誰にも見えない雛見沢   作:砂上八湖

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今は無き公式掲示板内SS投稿スレ「雛見沢物語」に投下していたシリーズの一作目です。
いろいろ投稿していましたが、この話が一番評判が良かった気がします(笑)

読んでたよっていう人がいらっしゃったら、当時のスレの雰囲気とか思い出して懐かしんでいただけたら幸いです。


誰にも見えない雛見沢

 

◼️

 

 梅雨だというのに日本晴れ。アブラゼミが喧しい。

 日が傾けば、いつもの通りひぐらし達の時間になるだろう。

 

 吸い込まれそうな蒼い空。

 優しく包んでくれる茜色。

 星の光が透き通る黒い空。

 毎日見上げる空だけど、その度に違う顔を見せてくれる。

 

 空梅雨(からつゆ)だった。

 おかげで村の中央にある貯水池の量が減り、田畑で使う水が不足している。

 昨日の昼。田んぼの横を通り過ぎた時に、公由のおじいちゃんと石原さんが神妙な面持ちで話し合っていた。ボクが考えているより深刻な問題なようだ。

 特にこの地域は酷い。

 まるでここだけ雲が避けているようだという。

 

 その反動か、沖縄・北陸地方では逆に毎日が土砂降りらしい。少しはこっちに分けて欲しいと思う。

 テレビでは「イジョーキショー」だとか「エルニーニョゲンショー」とか説明しているが、サッパリ分からない。

 ボク達にも分かりやすいよう、日本語で喋ってくれないだろうか?

 横文字上位な世の中は良くないと思うなぁ、うん。

 

 ふ、と。

 『水不足』という単語に重なって、友人の顔が脳裏に浮かぶ。

 そういえば彼は大丈夫だろうか。

 少し心配になってきた。

 

「梨花ちゃん、ちょっと散歩してくるよ」

 

 玄関から出る際、台所で昼食を作っている少女に声をかけた。この暑い中、グラグラと鍋で湯を沸かしている。

 どうも素麺を茹でるらしかった。

 大量に流れ落ちる汗をタオルで拭きながら、彼女がこちらを見る。

 

「お昼はどうするのですか?」

 

「うーん、どうしようかな。この暑さじゃ胡瓜も上手く育ってないだろうし。

 帰ってきて食べる事にするよ」

 

「分かったのです。ミョウガをたっぷり切って冷蔵庫の中に入れておくですよ」

 

「楽しみだなぁ」

 

 ボクの言葉を聞いた梨花が「にぱ~☆」と笑顔を見せる。

 その笑顔に、言ってきますと声をかけ外に出た。

 

◼️

 

 強い日差し。

 じりじりと照りつける太陽。

 熱を帯びて空気をゆがめる地面。セミの声。

 

 ダムの建設跡地へと向かう道を歩きながら村の様子を眺める。

 雑貨屋を経営する有馬さんのおばあちゃんが、畑の真ん中で空を睨みつけるように見上げていた。

 その光景に、ボクは胸が締め付けられた。

 おばあちゃんの足元で、椰子の実の様な生き物が畑の土を悲しそうに見ていた。

 遠くから見ても分かる。土がパサパサだ。

 あのままでは大根が育たないだろう。

 

「有馬のおばあちゃんとこの大根は美味しいの。美味しいのに」

 

 おばあちゃんの足元から、悲しげな声がボクの耳に届いた。

 

◼️

 

 それでも川のせせらぎに恨みはこもらない。

 広がる枝葉が太陽の光を遮り、その音はそよ風と共に「涼しい世界」を空間に提供していた。

 

「んだども、せせらぎが(ちぃ)そぉなっとおじゃろ?」

 

 川の流れを眺めていたボクに、水の中から声がかかる。

 ちゃぽんっ、と。

 彼は川から頭を出して「やあ」と挨拶してきた。

 ボクも「やあ」右手を振って応える。

 土手を飛び降り、河原へと着地する。彼も川から出てくると、持っていた網篭を河原へと置いた。

 

