十三話
2週間後……
体育祭当日!!
天候は晴天で絶好の体育祭日和となった本日。
A組の面々は指定された会場の控え室で入場の瞬間を今か今かと待っていた。控え室は準備を重ねる者、緊張する者、闘志を燃やし、特定の生徒に宣戦布告する者など様々だった。
そんな中でもコガネは比較的落ち着きながら体育祭の開始を待っていた。
目を瞑って座りながら静かに開始を待っている。
「みんな準備はできてるか!?もうじき入場だ!!」
「コスチューム着たかったなー」
「公平を期すため着用不可なんだよ」
体育祭に参加するのはヒーロー科だけではない。
コスチュームを持っていないヒーロー科以外の普通科と経営科の生徒も参加するため、コスチュームで差が出るといけないということで今回はコスチュームを着用できないことになっている。
とはいえ個性の差というものはどうしても存在するわけだが。
「おい、バッタ女」
突然座っているコガネに一人の人物が話しかける。
トゲトゲの爆発したような頭髪に粗暴な言動、入試成績はコガネに次いで2位である人物、爆豪勝己である。
「……何」
コガネは初めて話しかけてきたとは思えない言動に少しの不快感を覚えながら目を開けていつものように受け応えた。
「お前、USJで主犯倒したらしいな」
「……それが?」
「……気に食わねぇ」
「は?」
「暴走して周り巻き込むような奴が、ヒーロー科でデカいツラしてんのがよ」
「ちょっと爆豪くん!」
「おいおい、どうしたんだよ爆豪……!直前にやめろって!虫明だってやりたくて暴走したわけじゃねぇだろ!?」
見ていた切島と麗日が止めにかかる。
爆豪は切島の腕を払いのけ、構わず続ける
「うるせぇ。本当に強えのか、俺が確かめてやる」
爆豪はジャージのポケットに手を突っ込んだまま、話す。
爆豪はコガネに宣戦布告をした、少なくともコガネはそう受け取った。
「いい、切島。事実だから」
座っていたコガネは切島を納めながら立ち上がり、爆豪の前に立つ。
「……あなたがどういう意味で言ってるのかは知らないけど――」
「――そんな挑発されて黙っている程、私は優しい性格じゃない」
双方、正面で向き合い、睨み合う。
二人の刺すような目つきが、一触即発の雰囲気が、周囲の緊張感を高めていく。
いつ戦闘が始まってもおかしくない、そんな空気が部屋の中に充満する。
「何をしているんだ君たち!もうすぐ入場の時間だ、ケンカはやめたまえ!」
委員長である飯田が二人を止めに入る。
「ケッ……」
飯田が止めに入ると爆豪は後ろを振り返り、控室を後にした。
そうこうしている間に入場の時間になり、全員が控室を出て、スタジアムに続く通路を歩く。
そんな中、麗日と蛙吹、切島がコガネに話しかける。
「……虫明、爆豪の言ってたことだけどよ……あんまり気にしすぎんなよ」
「そうよ、コガネちゃん。あなたがヒーロー科にいちゃいけないなんて思う人、このクラスにはいないわ」
「うんうん!」
励まし。素直に受け取るべき言葉。
しかし、コガネは生粋の負けず嫌いである。
「……大丈夫。結果で、黙らせる」
「――!」
クラスの列の先頭で聞いていた爆豪は小さく笑う。
自分が行った宣戦布告をコガネが受け取った。
スタジアムの歓声が響く中、二人は静かに闘志を燃やす。
「プルスウルトラね、コガネちゃん」
『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』
通路を歩くにつれて、徐々に実況と歓声が大きくなっていく。全員に緊張がはしる。
