

 

(心の声:……いや、ほんとどうしてこうなるんだ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、超重要らしい会議の場にいる。

……らしい、というのは、正直よくわかってないからだ。

 

だってさ、目の前にいるのはブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯、その取り巻きの貴族ども。

みんな顔真っ赤にして怒鳴り合ってる。声がデカい。耳がキンキンする。

俺としては、こんな会議よりベッドで昼寝してたいんだよな。

 

「盟主は叔父上、ブラウンシュヴァイク公に決まっている!」

「いや、リッテンハイム侯こそがふさわしい!」

 

どっちでもいいじゃん。好きにしろよ。

俺は隅っこの椅子に座って、給仕から持ってきてもらったデザートに夢中だ。

チョコがたっぷり乗ったザッハトルテ。これが甘すぎず、ほどよい口溶けで最高なんだよな。

会議?どうでもいい。俺はスイーツタイムだ。

 

「ええい、話が進まん!」

「何を言うか!」

「叔父上こそ!」

「侯爵閣下こそ!」

 

もうずっとこれ。何分も同じこと言ってる。議論っていうより、ただのケンカだな。

マジで子供の口ゲンカと変わらん。

 

俺はフォークでケーキを一口。

……うまい!濃厚なチョコと、ほんのり香るリキュール。完璧!

うっかり「はぁ〜幸せ……」って声が漏れそうになる。

 

そんな中、場の空気を変えたのがあの人。

老将、メルカッツ提督だ。背筋ピンとして、髭ビシッとしてて、いかにも真面目そうな爺さん。

 

「お待ちくだされ」

 

声が響いた瞬間、ケンカしてた連中が一斉に黙った。さすがベテラン、空気支配力すごいな。

俺も思わずフォークを止めかけたけど、ケーキ冷めたらもったいないから普通に食った。

 

「このような時こそ、私欲なく大局を見据える棟梁が必要」

 

(心の声:あーはいはい。いいこと言ってるっぽいけど俺には関係ないな。ケーキ、次は二皿目頼もうかな)

 

「先日も、ローエングラム侯の台頭を感情論でなく『権力構造の必然』と喝破されたお方がおられる」

 

(心の声:ん?俺のこと言ってね?……いやいや、あれは俺がハーレムの邪魔すんなって愚痴っただけだから!)

 

「両家の縁談にも安易に飛びつかず、慎重に派閥争いを超越したお立場を崩されぬ。……ファルケンハイン侯をおいて他にございません!」

 

……え、俺!?

 

その瞬間、場の全員がこっち向いた。

いやいやいやいや、俺はただ隅でデザート食ってただけだぞ!?

 

ブラウンシュヴァイク公がドンッとテーブル叩く。

「ファルケンハイン侯!貴殿に盟主を!」

 

リッテンハイム侯も負けじと叫ぶ。

「そうだ、侯こそふさわしい!」

 

(心の声:ちょっと待て待て待て。なんで両方とも同意してんだよ!?いつも喧嘩ばっかしてんのに!?)

 

たぶんアイツらの腹の中はこうだ。

「ファルケンハインなら俺が操れる」って思ってるんだろうな。

……まあ、正直その通りなんだけどな!

 

でも俺は「盟主」って単語が全然頭に入ってこない。

俺の頭の中はチョコケーキでいっぱいだ。

 

「……このザッハトルテ、マジでうまいな。アナにも食わせてやりたい……」

 

ぽろっとつぶやいてしまった。

それが何かの深遠な独り言だと思われたのか、周りはざわめいてたけど、俺は無視して次の一口へ。

 

そしてついに言わされる瞬間が来た。

 

「どうか、我らの盟主としてお受けくだされ!」

 

みんなが一斉に頭を下げる。視線が熱い。汗が出る。

でも俺、口いっぱいにケーキ入ってたんだよな。

 

もぐもぐしながら曖昧に返した。

 

「……んぐ、うむ。びりょくをじゅくしましゅ……」

 

(内心:えーっと、たぶん「微力を尽くします」って言えたよな?いや噛んだか?まあいいや)

 

広間にどよめきが走った。

 

「おおお!」

「さすが侯爵!」

「慎重でありながら、決断は即断!」

 

違う!俺は噛んだだけ!

 

その後の会議は全部「ファルケンハイン盟主閣下を中心に〜」で進行してた。

でも俺はデザート二皿目に突入。チーズケーキもうまい。

 

「閣下、今後の戦略について……」

「閣下、軍備の配備を……」

 

横からいろんな声が飛んできたけど、俺は全部「んー」とか「ああ」とか言って流してた。

たぶんまた勝手に深読みしてんだろ。

俺は今、ケーキ食ってるんだから話しかけんな。

 

気づけば会議は終わってた。

みんな大真面目な顔で「これで帝国も安泰だ」なんて言ってる。

 

(心の声:いや安泰どころか終わりの始まりだろ。俺が盟主とか絶対ヤバいって)

 

でも誰も聞いちゃいない。

全員が「さすが閣下」「やはり盟主」とか言って俺を称えてる。

 

口の周りにチョコつけたまま頷く俺。

その姿が「質素で飾らぬ真の指導者」とか言われてたけど、実際はただナプキン使うの忘れてただけ。

 

……こうして俺は、歴史的なリップシュタット盟約の盟主に祭り上げられた。

 

いやいや、俺はただケーキ食ってただけなんだが!?