「水不足だっていうから心配になってね」

 

「んあー、(たす)かにのぅ。(かぁ)の水もだいぶ(でぇぶ)減ってるでよぉ。

 さっきも()うたよぉにのぉ、せせらぎも(ちぃ)そぉなってもうて……

 おかげで胡瓜も育たねぇがよ……」

 

 しょんぼりと彼は俯いた。

 やっぱりか。昔は黙っていても奉納してくれたらしいが、最近はそうも行かず自分で栽培して食べているらしい。背中に哀愁が漂う。彼等にも自給自足の時代が到来したのだ。

 

「何とかしないとねぇ。水不足は村にとっても死活問題だし」

 

「こげん時ばダムさ必要なんじゃろぉが、ワシ等の居場所も無く(のぉ)なってしまうけぇのぉ……」

 

 よっこいせ、と近くの石に座り込む。ボクも隣に腰をかける。

 

「そういやぁ、聞いたがぁ? 無名(むみょう)の奴、紫砂(しずな)に振られたらしい(ちゅぅが)ってよ」

 

「ぶ!?」

 

 思わぬ報告に、吹き出してしまう。

 

「ええええ!? ついに告白したんだ無名!? うわあ……」

 

 奮い上げた勇気に感心ながらも、無残な結果に同情の溜息を漏らす。

 そのいかつい外見とは裏腹に、結構繊細な心の持ち主なのだ。

 いまごろ洞穴にこもって塞ぎこんでいるのだろう。

 

「こん周りの奴等も言う(ゆぅ)とっただぁな。

 黒い病狗(やまいぬ)っこが蝦夷(えぞ)の女王さぁ相手になるかいってのぅ」

 

 頭頂部のツルツルを撫でながら、ボクの友人は豪快な苦笑いを漏らした。

 よほど痛快だったのだろう。膝をパンパンと叩いている。

軋深(きしみ)……そんなに笑うのは悪いよぉ。

 まぁ……そりゃ、たしかに『格』が違うかもしれないけどさ」

 

「そりゃあおめぇ、土佐の若造と蝦夷の女傑じゃあ風格どころか年季もちがわあぁなぁ!」

 

 愉快愉快と軋深が笑う。

 無名も紫砂も、ボクの友達だからムッとなる。

 その表情を見たのだろう。軋深が泳ぐのが得意そうな手をヒラヒラ揺らして苦笑してみせた。

 

「悪い悪い、ついぞ色恋沙汰なんか(んざぁ)無かったけぇのぉ。じゃけぇ面白ぉて面白ぉて」

 

「面白い色恋沙汰なら圭ちゃんがいるじゃない。見てて面白いよ、アレ」

 

「おお、おめぇの『お気に入り』っちゅうあれがぁ。

 んー……そういや2,3日前にこの側を、南蛮女中みでぇな格好で泣きながら歩いとっただなぁ。

 面白いっちゅうがぁ……気の毒ちゅうがぁ、目に毒っちゅうがぁ……」

 

 ここに圭ちゃんはいないけど、軋深の目が『可哀相なものを見る目』になった。

 ああ、本気で同情されてる。

 情けないぞ圭ちゃん。

 

「お前達、何やってるんだ。二人して肩を並べて」

 

 後ろから声がかかる。

 

数多良(すだら)

 

 ボクは、土手からこっちを見ている友人の名を呼んだ。

 

 釣り竿を肩に担いでいる。どうやら、この先のダム建設跡地の貯水池で釣りをしていたらしい。

 手ぶらなところを見ると、獲物は釣れなかったようだ。

 

「なんでぇ、信州の白容裔(しろうねり)じゃねぇか。

 みりゃわかんだろぉがいや。世間話だぁよ」

 

 文字通り嘴を尖らせた軋深が、土手の上の穢れた白い存在に横柄な物言いで応えた。

 ただ単にからかっているだけなのだろう。その気配は数多良にも通じたようで、口元が大きく歪んだ。

 