『ヒーロー科!1年A組だろぉぉ!!?』
プレゼントマイク先生の声に合わせて、入場する。すると周りの観客席は全て満席で辺り一面人だらけだった。
この人の多さには誰でも圧倒されてしまう。
しかし例の二人はその歓声とプレッシャーにただただ高揚していく。
A組が入場し終わると他のクラスも徐々に入場していき、全クラスがミッドナイトの前に整列するとかなり際どいコスチュームを着た18禁ヒーロー、ミッドナイトは声を挙げた。
「選手宣誓!」
「選手代表!1年A組、虫明コガネ!!」
「あ、虫明さんなんだ」
「入試成績一位だったからな〜」
ミッドナイトに呼ばれたコガネはスタンドマイクの前に立ち、会場の人間の注目を一気に集めた。
『宣誓、私たちは――』
コガネの言葉が一瞬止まる。
「――?」
周囲からも疑問が浮かぶ。
宣誓で言う内容は既に学校側から決められている。
内容はごく普通の、ありきたりな宣誓の内容。コガネも決められた内容に従い、宣誓を話す――
――はずだった。
爆豪の言葉が思い出される。
コガネは既に
『――いや、私が勝つ。誰にも負けない』
一瞬の沈黙の後――
「お前はそう言うこと絶対やらねぇって思ってた!!」
「調子乗んなよA組コラァ!!」
「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」
「どんだけ自信過剰だよ!!」
クラス内外から批判の声が上がる。
観客席からは「ああいうこと言っちゃう子なんだ」「意外〜」などの比較的マイルドな反応が多い。
クラス内からは主に飯田からの批判があるが、他には麗日から「恐ろしい子……!」のような反応があったりした。
スタンドから降り、列に戻ろうと歩いていると、並んでいる爆豪と目が合う。
「もっと大人しいと思ってたぜ、バッタ女」
「大人しいと申告した覚えはないけど?」
二人の間で火花が散るように闘争心がぶつかり合う。
「……負ける気、ないから」
「ケッ!」
「さーて、それじゃ早速第一種目を始めましょう!」
私が壇上から降りると同時に、ミッドナイトが第一種目の説明を開始した。
彼女の動きに合わせてモニターにルーレットが表示される。デデン! と効果音が鳴り、第一種目が決定した。
〝障害物競走〟
いかにも体育祭らしい競技内容だ。ただ、障害物は決して普通じゃあない筈。
ルールは220名が一斉にスタートし、スタジアムの外周約4kmを走って会場に戻ってくること。そして、コースを守れば何をしても構わない、と含みのある笑顔でミッドナイトは説明を終えた。
「いわゆる予選よ!毎年多くのものが
(つまり、破壊・妨害なんでもありのレースか)
『さあさあ、位置に着きまくりなさい!』
だいぶ性急である。なんでも〝早速〟なのが雄英のポリシーらしい。
ミッドナイトの指示に合わせて、全ての生徒がスタート位置につく。
全クラス合わせて200人強の人数が狭いゲートに一塊になるのでだいぶギュウギュウになっている。スタート時はかなりの混乱が予想される。
これらの情報からコガネは既にスタート後の行動を考えていた。
(この人数、普通に走ってもまともに動けなくなる可能性が高いか。よし――)
もうすぐスタートということで会場のボルテージは最高潮に達し、観覧席からは歓声が絶えない。同時に生徒たちからは緊張感が高まっていく。
(開始と同時に――)
『それでは障害物競走、スタート!!』
ミッドナイトの声と共に戦いの狼煙が遂に上がった。
(飛ぶ――!)
