高慢残念系美神の眷族なんだが、愛してもいいか?   作:神崎せもぽぬめ

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 あけおめ!
 投稿遅れたけど、新年迎えたのでノーカン……だめ?




四話目 ジャガ丸くん

 

 

 ギルド主導で行われる炊き出しは定期的に開催される。

 闇派閥(イヴィルス)の無差別な襲撃が予測され、命が失われるのは勿論のこと、いつ職にはぐれるかわからないこの時勢。仕事もままならず、家族を養うことも難しい者たちが続出するオラリオで、今日という日は喜びに満ち溢れていた。

 

 北のメインストリート一帯を使った炊き出しは、『盛況』の一言に尽きる。

 

 無論、邪神率いる闇派閥共がこの光景を見逃すとは思えない。

 だからこそ冒険者に警備を任された。が、その冒険者の多くがなんというか………

 

「………なんか妖精族(エルフ)多くね?」

「あぁ……まぁ、その、なんだ。私のせいだな」

 

 王族妖精(ハイエルフ)であるリヴェリアが警備を任されたという通告は少し前にされたのだが、それにしたってエルフの割合が多すぎる。

 つまり、炊き出しを警備しに来たリヴェリアを更に警備するエルフ達ってことか?めんどくせぇー。

 アドニスは面倒そうな顔を隠しもしなかったし、リヴェリアは更に申し訳なさそうに眉を下げた。

 

「……でも多いよ?いっぱい守れる」

「確かにより多く、広く守れるよな。でもそれは怪物(モンスター)相手の話だぜ」

 

 リヴェリアを始めとしたエルフという種族は先天的に魔法の素質に優れている。そうでなくても射手という遠距離手段を持ち合わせているから、広範囲の防衛が可能。

 つまりこの状況は有利に働くのではないか?

 アイズは小首を傾げて疑問を投げかけた。

 

 それに対し、アドニスはまるで教師のように丁寧に答えた。

 思い描くのは『学区』で教鞭を執る残光狂いの騎士だ。

 

「遠くから高火力広範囲の攻撃が出来るけど、近付かれたら弱いのが魔導師だ。よーいドンの戦いなら距離を置ける分、強いが、こんな風に────」

 

 語りながらアドニスは手の空いてる左手を閃かせる。ちなみに右手でアイズと手を繋いでる為動かせない。

 

 Lv.3のアイズですらギリギリ捉える事が精一杯だった左手が穿つのは隣で灰色のフードを深く被った男性。

 狙い済まされた一撃は寸分の狂いなく顎に命中し、意識を遠くへ飛ばし、身体は崩れ落ちる。その際に男が袖に隠し入れていた紅色の魔剣が地面に軽い音を立てて落ちたのを目撃した。

 

 いい貰い物した、と。

 アドニスはその魔剣をさりげなく懐に入れる。

 

「守るべき対象、この場合だと市民だよな?その連中たちに紛れられると精密攻撃が難しい後衛は後手に回っちゃうんだよな………」

「……もう潜伏されていたのか?」

「速すぎてみえなかった……」

 

 アドニスが見抜けてリヴェリア達か見抜けなかったのはちょっとした経験の差だろう。

 『自分が信じるものこそ唯一無二の正義だ!』と盲信する人間の瞳は大抵暗く輝いているもの。うんざりするほどそういうのを見てきたアドニスからすれば見分けるのは、エルフの外見から実年齢を当てることよりも簡単なことだ。

 

 それはともかく、アドニスの動きが早すぎて周りからすれば突然男が倒れたように見えた為、当然のように警備係の冒険者が駆けつける。

 

「何事ですか!」「大丈夫!?」

 駆けつけたのは金髪碧眼のエルフと赤髪のヒューマンの少女二人。

 エルフの方は見るからに潔癖症とわかるように外套を身に纏い、口元まで隠す徹底っぷり。だが何故かそこはかとなく………アドニスの某残念美神のようなポンコツ臭がするのは、気のせいだろうか?