「無名が見たら嫉妬するぞ。ただでさえ雨が降らないからカッカッしてるというのに」

 

 彼のセリフに、ボクはさっきまでの会話を思い出す。

 

「そういえば……数多良、身体がパサついてない?」

 

「ん? ああ、そうだな。ここんとこ日照りだからな。

 そんな訳だから釣りのついでに泳ごうかと思ったんだが、先客がいてね」

 

「先客だぁ? あげんなとこで釣りする奴ぁ、おめぇしかいねぇだろう(だらん)が」

 

「最近流れてきたのがいるだろう。不法投棄の噂を聞きつけてきた奴」

 

「んあ、(みやこ)塵塚(かいづか)かぁ」

 

「そうそう。そいつが水浴びしててね。出歯亀呼ばわりされる前に退散してきた」

 

「ゴミに囲まれるのは好きなくせに、自分は綺麗好きなんだもんなぁ」

 

 ボクは水浴びする塵塚と、ゴミだらけの場所で寝転がる塵塚の両方の姿を想像し、思わず苦笑してしまう。

 せっかくの美人さんなのに、日頃の超絶的だらしなさが異性を敬遠させているのだ。

 もったいないなぁ。

 いや「もったいない」という言葉こそが「彼女そのもの」なんだろうけれど。

 

「ああ。『塵塚』で思い出したぞ」

 

 そんな風にボクが考えていると、数多良が長い首を「にゅっ」とまわして呟いた。

 

「長州の座頭(ざとう)から連絡があったんだけどな。また最近、この辺に流れ着いた奴がいるらしい。

 大陸を半島経由で来たらしいが……どんな奴か聞いてる?」

 

「外人さんかぃ」

 

「え、知らないよ、そんな人」

 

 初耳だった。

 誰も彼も、この日照りと水不足で参っているという話しか聞かない。

 まぁ、そもそもボク自身が外に知り合いがいないから、というだけかもしれないけどね。

 

「んああ、つまり。おめぇにまだ顔も通してねぇつうことだぁな」

 

「しかも座頭の話振りだと……どうも『良くない』奴らしい」

 

「こん雛見沢に悪さぁするっちゅうかもしれんがぁ事かい」

 

 軋深の言葉に、数多良はシワだらけの顔や身体を「ぐにゃり」と曲げる。

 ボク達の方を向きながら土手に腰掛け、ううんと唸った。

 

「もしかしたら、もうしているとか……な」

 

「……ここ最近で?」

 

 かもな、と無言で数多良は空を仰ぐ。

 つられてボクも、軋深も昼中の空を見た。

 白い半月が笑うようにボク等を見ている。

 

「見てくる」

 

 ボクは空から視線を外し、すくっと立ち上がった。

 

「おいおい、何もおめぇから行くこたぁねぇでねぇか」

 

「気持ちは分かるがな、失恋の鬱憤晴らしに無名にでも、行か、せれ──ば──、──」

 

 数多良の語尾が小さくなって、ついには掻き消える。

 

 ボクの目を見たから。

 

 自分で見たことはないけれど、きっと深く蒼く濁った冷たい瞳を見たから。

 

 

  「有馬のおばあちゃんがね」

 

  「空を睨みつけてたんだ」

 

  「雛見沢の空をだよ」

 

  「ボクの好きな雛見沢の空をだよ」

 

  「そんな目で、ボクは見てほしくないんだ」

 

  「ボクの好きな、雛見沢の空を」

 

 

 ボクはふわりと土手を飛び越えた。

 数多良の隣に着地して、そのまま山の中へと入る。

 

「……やりすぎんでねぇぞ」

 

「穏便にな」

 

 ボクではなく相手を気遣う2人に向けて、背を向けたまま右手を振った。

 

◼️

 

 それは『ギョウ』というらしかった。

 