一斉に生徒全員が走り出した。
最初の関門はスタートすぐにある幅が狭いトンネルだ。参加者の人数の割にかなり狭いトンネルは確実に参加者の行手を阻む。観客席からは耳が痛くなる程の歓声が響き、既に盛り上がりを見せていた。
そしてコガネは開始と同時に生徒の集団から跳躍。スタートと同時に動くのが困難になることが予想される集団から抜け出した。
そのまま跳躍の頂点で壁を形成、そこから跳ね返るように再び跳躍をした。
持ち前の高い瞬発力で跳躍を繰り返すことで走るより速く移動することを可能にしていた。
『ついに始まったぜ、雄英体育祭1年部門!実況はボイスヒーロー、プレゼント・マイク!解説は抹消ヒーロー、イレイザーヘッドの2人でお伝えしていくぜ!解説のミイラマン、アーユーレディ!?』
『無理矢理呼びやがって…』
陽気な声のプレゼント・マイクに対して、相澤の機嫌は悪い。相澤はメディアへの露出を好まず、更にヴィラン襲撃時の怪我も治りきっていない。そんな状況で解説役を押し付けられたのだから、堪ったモノでは無いだろう。
しかし、なんだかんだで結局は引き受けるのだから、存外に面倒見の良い男である。
『さぁ早速動きがあったぞ!1ーA、虫明コガネ!集団から抜け出した!』
コガネは集団から抜け出し、一足早くコースを走る。
後方はコガネの予想通り、箱詰め状態。減速を余儀なくされていた。
コガネと後方集団では否が応でも差がつく。
つまりここを如何に速く抜け出すかが、
「――最初のふるい」
コガネの背中に後方から冷気が伝う。
「轟か」
『1ーA轟焦凍!後続の足元を丸ごと凍らせたァ!』
「いかせねぇ」
轟は冷静にコガネの背中を見据え、後を追う。
あわよくば後続を動けなくさせて、一人勝ちなんて想像していたがそう上手くはいかない。
「甘いわ、轟さん!」
「いかせねぇよ、バッタ女!半分野郎ォ!」
「っぶな……!」
「クラス連中は当然として、思ったより避けられたな……」
(下手な妨害はこっちが遅くなるだけか。なら全速で――)
『さぁ轟、氷を連ねて高速移動だ!このまま虫明に追いつくかァ――!』
轟は自身の個性である『半冷半燃』によって背後に氷を連ねることで、前方への素早い移動を可能にしていた。その速度はコガネが走るスピードよりも速い。
(チッ……速いな。把握テストの時もそうだったけど、個性の使い方が上手いな。私も妨害――いや)
コガネは前方を見て妨害の選択肢を消した。
何故ならコガネの前には第一の障害物があったからだ。
『さぁいきなり障害物だ!まずは手始め――第一関門、ロボインフェルノ!!』
(これは入試の……!)
轟とコガネの目の前に広がるのは、入学試験の実技試験で仮想ヴィランとして戦ったロボットたち。小さくて脆い2Pのヴィランもいるが、特に目立つのは通路を埋め尽くすほど大量に設置された巨大な0Pのヴィラン。入試の際は回避すべき障害としてあったが、今回も障害物として利用されている。
(下は……入り組んでて逆に遅くなるか。下が駄目なら上だな)
(せっかくならもっとデケェの用意してもらいたかったな)
「クソ親父が見てるんだから」
怒りのような憎しみのような目つきで、轟は右半身に冷気を纏い、右腕を下から上に振り上げ、0Pに向けて一気に冷気を放出した。
『ヒュー!轟、ロボを一瞬で凍結させたァ!』
「よし!あいつが止めたぞ!足の間から通れる!」
轟は0Pを凍結させて動きを止め、その下から他の生徒が通ろうと画策する。がしかし――
「やめとけ。不安定な体勢の時に止めたから――」
凍結された0Pの体勢が徐々に崩れ、倒れる。
「――倒れるぞ」
『轟、攻略と妨害を一度に!こいつはシヴィー!!すげぇな!一抜けだ!アレはもうなんか、ズリィな!』
『よく見ろ、一抜けじゃない』
解説の相澤が他の0Pの頭上に注目しながら話す。
同じくプレゼントマイクも注目し、ある存在に気付く。
