まえがき
くっそくだらない話なので興味なかったら読み飛ばしてください。
追加設定とか何も書いてないです。
前回の続き。
前回投稿した話の続きです。
これ書き始めたのが投稿してから2日弱ってところなんですけど、その時点でブックマーク200近く付いてるし、コメントも多かったし、その大半が続きがほしいって声だったし、えげつない勢いでブックマーク動いたし。
極め付きは、pixivの2/5の男性人気小説ランキングで6位になってましたし。
ランク入りしたのは初めてじゃないですし、あのランキングどういう基準でつけてるか分からないからあんまり当てにしてなかったんですけど、流石に一桁に入ったのは初めてなので驚きました。
これらもあって嬉しい反面、少し怖かったです。
ダンまちというコンテンツの大きさを再認識しました。
というわけで、書くつもりはなかったんですけど、ここまで来たんなら思いついた内容くらいは全部吐き出そうと思って続きが産まれました。
ご期待に添えないような内容でしたら、ごめんなさい。
一回目でハードルが上がりすぎてる気がするので、飛び越えられる自信がありません。
多分、正真正銘これで続きはなくなります。
思いついたらまた投稿するかも知れませんが、少なくとも今のストックはなくなります。
続きが書きたい方などがいましたら、是非どうぞ。
今のところ誰にも何も言われてないので、多分権利関係も大丈夫なはず。
書く時は自己責任でお願いします。
アポロン・ファミリアとの戦争遊戯が終わった後、突如現れたヘラ・ファミリア。
彼女達は狂気的な笑みを浮かべながら、アポロン・ファミリアを鏖殺し始める。
「は!?え、ちょ、何ですか!?ていうか、やめてください!」
戦争は終わっているのだ。
彼女達がいきなりアポロン・ファミリアを攻撃し始めた理由も理解出来ない。
突然のことに、ベルたちもどうすればいいのか分からなくなる。
止めたいところが、ベルたちは満身創痍。
そもそも、万全だったとしても天地がひっくり返ろうとも覆せないだけの力の差があるのだ。
今のベルにはどうすることも出来ない。
「ちょ、こっちにも何人か来ましたよ!?」
「貴方達は後ろに下がって!」
リューが近づいてくるヘラ・ファミリアの一人に対抗しようと、武器を構える。
だが、所詮彼女はレベル4。
しかも成り立て。
最凶たる彼女達に敵う道理など、どこにもない。
気絶こそしなかったものの、一撃で吹き飛ばされてしまう。
「リュー様!」
「リューさん!」
近づいてくる、眼の前にいる。
恐ろしき最凶が、すべてを嘲笑う理不尽にして暴虐の化身が。
獲物を見定める蛇のような彼女の視線に、ベルもリリルカもヴェルフも命も。
誰も動けなくなってしまう。
時間が止まったかのような錯覚に襲われる。
ほんの数秒も経っていないのに、その時間が永遠に続くように感じる。
息の仕方も忘れてしまいそうなくらいの、緊張感がそこにはあった。
「あぁ、やっぱりこの子――――」
「…………?」
小さく呟かれたそれ。
その言葉の意味を、やはり理解出来なかった。
そう言えば、彼女達はあの時なんと言っていたか。
現れた時、団長と思われる女性がなにか言っていたような気がする。
上手く聞き取れなかったし、そもそもあの時は動揺しすぎてそれどころではなかった。
その言葉を思い出そうと必死に頭を回していた時、眼の前のヘラ・ファミリアの女性は動き出す。
「かっわいい~~~ッッ!!」
現れた時と同じように突如として、彼女はベルを思い切り抱擁する。
力加減はしっかりされていたので痛くはない。
だが、その行動はやはり理解できるものではなかった。