 

 

 

 

 

 

……こうして、俺は盟約のトップに祭り上げられてしまった。

原因はなんだ?権謀術数?政治の駆け引き?いやいや、違う。

ザッハトルテ一切れだ。あれがすべての元凶だ。

 

(心の声:ケーキ食ってただけで人生終わるとか、どんなバカゲー展開だよ!)

 

俺は今、震える手でペンを握っている。目の前には、煌びやかな盟約書。分厚い羊皮紙に「リップシュタット盟約成立」とか書かれてる。歴史の教科書に載るやつだ。

その周りには、帝国中の門閥貴族たちがずらり。全員、期待に満ちた顔で俺を見てる。

 

「閣下、どうか」

「歴史を刻んでくだされ」

「帝国の未来を!」

 

おいおい、やめろ。そんな期待の目で見るな。俺はただの俗物だ。昨日の夜なんてアナに「もっと頑張って」って言われながら泣いてた男だぞ。

 

背後には、いつものあの女。アナスタシア。無表情で直立してるが、あの目は怖い。

「全部わかってるぞ」って目だ。俺が今、ハーレムとエロ三昧しか考えてないことも、全部。

 

(心の声:……もうどうにでもなれ!どうせ盟主になっちまったんだ。だったら俺のやりたいようにやる!)

 

まずは戦利品だ。ブラウンシュヴァイクんとこのエリザベート嬢、リッテンハイムんとこのサビーネ嬢。両方まとめて俺の嫁にしてやる!どっちも身体的にはアリだ!

そんで、毎日ハーレムだ!美女に囲まれて、美食に溺れて、酒飲んで寝る!

戦争?知るか!どうせ提督たちが勝手にやってくれるだろ!俺は報告受けて「うむ」とか頷いときゃいい!

で、戦争が終わったら隠居して、田舎の温泉でも買い取って、毎晩エロ三昧!これぞ俺の黄金ルート!

 

そう決意して、俺は欲望に満ちた顔で盟約書に顔を近づけた。

鼻息が荒い。紙が揺れる。涎がじわじわ口から垂れてきてる。

 

その瞬間――背後から冷たい声が耳を刺した。

 

「アル様。盟約書に涎が垂れております」

 

……え?

 

「銀河の歴史が動く瞬間にございますので、せめてお顔だけでも引き締めてくださいませ。この無能」

 

……はい、アナスタシアでした。ありがとうございます。

 

周りの貴族たちは「なんと感極まっておられるのだ!」とか勝手に解釈して拍手してるけど、真実はただのヨダレ。俺の歴史的瞬間はチョコケーキと同じ扱いだ。

 

(心の声:どうしてこうなったんだ……?)

 

俺は改めて自分の人生を振り返る必要がありそうだ。

何が悪かった?いや、全部だろうな。

でも一番の原因は……間違いなくアナスタシアだ。

 

絶対あいつ、わざとだ。俺を泳がせて、笑いながら「ほらまた勘違いされてますよ」って楽しんでる。

でも逆らえない。なんせ、俺の財布もスケジュールも夜の生活も、ぜーんぶあいつに管理されてるからな。

 

「(モノローグ)私との愛の歴史を、ですね。アル様」

 

……いま、俺の心を読んだか!?

いや、実際にはアナが小声で囁いただけなんだけど、もう俺の内心と彼女の言葉の境界がなくなってきてる。

 

俺はペンを握ったまま、天を仰ぐ。

大広間には拍手と歓声。

「ファルケンハイン伯万歳!」

「盟主閣下万歳!」

 

そして俺の脳内はこうだ。

 

(心の声:……ザッハトルテ、また食いたいな)

 

こうして、俺の人生は歴史の表舞台にぶち上げられた。

だが実態は、涎と欲望にまみれた俗物だ。

 

……これが「英雄」と呼ばれる男の正体である。

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
アルブレヒト侯爵は、書いている作者自身が「こんな奴が本当に歴史の盟主になったら大惨事だろうな」と笑いながら動かしているキャラクターです。
しかし読んでくださる皆様が共感するのは、案外「周囲の勘違いで思わぬ役割を背負わされる」ことの普遍性かもしれません。現実にも「ただ愚痴っただけなのに妙に評価された」経験、誰しもあるのではないでしょうか。
アルはこれからも、勘違いの連鎖で大物扱いされ、アナスタシアに突っ込まれ、涎を垂らしながら銀河を動かしていきます。
――彼は英雄なのか?それともただの俗物なのか?
ぜひ、次回以降も彼の「どうしてこうなった」人生にお付き合いください。

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