彼女の名前は「サクラ」SNSでトップを争う大人気中学生配信者。
「流行り」を大量に作り出す彼女は若者なら誰でも知っている。
しかし昔は炎上を引き起こしては登録者を稼ぐ人だった。
「迷惑行為?あぁあれは本当にごめんなさいだよ。いまはもう改心してる」
夜な夜な一人ゲーミングパソコンと向き合いながらコメントを読み上げる。
「ツムとは毎日ラブラブな生活を送ってるよ」
◇◇◇
サクラの配信をパソコンで眺めている紬。
彼女は嘘つきだ。けれどそのようなことを言ったとしても彼が嘘つき判定になる。
「外へ出たいな本当に」
10月も中旬。
最近は運動不足で手首が簡単につるようになった。
病院で診てもらいたいものだ
「そうじゃん、骨折すればいいじゃん」
病院に逃げ込めばいい、最悪結先生に看護してもらえればもっといい。
なんでこんな選択があることを忘れていたのか…
「…ストレスか」
半年以上も日光を浴びていない、だからこんな皮肉な発想ができてしまったのだろう。
紬はパソコンを閉じ勢い良く左手首へと向けて振りかぶった。
ポキ。そう軽い音が部屋中に鳴り響く。
「痛い」という感覚が全身へと駆け巡る前に事故風にパソコンの位置を調節する
「痛い…」
その時階段を駆け上がる音が聞こえバタンとドアが開く。
綾乃の父が紬の姿を見ては救急車を呼んだ。
そして数分後救急車へと乗せられる病院へと運ばれる。
◇◇◇
見覚えがある病院の個室。
少し大げさにも見える腕の包帯
「おはようございます紬さん」
「…どうも、先生、」
結先生が点滴袋を入れ替える。
カーテン越しから太陽をちらっと見る。
「それにしてもビタミンDっていう骨を強くするために必要な栄養が全くといっていいほどありませんでしたよ?」
「半年ほど日光を浴びていなかったので…」
「それでエルフのようなお肌に…」
結先生は紙を紬へ渡す。リハビリの日程である。
早朝に五分から十分日の光を浴びて紫外線への耐性をゆっくり取り戻していく。
「しばらくは早朝以外日傘をさして行動してください、骨折は一週間ほどで治りますよ」
一週間という貴重な時間。
そのうちにどうするか考える
「総務省の菊岡さんを呼んでくれませんか?」
「わかりました。」
結さんが部屋を出るとテーブルに置かれたスマートフォンを取り出す。
サクラが投稿している動画ではツムが骨折によりしばらく出演できない」と説明されていた。
そして最後に「すぐ戻ってくる」と、
「帰りたくないなほんと」
一千万に届きそうな再生数を見ては大きくため息をつく。
すると電話がかかってきた。
「まいてぃーちゃー」と表示されている、つまり花紗音だ
「もしもしー?」
『骨折大丈夫?』
「まぁ」
『そういやトラルとライアがお見舞いに行くって今さっき』
「あ、会えたんだ」
その時ドアがガチャガチャと揺れた
「押してダメなら引くんだよ!」
「奈々、病院は大体スライドだよ…」
「え?そうなの?」
「僕たちだって入院してたじゃぁん」
そして開くドア。
二人の立ち姿がアインクラッド五十階層でであった時とデジャブった。
「おっ久しぶりだなリリルちゃん!」
「お久しぶり、トラルとライア。」
本名での自己紹介を終えて、リアルでの再開を祝して軽く雑談をする。
「花紗音姉さんから聞いたよ、本当に付き合ってるんだね」
「嘘だと思ってたのかい?安心しなさい!」
奈々はそういいながら視線を碧依へと向ける
「…どうしたの?」
とその途端奈々は碧依へと飛びかかりキス…とまではいかないがギュッとハグをした
それを見た紬と抱きしめられた碧依は顔を赤く染めてはきまずい雰囲気へとなった。
「証明完了!」
いつものテンションの奈々、彼女に羞恥とかはないのだろうか。
「もう大丈夫そうかな?」
とドアのほうから声が聞こえた、菊岡さんだ。
多分証明前からいたのだろう、混乱でノック音が聞こえなかった。
「どうも菊岡さん」
「こんにちは…そちらのカップルは?」
「SAO仲間」
「トラルとライアでトライアルなのだ!」
そんな奈々のテンションを菊岡さんは上手に聞き流す。
「菊岡さん、僕退院したら花紗音姉さんのところへ逃亡する予定です。なのでご協力を…」
「わかったよ」
いとも簡単に承諾してくれた
それはそう、紬は菊岡さんの「目的」を手助けしなければならない
「しかし情報が足りていないんだ」
「どのくらいかかりそうですか?」
「少なくとも二か月、最悪永遠と、だね」
その話を聞いた碧依は手を挙げる
「そのサクラさんってトップを争う配信者…つまり「捜索してください」なんて投稿されたら」
裁判の時に花紗音の存在はサクラへと知られてしまっているだろう。
ならどうするべきか
「そこでだ」
菊岡さんはまるで紬が「逃亡する」っていうことをわかっていたかのようにパソコンを立ち上げては地図を出す。
「総務省の地下駐車場に一台の特別なキャンピングカーを用意してある…ネット回線完備のまるで動く家のような」
「なぜそこまで?」
「秘密だね、ただ言えるのはSAOサバイバーの社会復帰のための支援だね」
「はいはーい!私たちには支援が手薄い気がするんですけどー」
「どうしても優先順位というものが生まれてしまっているんだ、そこのところは我慢しとけ」
紬は奈々へとそう多分慰めの言葉を言っては詳細日程を聞く。
菊岡さんの車でキャンピングカーがあるところまで移動してはそこから逃亡。
警察とかにはあらかじめ説明しており公にはさらさないようにするのだとか
「なんだこの逃亡計画」
小説でしか見ないような規模の逃亡計画に何度も頬を引っ張り夢ではないことを確認する。
「ただ問題となるのはその配信者が「行方不明だ捜索してくれ」という動画を出してはニュースなどになった場合だ。」
相手は世界的に有名な配信者、もちろんニュースやネット記事に上がるはずである。
「まぁ細かいことはこちら出まかせなさい」
こうしてなぜか大規模になった逃亡計画が始まるのである。
こんな大規模な脱出計画にするつもりはなかった。