「あぁ、かっわいい!!見たところ身体もしっかりしてるし、健康そのもの!顔も髪も最高だし、あの子のいいところだけしっかり受け継いでくれて良かった!!流石メーテリア!これで性格がアルフィアみたいにドブカスだったらどうしようかと思ってた!!」
「…………は?」
「かわいい~可愛すぎる~!困った顔もあの子みたいで超可愛い~!」
小動物でも愛でるように顔も髪も撫でまくる女。
その言葉の意味を、やはりどうしても理解出来なかった。
「あぁ、でも、そうねぇ………眼は、ちょっと残念ね…………嫌な男のことを思い出すわ…………いっそのこと抉りましょうか」
「いぃッ!?」
先程のテンションの高さが嘘のように冷たい口調で彼女は恐ろしいことを呟く。
離れようと抵抗はしてみているが、一向に脱出できる気配がない。
彼女の細くしなやかな指がゆっくりと眼球目掛けて伸びてくる。
ベルはどうすることも出来ず、その瞬間に怯えるしかない。
「やめろ、バカ」
鐘の音が鳴る。
それと同時に彼女は吹き飛んでいく。
すんでのところで救われたベルはそのまま中に投げ出される。
そのまま地面に打ち付けられるところだったが、そのまえに優しく抱き留められる。
もう、何も理解出来ない。
さっきから状況が何一つ分からない。
戦争遊戯に勝利できたかと思えばヘラ・ファミリアが現れて、アポロン・ファミリアを襲撃し始めて、なぜかそのうちの一人に撫で回されたかと思えば突然眼球を抉られそうになって。
かと思えば、今度は助けられて。
彼女達が何をしたいのか、全く理解出来ない。
「何すんのよぉ、アルフィア」
「お前こそ何をしようとしていた?」
「眼が邪魔だったから、取ろうとしただけじゃない」
「この赤い瞳が気に食わんのには同意してやる。だが、突然抉るバカがどこにいる。昔その類のことをして、メーテリアに窘められたのを忘れたか?」
「むぅ…………」
言い返すことが出来なくなったのか、黙りこくってしまう。
ただ睨むしかないその姿は滑稽だが、今はそれどころではない。
「抜け駆けはズルいんじゃないかしら?」
この状況で、団長と思われる女まで登場した。
目まぐるしく動く状況についていけない。
「あらあら、すっかり怯えちゃって。大丈夫よ、メーテリアの子………ベル。貴方には決して危害は加えないわ。私達は、貴方のためにいるのだから」
「僕の、ため……?」
「ええ。貴方は私達の家族なんだもの」
理解出来ない。
彼女達が現れてから、何も分からない。
彼女達が言う家族が、何を示すのかもわからない。
でも、それなら言わなくてはいけない。
「や、やめてください……」
「ん?」
「こんなこと、やめてください!!」
その意味を理解できないとばかりに首を傾げる団長の女。
だが、ベルは続ける。
本当は今すぐ逃げ出したい。
身体は震えるし頭はドンドン真っ白になっていく。
それでも、彼女達を止めなくてはいけない。
「もう戦争遊戯は終わってるんです!これ以上戦う理由なんてないでしょう!?」
「…………本当に似てるわね。あの子とおんなじこと言うなんて」
「言ってる場合か、このバカ女ども」
ベルの言葉に眼を丸くする団長の女。
今もベルを抱きかかえている女は呆れたように呟くが、それでも団長は何も変わらない。
「僕のためって言うなら、今すぐやめてください!僕はこんな事望んでません!」
「でもね、ベル。これは必要なことなのよ。今後このようなことが起こらないように、貴方に手出しするような不埒者が現れないように。見せしめは必要でしょう?」
「もう十分です!ここまでやる必要はありません!」
「そう言われてもねぇ…………」
ここまで彼女達の行動を否定する言葉を紡いでもなお、彼女達はベルに危害を加えようとしなかった。
ただ困ったように眉をひそめるだけ。
それはまるで、言うことを聞かない子どもをどう嗜めるか迷っている親のよう。
