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私は先生。
ここ、学園都市キヴォトスで毎日異常な程の書類に追われながら職務をこなしているただの人間だ。
毎日の仕事時間は過労死ラインを優に超えており、スケジュールを眺めてはため息をつきたくなるが、最早そんなため息をつく暇もない、それくらいには激務だ。
しかし、私の生徒の笑顔、そして『ありがとう』の言葉で、そんな仕事も私の愛すべき生徒の為にこなすことできる、大きなモチベーションになっている。
あの日、初めてオカ研と会った日から、ワイルドハントへの出張が目に見えて増えた。
何度か出張を繰り返す内に、先日特殊交易部の生徒たちとも出会い、彼らに舞い込んだ苛烈な依頼を共にこなすことができた。
今日もまた、ワイルドハントに赴くことになる。
「.....奇遇ですね」
ワイルドハントに着くや否や、ミヨとバッタリ出会した。
「やあ、ミヨ。こんにちは。」
「こんにちは、先生。今日もお仕事ですか?」
「まあ、そんなとこだね。」
ここ最近、ワイルドハントを訪れるたびに、今回のようにどこかでばったりミヨと出会すようになった。
なぜミヨは私の行く場所がわかっているのか、その答えは未だによくわからない。
「ごめん、もうすぐ会議の開始時間だからいかなきゃ。ミヨも、今日も頑張ろうね。」
どこかで一緒にゆっくりコーヒーをと洒落込みたかったところだが、生憎時間が迫っていた。
ミヨに手を振りながら、少し足早に本館へと向かう。
ミヨの私への視線は、何だか少し冷たく感じた。
「.....なんで連絡してくれないんですか....」
ボソボソと独り言を呟きながらひとり歩く。
近頃先生はよくワイルドハントに来る。
しかし先生は全く連絡をよこしてこない。
「いつまで私をぞんざいに扱えば気が済むんですか....」
私の気持ちとは対照的に、周りの生徒たちは友達と楽しそうに話しながら学校へ向かっていく。
怒りと悔やみでぐちゃぐちゃになった頭で、ぷつんと何かが切れる音が聞こえた。
「はやく...まずはプロットを....」
頭の中で構想を練りながら、足早に学校へ向かった。
.....深夜。
仕事を終えて帰宅した私は、妙な居心地の悪さを覚えた。
「物の配置が変わってる....?」
エアコンやテレビのリモコン、歯ブラシ、剃刀などの細々とした物の配置が変わっているような気がした。
誰かが侵入したような痕跡はない。
...疲れてるのか...?
違和感を覚えたが、きっと疲れているのだとそう言い聞かせた。
「なんだ...これ」
あの違和感から1週間が過ぎた頃、自宅のポストに大量の写真が詰め込まれていた。
どれも、私を写したもの。
出張中の私。帰路についている私。自宅で眠っている私。
見られている。
やはりあの日の違和感は正しかった。
最早自宅は安心できる場所などでは無くなってしまった。
あれから、私はシャーレの仮眠室で寝泊まりをするようになった。
幸いシャーレには調理室やシャワールームなど、生活する上で必要な施設は殆ど揃っていたし、何より自宅よりもセキュリティが圧倒的に強固だ。
どこで写真を撮られて、どこで見られているのかわからない今、私はあまり外には出たくなかった。
しかし、“相手”もそれに気づいたようで、今度はシャーレに写真が届くようになった。
それだけでなく、最近はポストの中に写真ではなくびっしりと画鋲が敷き詰められていた。
ある時には、私がユウカと作業通話していた時の会話を、一挙手一投足漏らすことなくメモされた紙が入っていることもあった。
一体誰が、なんの目的で...?
得体のしれない恐怖と、息が詰まるような焦燥感が、少しずつ私の心を蝕んでいくのがわかった。
ある日。
あまり外に出たくない私の想いとは裏腹に、ここ最近はほぼ毎日出張に出かけるハメになっている。
今日はワイルドハントへの出張だった。
仕事を終え、シャーレに戻ろうとするところで、ばったりミヨと出会った。
「あ、先生。こんばんは。今日もお仕事ですか?お疲れ様です。」
「ありがとう、ミヨ。もう仕事も終わったから、今から帰るとこだよ。」
「そうなんですね......あの、先生?...なんだか顔色が悪いような....