『あー!1ーA 虫明コガネ!0Pの頭上を飛び移って進んでたァ!身軽だなぁ、オイ!』
コガネは轟が0Pの動きを止めた最中、脚に飛蝗で外装を構築して、強化、そのまま跳躍して0Pの頭上の上へと移動していた。
そのまま複数並んでいる0Pの頭上を飛び移ることで、0Pに阻まれることのない移動を可能にしていた。
『更にこれはまさか!追い抜いた!虫明、轟の頭上を軽々飛び越えて暫定一位だァ!分かんなくなってきたぞ!!』
『入試の時は避けるものとして出したからな。対処すべきものとして見れば鈍臭い鉄の塊、突ける隙も多いだろうな』
「……そんな簡単にはいかねぇか」
「……よし、越した」
(けど、ここからが勝負だな)
コガネが個性把握テストの50メートル走と、障害物競走のスタートで見せた跳躍や移動は発動をするのに止まって脚に力を溜める必要がある。
そのため、今回のように長い距離を速いスピードで移動する時は無理に速く移動しようとしても溜め時間の関係で普通に走った方が速い。
当然、見ている轟も同じような推測を立てている。
(……虫明の50メートルの記録は確か0.51……その速度を維持されれば勝ち目はないが……上に飛ぶ時とスタートの時にしか使ってねぇ)
(ってことはあの速度での移動には何か制限がある筈だ。どちらにせよ、使わねぇなら俺の方が速い)
『しかし轟、虫明を猛追!直線距離じゃ轟の方が速いか!?』
「……仕方ない」
スピードで勝てないならば、かくなる上は妨害しかない。
コガネは両掌を後ろに向け、大量の飛蝗を出して、轟の方へ向かわせた。
「ッ!?」
『おおっと!?虫明コガネ、後ろにバッタの大群を突撃させた!轟の身体に纏わりついてぇ……ああっ!これはキツイ!オレムリかも!』
『しっかりしろよ、実況』
コガネの飛蝗はガサガサと金属質の羽を羽ばたかせながら轟の全身に纏わりついて、噛みついたり、視界を邪魔しながら、轟の動きを確実に妨害する。
「……っ邪魔だ!」
轟の再び右半身に冷気が発露する。
その冷気は外気を凍らせ、コガネの飛蝗すら凍結させる。
「……いいね、距離空いた」
『虫明の妨害が激刺さり!轟との距離が開いたァ!そしてここで虫明が次の障害物に到着だ!』
現在1着のコガネの目の前には学校の敷地内とは思えない光景が広がっている。
「これは……」
『落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォール!!』
目の前には足場となる地面は存在せず、ぽっかりと穴が空いていた。穴の中からは複数の石柱とそれぞれの石柱を繋げるロープがあるだけで、個性なしで通ろうとすれば、ロープで綱渡りか、ロープを這いずるしかないだろう。
――が、コガネには関係ない。
『あー!虫明!自分で足場作ってる!?穴とか関係ねぇじゃん!?どうなってんだイレイザー!』
『知らん』
コガネは盾を形成する要領で足元で足場になるように盾を形成。大穴などものともせず、普通に走った。
しかし、そんなコガネに二人の人物が追い縋る。
「行かせっかよォ、バッタ女ァ!!」
「負けねぇぞ、虫明」
個性の爆破を利用して、掌の爆発の勢いで空を飛ぶ爆豪とスケートのようにロープを滑って移動する轟だった。
未だ1着はコガネであるが後から轟、その更に後ろから爆豪が追い縋る。
(追いついてきた。やっぱり長距離移動じゃ勝てないか。それに爆豪もそうだけど他の人も追いついてきた。速くしないと)
『さあ先頭は難なく一抜け!下は団子状態!そして早くも最終関門!かくしてその実態は――……』
コガネの目の前に広がるのは何もない一面の荒野――……
――ではなく。
『一面地雷原!怒りのアフガンだ!地雷の位置はよく見りゃ分かるようになってんぞ!目と脚!酷使しろ!因みに地雷の威力は大したことねぇが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』