その様子に、ベルを抱えている彼女は大きくため息を吐く。
「おい、クソ団長。そろそろ止めろ。この子の言う通り、これ以上やる必要もないだろう」
「そんなことはないでしょう?私達も15年の停滞期間があるのだから。本来の私達が戻って来たということを知らしめるためにも、もう少し――――」
「嫌われるぞ。この子にも、メーテリアにも」
「…………それは困るわね」
さっきまで頑なに殲滅しようとしていた団長が、一瞬で意思を翻す。
“嫌われる”という言葉が何よりも効いたのだろうか。
ベルに嫌われる、それが何よりも嫌なのだろうか。
「まあ、この程度で良しとしようかしら。どうせ、オラリオに戻ればヘラが色々やってるでしょうし」
「それならバカ共をさっさと止めてこい。勢い余って殺す奴が出ても知らんぞ」
「しょうがないわねぇ」
ヘラ・ファミリアはまともなファミリアではない。
仲間意識を持っているくせに、互いをなんとも思っていない。
突然平気な顔をして殴り合うし、殺し合いの一歩手前までなら平然と行う。
その中で彼女が団長を務めている理由は単純。
彼女が一番強いからだ。
暴虐の化身たるヘラ・ファミリアの中でも一番。
ヘラの生き写しとも言われる彼女は、まさしく最強なのだから。
そうして、女帝によってすべてのヘラ・ファミリアは強制的に止められる。
女帝に苛立って斬りかかろうとした者もいないわけではないが、ベルが嫌がっていると伝えると渋々武器を収めた。
これで、シュリーム古城跡地での戦いと騒動はすべて決着した。
あとはオラリオでの騒動だ。
瀕死のアポロン・ファミリア達を放置し、ベルたちはヘラ・ファミリアに連れられオラリオに帰還した。
まあ、丁寧に運ばれたのはベルだけ。
他の四人は割と雑に運ばれた。
アポロン・ファミリアの現状を思えば、運ばれただけでも幸運なのだろう。
そうして、オラリオで。
ギルドが用意した一室で。
仲間たちとともにヘラ・ファミリアに運ばれたその先で。
「なに、これ……」
アポロンと、ヘルメスと、ロキと。
この三人は見るも痛々しい惨状だった。
痛々しい彼ら以外にも人や神はいるが、その全員が俯き顔を青くさせている。
本当に、何があったのだ?
「おお、戻ったか。待っていたぞ、ベル」
「お帰り、ベルくん!」
その惨状に呆然としていると、ベルを見つけたヘスティアが駆け寄ってきてハグをする。
「よく頑張ったね、ボクは嬉しいよ」
「神様……えっと、それで――――」
「ヘスティア、私にも挨拶をさせてくれ」
ヘスティアと一緒に駆け寄ってきたもう一人の女神。
美しい容姿に優しげな瞳だが、服や顔についた血がそれらを正しく認識させない。
「初めまして、メーテリアの子……ベル。私はヘラ。ヘスティアの友神であり、お前の祖母のようなものだ」
「…………はぁ!?」
『『ええ!?』』
突然の祖母宣言に驚きの声を上げるベル達。
「ま、待ってください、ヘラ様!本当に何が何だが…………ていうか、メーテリアって誰ですか!?」
「誰からも何も聞いてないのか?」
「あんな変な布で顔隠してたのに?」
「あれはお祖父ちゃんにつけるよう言われてたからで……」
「おい、そこのところどうなんだ、クソガキ」
顔を腫らしたヘルメスを更に殴り、情報を吐かせようとするヘラ。
その様子にベルはドン引きだが、ヘラがそれに気づくことはない。
「べ……ベルくんは何も知らない……ていうか、知られないようにしてた……」
やがてか細い声でそう答えたヘルメス。
その答えに苛立つように顔を歪めるヘラ・ファミリアの一同。
「はぁ……なら、一つずつ説明していく必要があるか」
「まず、メーテリアについて。これを見ろ」
ヘラ・ファミリアの一人、ベルを抱きかかえてオラリオまで運んだ灰髪の女が紙を投げ渡す。
