ゲート、地球防衛軍、暫く戦えり   作:ハヤモ

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前書き
ほぼ毎日投稿も挫折、終了か……
さても気難しい話は続きます
台詞多め。でも長々と……
次元の話は原作の方だと養鳴さんですね

ベルナーゴの前にクナップヌイ
黒い霧、アポクリフの調査へ
考察回を纏めようと。次元云々とか


39.宇宙・世界の未来/余剰次元

ミモザとアルフェ、いつの間にか集まっていた学徒や街の人達に聞き込みをした後、宿屋に戻ったストーム1とプロフェッサー。

すると、ジゼルが待ち構えていた。 なんでも主上からお告げがあったらしい。

 

 

「神殿の前にクナップヌイに行ってくれるか?」

 

「ベルナーゴとは逸れる方角だが、何故だ」

 

「そこは今、黒い霧が広がっているんだとさ。 そして周りの植物や生き物は悉く死んでいくんだ」

 

「自然発生した毒霧か? それも黒いとは。 何かが燃えている? それともエルベ藩王国領内のように、原油が湧き出ているという話か?」

 

「いんや、アポクリフって奴かもな」

 

「なんだそれは。 アポカリプス、天啓か?」

 

 

プロフェッサーは眼鏡を光らせた。

新たな未知の登場には、研究者の1人として気になるところではある。

 

 

「数万、数千万、数億の年月の果て。 神々が去り人々も居なくなり。 世界はゆっくりと虚無の霧に包まれて、原初の混沌に帰っていくと言われてる。 その虚無の名がアポクリフだ」

 

「何かしらの化学物質ではなく、次元が絡んでいると? 興味はあるな」

 

 

のんびりは出来ないが、急ぐ旅ではない。

寄ってから神殿に行く事にするも、ストーム1は質問を投げかけた。

 

 

「待ってくれ。 神々や人が消えてと言うが、まだジゼルやロウリィがいるじゃないか。 なのに世界が終わりに向かっていると。 亜神はカウントされないのか?」

 

「そんな事は無いと思うぜ。 主上様だっているんだ。 だからそんなモンが現れる筈は無い。 ずっとずっと、遥か先の筈なんだ。 本来なら、な」

 

「プロフェッサー、どう思う?」

 

「タイムパラドックス、ワームホール、話的にビッグクランチ? いや飛躍し過ぎたな……だが影が二次元的な存在に留まらない、そんな事象が起きているのだとしたら……」

 

「クランチ?」

 

「宇宙の始まりである唐突な大爆発、ビッグバンの逆の考えだ。 爆発で膨張した宇宙が最終的に収縮し1点に潰れて終焉を迎えるという、一般相対性理論が予測する宇宙の終焉シナリオの1つだ。 もし宇宙の物質密度が一定以上であれば、膨張はやがて収縮に転じ、最終的に一点に収束する。 だがあくまで予想だ。 我々の住まう宇宙で起きるとしても、プライマーの火星文明が生まれた遥か未来より、更に先の話だろう。 だがこの世界は間近という事か? この収縮の結末と関係している?」

 

「眼鏡のオッサンも長々とワケ分かんねぇ事言うよな。 でもストーム1よりマシか」

 

「興味が無いと面白味も湧き難いか」

 

 

ジゼルは失礼な事を言うが、一応聞いてはいた。

世界を揺るがす技術や思考の芽は、早めに摘むのも使徒の仕事だからだ。

もしプロフェッサーが、神様の様にロンデルの学会等で地球の技術……例えば火薬の製法等をそのまま発表しようものなら、この世界の戦争は、文明は変貌し、下手すると破滅の道を辿る。 そうなると判断した場合、即刻殺す可能性がある。

だがプロフェッサー達は迂闊に技術を広める事はしないだろう。 何故ならプライマーという反面教師、事例があるからだ。

 

奴らは火星人でもあり未来人でもあった。 地球人類が滅んだ後に発展した文明。 マーシアンだったのだ。

彼等の時代の地球はとっくに人類が滅び去り、環境が汚染され、怪物が跋扈する星となっていた。 だがかつての文明の痕跡を発見。 余程興味を惹かれたのだろう、タイムマシンを使用し、まだ人類がいる時代に行き、原始的な人類の前に姿を現す事さえあった。 そして人類に文明を授けたとされる。