どこか具合でも悪いんですか?」
“あの事”で確かに精神は擦り減っていたが、あまり表に出さないようにしていただけに、少し驚いてしまった。
しかし、私は先生だ。あのようなことに生徒を巻き込むわけにもいかない。
誰かに相談してしまったが最後、その人までターゲットになってしまう可能性も捨てきれない。
「心配しないで、大丈夫だよ。いつものことなんだけど、あまりにも仕事が多くて...昨日あんまり寝れてないんだ。」
「そうですか......ダメですよ?ちゃんと寝ないと。無理は身を滅ぼします!」
「あはは...そうだよね。ごめんごめん。」
その後、他愛のない会話をして、私たちは別れた。
「.....“大丈夫”ですか....」
「なら、もうすぐ大丈夫じゃ無くさせてあげますよ.....」
震える声でそう呟やいた。
あれから数週間。
毎日毎日、私はこの嫌がらせに限界を迎えていた。
以前としてどこから撮られているのかわからない。
シャーレで書類を片付けている今も撮られているかもしれない。
あの頃毎日出張に行っていたことが嘘のように、最近は事務仕事ばかりになった。
最後に出張に行った日も思い出せない。
それと最近、全く眠ることができていない。
睡眠不足故に意識が常に朦朧として、最後に出張に行った日すら思い出せないのはきっとそのせいだろう。
そんな私の事情などつゆ知らず、仕事はどんどん増えていく。全く手につかない仕事を前に四苦八苦していると、あろうことかコーヒーを書類にこぼしてしまった。
もちろん、汚した書類はやり直しになる。
あまりにも状況がサイアクすぎて、最早笑えてきた。
出張先での失言。
何も状況が改善しないまま、前までの事務作業とは打って変わって、今はキヴォトス中を飛び回っている。
しかし、こんな状況で仕事が務まるはずもなく、生徒の前で失態を晒すばかりであった。
私のこの変化は他の生徒からしても目に見えてわかるようで、心配の言葉をかけられることが多くなった。
生徒から心配されるなんて、ダメな先生だ。
もちろんあのことを生徒に話そうとはしなかった。
しかし、出張してはミスをし、心配されるうちに、最早私を頼る生徒は少なくなってきた。
私の身を案じてのことだろうか。
それとも、私はもう“無能”という烙印を押されてしまったのだろうか。
いや、そんなはずはない。
私は私の生徒を信じている。
いや、最早願望に近いのかもしれない。
きっと彼女らからみても、私は死んだような顔で仕事をし、絶望的な成果を出して去っていくだけの大人に映っているのかもしれない。
そんな大人を、“先生”として信じてついてくる人間なんてそうそういないだろう。
最早誰にも必要とされていない?
そんな思考が頭の中で渦巻いては、そんなわけないと割り切って、今日も仕事へ向かうのだった。
「.......」
ふとSNSを覗いてみると、一つの投稿が目に留まった。
「先生....無能.......辞めちまえ....」
それは私への個人的な誹謗中傷だった。
どうやらそのアカウントだけで無く、他の沢山のアカウントからも中傷されているようだった。
陰湿な攻撃だが、普段の私ならもしかすると大丈夫だったかもしれない。
だがこのアカウントが言っていることは、私が心の中で自己否定していた部分を全てピンポイントで攻撃してきていたのだ。
....私は、生徒の為に仕事をしてきた。
過酷な仕事だったが、生徒の為を思うと頑張れた。
生徒の為。
生徒の為生徒の為生徒の為。
いつもいつも生徒のことを考えてきた。
それなのに。
いや、決して報われたいと思ってやってきたことではないが.....私が危惧していたことが、願望として信じていたことが裏切られ、現実を見せつけられた。
この投稿のように、複数の生徒から私は必要ないと思われていることは確実だろう。
きっと、目に見えないだけでそう思っている生徒は沢山いる。
生徒との信頼も失い、送り付けられてくる写真...プライベートも失い、何も変わらないのは仕事量だけ。
誰にも必要とされてないのに頑張る意味って....なんなんだ?
もう何もわからない....
睡眠不足の朦朧とした頭ではもう何もわからない。
ただ今の私が最悪な状況だと言うことだけはわかった。
「ならもう、いっそ.....」
そこまでつぶやいた時、呼び鈴がなった。
「誰だ....?」
「私です、桜井ミヨです。今日は当番の日ですので.......」
当番表を見て、やっと思い出した。
今日は当番の日だったか...