そこには即席で描いたと思われる人物画があった。
そして、それはヘスティアたちがよく知った顔だった。
「これって、ベル様ですか?にしてはやけに女性っぽい体つきですが……」
「ベル君の女体化?」
「そんなわけあるか。それはメーテリア、私の双子の妹だ」
「え?」
確かに、よく見れば絵の人物は灰髪の彼女とよく似ている。
そして、絵の人物と似ているということは、ベルとも似ているということ。
「じゃあ、君は――――」
「私はアルフィア。お前の実母、メーテリアの姉だ」
この場で明かされる、ベルの実母の名前。
14年間生きてきて初めて聞くその名前に、ベルはどう返せばいいのか分からず曖昧な表情を浮かべる。
そして、生まれて初めて見る肉親に、どう接すればいいのか分からず戸惑う。
「なるほどね、ヘラが怒る訳だ。ベルくんはヘラの眷属の子ども……言うなれば孫に近い存在なんだから。そりゃ、手を出してきたアポロンはもちろん、ベルくんの存在を隠そうとしたヘルメスもボコボコにされるに決まってる」
「……じゃあ、なんでウチまでボコされんねん……」
「ヘスティアから聞いた。お前のところのガキどもは自らの不手際でミノタウロスを上層に逃がし、一人の冒険者を危険に晒しただけでなく、その冒険者を酒の席で笑いものにしただろう?」
「――――あっ!」
思わず声を上げるベル。
ヘラが語るその事件。
それは、ベルが一番良く知る出来事だった。
「愚図で間抜けで吐き気がするほどのバカにも分かるよう簡潔に教えてやる。お前らが危険に晒し、笑いものにした冒険者は、
ロキの髪を掴み、視線を合わせながら睨みつけるヘラ。
彼女の怒気に比例し、その事実を今初めて知ったヘラ・ファミリアたちからも殺気が溢れ出る。
「いいか?私達も身の程を知らない愚か者どもを嘲笑うことは確かにある。だがな、自分たちのミスで死にかけた人間を笑うような恥知らずな真似は決してしない」
「…………ッ!!」
「今の私達にも及ばない程度の貴様らが、調子に乗るなよ?謝罪も賠償もなく、挙句の果てに笑いものにし、その被害者の顔すら知らなかった恥知らずの無能共が」
ミノタウロスの一件を知っているのはロキ・ファミリアのほぼ全員。
だが、その被害者の顔を知っているのはどれだけいるだろうか。
ましてや、彼に謝罪をしたものなどどれだけいるだろうか。
顔を知っているのは彼を直接助けたアイズ、彼女に協力したティオナ。
それ以外だと、後ろ姿を見ただけの一部程度だろう。
「…………これは、あとで挨拶をしなければいけないファミリアが増えたわね」
「あぁ、楽しみね。身の程知らずで無駄にプライドだけ高い間抜け共が打ちのめされて、絶望に沈む。その顔を想像するだけで愉快だわ」
「そこの愚図のファミリアだけではない。あの猪のところも、それ以外のすべても。一度すべて打ちのめす必要がある」
その口元と声は笑っている。
だが、その瞳だけは笑っておらず怒りに満ちている。
もう、全てが我慢の限界なのだ。
ヘラ・ファミリアが帰ってきたのだから。
停滞していたすべてが動き出したのだから。
今だにあの程度でくすぶり続けているあいつらを、許すわけにはいかない。
これだけは、ベルが何をどう言い繕っても止まることはない。
これが、彼女達にとっての正義なのだから。
「ああ、そうだ。誰かあのクソガキを連れてこい」
「それだけで分かるか。どのクソガキだ?」
「
ヘラ・ファミリアの面々も、その意図を理解出来ず首を傾げる。
だが、言い出したヘラが聞かないのは知っているし、ベルに関することなら従わないわけにもいかない。
女帝が行って十分で捕まえてきた。
◇十分後
「お前ら、マジで覚えとけよ……いつか絶対やり返すからな……」
「出来るものならやってみなさい?」
「ざ、ザルドさん……」