その時は連中も旅行を楽しみ、神様を気取り、偉そうに振るっていたかも知れない。

だが時間旅行の危険性に気が付いた。 そうした本来存在しないモノを与えるという事は、未来の有方を変えてしまうという事に。

それは地球の歴史だけでなく、プライマーの火星にも影響が波及する程だったのかも知れない。

故に地球から撤退、姿を消した。 だが宇宙船が今でいうインド山中に墜落するという事故が起き、それを人類が発掘、発見してしまう。

これがEDF創設のキッカケとなった事件だ。

異星文明の存在を知った者は有権者達に働きかけ、結果、地球外知的生命体からの侵攻に備える目的で世界規模の軍事組織、全地球防衛機構軍EDFが創られた。

いよいよ未来を生きる火星文明に、プライマーに悪影響が出たのだろう。

未来を知った者は、未来を変える力がある……母星の、種族の危機だった。

気付いてしまった人類を消し、己が育ててしまった"あってはならない歴史/文明"を無かった事にする為、遂に奴等は動いた。

タイムマシン再使用、軍隊を送り込んだのだ。

そして戦争が始まった。 原始的な人類、少なくともEDF設立前の人類を攻撃すれば攻略は容易いだろうに、それをしなかったのは、人類が宇宙船を見つけたという特異点を基点にしないとタイムパラドックスが起きる可能性があるという制約の都合だ。

似た理由で、核兵器のような大量破壊兵器をプライマーは使用しなかった。 地球環境が変わるのも母星に悪影響があったのだろう。

だが結果は……敗北。

地球人類が戦争に勝ち、生き延び、結局起きてしまったタイムパラドックスの果て、プライマーの存在は消え去った。

最終的に人類は総人口の3割を喪失するも、連中の科学技術を得た。 未だ不明な点もあれど、それらを用いて文明を飛躍させ、明るい未来へと歩み始めたのであった。

懸念として、歴史の修正力や時空間が整合性を取ろうとして、プライマーの存在そのものを人類が忘れてしまうのではないか、というものがあるが、今のところは問題ない。

銀座事件という異例な事態は起きたが……。

 

閑話休題。

 

プロフェッサーはジゼルの仕事を知ってか知らずか、話を纏めていった。

 

 

「関連する話として、ビッグクランチで極限状態に達した宇宙が再び爆発的な膨張……ビッグバウンスを起こし新宇宙が生まれる、このサイクルが繰り返される事で宇宙は永遠に再生と終焉を繰り返すという考えもある。 ただ、今の観測では宇宙は加速膨張している事が示されており、ビッグクランチが起きる可能性については懐疑的な見方もある」

 

「神話的には、自分の尾を呑み込んで円環状になっている竜、ウロボロスか?」

 

「ふーん? 地球にも竜がいんだな?」

 

「宇宙の未来については、他にも仮説があるぞ。 宇宙が永遠に膨張し続け、最終的に全てのエネルギーが均一に分布、熱力学的に活動が停止する宇宙の終焉仮説ビッグフリーズ。 加速膨張が極限まで進み、最終的に全ての物質が引き裂かれるビッグリップという終焉仮説は、銀河、星、原子、更には素粒子までもが引き裂かれ、時空自体も崩壊すると考えられている」

 

「それがアポクリフだって言いたいのか?」

 

「結論を急ぐな。 あくまで仮説の話だ。 それも我々の宇宙のな。 ここは魔法や君達他種族がいる異世界だが、それでも物理法則や空気成分が似通っている中、重力や時空間の歪みが地上で起きているとは考え難い。 まさかブラックホールのように、光すら逃げられない重過ぎる何かがそこにあるとでも? それならば周囲の生物や植物を観測するのは難しいか……? そもそも近付いて平気なのか。 素粒子レベルで分解されたり吸い込まれたりしないか不安はあるな」

 

