レゼ編は色々と難しくて、期間が空きそうですけれど、今後も頑張っていくので、応援よろしくお願いします。
「おい、デンジ。テーブルの上を片付けろ。ポチタも、もうすぐ飯ができるからな」
「了~解~!」
「ワウゥ~」
今日の昼ご飯のカレーを作り終え、アキが皿にご飯をよそっている間に、デンジがテーブルの上の物を片付けていた。
ヤクザの襲撃を乗り越えて手に入れた穏やかな日常に浸っていると、玄関の方からガチャガチャと騒がしい音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「まさか、ヤクザの生き残りが襲撃してきやがったか!?」
デンジが足元にいるポチタを抱え上げたと同時に、玄関の扉が乱暴に開けられる。
「パパパパ、パワー!!!」
入ってきたのは、血抜きのためにマキマに預けていたパワーだった。
ヤクザの襲撃かと身構えていたデンジたちは、相手がパワーだとわかるや否や、拍子抜けしたように肩の力を抜いた。
「にゃ~」
「お~!ニャーコよ!!ワシがおらぬ間は寂しかったじゃろ!」
パワーは足元に寄ってきたニャーコを抱き上げ、愛おしそうにふわふわの毛に覆われた胸元へと抱きしめた。そんな再会を喜ぶ二人の様子を横目に、アキは昼飯を人数が増えても大丈夫なカレーにしていてよかったと母親のような気持ちで思いながら、デンジに話しかけた。
それに反応して振り向いたデンジに、アキはカレーが入った皿を渡す。
そうして、テーブルの上に人数分のカレーが並べられると、ニャーコと遊んでいたパワーを座らせて、三人はカレーを食べ始める。
みんながカレーを食べている最中、デンジはヤクザに襲撃された時に、パワーがいなかったことを愚痴る。するとパワーも、自分をマキマにあっさり引き渡したデンジに原因があると反論し、口論に発展。しかしアキが食後のデザート抜きと脅すと、その喧嘩はあっけなく終わった。
ちょうどその時、まるで狙ったかのように家の電話が鳴り、アキが出た。
「はい、分かりました」
「誰から?」
「マキマさんからだ。明日からパワーにはデンジのバディとして任務に復帰だとよ」
「OK!おい、迷惑掛けんじゃねえぞ、パワー!」
「ふん、それはワシの台詞じゃ!」
そうして、久しぶりにパワーとバディを組んでのパトロール任務を明日行うことが決まったところで、デンジが余裕ぶった態度でパワーに話しかけた。
「へへへ、パワーがいない間に地獄の特訓で俺とポチタはめちゃくちゃ強くなったからよ、次の任務で悪魔と会っても、お前の出番はねえかもな」
「はぁ?嘘をつくでない!ワシがおらねば、お主らなど何度悪魔に殺されておったことか。ワシがいなければ、お主らなどあっという間に死んでおるわい!」
「あ?じゃあ、明日俺とポチタのコンビと勝負してみろよ。それで勝った方が最強な!」
「望むところじゃ!その勝負受けて立ってやろう!!」
デンジとパワーが互いに睨み合っている中、ご飯を食べ終えたポチタとニャーコは寄り添って、のんびりと平和そうにあくびをしていた。
翌日、久しぶりにパワーと組んでパトロールしていたのだが、急に雨が降り出した瞬間、パワーが「雨は嫌いじゃ!」と叫んで走り去ってしまった。
急いで追いかけるべきだったが、雨で視界は悪く、傘もないせいで服はびしょ濡れになり、動き回るのも面倒だったため、デンジは雨が止んでから探すことにして後回しにした。
そんなデンジの目の前に都合よく電話ボックスが目に入り、ポチタを抱えてその中に入って雨宿りする。
「おっ、見ろよポチタ。こんなところに缶コーヒーが捨てられてるぜ」
「ワウッ」
電話の上に置かれている灰皿変わりのまだ中身が残っているコーヒーを手に取って、飲み口のタバコを取ろうとした時だった。
「わー!ひゃー!」
電話ボックスにずぶ濡れになった女が飛び込んできた。
髪も濡れて目元が隠れている女に、コーヒーを飲もうとした手を止めてポチタを足で隠す。
「わあ、どうもどうも、いやいやスゴイ雨ですね」
「あ~……ああ」
「天気予報は確か……。む……え!?あはははは!」
女はデンジを見て、ふいに笑い出した。いや、正確にはデンジの足元に隠れているポチタを見たのだろうか。その様子にデンジは顔をしかめ、警戒心をあらわにした。
「やっごめっ、すいませ……あははは!」
「んだよテメー……。俺じゃねえな、ポチタを見て笑い出すとか、何者だよ」
「あ~、ごめんなさい。その子……犬の悪魔かな?前に街に出た2体の悪魔を倒した正義のヒーローでしょ?」
2体と聞いて、デンジの脳裏にはコウモリとヒルの悪魔が浮かんだ。そしてヒーローという言葉から、今の笑いが嬉しさによるものだと理解し、警戒を少し緩めた。