「おう、坊主。戦争遊戯見てたぞ、勝利おめでとさん。それと、御愁傷様です」
「ザルドさん!?」
ザルドに初めて敬語で話された。
ヘラ・ファミリアの相手をしなくてはいけないということは、それだけの不幸なのだ。
今までのランクアップとか奇跡的な勝利とか、それらを差し引いてもお釣りが来るくらい、とんでもないレベルの不幸なのだ。
それと、ザルドはよく知っている。
「それで?なんで俺を連れてきたんだよ?そこの坊主がお前らのガキだってのは分かったが、俺には関係ないだろ」
「お前にも関係あるからだ。おい、アルフィア」
「一々指図するな。おい、ベル。お前の育て親は、この男で間違いないな?」
「え?あ、はい!この人です!この人が、僕のお祖父ちゃんです!」
アルフィアが差し出した二枚目の人物画。
そこには一枚目と違い、立派なヒゲを蓄えた老爺が描かれていた。
それを見たベルは声を上げるが、周囲は対照的に苦々しい顔をする。
「やっぱりかぁ……薄々分かってたけど、そういうことだったんだね……」
「……は?どういうことだ?なんであのジジイがこいつを育ててるんだ?」
疑問を口にするザルドだが、ベルはその疑問が理解出来ない。
「おい、坊主。このジジイ今どこにいる?」
「ど、どこもなにも……お祖父ちゃんは、僕がオラリオに来る半年前にモンスターに襲われて、そのまま……」
「おい、ザルド、どういうことだ?」
「偽装に決まってんだろ!あのジジイがモンスターに襲われた程度で死ぬか!神聖浴場覗いて都市中の女神から半殺しにされても生きてたんだぞ!?第一、俺の恩恵が生きてる時点で生きてるのは確定だろうが!!」
「…………え?」
死を偽装している。
ザルドに恩恵を与えている。
その事実を上手く飲み込めず、ベルは混乱する。
「ベルくんベルくん、つまりだね、端的に言うとね、君のお祖父さんってゼウスだったんだよ」
「…………え?」
「まあ、そういうリアクションになるよね。ちょっと落ち着いて、色々整理しようか」
1.ベルの母親はヘラ・ファミリアのメーテリア。
2.祖父はゼウス・ファミリア主神、ゼウス。
3.ゼウスは素性を隠してベルを育てていた。
4.ゼウスはヘルメスと組んでベルの素性を隠そうとしていた。
5.ゼウスは死を偽装してベルから離れ離れになることを選んだ。
6.ザルドはゼウス・ファミリアの元幹部。
「要点をまとめればこんな感じだね。理解出来た?」
「もういろんなことがありすぎて理解が追いつかないんですけど……取り敢えず、なんでお祖父ちゃんが僕を育てたんですか?お母さんと関係のあるヘラ・ファミリアの人達じゃなくて」
「ま、たしかにそうだな。このロクでもないイカレ女どもに預けなかった判断は正しいが、だからってなんであのスケベジジイなんだよ?」
「…………本当に分からないのか?」
アルフィアはベルの顔を掴んで、ザルドの前にまで持っていく。
その赤い瞳の中に、ザルドの姿が映り込む。
その赤い瞳を、ザルドは見覚えがあった。
初めてあった時から、懐かしいと思っていたのだから。
「この瞳に、本当に見覚えがないのか?」
「…………なあ、坊主。お前、名前は?」
「? ベルですけど?」
「それは前に聞いただろ。そうじゃなくて、
「い、言わなきゃ駄目ですか?お祖父ちゃんに、極力人に言うなって言われてるんですけど……」
「俺だって聞きたくねえよ。でも、聞かねえことには始まらねえんだよ」
「え、えぇ……」
苦々しい顔をするザルドに、ベルは名前を名乗るべきか迷ってしまう。
というか、ヘラ・ファミリアの人達の目が怖いから名乗りたくない。
しかし名乗らないと一生このままになりそうなので、意を決して名を名乗る。
「く……『クラネル』、ですけど……」
ベル・クラネル。