「行けば分かんだろ。 ここでごちゃごちゃ考えても仕方ないっつーの」

 

「そうだな。 とにかく現場に行こう。 ストーム1としては神殿で謁見が良いか?」

 

「大丈夫だ。 クナップヌイに行こう」

 

「あんがとよ、英雄さん」

 

 

そうして一行はベルナーゴとは少し別方向、クナップヌイへグレイプを走らせる事にするのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クナップヌイ。

ベルナーゴより北の地。

山を超えた向こう。 陸路で行くには厳しく、飛竜や有翼族のように空を飛べねば到達は困難……かも知れないとの事なので。

 

 

「ヘリで来た」

 

 

HU04ブルートを要請。

輸送機ノーブルがコンテナを投下、飛び出した大型ヘリに搭乗し、山をひとっ飛び。

空を飛ぶと目立つのと、飛竜のような飛行生物との戦闘が起きると面倒な事から避けていたが、こういう時はガバ基準で使うのであった。

丁度3人乗り(ゲーム的に)だしね仕方ないね。

 

 

「いやなんでだよ!? こんな便利な乗り物あるなら、最初から使えよ!?」

 

「燃料が必要だし、思うほど機動力が無い。 何より目立つ。 飛竜や君ら龍人族のような有翼種に集団で襲われたら墜落する可能性がある。 ヘリで空中戦、ドッグファイトはナンセンスだ。 出来んこともないが、この機体は厳しいな」

 

「そりゃ良い事を聞いたわ。 今、オレがこれを堕としても構わないって事かぁ?」

 

「ヤられたら殺り返す。 倍返しだ」

 

「冗談だよ……です」

 

 

覇気のある物言いに、不慣れな敬語を使い衝突を回避する。 本能的な恐怖を感じるまでには、ストーム1を危険視していた。

同時に何かあった時、守ってくれる主人のような頼もしさもあって、不自然に尻尾が揺れてしまうのだった。

 

 

「しかし情報通りだな」

 

 

コックピット越し、地上を見やるストーム1。

黒い闇……霧状のナニかが一帯を覆っている。

物質というより影というべきか。

漂い浮く訳でもなく真っ黒なソレ。 キャンパスを黒い墨で塗りたくったように、不気味に鎮座していた。

 

 

「世界の終わり、その兆候って奴さ」

 

「まだ分からんよ」

 

「離れた所に着陸してくれ。 そこから徒歩で接近する。 大気が汚染されている可能性もある。 十分気を付けてくれ」

 

「了解。 着陸する」

 

 

 

 

 

着陸後、プロフェッサーが調査器具類を運び出し、あれこれと調べ始めた。

視界いっぱいの影の池。 周囲に敵影なし。

それどころか虫や植物も生き絶えている。 だが腐敗するでもバラバラになるでもなく、枯れもせず、そこに鎮座するのみ。

 

 

「まるで時間が止まったようだ」

 

 

ストーム1の感想に、プロフェッサーが同意しつつ、一応の安全を確認する。

 

 

「そうだな、腐敗菌まで死んでいるのかも知れない……スモッグに見えるな。 毒ガスやタールかと思ったが登録されている毒性物質は検出されなかった。 放射線量は自然値だ。 防護服はいらない。 いらないが……これはどういう事だ」

 

「なんとなくだけどよ、広がってねぇか?」

 

「そうかも知れないな。 迂闊に度胸試しはしない方が良い。 この上を飛ぶのもナシだ」

 

「突然手が伸びて来るってか?」

 

「そうなれば、これは化け物だな。 少なくとも良いものにも見えない」

 

「だろうな。 手を突っ込めばこうなるぜ」

 

 

ジゼルは近くの葉付きの枝を拾い、黒い霧の中に突っ込み引き上げる。

葉はついたままだし、緑のまま。 だが手で鷲掴みにすれば、ワシャと乾いた音と共に砕け散った。

 

 

「物質が失われる事なく、しかし軟性は失われた? いや時間に固定されたのか? まるで液体窒素に浸けたみたいだ」

 

 