また迷惑をかけてしまうのだろうか
「ああ...そっか。どうぞ、入っていいよ。」
「お邪魔します....」
「えっと.....そうだ、ミヨはあっちで小説書いててもいいんだったね。小説家は書くのが仕事だから、書いといで。」
「せ、先生....?それは嬉しいんですが...顔色が本当に良くないですよ...?本当に大丈夫なんですか...?」
「うん...大丈夫。大丈夫だから、ミヨは小説の続きを....」
「もしかして....あの投稿、気にされてますか...?」
今の私を言い当てられて、思わず顔に出てしまった。
「他の方が先生のことをどう思っているのかはわかりませんが....少なくとも、これだけは自信を持って言えます。」
そう言うと、ミヨはゆっくりと私に近づいて、抱きついてきた。
「私は先生のこと.....大好きですよ。
いつもいつも、ありがとうございます。」
「ぇ.....」
予期せぬ言葉だった。
久しく聞くことのなかった“ありがとう”の言葉が胸にこだまするのがわかった。
「私は知ってます....いつも生徒のことを考えて、生徒のために頑張っていることも、生徒に必要とされていないのに、生徒のために頑張る意味なんてなんなのかわからないことも。」
「でも....少なくとも、私には、先生が必要なんです。先生のことが無能だなんて思いません。私は、先生のことが...大好き、ですから。」
「....ミヨ....」
ミヨの言葉を聞いているうちに、いつの間にか涙が溢れ出てきていた。
「ですから....先生、話してください。先生が最近変になっちゃったのには、ワケがあるんですよね?私、先生のこと、ちゃんとぜんぶ受け止めますから。」
甘えたい。
ミヨの甘い声に後押しされ、ダムが決壊したように、今まで起こってきたことを全てミヨに吐露した。
家に戻ることが、外が怖いということ。
誰かに今も見られてるかもしれないこと。
ポストへの嫌がらせ。
こわい、あんしんできるばしょがない、あまえたい。
ミヨは私の言葉を静かに聞いていた。
「.....そう、だったんですか...
なら、もっと前に、ワイルドハントでお会いした際にでも話してくれていたらよかったのに...」
ミヨの言う通りだ。
巻き込むわけにはいかないと、何も言わなかった結果がこれだ。
「でも、もう大丈夫ですよ。」
そう言ってミヨは、私の頭を撫でる。
撫でられる度に、涙がとめどなく溢れてきた。
「私がなんとかしますから。先生は安心していてください。」
しばらく私を撫で続けた後、ミヨはそう言ってシャーレを飛び出して行ってしまった。
....と思ったら、割とすぐに戻ってきた。
「これでもう、大丈夫なはずです。安心してください。」
「ほ、ほんと...?」
「はい。先生に悪さするやつはもう私が追い払いましたから。」
「え...で、でも...」
「まだ...こわいですか?」
「...うん....」
「なら...私が一緒にいてあげますから。もう大丈夫ですよ。」
「ミ、ミヨ...」
「怖かったですよね.....私になら......たくさん甘えてもらっても...いいんですよ」
彼女が言ったことは本当だった。
ミヨが言った通り、あれからポストに写真などが届くことは無くなった。
そして、ミヨは私と一緒に過ごすことになった。
ミヨはとても優秀で、身の回りの料理や洗濯、買い出しなどの家事全般を全て請け負うだけでなく、私のやらなければいけない仕事もたくさん手伝ってくれた。
手伝おうとすると、ミヨは『私が先生のことはなんでもしますから、先生は何もしなくても大丈夫ですよ』といって、手伝わせてくれない。
初めのうちは申し訳なかったが、いつのまにかミヨに完全に甘えるようになっていた。
そんな風にミヨと過ごしていたある日、ミヨは急用ができて少し私から離れることになった。
「すみません、どうしてもやらなければいけないことができてしまって.....」
「そ、そっか...まあ、仕方ないね...」
「不安、ですか?きっと今日中には戻ってきますから、大丈夫ですよ。」
まあ、そもそもミヨがいない生活のほうが普通だったのだ。少しいなくなる程度、どうってことはないはずだ。
「それでも....どうしても私に助けてほしくなった時は、私に電話してください。」
そう言って、彼女は急用へ向かっていった。
彼女がいなくなってから、どこか強い虚無感に襲われるようになった。
今日中に彼女は戻ってくる。
そう信じて、仕事をして時間を潰すなどしてひたすら彼女を待った。