 

 そしてヒューマンの赤髪少女の方は、どこか見覚えのある特徴的な赤髪で快活っぷりだった。

 が、今は記憶の海を漂うよりも、駆けつけた二人に事情を説明することにした。

 

「このおっさんが怪しい動きをしてたもんだから、まぁ、とりあえず拘束してくれ」

「説明が雑ね!?でも、私達からすればあなたも十分怪しい動きをしてたわ!!」

「ほーん?オレの動きを捉えられたのか……」

「その点については私が説明しよう」

「リ、リヴェリア様っ!?」

「ということはこのちびっ子ちゃんは噂の【剣姫】ってことね?」

「ち、ちびっ子……!?」

 

 仰天する金髪エルフと金髪幼女のアイズ。

 

「我々は既に紛れているであろう闇派閥(イヴィルス)の拿捕を迅速に対応した。そして、この男は敵では無い。今回の防衛に抜擢された私の知己の冒険者だ」

「どうも、リヴェリアのズッ友、正義の味方のアドニスでーす」

「神ならぬ身でも分かる嘘をこの男、堂々と…………」

 

 戦慄するのは金髪エルフ娘だった。

 そして対抗するのは赤髪の少女である。

 

「正義の使徒を名乗ったからにはこちらも応えるわ!私はアリーゼ・ローヴェル、清く正しく美しくがモットーの美少女よ!で、こっちのエルフはリュー・リオン!私の次に美少女なエルフね!」

「オーケー、美少女のアリーゼに美少女のリューな。よく覚えとくよ」

 

 アドニスとアリーゼはお互いに手を差し出し触れ合う瞬間………何故か全く同じタイミングで荒ぶる鷹のポーズをした。

 

 もう一度言う。

 

 荒ぶる鷹のポーズをしたのだ。

 

「その完成度……!!やっぱりアドニスお兄様だったわ!!」

「そういうお前はあのお転婆アリーゼだったのか!立派に成長したな!何年ぶりだ?」

「大体五年ぶりくらいかしら!」

「そんな経ってたのか!まぁ立ち話もなんだ、どっか落ち着ける場所にでも行こうぜ。久しぶりにお前の話を聞きたい」

「えぇ勿論!」

「待て待て待て!」

 

 リヴェリアは頭痛が痛いとでも言いたげな表情で二人を呼び止める。

 

「アドニス、お前……妹が居たのか?」

「妹なんかいるわけないだろ何言ってんだ?」

「そうよ!アドニスお兄様はお兄様だけどお兄様じゃないわ!」

「り、理解が及ばん………!!!」

「リヴェリア様が動揺されてる……!?わ、私は魔法による精神攻撃を受けているのか……!?」

 

 リヴェリアとリューのダブルエルフがあわあわしていると横からにょきっと。幼女(アイズ)が顔を出す。

 

「ん……お父さんの妹、よろしくお願いします」

「え!?【剣姫】って、アドニスお兄様の子供だったの!?まっっっっったく似てないわね!」

「いや違うぞ。なんか娘が生えてきた」

「生えてきた」

「うん」

 

 しばらく宇宙猫顔(こんわく)したアリーゼだったが、「考えるだけムダよね!」とお得意の思考放棄を実行する。

 こうして話についていけないエルフを含め自己紹介を終えた一行は護衛任務を自然と共にする流れになった。

 

 アドニスが捕らえたコソ泥ならぬコソ闇派閥(イヴィルス)から出てきた炎の魔剣と火炎石が、文字通り騒動の火付け役になるだろうと推測したことから、警戒対象には不審物も追加された。

 とは言っても、火炎石は拳大程度のサイズでも人ひとりを優に殺せる強い着火性と爆発性がある。随分前にきゃっちぼーるとやらで使っていた石(たま)が火炎石だった経験があるアドニスは、その脅威を良く知っている。あれはやばかったな……。

 

 そして懐に隠し持たれていたならば見抜くことは容易ではないそれを、潜伏している闇派閥の全白兵に持たせていたら…………これを最初に思いついたヤツは間違いなく悪辣で心がないだろう。浮気バレしたゼウスへの折檻をしてる最恐最悪(クレイジーサイコ)女神の方がまだ手心を加えていた……はずだ。

 

(せめて敵さんの幹部とかが出てきてくれたらなぁ〜)

 

 決してフィンからの冒険者依頼(クエスト)が面倒になったという訳ではない。ないが…………圧倒的に手が足りないこの状況から人々を完璧に守る冴えたやり方は、アドニスの天災(才)的な頭脳をもってしても考えつけなかった。

 

 灰色の脳みそをフル稼働させて、うーんと、悩んでいると────ドンッ、と。

 所々破けている肌着と革(レザー)の脚衣(パンツ)を履いたチャンネーと、ぶつかってしまう。

 

「おっと、ごめんな、ねーちゃん」

「おう、気にすんな」

 

 盛況になりつつある通りは人混みで溢れていた。

 アドニスは180C(セルチ)程の細身の体躯ではあるものの、この混雑具合ですれ違いざま肩をぶつけないようにするのは結構難しいだろう。ちょっとした偉業に数えられるかもしれない、そんな人混みだった。

 

 だからアドニスは軽く手を振って謝意を表し、向こうのチャンネーも片手を上げて応えてくれた。

 