「あの、テレビで見て、近くの街に出たからいつか会えるかな~って思っていて、それがこんな急に会えるものだから、つい……」
「あ~、そういうこと……」
「その……もし迷惑じゃなければ、近くで見てもいいですか?」
女が照れたように首元を掻きながらお願いすると、デンジは少し考えてから頷いた。
それを見た女はパッと顔を明るくして、デンジの足元にいるポチタに目線を合わせようとしゃがみ込む。
「……ん~~。よし、ポチタ!あれを見せてやれ」
「ワン!」
「えっ!?」
ポチタがデンジの足元から飛び出した瞬間、デンジは何か閃いたように指を立てて指示を出した。突然の出来事に女は焦って首元のチョーカーに手を伸ばしたが、それよりも早くポチタがデンジの指示に反応し、四足歩行から二足歩行へと切り替えてキレッキレのダンスを披露した。
「ええっ!?ダンス──?」
女は、デンジがなぜ急にポチタにダンスをさせたのか分からず、ただ呆然と踊るポチタを見つめていた。
だが、そのダンスは素人目にも驚くほど洗練されていた。まるでプロのようなキレのある動きと、犬とは思えないほど美しいポージング。そして何より、ポチタの愛らしさを際立たせる可愛い顔と表情。いつの間にか女は、ポチタから視線を外せなくなっていた。そうして見惚れているうちに、ポチタはダンスを終える。
「ご鑑賞ありがとうございます。んでもって──うえっ」
「え、大丈夫ですか……?」
デンジが急に疼き始めたのを見て、女が慌ててハンカチを取り出そうとしたところ、デンジは大きく口を開け、その中から一輪の花を取り出した。
それは、雨が降る少し前に募金で貰った花だった。
「タラーン!」
「わっ、手品!スゴイ!」
「へへ、種も仕掛けもないんだな、コレが」
「ありがとう……」
自慢げに花を差し出すと、女はそれを受け取り、濡れて垂れた髪の隙間から、頬を赤らめた笑顔をデンジに向けた。
それを受けたデンジは、言葉を失ってその笑顔に見惚れてしまう。
「────」
「あ~!雨止んだよ!」
電話ボックスを出ると、さっきまでの土砂降りが嘘のように空が晴れ、雲の切れ間から光の柱が地面へと降り注いでいた。デンジも後に続いて外へ出て、女と並んで空を見上げる。
その時、ふと何かを思い出したように女が視線を下げると、デンジの足元にはポチタが立っており、女はポチタと目を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「キミも、素敵なダンスを見せてくれてありがとう」
「ワン!」
女が笑いかけると、ポチタもしっぽを振って返事をする。
「私、この先の二道ってカフェでバイトしてるの。来てくれたら、このお礼してあげる。絶対来てね」
指を差して釘を刺すと、女はデンジとポチタに手を振り、足早で去っていった。
「いくぞ」
「ワウ」
デンジは女が背を向けた瞬間、素早くポチタを抱え上げ、アニキである甚爾に教わりながらも最後まで身につけられなかった瞬歩を難なく成功させ、その場から姿を消して二道というカフェへ先回りした。
「って、早~!?」
遅れてエプロン姿で出てきた女に驚かれつつも、デンジはすました顔で頬杖をついていた。
その横では、ポチタが席に横になってリラックスしている。
「ええ~?私よりも早く来たでしょ!?」
「まあ、そういえばそうかな。お礼貰いにきただけだぜ」
「ワフゥ~」
出されたお冷を飲みながら、涼しげな顔でデンジは答えると、隣で寝そべるポチタは「やれやれ」と言わんばかりの鳴き声を上げる。
「ふ~~~ん」
女はデンジの態度に悪戯心を刺激されたのか、遠慮なくポチタとは反対側のデンジの隣にぴったり座り、店長にコーヒーを頼んだ。
それに対して文句を垂れる店長だったが、女の方がディベートに強く、諦めてコーヒーを用意した。
「お礼はコーヒーでした!ダンスを見せてくれたキミには、このウィンナーを進呈しま~す!」
「……飲む」
「ワウ!」
デンジとポチタが差し出されたお礼の品を口にする。
「うげぇ~……」
「ワフ~!」
二人の反応は対照的で、デンジは舌を出してしかめっ面をしながらコーヒーを飲み干し、ポチタはウインナーを頬張って尻尾をパタパタ振りながら嬉しそうにしている。
あまりの二人の反応の差に、女は堪えきれず吹き出してしまった。
「あははは!なにその顔~!あははは!!」
「何笑ってんだよ!」
「ワウゥ~」
女はまだ笑いが止まらず、デンジのしかめっ面が面白くて仕方ない。まるでそう言うように、彼の肩をバシバシ叩きながら触れてくる。
そんな彼女の様子に、デンジは成すがままの状態で、一つの真実にたどり着いた。
(もしかして、この娘、俺のコト好きなんじゃねえ……?)