しかし、今日中に彼女が帰ってくることはなく、気づいたら朝になっていた。
どうやら仕事をしているうちに寝落ちしてしまっていたらしい。
寝落ちできるほど精神が回復したことに少し安心しながら、いつものようにシャーレのポストを確認した瞬間、
「うそ...だろ...」
ポストにはまた、私の写真が大量に入っていた。
心臓の鼓動が速くなり、背筋に冷や汗が流れるのを感じる。
また、見られている。
あの日のことを思い出して、その日は全く仕事が手につかなかった。
ミヨに電話したい。
一緒にいて欲しい。
こわい。
でもきっと今日こそは、ミヨは帰ってくるはず。
そう信じて待ち続けた。
しかし、待てど暮らせどミヨは帰って来ず、夜になってしまった。
時計の針は深夜0時を指している。
『ピンポーン』
突然呼び鈴が鳴った。
「ミヨ...?」
ミヨが帰ってきたのか、とドアの方へ向かおうとする。
『ピンポーン』
『ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン』
『ガチャガチャガチャガチャッガチャガチャッガチャガチャッ!!!!!』
連打される呼び鈴と、無理やりドアを開けようと無作為にドアノブを捻る音が聞こえる。
呼び鈴の音、ドアノブの音、激しいノック音、
きっとこのドアの先に、私をストーカーしている犯人がいるのだろう。
「あ、あ、あ..........」
恐怖で腰が抜けて、しばらくその場から動けなかった。
「ミ、ミヨ....ミヨ.....!」
藁にも縋る思いで、ミヨが言っていたように電話を掛ける。
『どうされましたか、先生?こんな遅い時間に....』
「た、たすけて、ミヨ、ドアの前に、犯人が、たすけて、」
『わ、わかりました、落ち着いてください、今すぐ向かいます!』
そう言うと、ミヨは電話を切った。
電話の後、1、2分くらいすると、急に音が止んだ。
音が止んですぐ、また呼び鈴が鳴った。
「先生、私です、大丈夫ですか...?」
ミヨの声だった。
ミヨだとわかった瞬間、すぐにドアを開けた。
「ミ、ミヨ...!!」
「だ、大丈夫ですか...?何があったんですか...?」
ミヨに、ミヨがいなくなった間のことを全て話した。
「そうだったんですか...怖かったですよね...もう大丈夫ですよ。」
「ミヨ....もうどこにもいかないで....ミヨが居れば.....安心、だから....」
「...はい。もうどこにも行きませんから....安心してください。」
「だから今日も...ミヨと一緒に寝たい。」
ミヨがいれば、あんな怖い思いをする必要もない。
そばにミヨがいる限りは──
次の日。
ミヨがそばにいる。
ふと、モモトークが鳴った。
別の生徒からのメッセージだろう。
返信をしようとスマホを手に取ろうとした瞬間、ミヨは優しく制止してきた。
「先生...返信する必要なんて、ありますか?」
「え、でも...」
「先生には私さえ居れば十分なはずです。先生は弱いんですから、私が守ってあげる。こわいことからも、なんでも。」
「先生だって、わかってるんじゃないですか?私と一緒にいたいって、私に甘えたいっていう自分の気持ちに。」
...納得してしまった。
私には、ミヨだけでいい。
ミヨは私のことを理解してくれて、守ってくれる。
ここまでで何度もミヨに助けられている。
私は、弱いのだ。
ミヨがいなくなった途端あんな目に遭ったのだ。
ミヨに守って欲しい。一緒にいて欲しい。
もう一生、ミヨには離れて欲しくない。
...私も、ミヨが大好きだ。
「....ですから、一緒に逃げませんか?
仕事も、こわいことも邪魔も何もない、私たちだけのお家に。」
「....逃げたい。一生そばにいて欲しい。私も、ミヨが好き。」
「ふふっ....そうですか....じゃあ、行きましょう?」
そう言って、ミヨは手を差し出してくる。
私は、その手を迷わずとった。
やっと、先生と一緒に暮らせるようになりました。
先生の写真を撮って、ポストに写真を入れたのも、アカウントの中傷も、呼び鈴やドアノブをガチャガチャしたのも、全部私がやったことです。
先生の心を弱らせて、そこにつけ込む作戦がまさかここまで上手くいくとは思いませんでした。
でも、これでやっと先生は私のものです。
先生が弱っていくところをみるのは少し心が痛みましたが....
それでも、今は幸せなんだから、いいですよね?
大好きですよ、先生....♡