『人によるだろ』
プレゼントマイクが言うように地面にはわかりやすく、マークのように他の地面とは違う場所が所々にある。
恐らくこれが地雷なのだろうが、これもコガネには関係ない。
『ってオイオイ!フォールの時と同じように虫明に突破されてんじゃねぇか!どうなってんだイレイザー!』
『だから知らん』
同じように足が地面につかないように作った足場を渡れば良いだけだ。コガネの個性の性質と噛み合った種目である。
このまま行けば間違いなくコガネが1着であるが、そう簡単にはいかない。
「ハッハァ!俺には関係ねぇ!!!」
先程から飛んで移動している爆豪にも地雷原は関係ない。
(後続に道作っちまうが……)
「後ろ気にしてる場合じゃねぇ」
同じく地面を凍らせられる轟も地雷原を凍らせて機能停止させることが可能なため、関係なかった。
「……ッ抜かれる……!」
こうなれば必然、スピードで劣っているコガネが不利になる。
『ここで先頭が変わったァーー!!喜べ、マスメディア!お前ら好みの展開だあ!!』
レースはラストスパート、会場の熱気も最高潮となり、後続もスパートをかける中、コガネは考える。
(残り約100メートル……このままの速度で走ったとしても、二人には追いつけない……!跳躍での移動なら追いつけるけど、溜めがいるし、溜めている間に後続から妨害を受ければ、追いつける可能性はゼロになる……)
(このままじゃ――)
しかし、この土壇場でコガネは一つの奇策を思い付く。
失敗すれば1着の可能性は消え、更に抜かされる可能性もある危険な策だが……実行以外に勝ち目は残されていなかった。
「……やるしか、ない」
「!?」 「あぁ!?」
『!?どうした虫明!?いきなり止まったぞ!?』
コガネは一度自身が作った飛蝗の足場の上で立ち止まる。
そして、しゃがんでクラウチングスタートの姿勢をとり、飛蝗の外装を纏って脚を強化、力を溜めていく。
(なんだ……?)
(諦めた……?いや、こいつはそんなタマじゃねぇ!)
ギチギチと脚から音がする中、爆豪と轟の背中は離れていく。二人は疑問に思うが、すぐに横にいる相手に集中するためにコガネへの意識が少し少なくなる。
このまま、50メートル走のような地面スレスレで跳躍込みの移動をしてもすぐにまた抜かされる。
しかし、コガネの策はここからだった。
(……飛ぶ瞬間、飛ぶ瞬間――瞬間……今!)
コガネは地面スレスレを跳躍する瞬間、形成していた足場を
当然、コガネの脚は地雷原へと落下する。
しかし、地面に着く瞬間、コガネの跳躍は発動した。
(地雷が爆発するより速く、ここを抜ける……っ!)
思惑通り、地雷が爆発する前にコガネはその場からギリギリ跳躍して離れた。地雷の爆風が爪先を掠めるがコガネは止まらない。
勢いとスピードそのまま、コガネは爆豪と轟の間を通り抜け、再び追い抜いた。
「なっ!?」 「は!?」
一瞬の出来事に二人は驚くことしかできない。
しかし、コガネの策はここでは終わらない。
跳躍で移動している間、通る場所に飛蝗を配置した。
それも地雷原の位置に的確に。
轟と爆豪の間の地雷原が、飛蝗の重みで起動する。
「ぐっ……!?」 「クッソが……!」
爆破の威力は大した強くないが、今の爆破は二人の体勢を的確に崩した。
轟は凍結させた足場から体勢が崩れて、足場を踏み外し、連鎖的に別の地雷原を踏んでしまう。
爆豪も空中で爆風に煽られて、地雷原を手で触れてしまった。
一つの地雷原の爆発が次の爆発を呼び、轟と爆豪の足が止まる。
「くっ……!くそ!」 「こんの……!!バッタ女ァ!」
『ここで虫明、移動と妨害を同時に――!!膠着状態から一着に躍り出たァ!!』
時間が出来たコガネはここを一気に抜けようと、再び跳躍の溜めに入った。
地雷原は残り50メートル。再び跳躍を行えば1着はほぼ確実だった。
(なんとかなった……!このままゴールまで――!)