「私の名前はレゼ。キミとワンちゃんの名前は?」
「デンジ。んでもって、こっちがポチタ」
「デンジにポチタ。うん、デンジ君にポチタ君ね。ちゃ~んと覚えたからね、デンジ君」
デンジは女、レゼが名前を呼んだ途端、レゼが自分に気があると確信する。
そうして、改めてレゼの顔を見る。カワイイ。胸も多分だけどパワーと違って本物だ。性格だって、今まで会ってきた女の中で一番いいと思う。
「え?運命……」
「ん?なにが運命なのかな?」
「あ、いや……別になんでも……」
「え~、いいじゃん!教えてよ~」
レゼはデンジの頬を指でつつき、答えを催促してくる。
その仕草にドキッとしたデンジは、思わず本音を口にしそうになったが、なんとか堪えた。
「ねえ、さっきのポチタ君のダンスって、デンジ君が教えたの?」
「いや、ゲーセンで会った、家出してきたっていう火傷だらけの白髪のやつが教えてた」
「なにそれ!?すっごく気になるんだけれども!」
レゼはその話に興味を示したのか、デンジに詳しく聞こうと身を乗り出した。
その拍子にレゼの胸がデンジの腕に触れ、デンジの脳裏に電撃のような衝撃が走った。
「────っ!!?」
(や……柔らけえ!!!)
その感触に、デンジは目尻が下がり、口元が緩まりそうになるのを必死に耐えていた。
だが、そんな彼の葛藤に気づいてないのか、あるいは気づいた上でなのか、レゼはさらに体を寄せてくる。その拍子にまた胸が触れ、デンジはついに我慢の限界に達しそうになった。
「ここか!デンジの奴は!!!」
その時、勢いよく店のドアが開かれ、デンジの名前を叫びながらパワーが店の中に入ってきた。
そういえば、雨が降ってきてどっか行ったのを完全に忘れていた。
「ん?」
パワーはデンジを見つけると、ズンズンと近づいて来る。そして隣に座るレゼを見つけると、遠慮なしにジロジロとレゼの顔を覗き込む。
「なんじゃ、ウヌは?」
「キミこそ誰かな?デンジの知り合いみたいだけれど」
「ワシか?ふっ、知らぬのなら教えてやろう。ワシの名はパワー!デンジのバディじゃ!!!」
パワーは得意げに腕を組み、名乗りを上げた。そしてバディという言葉に反応したのか、レゼはさっきまでの楽しげな笑顔を消し、無表情で隣に座るデンジの顔をじっと覗き込んだ。
「ふ~ん、デンジ君って彼女いたの?ショックだな~」
「なっ、ちげぇよ!コイツは俺の仕事仲間!彼女とかじゃねえから!!」
デンジは必死に否定するが、レゼは両頬に手を当て、わざとらしく顔をそらす。その仕草に可愛らしさと小悪魔的な魅力を感じ、デンジの心臓は今にも破裂しそうだった。
だが、そんな二人のやり取りなど気にも留めず、パワーはデンジへと詰め寄った。
「おうおう、早く悪魔を探しに行くぞ!!ワシは血が欲しいぞ!!」
「あ~もう!今いいところなだから邪魔すんなよ!!」
「なんじゃキサマ?もしやこの女に発情でもしておるのか?」
ギャハハハ!とレゼと違って下品な笑い方をするパワーに、デンジは図星を突かれて一瞬言葉を失った。
だが、そんなデンジの心情など知った事ではないパワーは、遠慮なくデンジへと挑発するような目をむける。
「ねえ、パワーって名前だっけ。パワーちゃんはお腹減ってない?よかったらここで食べていきなよ」
「む!そういえば、少し腹が空いてきたか……。よし、飯にしよう!」
レゼの提案を受けて、パワーはレゼの隣に座ってメニューを広げる。
「デンジ君も、お腹減ってない?」
「減ってます!」
「OK!店長!お客さん二人確保したし、今日の遅刻チャラにして~」
レゼは調子よく店長に声をかけ、メニューを渡しつつパワーにオススメのメニューを教えながら、デンジにはコーヒーに合う料理を教えていた。
そんな、まるで嵐の前の静けさのような穏やかな時間が流れていった。
今回は甚爾の出番がない代わりに、次回は甚爾君メインの回を書きます。
それと、いせかるとベル君のエロ本の方の小説も更新したので、よければ読んでください。