 中国古代の地理書「山海経」の南山経の中で、旱魃(かんばつ)を起こすとされていた怪鳥の一種である。

 梟に似た鳥の姿をしているが、顔は人面で四つの目が縦に二個ずつ並んでおり、顔の両側には人間の耳がある。

 「ギョウギョウ」と鳴く事からこの名がついたとされるが、この鳥が出現すると国のあちこちで一斉に旱魃が起こり、人民が苦しむ事になると言う招かれざる存在だ。

 

 その凶々(まがまが)しい鳥が、裸の女性を連れている。

 いや、その女もまた異形の存在だ。

 天女のような神気を持ちながら、顔の中央には目がひとつしかない。

 その姿をみてピンときた。『旱魃』、正確には『女魃(じょばつ)』だろう。

 「山海経」大荒北経によると、女魃は黄帝(こうてい)蚩尤(しゅうゆ)と戦った時に、蚩尤軍の引き起こす大風雨を治めたという治水神だ。

 なのに時々逃げ出して各地に災害をもたらし、人々に追い払われたり殺されたりする対象となった天女だという。

 

「何だ、貴様は」

 

 ボクの姿が見えるなり、威嚇しながら『ギョウ』が羽根を動かす。

 どうして隠れている場所が分かったのか、という警戒の仕方だ。

 これだけ気配を垂れ流していれば、隠れるも何もあったもんじゃないんだけどなぁ。

 『女魃』も僕が不審な動きを見せれば、すぐさま動けるような姿勢をとっている。

 一説によれば、彼女は風のような速さで走れるという。

 その速さにはよほどの自信があるとみえる。

 

「ここ一帯を日照りにしてるのは君だね?」

 

「……それがどうした。

 何が起ころうと、それは俺の存在ゆえだ。

 ここは()()()()所だろう?

 だから俺は、俺達はここへ来た」

 

「──中国から逃げてきたの?」

 

 その言葉に『女魃』の肩がピクリと震える。

 ……なるほど。

 

「そっちが逃げたくて……君が逃がしてあげたんだね」

 

「俺は彼女を守る。

 ──そう約束した、そう俺自身に誓った。

 確かに俺は疎まれるべき存在だ。

 そういう存在として生を受けた。

 俺達を追い出すのか?

 ここは『疎まれた存在』が集まる場所ではないのか。

 嫌だ。俺達は、もう何処へも行かんぞ。

 どうしても言うなら、力ずくで……ッ!」

 

 

「黙れよ」

 

 

 ボクは言い放つ。

 

「ゴチャゴチャグチグチ五月蝿いよ。

 そんなに静かに暮らしたけりゃあ、もっと深く薄く身を潜めなよ。

 ここに集まるのは疎まれたからじゃない。

 居場所をなくした存在が、静かに穏やかに暮らす為に()る所だ。

 こんな事されたんじゃ他のみんなが、ボクの友達が迷惑なんだよ」

 

「なっ……!?」

 

「それにそっちの事情なんて知らないね」

 

 ボクの口調に怒気とは異なる『圧』が立ち昇る。

 

 「君達は、有馬のおばあちゃんに雛見沢の空を睨ませた。

 雛見沢の人間が、雛見沢の空を(うと)んじたんだ。

 ボクを怒らせるにはそれだけで十分だ。

 だから──」

 

 ボクの周り景色が歪んで見えるほど、濃密で禍々しく神々しい『気』が空間を軋ませていく。

 

「だから、ボクは君達を許さない」

 

 

「なんだとォ……?

 このチビめ、貴様に一体どれほどの……ッ」

 

 そこまで喋って、凶鳥は動きを止める。

 

 否、止められた。

 ボクが止めた。

 

 空気が重く沈み始める。

 停滞する。

 風は瞬時に凍りつく。

 世界が蒼暗く染まる。

 ボクの目が青く。

 暗く。

 深く。

 重く。

 濁り。

 2つの存在を視界に収める。

 ボクの周りだけでなく、魚眼レンズで写されたように世界が大きく湾曲して歪む。

 

()()()()()()

 

 ボクの呟きが『女魃』に短い悲鳴をあげさせた。

 『ギョウ』も、ようやく誰に喧嘩を売ったのか理解したようだった。

 

