「レン・ヤマト曹長、貴方は自分が何をしたか」
「あぁ、貴官等を救った。そこに問題があるのか?
俺の任務はオーブ国民及び部下と上官を守ること。
貴官等を救う事は本来ならば」
「……それで殺したと?」
「死んだな。
偶然にもZAFTの襲撃に遭い、アルテミスは陥落した。
それで良いではありませんか」
レンは現在、
マリュー・ラミアス、
ムウ・ラ・フラガ、
ナタル・バジルール、
アルマ・テールナー、
そしてレン・クルーガー
の5人とアルテミス要塞脱出時の行動について、
空いている士官室で話し合っていた。
「言わせて貰いますが、
私としましてはまぁ、殺されても文句は言えない奴等ですし、
正直死んでくれて清々してますので。
私の心的には情状酌量の余地ありかと」
「クルーガー三等軍曹。
貴女のこともよ。ある意味では敵前逃亡に値します。
貴女はアルテミス要塞所属でしょう」
「えぇ、ですがそれを言ったら此処にいる
全員が敵前逃亡ですよ?」
「それに民間人に殺し合いさせてる時点で軍人として」
「それは護る為に」
そう口に出したのはナタルだった。
しかし、クルーガーは無表情で告げる。
「結局免罪符を言葉に出す時点で駄目なんです。
何とかのために、とか軍人なら納得せざる得ないですけど、
まぁ、私も軍人ですしね」
「……えと、何でそっちに?俺の事じゃないのか?」
「え?あぁ、ごめんなさい。曹長」
クルーガーとナタルの会話がヒートアップしたことで、
レンも今の状況を戻す為に話す。
「第一、ユーラシア軍がオーブ国民を攻撃、拘束した。
第二、拘束されたオーブ国民の救出。
第三、アルマニ尉及びキラ・ヤマト救出である」
「だが、オーブ兵士が」
「……オーブの兵士が殺したのか?
俺はあの時、病室で目覚め、自分自身理解できないが、
クルーガーを拘束し、ハンドガンを奪った。
俺はその時、シャツだったと思うが?」
「まぁ、そりゃあ手術前に
パイロットスーツを俺等が脱がして、
あ……お前、詭弁だぞ。それ」
ムウは理解したのか頭をかいている。
マリューも納得しきれないと言った顔だが、
ナタルは分かっていないようだ。
「フラガ大尉、詭弁とは」
「貴方、軍服を着ていないから何処の兵士か判らない。
そう言いたい訳?確かに私も助けてもらったわ!
でも」
「アルマニ尉、俺は自分でやった事です。
しかし、証拠は何一つありません。
ユーラシア兵士が艦内の監視カメラを停止させていた。
まぁ、民間人への暴行。軍法会議物です。
死体も処分し、宇宙の塵になった」
「……我々は証拠を持たない。
それに、他国の軍人を裁けない」
「ラミアス大尉!しかし、これは」
「バジルール少尉。
今、戦力が足りない状況でガラディーンを
外すなんて出来ない」
「しかし!曹長は危険人物で」
「……その危険人物が我々には必要なのよ。
今は一刻を争う自体、アルテミスで補給はできず、
食料はもとより水も無いわ」
「……補給しなくちゃだよなぁ」
「足りませんよ、人手」
「はぁ……俺が頼むわ」
補給、それはレンも交えて話した内容だ。
現在、アークエンジェルには水も食料も心持たない。
アルテミスで補給できず、どうするかという会話のさい、
ナタルがレンの行動について、声を上げたのだ。
「ユニウスセブン、悪く考えなければ水がある。
食料も探せばあります。
あそこ、農業プラントだったし、プラント本国へ
輸送準備中のコンテナとかはのこってる筈ですよ。
なんたって、コーディネーターもナチュラルも、
此処には近寄りませんから」
「お前、もうちっとさぁ。死者に対して」
「死人に口無し。
確かに墓暴きの様な事でありますが、
フラガ大尉。我々は生きている。
生きていれば、喉が渇き、腹がすく。
民間人も騒ぎ出すでしょう。そうならない為にも、
今此処で行くしかない」
「レン、それは」
「アルマニ尉、俺はユニウスセブンに知り合いがいた。
その人は勿論、コーディネーターだ。彼処で死んだ。
俺だってやりたくないさ、でもな生きてるんだよ。
俺達は、今、生きてるんだ」
レンは拳を握り締めてそう言うと、フラガに向き直る。
「協力者及び、民間人とキラの説得は自分がやります。
ですから、フラガ大尉も頑張って貰いますよ。」
「……墓暴きか、だよなぁ生きなくちゃ行けな」
「なら、病院施設の探索も良いですかね?
医薬品もろくに無いなんて、この船本当に軍艦ですか?
民間船でももっとありますよ?」
「…なぁ、バジルール副長に危険人物と言われた俺でさえ
今少しナイーブなんだぞ?クルーガー、お前」
「死人に口無しと、レン曹長が言ったんですよ。
それに、医薬品の補充も急務です。
分かっていますね、難民には幼い子供もいた。
軍艦、しかも逃避行状態で体調が万全になると?
