ちょっとばかし久しぶりすぎて文章が安定してないです。さらにいえば、かなり短めです。申し訳ございません。
ミナミナ市沿岸部。
混乱と安堵が入り混じる中、現地メディアの中継車は慌ただしく回線の復旧を待っていた。
「電波、復旧しました!ですが、遅延が。」
「いいから録れてる映像を確保しろ!ローカル保存でもいい!」
カメラマンが肩で息をしながら、海上へとレンズを向ける。
「U.M.Fの新型……?」
「いや、ジャパンの重巡洋艦三隈だ。」
次の瞬間だった。
艦の甲板。
そこに映る人影。
「……今、映ったか?」
「ズームだ、ズーム!もっと寄せろ!」
カメラが最大倍率まで引き寄せられる。
今まで直接のコミュニケーションを取らなかったU.M.F。
無人兵器とされていた存在。
そこに──人がいるかもしれない。
興奮しないはずがなかった。
ズームの先。
カメラが映していたのは、十代半ばほどに見える少女だった。
長い髪を風に揺らし、どこか場違いなほど軽い表情で、ヌエのいなくなった沖合を見つめている。
「え……子供?」
「違う、乗員だ。U.M.Fの……」
「いや待て、あの艦は無人兵器じゃなかったのか?」
誰も答えを持たない。
少女は海を見下ろし、何かを確認するように目を細める。
そして、こちらを見た。
レンズ越しに、目が合った気がした。
「……っ!」
カメラを持つ手が震える。
「人が乗っている!」
無人の守護神だと思われていた存在。
国家を超えた兵器体系だと信じられていたもの。
それが、誰かの意思で動いているかもしれない。
「今の映像は生中継されているのか?」
「……はい。」
それだけではない。
甲板に立つ少女の姿は、複数の市民のスマートフォンにも捉えられている。
『U.M.Fに……女の子がいた』
誰かの投稿が、電波の復旧と同時に世界へと放たれる。
それは小さな波紋だった。
だがやがて、世界を揺らす疑問へと変わる。
その始まりであった。
◇
「まずいですね……、これ。」
思わず、このえはそう口にした。
それは、このえ個人の意見と言うよりも消息不明となったヌエへの対策のため、横須賀軍港を出港したセタスに乗る人々の、代弁だった。
イノワ共和国。
その現地でメディアに映ったU.M.Fに乗っていた
誰が乗っていたのか。
それ自体は、どうでもよかった。
重要なのは──誰かが乗っていたという事実。
例え言語が通じなくとも。
例え文化が違えども。
人の形をしている。
そうであるのなら、コミュニケーションがとれると判断できるからだ。
問題なのは、それが世界中に伝達されたこと。
一度出回ってしまった情報は簡単に消すことはできない。
すでにSNSではU.M.Fという英雄に人が乗っていることを騒いでいる人たちで溢れている。
カメラ遠かった故、カメラに映った
憶測は、事実よりも速いというべきか。
すでにインターネットでは様々な考察がされ、話題になっている。
「でもまあ、これでよかったじゃないか。」
そう口にしたのはTaPsの一人である御影石だ。
「うーん。でも、────」
「とりあえずはヌエだろう。なら、一旦は味方してくれているU.M.Fのことは後回しだ。」
「そうですね。」
小さく頷く。
その場の誰もが賛同する。
なにせ、U.M.Fは未だ人類に害を与えていない。
それどころか。
結果的に、怪獣駆除という人類の味方をしてくれているのは事実なのだから。
このえだって、そのこと自体に異存はなかった。
──アサギリちゃんは、ヒルコとの戦いのとき人類を助けてくれた。
じゃあ。
今回も助けてくれるのだろうか。
一瞬、そんな考えが頭を過る。
「いいや、ダメ。私たちだけなんとかしないと!」
別に助けを求めていないわけではない。
感謝したくないわけでもない。
ただ、U.M.Fに依存するのはよくないと世界中で言われている以上、今回の件は早急に終わらせる必要があるのだ。
無論、人類の手で。
「このえ、気合入れなおしたの?」
「ははは……」
このえは誤魔化すように笑う。
けれど、その目に迷いなどはみえていなかった。
◆
「じゃあ、アシハラ。お願いね。」
そう言って、ヤマトは量子テレポーテーションで去っていく。
相変わらず、どこに演算能力を割いているんだか。
いや、この場合はわたしが別のことに演算能力を使いすぎているのが原因なのだろうか。
それよりも、──
「めんどうだなぁ。」
そう軽口を言って、背を伸ばす。
ヤマトがこう動くことは予想できた範疇だ。
──そもそも、この世界とわたしの記憶にある世界は違う。
その中で最も、顕著なのは「アドミラルティ・コードが失われた勅命ではない」ということだろうか。
なにせ、この世界のアドミラルティ・コードは発令されたばかり。
十年もたっていない。
いわば、出来立てホヤホヤなのだ。
「姉からの頼みは断れない、よね。」
「それは、私の頼みも断れないということよね。」
「……まあ、できることならね。」
しまったと手を額にあてる。
というか、この理論ならそうなるか。
シナノを含めても、わたしは末っ子だから。
ムサシは目を閉じたまま。
けれど、わたしを見ている。
「────やっぱり、今はいいわ。また、お願いしてもいいかしら?」
「……わかった。でも無理なことは断るからね。」
「ええ。わかってるわ。」
ムサシは自分の中で納得したとでも言うのだろうか。
それなら、口にしてほしいものだけど……。
そう言い淀んで、口を閉じる。
「じゃあ、またね。アシハラ。」
「うん。またね。ムサシ。」
そう言って、わたしは自身の艦に戻る。
その時には、すでに──
「……へえ。」
トラフィック量が異常……ネットが騒がしいともいうべきか。
各国の回線、軍事衛星、民間SNS。
そのほとんどが同じ話題で持ち切りだった。
「やれやれ。ミクマ。世界デビューおめでとう、だね。」
わたしのとなりでは、ホロウ・アースを監視するモニターとヌエを監視するモニターだけでなく、大量のモニターがそれぞれ違う映像を映している。
面倒事が増えた。
正直に言えば、これである。
だけど、──
「これはこれで。面白くなってきた。」
◆
「マグマ怪獣と、──────す。どうですか?──感じますか。」
かつかつとヒールの音が響く。
誰も、彼女がここにいることに違和感を感じない。
だって、研究員の一人として登録されているから。
場所はオアフ島の研究所。
そこでは、怪獣の卵。または残骸と呼ばれるモノが
では、彼女は何をしに来たのか。
それは至極単純であった。
今、この場所には来客が招かれている。
大和家────それは、古来より怪獣の声を聴いていた家系。
その家系の兄妹が招かれていた。
彼女の目的は来客の大和家の兄妹二人とも……ではなく、妹のほう、大和令奈と会うこと。
何故って?
すべては──大和令奈をパートナーとするため。
彼女の名はグレーテル・ヘキセ・アンドヴァリ。
この
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設定資料集
ヴァーディクト
惑星の進化を観察し、評定するモノ。
本作では、アドミラルティ・コードを出すのが遅かった。
どうやら、大和令奈に興味があるようで?
◇
大和家
作中に言及した通りで怪獣の感知能力を持つ家系。
原理は不明だが、人によって能力は異なるよう。