 だがもう遅い。

 

 断罪の宣言を、ボクは(つむ)ぐ様に言い放つ。

 

「大陸から遠く離れた存在が、この地に契約(むすびつ)いたボクとの……」

 

 

「 力 の 差 が 分 か ら な い だ と ? 」

 

 

 瞬間的に冷えた殺気が津波のようにあふれ出し、山全体からカラスなどの野鳥達が逃げ出した。

 (おか)の動物達や虫達は生存本能に刺激され、巣穴のような体全体を隠せる場所へ一斉に潜り込む。

 2人の表情が絶望に染まる。

 

「ま、さか、アンタが、オヤシ」

 

 だが次の瞬間。

 

 誰にも見えない衝撃波が山の一部を削り取り、

 誰にも聞こえない悲鳴が雛見沢に轟いた。

 

◼️

 

 ある時を境に、思い出した様な雨の日がやって来た。

 埃っぽい臭いも、やがて水で流される。

 縁側に座りながら冷蔵庫で冷やされた素麺をツルツルと食べる。美味い。

 沙都子が作った手製の「つゆ」は絶品だね。

 すると、この雨が素麺に見えてくるから不思議だ。

 じゅるり。

 

「御苦労様なのです」

 

 梨花はそう言いながらコップに麦茶を注いでくれる。

 ボクは8つもある尻尾を振って喜んだ。

 

「きつぅーく御仕置きしておいたから。

 当分、お日様と雨には困らないよ☆」

 

「えげつねぇなぁ」と、ボクの隣で軋深が呟く。

 梨花がスーパーで買ってきた胡瓜と日本酒で、久し振りの雨を肴に飲んでいた。

 

「俺達に泣きついて来た(きちゅう)、あいつらぁん情けねぇ姿といったらん……」

 

「有馬のところの土精が御礼を言いに来たですよ」

 

 僕はそれを聞いて微笑んだ。

 これで有馬のおばあちゃんが空を睨む事はないだろうし、土精が悲しい声を上げることもないだろう。

 

「ああ、そういえば。無名と紫砂、付き合う事になったらしいぞ」

 

「ぶふっ」

 

 予想外の話に、鼻からめんつゆを吹き出していまう。

 庭に出て雨に打たれる数多良が「汚いなぁ」と文句をつける。

 

 それどころじゃないだろう!

 

「振られたのって今日の昼ごろの話だったじゃない!

 なにその急宴会!?」

 

「……それぁ言うなら『急展開』じゃけぇ」

 

「紫砂も、このところの炎天下にイライラしてたらしくてな。ホラ、彼女って直情的だからね。

 思わず、こう、後ろ足で蹴り飛ばしたらしいんだよ」

 

 うわあ、とボクは思わず呟く。

 伝説的な蝦夷鹿の女王だ。その脚撃を受けて良く無事だったなぁ・・・

 

「で、雨が降って冷静になって。

 自分がした事をえらく恥じたらしくてね。

 彼の洞穴へ謝罪しにいって……告白を受け入れたらしい」

 

「へぇー……」

 

 誰にも見えないけれど、雛見沢のちょっとした珍事件にボクは感嘆の吐息を漏らす。

 

「恵みの雨だねぇ」

 

「こういう時ぁ、アレじゃねぇかねぇ」

 

「?」

 

 胡瓜をポキリと噛み折りながら呟いた軋深の言葉を受けて、梨花がボクに話しかけてきた。

 

「人間の世界では、こういうときにピッタリな諺があるのです」

 

「ああ……」

 

 それならボクも知っている。

 そして、自然にみんなの視線が外へと向けられる。

 

「雨降って地固まる、だな」

 

 雨の中の数多良が厚い雲を見上げて言った。

 その言葉に、ちょっぴり複雑な気分でボクは呟いた。

 

「誰にも見えない雛見沢の地がね」

 

 

 

 

(了)

  




他にもサルベージ出来たのがあるので、編集などが終わったものから投下しようと考えております。
よろしくお願いします。
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