私と先生で薬は回収しますから」
「わかりました、クルーガー三等軍曹。
ありがとう、私達は水と食料に夢中で他に気付けなかったわ」
「はい、ラミアス艦長。
序に、女性特有の物もかなり在庫がありませんので」
「…?」「どういう事だ」
ムウとレンは良く分かっていないようだが、
女性士官達は苦々しい顔をしている。
「優先順位は低いですが、医薬品と同じく必需品です」
「えぇ、病院施設ならきっとあると思います。
頼みました、クルーガー三等軍曹」
(おい、レン。わかるか?)
(いや、知らないです)
一度話がまとまったため、
レンは一度子供を除いた避難民を食堂に集めた。
「先ず、現実の説明をさせていただきます。
我々には水と食料、医薬品の在庫がありません。
このままでは、近いうちに暴動、そして内紛が起こるでしょう」
「兄さん!」
「貴方方にはそのため、補給の手伝いをしてもらいます」
「補給の手伝い?レンさん、それって」
トールが問いかけると、レンは淡々と話す。
「現在、
アークエンジェルはユニウスセブンへと向かっています。
ユニウスセブンにはテロ発生時から凍りついた水があります。
また、医療施設。そして食料プラントでもある為、
最低限保存の効く食料の入ったコンテナがあると思われます。
私達が行うのはユニウスセブンにある水、
第二目標医薬品及び食料品の回収」
「それ…墓暴きって」
「えぇ、そうです。良く言えば補給活動。
悪く言えば墓暴き。しかし、我々に猶予はない。
手伝いたくない、やりたくないという言葉は聞かない。
いや、聞けない。今此処に子供もいる。
戦艦だ、医薬品も少ないんだ。どうなってもおかしくない。
生き残るために協力して欲しい…いや、協力しろ」
それはレンの見せたことない程に冷たい言葉。
協力しなければ殺すとでも言いたげな視線だ。
少なくとも、キラ以外のオーブ組は知っている。
アークエンジェルに乗っていたユーラシア兵士。
それが殺されたのだから。
「無言は肯定とみなす。皆、感謝する。
では、これよりノーマルスーツを着用してもらう。
安心しろ、敵がいれば俺か、キラか、フラガ大尉が
守ってくれるさ。それに……」
死ぬ時は一瞬だ。
最後の一言が出るのを防ぐ。
どうやらコンバットハイがまだ抜けていないようだ。
簡単に言えば、そんなの自分のキャラじゃない。
そして、30分後には一行はユニウスセブンを探索していた。
その中でもレン、アルマ、クルーガーの3人は
ガラディーンにポッドとコンテナを外付けした急造品で、
病院及び港の探索をしている。
「曹長、医薬品はかなり多いです。
元々密閉されているものですし、割れてもいない」
「此方は死体だらけだ…ったく、
病院にも非常食ぐらい置いとけよ」
「貴方達は…なんでそんなに冷静なの!
死体よ!人が死んでるのよ!それが」
「だから付いてくるなと言ったのに……
アルマニ尉、俺達は軍人だ。それに俺は人も殺してる。
死体に怯えると思いますか?」
「私は軍医ですから、死体も見慣れています。
まぁ…そうですね、技術士官との話だったので、
死体程度ならと思っていた私のミスです」
「…いえ、ごめんなさい。分かっていた事だもの。
その、女性用のロッカーを探したりして見つけたわ。
他にも、外にまだ無事なドラッグストアも」
「なんと!宝の山ですよ!ラミアス大尉に連絡します!」
クルーガーがマリューに連絡を取る。
ドラッグストアとなれば薬や日用品もあるだろう。
「とりあえず、病院は終了だな。
クルーガー三等軍曹、報告を」
「まぁ、これだけあれば一度に負傷者が大量に出る。
なんて事がない限り2週間程度なら。
まぁ、輸血パックとかも多少古いですが
冷凍保存の物は使えます。冷蔵は駄目です。死んでます」
「了解、港へ向かおう。食料があれば良いが……」
結論から言えば、港の方面は無事ではなかった。
破壊されたユニウスセブンから投げ出され、
探索できる物資も無ければそもそも建物も無い。
「……無駄足か」
「薬や日用品が回収できただけで十分です。
予想よりも遥かに多くの補給ができましたね。
……では帰りましょう」
レンとクルーガーは死体を見ても、
何も言わずただ物を奪い、回収する。
アルマはそんな2人をみていたくなかった。
生きるためなら、何しても良いのか…
自分の倫理観が崩れ去っていく。
「ねぇ、せめて花でも」
「余裕があれば」
「時間的余裕はありません」
「なら駄目だ」
レンの言葉をクルーガーは即座に否定した。
ヘルメット越しに撫でられるのをアルマは受け入れる。
「…これが戦争さ、俺達オーブの外側で起きてたな」
レンの拳が激しく握られているのを見た。
はじめからそうだ、レンの仲間はほぼ全滅し、
リンザーとアルマを守る為に戦っている。
ユーラシアの兵士を殺したのも、守る為だった。
アークエンジェルの中に、整備員としている自分。
だが、レンは常に最前線に立ち弟と僚機も守っている。
「…敬礼」
ガラディーンに乗り込む前、
レンの小さな言葉にクルーガーは追熟した。
(……そっか、二人とも)
感情を理性で押し固めている軍人なのだ。
心無い者達では決して無いのだ。
「帰るぞ、アークエンジェルに」
ガラディーンはアークエンジェルに帰艦する。
だが、そこでは新たな問題が発生している事を、
まだレン達は知らなかった。