限界少女とハイスペックダメ人間   作:スティック/糊

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……12巻の表紙発表されとるぅ(執筆中)

12巻発売されたぁ!?(執筆中)

本作は12巻が発売されても独自解釈ありきで書きます()

短いけど更新です(突然修正するかもしれない)


ある種の帰省

 夕月は小さく自己嫌悪した。

 

 旦那があまりにも包容力が高いと言うかなんというか。

 

 

「あの、私にとって絵はそこまで傾倒するようなものではなくてですね、依頼が終わったら再度筆をとる訳ではないと言いますか」

 

 

 夏休みが始まり一週間と少し。

 

 夕月は以前の感覚を取り戻すように絵を描き続けていた。

 

 そのことで数回食事を忘れかけてしまうが、真護に「俺も創作をする人間だからな。集中している時の感覚が切れるまで続けたいのはわかる」と解像度の高い理解を示されて怒られることもなく、寧ろサポートに回られる始末。

 

 専業主婦として不甲斐ないと夕月は落ち込みながらも、そんな言葉をこぼしたのだ。

 

 

「やりたいことはやればいい。夕月が俺を支えてくれるように俺も夕月を支えたいんだ」

 

「完全に真護さんの負担がすごい事になりますよね!?」

 

「その程度負担ではない」

 

「ただでさえ現状支えられっぱなしと言いますk――――え、あ、ちょっと、ベッドの上で分らせれば事済むとか思ってませんか!?」

 

「だが、一度冷静になることはできるだろ」

 

「…おバカ」

 

 

 何故私の回りは困ると脳筋的戦法に走りがちなのだろうか。

 

 その後しばらく夕月の投げる言葉はことごとく受け止められてしまい、自身が家計を顧みることができ無くなったら自己判断で一時的に中止することを認めさせることに成功した。

 

 

「……創作に傾倒しても構わんのだが」

 

「紙に向き合い過ぎて、あなたとの時間が減るのが嫌なんです」

 

「ぐぅ」

 

 

 夕月が彼の包容力と言う名の防御壁を突破できたのはこれくらいのものであった。

 

 

 夫婦間において『食事等の定めた時間から1時間の遅れが発生した場合作業場に突入することを可とする』と言う明文が出来た。

 

 遅れた場合は家庭内の仕事を勝手にやっても怒らないこと、と言う条件付きで。

 

 

「抱く、という意味でしたらこう…ぎゅっとしてくれるだけでもいいんですけど?」

 

「ぐぅ」

 

 

 真護はさらなる追撃に胸を押さえ、一つ息を整えると何ともいじらしい事を言う妻を静かに抱きしめた。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 実家への帰省。

 

 旦那の実家へ向かうと言うことは夕月にとっては義実家に向かうと言うことだ。

 

 自身の実家に近しい概念の教会は燃え、現在は完全な更地だ。

 

 過ごしてきた年数で言えば教会よりも病院の中にいる方が長かった気もするが、病院に向かう程不健康や体調不良に見舞われていないのが幸いである。

 

 要は夕月にとって帰省と言う概念は存在しないに等しいのだがそんなことを呟けば「真護と帰省したらうちに逃げてきていいからね」と言う謎の藤宮義両親の言葉に甘えることになるだろう。

 

 家を出るほどの何かがあるのであれば夕月はきっちりすべてを清算して去るのだろう。

 

 8月の盆前、夕月はある種の帰省をしていた。 

 

 

「久しぶりだなキティ」

 

「3週間前にあったばかりですよ蒲原先生」

 

「ったく妙に大人ぶりやがっちゃってよぉ」

 

「16歳は普通二輪が取得できる上民事刑事の責任だって発生する年齢で―――」

 

「胸だけじゃなくて態度までデカくなりやがって。身長は一向に伸びてねぇけどなぁ」

 

「蒲原先生」

 

 

 夕月の過ごしていた教会からそう遠くない場所にある病院にF20の絵を担いで持ってきた。

 

 例の依頼の品が出来上がったのでさっそく持ち込んだ訳だ。

 

 アポを取っていたとは言え病院は忙しい場所であるため病院の待合の隅っこで待たせて頂こうとしていたのだが、とても長い年月お世話に成っていた病院と言うこともあって夕月を知っている看護師も多く、その姿を視認されては何事かとドナドナと応接室に連れて行かれ、想像以上に早い面会となった。

 

 相変わらず医者らしくない口調ではあるが公私はしっかりと分けているらしい。

 

 

「んで、結婚してるとかもう驚きだ」

 

「色々な巡り合わせです」

 

「まともそうなやつで良かったぜ」

 

「恐縮です」

 

 

 真護も夕月がF20サイズを電車に乗って運ぶのは大変だろうと車を出してくれたため一緒に来ていた。

 