それがベルのフルネームだ。
あの祖父に名乗るなと言われたせいで、冒険者に登録する時以外名乗ったことがない。
そのせいで、この都市でベルのフルネームを知っていたのは担当アドバイザーのエイナと主神のヘスティアだけ。
だが、今この瞬間ベルのフルネームを大勢が知った。
ゼウスが一番知られるのを恐れていた、ヘラ・ファミリアの面々に。
「クラネル、ねぇ……」
「嫌な名前ねぇ……」
「ホント、不愉快よねぇ……」
不機嫌そうに、口々に呟くヘラ・ファミリア。
その様子に、その名前を聞いたザルドは顔を青くさせる。
「……マジで?」
「? マジですよ?」
「マジか……」
呆然と呟くザルド。
やがて俯き肩を震わせ、そして感情を爆発させる。
「ふっざけんなよ、クラネルの奴!!最後の最後にとんでもないもん残していきやがって!!あのジジイもジジイだ!!クソみてえな爆弾都市に放り込んでんじゃねえよ!!」
「え!?」
「お前じゃねえよ、お前のクソ親父だ!!なんつう奴に手ェ出してんだ、あのバカ!!出すにしても避妊くらいしっとりやっとけ!!」
「ひ、避妊……!?」
「はい、そこまで」
「それ以上貴様らの下品な言葉でベルの耳を穢すな」
「グッフ――――!」
女帝とアルフィアに殴られ、地に沈むザルド。
どういうことか分からず、ベルは混乱する。
急転直下で機嫌が悪くなったヘラ・ファミリアが近くにいることもあり、もう限界が近い。
ていうか、一応治してもらったとは言え戦争遊戯で瀕死に近い重傷を追っていたのに休み無しでこんな情報量マシマシの話し合いに参加させられているんだ。
いつ限界が来てもおかしくない。
「どういうことなんだい、ヘラ。君達の言う『クラネル』って誰?」
「夫のところの眷属だった男だ。逃げ足だけしか取り柄のない軽薄でどうしようもない愚図だった」
「……え?」
それは、つまり――――
「つまりだな、ベル。お前は
その言葉に、とうとうベルの脳は情報を処理しきれずオーバーヒートする。
意識を手放すベル。
最後に見たのは、心配そうに覗き込むヘラ・ファミリアの面々だった。
アポロン・ファミリアとの戦争遊戯から4週間後。
あれから色々あった。
アポロンは送還され、ファミリアは解散。
一部は自らの意思で都市の外に出ていった。
ロキとヘルメスはベルの助命嘆願もあり一応命は助かったが酷い目にあった。
当分大人しくするだろうし、ヘルメスに至ってはゼウスの捜索に協力する羽目になった。
そして、全盛期と同等の気勢を取り戻したヘラ・ファミリアは、今まで適当にこなしていただけの活動を本格的に再開。
手始めに試練と称して都市の大派閥たちに喧嘩を売り、そのすべてを蹂躙した。
特にロキ・ファミリアはひどく、壊滅一歩手前にまで追い込まれた。
ベルを逆恨みし、恨み言を言う輩もいたが、それらはすべて再起不能になるまで打ちのめされた。
恨み言こそ言っていなかったが、ベートも似たようなものだ。
弱き者など冒険者に相応しくないと言っていたベートは、自身も弱者であることを理解させられた。
所詮ロキもフレイヤも、ヘラ・ファミリアに見逃されていただけに過ぎないのだから。
そうこうして、都市は本格的に変わり始めた。
ヘラ・ファミリアが無理矢理変え始めた。
それらはすべて、ベルの影響を受けたからだろう。
「助けて、ザルドさぁぁん!!」
「おう、今度は何だ?」
ダンジョンにいない間は4日に一回はザルドのもとに逃げ込むベル。
逃げ込む理由は様々だ。
「また夜這いでもされたか?風呂に無理矢理入ってきたか?唇奪われそうになったか?あいつらももういい歳したババア共なんだから少しは歳の差考えりゃいいのに……」
「違いますよ!……いや、違わないですけど!」
「違わねえのかよ」
大抵はこんな理由だ。