今度はプロフェッサーが枝を突っ込む。

その水面、いや影より下の透明度や深度を簡単に計っておく。

 

 

「透明度は4から5センチというところか」

 

 

続いて、コンビニの袋で掬い上げられるか試してみるが───。

 

 

「袋の中に入り込むのに掬い上げる事が出来ない!? となると、これは気体でも液体でもなく、物質とも言えない」

 

「じゃあ、なんだってんだよ?」

 

「影なのではないか?」

 

「はぁ?」

 

 

ナニ言ってんだこの眼鏡と、ジゼルが怪訝な顔をするが、ストーム1は真面目にとり合う。

 

 

「何の影だ?」

 

「そうと決まった訳ではない。 これは余剰次元からの影ではないかと言っているんだ。 似非科学に聞こえるだろう、私もそう思う。 だが実際にハドロン加速器を使って証明実験をしている研究分野だ」

 

「次元か……ウィングダイバーの空間を歪ませて盾とするルミナスシールドや、プライマーの転送技術なんかを目にしてしまうと、完全な空想とは言い切れないか。 だが余剰次元なんて聞いた事がない。 それに、この霧みたいのが影なのか?」

 

「地球って変な研究してんのな」

 

 

ジゼルは相変わらずの反応だが、話は続く。

この場で理解する者はいないだろうが、一応の説明をするのは性分からか。

 

 

「……余剰次元は今考えついた仮説だが」

 

「今かよ」

 

 

ジゼルのツッコミに臆せず進む。

 

 

「この三次元においては、影は平面、二次元と認識されている。 ここは良いか?」

 

「なんとか」

 

「しかし立体的な三次元の影が存在するのなら、余剰次元の存在を示唆する事になる」

 

 

宇宙猫に変身しそうなのを耐える。

耐える事無くして勝利は無い……!

 

 

「へぇ〜?」

 

 

そして適当に相槌だけはするジゼル。

話半分以下に聞く程度のスルースキルも大切か。

 

 

(やるなジゼル。 亜神は伊達じゃない)

 

 

変な方向に再評価するストーム1なのであった。

……尚も眠たい話は続いた。

 

 

「本格的な調査が必要になるのだろうが、門によってアポクリフが出現したと示唆されるなら、いよいよ門を閉じねばならないという話になる」

 

「門を閉じれば全て解決か?」

 

「早急には結論を出せないが……門という現象自体、理解不能だ。 そして、ここでも理解不能な現象が起きている。 更に詳細な調査が必要だと分かっただけに過ぎない」

 

「今すぐ門を閉じる必要はないと?」

 

「それを決めるのは政治の領域だ。 だが科学的根拠がなくとも対処を決める事があるだろう。 オカルト気味に大震災の予知がされるも、それを基に備えをするとかな」

 

「だが一丸となるには難しい問題という事か」

 

「ある程度の根拠が見つかれば、総司令部は損失云々の勘定で閉鎖に反対する者達……政財界をも抑え込んで強行するだろう。 いずれ何らかの手を打つ。 何もかも分かってからでは手遅れな事もあるからな」

 

 

すると調査時間も無駄には出来ないだろう。

制限時間が不明なのは怖い点である。

 

 

「もし黒い影が、余剰次元からの『影』だと考えられるなら、暗黒物質……ダークマターの議論にも一石を投じられそうだな」

 

「見たまんま暗黒物質って感じだからな」

 

「もし空間が質量以外の原因で歪むなら、そこには物質の存在がなくても重力に似た現象が発生している筈だ」

 

 

ここでジゼルが珍しく挙手。

何だかんだ話は聞いているのは使徒故か。

 

 

「空間が歪む事が重力なのか?」

 

「興味があるか? 説明しよう」

 

「いや別に。 聞いただけ」

 

「遠慮しなくて良い」

 

「遠慮とかじゃないんだけど?」

 

 

ウッカリ余計な発言をしたと後悔しつつも、話は更に続いてしまった。

 

 

「空中に張った布上を空間とする。 そこに重い石を載せたらどうなると思う?」

 

「そりゃ、その部分が沈むだろ」

 