 この場に来るまでに「夕月ちゃんとどういう関係かな……?」と保護者の様な物言いの看護師らに絡まれていた為やや疲労困憊と言った様子だった。

 

 

「うちには産婦人科ねぇからもしものことがあったら紹介状とかは書いてやっから来な」

 

「ありがとうございます。……それなりに計画は立てているので数年後の話だとは思いますが」

 

「そうかい」

 

 

 そんなことを言いながら蒲原はケラケラと笑った。

 

 夫婦仲がいい事はいい事だと。

 

 

「それでそれが今回描いたやつか」

 

「はい、特に指定はなかったので手癖で描いたものになりますが」

 

「……やっぱ猫入ってると縁起がいいんだよなぁ」

 

 

 持ってきた絵の包みを外し、その全貌を見ると蒲原はいいもんだと首を振る。

 

 夕月はモチーフに困ると大概猫を描く。

 

 今回は猫と大きなひまわりの絵だ。

 

 蒲原は久しぶりに見た新作にやっぱりいいと首を振る。

 

 いいものを連れて悪いものは弾いてくれる一種の魔除けみたいなものだと蒲原は感じていた。

 

 良い医師はこの絵に好感を持ち、そうでないものは眉を顰める割合が多い。

 

 ぜひ面接会場に一枚は置いておきたいと思うほど。

 

 勿論単純な絵の出来としても大変気に入っている。 

 

 蒲原にとって夕月の絵は一種のゲン担ぎみたいなものであった。

 

 

「コレうちにおいていい?」

 

「……お弟子さんと交渉なさってください」

 

 

 色々な要因が重なって夕月の絵のファンである蒲原は新作を見て、弟子に譲るの止めたいな……なんて考える。

 

 この病院に居た時よりもずっと自由に描いているのにとても温かみを感じたのだ。

 

 

「仕方ない。気が向いた時に描いてくれ」

 

「……本当に気が向いた時ですからね」

 

「ああ、それでいい」

 

 

 やはり、あいつが亡くなった後よりもいい表情をする様になった。

 

 流石に娘みたいなもんの幸せを邪魔してまでどうこうする訳にはいかねぇしなぁ。

 

 蒲原はにやにやとしながら廊下に並ぶ絵が増える日を楽しみにすることにした。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 翌日。

 

 絵を蒲原に渡し、それと引き換えに受け取ったシスターの遺産に夕月は頭を抱えた。

 

 夕月の手元にあるのは2つの封筒と鍵であった。

 

 都内の貸倉庫の契約書とその土地の権利書だ。

 

 蒲原との面会の際にひょっと現れた弁護士によってとんとん拍子で話が進められ、蒲原が代理で管理していたその関係は丸々夕月の手に渡って来たのだ。

 

 ……色々な細かい事を抜きにすれば今後夕月の手元には土地の借地料が流れてくることになる。

 

 半不労所得である。

 

 「要らんなら売っとけ」なんて蒲原は軽く言っていたが、もしもの備えはあって損はないだろう。

 

 その土地自体はシスターが軍人やってた時代に助けた日本人から贈られたものだが退役してさっさとシスターになってしまったため、今の今まで蒲原に預けられていたらしい。

 

 それを夕月の元に贈ったのは這いつくばってでも大人に成れたご褒美みたいなものだとかなんとか。

 

 シスターの想定とはいささか違ったものだろうが、蒲原は一つ荷が下りたと笑っていた。

 

 今までその土地で発生した収益をまとめた通帳も押し付けられそうになったのだが流石にそれは固辞させてもらった。

 

 

 駅からそう遠くないその土地には現在貸倉庫が建っていた。

 

 倉庫と言って思い浮かべる武骨なものとは違い、車を保管するガレージとトランクルームの様な小規模な部屋のある建物だ。

 

 一台一台シャッターで分けられたその一角をシスターの名前で契約していたらしい。

 

 貸倉庫の運営会社との契約で一角寄越せばここに建てていいと言う契約だとかなんとか。

 

 弁護士挟んで色々な書類にサインしていた際に倉庫の中に何を眠らせていたのかは理解したが、未成年の夕月には無用の長物で渋い顔になったのは確か。

 

 端的に言えばアメ車とハーレーが突っ込まれた。

 

 夕月の古い記憶をたどれば確かに何度かシスターの運転で乗せて貰ったことのあるそれであったが、今現在では夕月が動かすことは出来そうになかった。

 

 スタンドでバイトをしていたから多少の知識があるため、長年放置されていたとなれば色々な所に劣化があるだろうと察した。

 

 いつか動かすことができればいいとは思う。

 

 真護はオーバーホールなり必要なら費用は出すと言ってくれたが、夕月としては自分の手で動かせるようにしたいので借地料を見ながら考えることにした。

 