 そしてなんの予告もなく、凶(・)刃(・)が(・)振(・)る(・)わ(・)れ(・)た(・)。

 

「ぺぎゃッ」

「…………………………え?」

 

 ぐしゃり、と。

 間の抜けた音が響く。

 

 ぴしゃりと飛び散る”ソレ”は欠片となり、傍にいたアイズの柔らかな頬を伝う。

 

 ほんのりと暖かさを残したそれに遅れて反応したアイズがゆっくりと。震える手でゆっくりと”ソレ”を摘む。

 

 もう暖かさを無くしたソレは。

 

 既に元の形を失ったソレは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────ジャガ丸くんだった。

 

 

「は…………………………ハアァ???」

「………オレが言うのもなんだが、ちょっとおかしいぞお前。それともオレの謝罪のやり方が間違ってたか?なら待ってろ、今すぐ土下座のスペシャリスト(アフロディーテ)を連れてくるから」

「な、何しやがったテメェ……!!」

「チェダーチーズ味……邪道……」

 

 アイズはジャガ丸くんの欠片を睨みつけていた。

 

「フッ……懐にジャガ丸くんを入れてなきゃ即死だったな」

「ふざけんなッ、狙ったのは喉だぞ!?」

「まあ落ち着けって、そんな食いたかったのか?ジャガ丸くん」

「食うわけねェだろ──がァ!!!」

「おいコイツ正気じゃねぇぞ!!」

 

 オラリオに居て、ジャガ丸くんを食べないだと!?コイツ闇派閥(イヴィルス)だ!!

 

「お前は……!!【殺帝(アラクニア)】!!」

「知っているのか、雷電(リヴェリア)!?」

「ああ!」

 

 なんだまた茶番か……と呆れた表情から思わず三度見したリヴェリアが高らかに答える。

 

「ヴァレッタ・グレーデ。この神時代で最も多くの冒険者を殺したとされる殺人鬼(シリアルキラー)……そして闇派閥(イヴィルス)の主要幹部にして指揮官!」

「幹部だったのかお前。なるほど、『幸運』だなオレは」

「チッ────!!!」

 

 【九魔姫(ナインヘル)】と見知らぬ上級冒険者(アドニス)を前にしたヴァレッタの思考はこれ以上なく巡っていた。

 

(金髪エルフと赤髪ヒューマンは正義ごっこ(アストレア)の派閥!連携させなきゃゴミ!金髪のチビは……噂の【人形姫】。コイツも見た目より動けるだけのLv.3の雑魚!問題は【九魔姫(ナインヘル)】と訳わかんねぇこの男ッ!!)

 

 ヴァレッタは淀みなく行動に移す。

 

 手元から素早く抜き放つ第二の得物である短剣を全力でリヴェリアに投擲し、自身は大きく後退する。

 同じLv.5といってもリヴェリアは純後衛で、指揮官のヴァレッタは前衛も熟(こな)す第一級冒険者だ。後退するヴァレッタへ追撃を加えようと魔杖を振りかぶるリヴェリアはここで防御を選択させられた。

 

「くっ……!」

「っぶねぇな!?」

 

 リヴェリアの美貌に凶刃が迫るところで、打ち払ったのはアドニスだ。まだ湯気が漂うジャガ丸くんを閃かせて救うことに成功したのだ。

 

「リヴェリア!?」

「リヴェリア様っ!?」

「【殺帝】が逃げるわ!アドニスお兄様、指示を!」

 

 驚きの声をあげる金髪ペアと、既に切り替えて目標を見据えるアリーゼ。

 すぐに追い掛けたいアドニスだったが、今の彼にはアイズを守護するという縛り(クエスト)が課せられていた。驚愕に立ち尽くすアイズの傍からは離れられない!

 

「ンだよ足手まといが居るならそう言えよ……!!テメェら、やれ!!」

 

 ヴァレッタの指示は、ここに至って神懸っていた。

 

 まさに闇を冠するに相応しき悪辣さをもって呼び出したのは群衆に扮していた部下たち。

 

 魔剣と魔法が向かう先はアドニスたち─────そして、身を守る術を持たない民衆。

 

 

『お前はどっちを選ぶゥ〜?』

 

 

 思考の空隙を縫うように、囁く人喰い蜘蛛(アラクニア)。

 守るべき民と見知った冒険者を、無邪気に天秤にかけた。

 

 

 ならば、と。

 

 

 彼は迷わず、それを唱えた。

 

 

「【グロリアス・ハイヴォルテージ】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 最近、ダンまち二次小説が増えてる気がして嬉しいです。

 モットフエテ……

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