家を焼かれたヘスティア・ファミリアはヘラ・ファミリアの本拠に住まわせてもらうことに。
それ以降、こんなことばっかりだ。
あのババア共が年甲斐もなくはしゃいで、ベルを理想のダーリンにしよう!などと言い始めたのが事の発端だ。
ちなみに、ヴェルフは危険を察知して、ヘファイストスに土下座して自分が移籍前に使ってた場所を使わせてもらっている。
すんごい気の毒そうな顔で同情してたから、すんなり受け入れてくれてた。
あの椿すらも同情していた。
「じゃあなんだよ?深層に連行されそうになったか?」
「それも違います!ていうか、深層にはこの前春姫さんと一緒に無理矢理連れて行かれました!色々あってゼノスと戦って、今はレベル4になりました!!」
「早っ。まだ一ヶ月だろ?ていうか、ゼノスってあの自我を持ったモンスターか。なんでそんなのと戦う羽目になったんだ?」
「その、僕がレベル2になる時に倒したミノタウロスが、ゼノスになってたみたいで……」
「なるほどな。もう一回戦いたくてゼノスになったってところか。で、勝ったのか?」
「負けました。悔しかったです」
「また戦うのか?」
「再戦を誓いました。次は勝ちます」
「そうか、頑張れ」
「はい!」
本当に色々あった。
なんかくだらない生贄で戦力増強を図ろうとしていたイシュタルの野望を止めて生贄にされそうになった元娼婦を身請けしたり。
その元娼婦……春姫がバカみたいな魔法を覚えてたせいでヘラ・ファミリアに所属することになったり。
面白いくらいステイタスが上がっていくベルに気を良くしたヘラ・ファミリアの面々が無茶をさせすぎたり。
春姫と一緒に深層に連れて行かれ、地獄を経験したり。
色々あった。
ちなみに、【
そのせいで、アイズはベルの次に酷い目に遭わされている。
『嫁の作法』案件と呼ばれている。
「で、結局何なんだよ?」
「そうだ、大変なんですよ!今本拠で大乱闘が発生してて!」
「あ?またかよ?どうせアルフィアが暴れてるだけだろ?」
「違います!春姫さん以外のヘラ・ファミリア全員が参戦してるんですよ!!」
「なんでそんなことになったんだよ?」
ベルに色々ちょっかいを掛けて、アルフィアがブチギレるのがいつもの流れだ。
妹の子どもということもあり、ベルの保護者を自称するようになったアルフィア。
彼女が色々な事に過剰反応し、売り言葉に買い言葉ならぬ、売り拳に買い拳。
日々乱闘が発生しているのだ。
「その、団長さんが僕に『あと十年経ったら夫にしてあげる』って言ってきて……」
「真に受けんなよ?あの女の発作というか、口癖みたいなもんだ。そういって夫になったやつは一人もいねえ」
「分かってますよ!でも、アルフィアさんがそれを聞いてて……」
「ああ、そういうことか」
「はい……団長さんとアルフィアさんが戦ってて、他の人もそれに参加して……」
それ、多分勝った奴がベルの夫になれるとかそういう話になってんだろうなぁ、とザルドは思う。
言ったら大変なことになるのは目に見えているので、絶対に言わないが。
「どいつもこいつも……いい加減にしろっての。年頃のガキを何だと思ってんだか……」
「あの、ザルドさんが喧嘩を止めてくれたりとかは……」
「無理に決まってんだろ。マキシムでも無理だわ」
「ですよね~」
二人揃って大きなため息を溢す。
帰った時、本拠が無事だといいのだが、そういうわけにもいかないだろう。
「なあ、ベル。お前ほんと気をつけろよ?万が一襲われたとしても、最低限抵抗して避妊位はしろよ?じゃないと大変な目に遭うぞ?」
「もう遭ってます……」
「まだ本質には届いてねえ。ていうか、あの状況で貞操守り抜くとか、お前もよくやるよな」
「アルフィアさんがいなかったら、ヤバかったです…」