 

 貸倉庫と土地の件についてはシスターならやりかねない。

 

 そんな信頼が夕月にはあった。問題はもう一つの封筒。

 

 夕月の生みの親と椎名に関する資料であった。

 

 これに関しては蒲原が“オマケ”と称して手渡してきたのだが、こんなものをオマケ感覚で渡してこないでほしいと頭を抱えたのだ。

 

 いつかアチラさんが喧嘩売ってきたならどうにかするかと用意していたものらしいのだが、内容が濃い。

 

 そもそもどうやって生まれの家まで特定したのかとツッコミを入れたいところだがシスターと蒲原も異様に顔が広いため何かしらの手段はあったのだろう。

 

 戸籍上も何もかも他人であると言っていい椎名の家について知ったところで、なんて思いながら資料を確認したのだが、表面上はよくありそうな資産家でその内情までキッチリ調べている辺りが本当に怖いというかなんというか。

 

 過去10年分の情報がまとめられており、いざとなったらこれ持って警察に駆け込めとのことだった。

 

 ……なんで後ろ暗い情報までまとめてあるんでしょうか。

 

 

 ちょっと現実逃避したいところだが、自身の妹であることを願った双子の片割れに何かあればこれを渡せばいいかとそっと棚に仕舞った。

 

 絵一枚に得る対価ではないと思うと同時に自身は愛されていたらしいという自覚も湧いた。

 

 

 もっともこれを手に入れたのが擦れ切った後だったり、彼と出会う前であったらもっと捻くれた受け取り方をしてしまっただろう。

 自身のめぐり合わせに一つ感謝した。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 ある種夕月の里帰り(?)をした後は真護の実家への帰省となる……のだが、夏休みが始まって数週間ひたすらキャンバスに向かい合っていたこともあって真護の夕月を構い倒したい欲求が溜まったらしい。

 

 車で移動するのだから多少日程が前後してもいいだろうと言う暴論により帰省前にドライブデートをすることとなった。

 

 夕月も二人でのんびりすることに異論はなかったためそれに頷いた。

 

 

「海と山どっちがいい」

 

「人が少なそうな方で」

 

「……時期的にどちらも多い」

 

「ドライブデートと言うのでしたらどこかぶらりとするだけでもいいのでは……?」

 

「それもそうだな」

 

 

 夏と言えば山と海、そんな二択だと聞いた覚えはある。

 

 あまり多くを知らない夕月にとっては何処に行こうと多くのものが新鮮に映るのだ。

 

 

「どこか日帰り温泉とかも―――」

 

「よし、温泉に行こう」

 

「決断が早い」

 

 

 春休みの終わりに向かった温泉宿をふと思い出し口に出してみれば真護の眼は輝いた。

 

 彼は思いのほかこういう時表情で良く語る。

 

 

「その、真護さん」

 

「‥…?」

 

 

 意気揚々と荷造りをするためにウォークインクローゼットで服を詰め始めた真護に夕月は躊躇いがちに声をかける。

 

 夕月の手にはどこかのショップの紙袋。

 

 夏休みが始まる前に友人らと出かけた際に選んだものになる。

 

 

「……水着はいりますか?」

 

「俺だけが見ていいなら」

 

 

 些か悪乗りが働いてしまった友人らの選定で決まったその水着は人目が多い所で着る気にはなれないが、二人でならいいかとアピールをしてみればとても素直に肯定されてしまった。

 

 本当にこういう所を素直に告げてくるんだこの人は。

 

 

「貸切風呂、今からでも予約できるだろうか」

 

「……ドライブの途中のご休憩でもいいんじゃないですか」

 

「今は頑張った夕月を甘やかしたい気持ちの方が強いんだがな」

 

「私もいつも支えてくれる真護さんに何かしたいんですよ」

 

「……その時に決めるとしよう」

 

「行き当たりばったりのドライブと行きましょう」

 

 

 真護と夕月は帰省前に少しばかり寄り道をすることにした。

 

 ……行動力の化身である真護の思い付きで少しと言うには大きな遠回りをすることになったりもするのだが。

 

 




Q.3ヶ月も何やってたんだよ

A.ちょっと別ジャンルの沼で泳いでた

後はあれです、藤宮周の実家何県か問題ですよ……

原作でぼやかされて分からない(電車と車でn時間)

アニメ二期が始まればわかる可能性が高いんですがガガガガ

先に藤宮家実家のある県を捏造してしまうと解釈違いを起こした時に自分が転がる未来がガガガ。

東西南北どっち方面なのかだけでもわかれば話の書きようがガガガガガガ。

個人的に千葉説と山梨説がせめぎ合ってる。

しばらく悩むぜよ()
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