「それが重力と空間の関係性だ。 質量ある物質の存在によりシートがたわむ。 このへこみこそが引力だ。 物が下に落ちる現象はこのたわみ……傾斜によって起こる。 ならば質量が存在すると必ず引力が発生する。 これが万有引力だ」

 

「でもよ、あの黒いのに近づいても体が重くなったりとか、吸い寄せられたように感じなかったぜ」

 

「それはそうだ。 ここには大質量となる大地があるからな。 歪みも僅かで体感できる程ではない」

 

「……はぁ」

 

「問題は余剰次元を認識する困難さだ。 我々は横、縦、前後の三次元三軸と、過去から未来という時間軸に縛られている。 そのどれでもない別種の『方向』を想像するのは難しい。 既存の軸は共通して任意の点Pから正負双方向に無限大の広がりを設定できる。 その三次元時空は二次元一次元の下位次元を内包して時間軸を進んでいる。 ならば、その上位次元も同様の性質を持つ……いや待てよ」

 

 

唐突に端末を取り出して、眼鏡を光らせ始めるプロフェッサー。

もう自分の世界だ。 とっくの昔にストーム1とジゼルの理解の外側に飛んでいる。 ナニかで有金を溶かしたような顔になってしまっている。

なんだこの眼鏡は。 外宇宙へ飛び出したボイジャーか。 天体重力推進のスイングバイをして今に至るまで幾星霜の上にあるなにがしの存在か……。

事実、プロフェッサーはタイムリープで人より多くの時間を考えてきた。 最終世界線となり、戦後は皆と同じ時間を共有するようになったが、その名残りは今尚あり続けているようだ。

 

 

「魔法は上位存在の要素を内包したものだ。 その殆どは半分も理解できないものだったが……この世界の外側には、様々な方向軸が存在するという。 厳密には重なっているが感知できない。 三次元の現象を切り離し、虚理の支配するセテルに働きかけて物事を成すのが魔法らしい。 故に重力に関係なく物を浮かせられる……別の存在ではない、全てがここにある」

 

「…………プロフェッサー。 俺は門外漢だから僅かにも理解が難しい。 簡単にいうと、つまり、なんだ……ロンデルにいる魔法使い達は、特地の世界の知識に基づいて魔法という現象を起こしているんだな?」

 

 

噛み砕き、反芻し、飲み込んだストーム1。

戦闘技能は卓越しているが、この手は何処までも分からず置いてけぼり。

それでも何とか理解を試みた。 科学的知識や考察、ましてや魔法などというファンタジーの解析はプロフェッサーたち科学者に任せているが、そこから役立つ何かに繋がる可能性もある。

 

 

「ああ。 だが第五第六の次元軸に何を選ぶか私には判断できない。 だが常々『可能性』という軸があるのではと考えている」

 

「可能性?」

 

「ここに来る前に述べたパラレルワールドだな。 同一人物でも微妙に容姿が違うとか、存在しない町の名前があるとか、良く似た、こことは違う世界だ。 特地ではナゥテルの認識といい、世界は紐のような姿をしていると考えられている。 スーパーストリング理論に通ずるものがあるかもな……」

 

「その紐の世界とやらが枝のように沢山あって、二つの紐が接した瞬間にできるのが門という事か?」

 

「そうだ。 通常は一瞬で開いて一瞬で消えるだろう。 だが開き続けている。 これは二つの紐を無理矢理束ねている状態だ。 可塑性があるとしても、世界は歪み、やがては元に戻せなくなる可能性がある。 故に私は警告した」

 

「歴史改変、修正力のように?」

 

「ああ。 元に戻ろうとする力を上回る外的要因があれば、世界の独自性は失われていくだろう。 世界そのものに、果たして我々が経験したものが何処まで当て嵌められるかも不明だが」

 

結局は分からない事だらけなのが分かった。

プライマーの残した技術の中にヒントがあるかも知れないが、未解明な部分が多く、頼るのは博打が過ぎる。

やはりベルナーゴにいる冥府の王、ハーディなる上位存在に解決の糸口があるのか。

困った時の神頼み……!