「いるにしても、だよ。あいつら、見た目だけはいいからな。他の男だったら性欲に負けてそりゃあもうズッコンバッコン――――あっ」
「え?どうか――――グッフ!!」
突如として鳴り響く鐘の音。
炸裂するは福音の拳。
不可視にして必殺、最強の拳骨。
喰らったものは例外なく地に沈む、最強のお仕置きだ。
当然、それを放ったのは最強の母親。
「ベル、お前は何度言えば分かる?私のことは『お義母さん』と呼べと言っただろう?」
「あの、僕も流石に14歳なんです……初対面の人をいきなりお義母さんとは呼べないんです……一年くらい待ってください……」
「ダメだ。今すぐ呼べ」
「あ、アルフィアお義母さん……」
「よろしい。最初からそう呼べ」
母親宣言をしたアルフィアは、お義母さんと呼ぶことを強要されている。
ちなみに、伯母さんじゃ――――と言ったら拳骨を落とされた。
一緒に言ったヘスティアやリリルカ共々、拳骨を落とされた。
「……お前、なんでここにいるんだよ?」
「勝ったから。それ以外にあるか?」
「病持ちのお前が?」
「治った」
「は!?」
「ベルと会ってからしばらく経ったら、妙なスキルが発現して治った。そのおかげで今はレベル8だ」
病があった状態でも女帝相手にワンチャンあったアルフィア。
その病がなくなり、挙句の果てにランクアップ。
そりゃあ勝てるわけだ。
「さて、ザルド」
「な、なんだよ……?」
「お前、ベルにくだらんことを吹き込もうとしたな?」
「いっ――――!?」
回避する暇もなく、同じく拳を叩き込まれる。
そのまま意識を奪われ、ベルと一緒に引きずられていく。
「私の病も治ったんだ。お前もスキルか何か発現させれば治るだろう。というわけで、ベルと一緒にこれから竜の壺に行くぞ。装備はあのヴェルフとかいう小僧に作らせてある」
返事はない。
ただの屍のようだ。
というか、これから屍になるようだ。
まあ、こんな感じで動き始めたヘラ・ファミリアの日常は続いていく。
おそらくベルは半年経つ頃にはレベル5、上手くいけばレベル6くらいにはなれるだろう。
毎日死にかけてるし、一週間に一回は死の淵をさまようし。
大丈夫なのかって?
知らん。
多分、大丈夫なんじゃない?
あとがき
今思いついてるのを文章にしたら、こんな感じになりました。
これ以上は本当に何もありません。
というか、この話書こうと思ったら闇派閥関係はほぼ無くなるし、個人的な因縁や思惑以外もほぼないんですよね。
だから、ひたすらヘラ・ファミリアにいじめられるベルくんという図になります。
あとは、エレンって名乗る怪しげな神にちょっかいかけられるベルくんとか?
都市に連行されてきたゼウスを見てなんとも言えない表情をするベルくんとか?
あんまり思いつかないです。
というわけで、本当にこれ以上は書けそうにありません。
書きたい方、いらっしゃればどうぞ。
読みたい方、誰かに書かせてください。
あと、個人的に面白すぎたダンまちの小説があったのでご紹介を。
ハーメルンのリーグロードって方の、『ベル君のエロ本を書くのは間違っているだろうか?』って小説です。
題名からも分かる通り、R-17.9の結構際どい小説なので、良い子は見ないように。
オリ主系はあんまり好きじゃないんですが、これはクッソ面白かったですね。
こういうオリ主は大好きです。
まだの方は、ぜひ読んでみてください。
読んで後悔はしないです。
アルゴノゥトの話も書いてくれねえかなって思ってます。
感想欄で書いたらリクエストってことになって消されそうなので、ここでコッソリボヤいておきます。
あ、一応お伝えしておきますが、これは僕が勝手に紹介してるだけです。
ステマとかではないです。
リーグロードさんと関わりは一切ありません。
そこだけご理解ください。
以上、あとがきでした。