しかしここで予想外のことが起こる。
「なっ……!?」
『後方で大爆発……!?何だあの威力!?偶然か故意か!A組、緑谷爆風で猛追――!』
コガネのはるか後方で地雷ひとつとは思えない大爆発、さらにその爆風と共に飛んでくるクラスメイトの緑谷。
想像もしていなかった出来事にコガネは完全に反応が遅れる、緑谷に対する妨害ができなかった。
故に――
『――っつーか……追い抜いたァーー!!』
(緑谷……!さっきまで後ろにいたはずなのに……!恐らく今の緑谷は個性で飛んだんじゃなく、地雷の爆発を利用したもの!つまりもうすぐ――!)
(失速……!そりゃそうだすぐ抜かれる!!着地のタイムロスを考えればもっかい追い越すのは絶対無理!虫明さんももうそこまで来てる!)
「行かせない……緑谷……!」
コガネも跳躍の溜めが完了し、緑谷を追い越しに入る。
(せっかく前に出れたこのチャンス!!掴んで離すな!追い越し無理なら掴んで離すな!!)
緑谷は持っていた0Pヴィランの外装を地面に叩きつけて、下にあった複数の地雷原を起動させる。
「くっ……!」
地雷が起動し、緑谷の真下の地雷が爆発する。当然近くにいたコガネにも爆風は届き、体勢を崩す。
その間に緑谷は地雷原を吹っ飛ばされるように抜けた。
『緑谷、間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原クリア!!さぁさぁ序盤の展開から誰が予想できた!?』
『今1番にスタジアムに帰ってきたその男――緑谷出久の存在を!!』
ラストで緑谷が全てをひっくり返し、一着となってスタジアムに帰還した。
◇
全体の結果としてはコガネが2位となり、3位轟、4位爆豪という結果になった。
「くそ……」
(舐めてたな……緑谷にしてやられた……)
「チッ」
「また……くそっ……!!クソがっ……!!」
一位を逃した3人は各々悔しそうな反応を見せた。コガネに至っては唇を軽く噛み締めて悔しさを滲み出している。
そんな中、爆豪がコガネに近づく。
「おい!バッタ女!まだ終わってねぇ!次は、潰す!」
「……望むところ」
二人は向かい合って、同じ悔しさを抱えながら、感情を次の種目に持ち越した。
「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!」
全生徒が走り終え、もしくはリタイヤして第一種目は終わりを告げた。予選突破の42名中、40名がヒーロー科の生徒であり、残りの2名は普通科の男子とサポート科の女子であった。
「壮絶だったわね、コガネちゃん」
「蛙す……梅雨ちゃん……緑谷、警戒すべきだった」
悔しく思い、顔を顰めているとゴールした蛙吹梅雨が話しかけてきた。コガネはこの前のことをひきづっているのか、まだ「梅雨ちゃん」とは呼びにくいらしい。
そして次の種目の準備ができたのか、進行役のミッドナイトが壇上で口を開く。
「そして次からいよいよ本番よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!さーて、第二種目よ!私はもう知っているけど~~何かしら!?言ってるそばからコレよ!!」
ミッドナイトの背後に現れるスクリーンに映し出される『騎馬戦』の文字。そのまま第二種目、騎馬戦のルールが説明される。
「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、異なる点も有るわ。まずはポイント。第一種目の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられるわ!」
つまり組み合わせによって騎馬のポイントがそれぞれ異なり、それを奪い合うポイント稼ぎ方式である。ミッドナイトは説明を続ける。
「与えられるポイントは下から5Pずつ!42位が5P、41位が10Pといった具合よ」
「そして1位に与えられるポイントは、1000万!」
「「「「「!?」」」」」
現在の一位は緑谷出久、全員の目つきが変わる。
「上位の奴ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよ!」
今回は割と早くできました。
爆豪をライバル枠に設定します。口調がよくわからない、、、
わからない所などあれば感想で気軽に質問してください。
UAが2万を超えました!しおりも200件を超えてました!いつも読んでくださってありがとうございます!
いつも誤字報告してくれる方もありがとうございます!