助けてくれ。 救ってくれ、だ……!

 

 

「あのさぁ。 こことアンタらとは違う世界が、本当に幾つも存在するのか?」

 

「そうだな、今の話でいえば……服に使われた糸の数や、髪の毛の数とした微妙な差異は集約されてしまうだろう。 大戦での経験上からして『可能性』は集約されてしまうものと私は考えている」

 

「大戦? あんたらの世界であった戦争か。 そこでもこういうアポクリフとか、可能性とやらがあったのか?」

 

「黒い霧を出すヘイズという飛行生物はいたが、それは物質のある目眩し用の墨でコレとは関係なく───可能性、分岐点はあった。 歴史のな。 敵はそれを利用した。 私と相棒もそうして、未来を勝ち取った」

 

 

タイムマシンの話は避けるプロフェッサー。

ややこしくなるし、今の状況には当て嵌まらないだろう。 そうでなくても、時間を超越して歴史へ干渉するなんて芸当、亜神や神様は許すだろうか。

 

 

「惑星間の公転軌道が決まっているのも、アストロイドベルト……小惑星帯が形成されているのも、各惑星が持つ重力で起こる必然だ。 であれば、物事の可能性にも同じような働きがあるのではないか? 可能性世界の差異とは集約されるような微妙なものではなく、はっきりした違いが現れるのでは───それが我々の世界と特地の世界がそれぞれ存在しうる理由ではないだろうか」

 

「知るかよ。 ヒトより長く生きてるけどよ」

 

 

疑問から話が拡大するも、求めていない議題までいった挙句、質問や疑問が返ってきたから、そっけない反応になるジゼル。

話の収まりが悪いと感じたからか、まだ暫く話は続いてしまう。

疲れたよストラッシュ。 なんだかとても眠いんだ。

 

 

「ここで起きている空間の歪みを、私たちは日常的に体験している」

 

「……その辺に異次元への扉が開くのか。 バミューダトライアングルか?」

 

「オカルト話ではない。 我々が存在するには三次元時空が必要であり、その中でのみ存在が許されているに過ぎない。 その意味では異次元空間は存在しない。 門のように扉をくぐれるとしても、その先は特地のような違う可能性軸上の三次元空間になる筈だ」

 

「その考えだと、次元断層とかなさそうだな。 ゲームの中の住人はゲームの中でのみ存在できる、みたいな考えかな」

 

「話を戻そう。 例えばこの地面。 平らに見えて、その実、地球という球面上だな? あまりに巨大な為、歪みを無視出来ているに過ぎない。 メルカトル図法上の大圏コースとされる地図上の最短距離を何処かで見た事はないか? 見事に曲線で描かれていただろう。 三次元の球面を無理やり二次元の平面にした為に空間が歪んでしまったのだ」

 

 

地理の授業等で学んだ人も多いだろう。

世界地図といえば平面を思い描く人が多いかも知れない。 だが地球は球状であり少し正しさに欠けたり、誤解が生まれる。

平面地図だけ見ると、日本から真っ直ぐ東に行けばアメリカに行けると思うが、実際は違う場所に着いてしまう……みたいな話だ。

 

 

「なんだよ。 ここの空間が歪んでるって?」

 

「そうだ。 先程あれこれと調べていた時、巻尺を伸ばして地面を測っていただろう。 その時の映像を見てくれ」

 

 

タブレットで、その時の映像を見せる。

黒い霧の脇、まだ呑み込まれていない地面の上に巻尺を伸ばして地面に置いている。

二点間の長さを測るなら計測策は直線でなければならない。 だがその映像では……。

 

 

「曲がっているぞ」

 

 

伸ばした巻尺が歪曲していたのだ。

 

 

「その通りだ」

 

 

プロフェッサーは説明した。

 

 

「ピンと巻尺を張ったつもりだ。 正常であればこの直線が二点間の最短距離になる。 ところが見ての通りだ」

 

 

それは時空間異常を示唆する"ヒント"だった。

 

 

「なぜ"曲がっている"のだろうな?」

 

 

その答えは、まだ誰にも出せていない───




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